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唄おうか。蔑もうか。共感しようか。

1 :名前はいらない:2009/01/26(月) 21:24:00 ID:o1W60/71
詩を載せても、その人を叩いても、褒めても自由です。

でも共感できるならちゃんと意思表示をしましょう。


とりあえず自作の詩


最近顔を思い出せなくなった。

声も思い出せなくなった。

君の笑った顔も

怒るような声も

なにも思い出せなくなってきた。

でもね

君のことを思うとまだ胸が痛むんだよ。

頭の中でイメージ出来なくなっても

君との記憶が無くなっても

心の中に君はまだいて

俺の心を痛めるんだよ。

もう好きとは違う感情だと思う。

負け惜しみじゃないけど

この気持ちは、一瞬でも君のことを大事だと思っていた証。


俺はまだ君に未練があるのかな。

でも俺は頑張って前へ進もうとしています。


君は前へ進めていますか?

今隣に大切な人は居ますか?

俺のことはもう忘れていますか?

それとも思い出として君の心の中に閉まっていてくれていますか?


いつかまた話す時がくれば

そのときは、笑って話せるといいな。

2 :呼ばれた気がした ◆AI/////3TQ :2009/01/27(火) 04:58:16 ID:DtISicDl
ありきたりな日記ですね
空行が逆に読み辛いです
共感を求められるのであれば
自分の感情に決着を付けるべきだと思いますよ
想いも弔いを果たさなければ成仏しないでしょう
内容がいちいち未練がましいのです

3 :名前はいらない:2009/01/27(火) 14:04:58 ID:35+//qoA
いつの間にか対象が入れ替わっている
そういう話ではなくて
いままでのこころのままだとそういう選択
しかない風になったので試してみたけど
だめだった。迷うところが多すぎて。
そんなに急に心変わりはできません
これ以上あてどなく引き止めることもできないけれど
ここだけではちょっとわからないけど

4 :呼ばれた気がした ◆AI/////3TQ :2009/01/27(火) 20:44:56 ID:DtISicDl
胸の奥にポッカリと空いた穴は
風が吹き抜ける度にヒュー、ヒューと
あなたの名前を呼んでいました

永遠を探して 合わせ鏡の万華鏡
作りものの花畑で 迷子になった少年少女は唄います

あなたのために 世界は沈み
季節は その彩りを失いました
あなたを見送るために 星々は薄っすら灯り
黒い海原は さざ波すすり泣くのです


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

この程度の比喩で飾れないなら
きっと暇潰しも出来ないでしょう

5 :呼ばれた気がした ◆AI/////3TQ :2009/01/27(火) 21:17:59 ID:DtISicDl
濁りの少ない川のほとりに
黄金色の月が揺れていて
疲れて途切れたネオンライトを
優しく見守っていた野良猫は
愛されなかった悲しみに
一声鳴いてはトボトボと
明けぬ夜闇の中へ隠れるように
静かに去っていきました

言葉は伝える為の手段の一つで
色も、形も、音も、熱も
どんなものでも伝える事が出来るのです
ただ、伝わらない事があるというだけなのです

人に いったい何が伝えられるというのでしょう

6 :  ◆UnderDv67M :2009/01/27(火) 22:33:21 ID:FR5WTZf0
>>4
別に比喩は必要って事もないんじゃないの

>>5
愛なくして何故生きてこられたんだよ

盲目の人間に色を言葉で伝えることが出来るのか?
伝える側の問題でなく受け取る側の問題でもあるでしょ
ユダヤ人にヒトラーの予言は正しかったと言って伝わる訳もない

7 :名前はいらない:2009/01/28(水) 09:40:54 ID:Pzwywd1V
              ┌━┐    ┌━┐
              ┃┌╋──╋┐┃
              └╋┘    └╋┘
┌━━┐        ┃ ・   ・  ┃
┃  ┌╂━━━━╂┐   ┌╂━●
└━╋┘        └╂━━┴┷━┘
  ┌╋┐        ┌╋┐
  ┃└╋╋━━╋╋┘┃       できたYO!
  ┃  ┃┃    ┃┃  ┃
  └━┘┘   └└━┘

8 :呼ばれた気がした ◆AI/////3TQ :2009/01/28(水) 20:10:09 ID:t+D6iL67
>>6
正直な話、クオリアの問題を問われると答えに悩みます。
何故なら、私は認識学に対して無知だからです。
しかし、ヒトラーの事については少しだけ知っています。
彼は、悪い魔法使いから人間になる呪いをかけられた
ヌメヌメしたカエルでありました。
だから、麗しいお姫様の接吻で元の姿に戻れたのです。
世の中の悲劇というものは、そういうものではありませんかね?

9 :呼ばれた気がした ◆AI/////3TQ :2009/01/28(水) 21:16:25 ID:t+D6iL67
「嘘と臆病、愚かさに対する呼ばれた気がした◆AI/////3TQ」

多くの場合において
孤立した天才の偉業は
狂気の沙汰でありました。

10 :呼ばれた気がした ◆AI/////3TQ :2009/01/29(木) 23:26:49 ID:+M9hx7tq
カチャポコ、カチャポコ
四角いブリキのタイヤを鳴らして
オモチャの電車が通ります
カチャポコ、カチャポコ
ゼンマイ巻かれて忙しく揺れる
ボディーの塗装は剥げかけて

初めは遊びでありました
追い追われるままに費やされた
車窓に流れる電柱の一時は
二度と戻らないと知った時から
遊びは遊べなくなりました

カチャポコ、カチャポコ
たそがれたレールは赤錆びて
執着駅まで続きません
ゼンマイが止まっても進みたいのなら
嘘つきが人生の始まりです

11 :  ◆UnderDv67M :2009/01/30(金) 00:56:18 ID:7sq+jIqE
戻れば良いじゃん
終着駅とか言っておいて道中にゃ電柱しかない件に付いて

いいよなぁ終着駅まで続かないなんて 
人間にとって永遠じゃない 羨ましいなぁ

錆び付く辺りからして中古なのかこれは? 
他の電車いなくて独占状態なのに続かないとかヘボすぎんだろ

線路ってのはどう足掻いても新品でも赤錆になるんですよ?
レールで削られて銀色になるんです 理解していますか?

>>8 
クオリアってどこの家電製品だよ わかるか
税金で食ってる姫は美しくないとアカンのか
ココでも女の存在価値は外見か
舞台が欧州だもの 黒人には無理だな
なんという夢の無い世界 まさに悲劇だ
ユダヤ云々の話は止めとくか

12 : ◆Nxj7P6Fs6Y :2009/01/30(金) 03:18:27 ID:G2jqed2t
いつからやろう
人のために泣けなくなったのは
いつも自分のことで頭いっぱい
そりゃ自分勝手だと言われてもしかたない
自分でも最低な男やって
何回も思った


でもな
お前に告白出来ひんのは
自分が傷つくのが恐いからやない
ただ
お前との関係が
壊れるのが恐かった


そうこうしてるうちに
お前との距離はどんどん離れていって
いつまでもそこにいるわけにはいかなくて
だから
俺は誓った
強くなるって誓った


辛いだけならもう忘れてる
苦しいだけならもうやめてる
でも
少しだけでも幸せやと思ってしまうから
一生懸命お前のことを考えてんねん

13 :名前はいらない:2009/01/30(金) 07:37:50 ID:DuVXF4Cx
>>12 怒らんといてな
ソープ嬢を自分の彼女と思ってそう

14 : ◆Nxj7P6Fs6Y :2009/01/30(金) 08:43:04 ID:G2jqed2t
>>13
怒ってもいい…?

15 :名前はいらない:2009/01/30(金) 09:47:23 ID:gFQa8EcK
w

16 :名前はいらない:2009/01/30(金) 09:49:12 ID:pDKHmX0+
甘いスープの中に
二人でゆっくり浸かってねだんだん
溶けてく姿にも
にっこりわらって
頬笑んで

17 :名前はいらない:2009/01/30(金) 11:35:03 ID:sPEEhyQ+
「事情」

城を出れば敵に侵入され
わなを仕掛けられ
のろしを上げれば敵に気づかれ
場所の話も信用ならず
勘違いだった
味方に見限られ裏切られ
謎めいた手紙を送られ
とおもいきや
これも勘違い
おかしな返事を書かされ
何もできず

この前までと違う展開
なんだこれゃ
まだ続くとは
元の人は居なくなったと
おもいきや
まだ居るかのような雰囲気
つままれたきつね

それともまた自己消滅が始まるのか
一応 乗ってみよう


18 :呼ばれた気がした ◆AI/////3TQ :2009/01/31(土) 07:15:21 ID:zXRdpuju
>>11
私の妄想世界ではレールが銀色な理由は
寝静まる頃に小人さん達が良い子の為に
一生懸命に磨いてくれているからなのですよ
余りにもピカピカに磨かれるので
滑ってレールから外れてしまう良い子が沢山いるのです

>>16
ステキなポエムですね
出汁が取れて美味しそうです。

19 :  ◆UnderDv67M :2009/01/31(土) 08:45:59 ID:viXLf6Ha
実に詩的じゃないの 詩なんて殆どが妄想で出来ているのだもの 良いじゃんか

で、ここなんのスレッドなの?


>>12 なんかこれって
ソープ嬢を自分の彼女と思ってそう



20 :呼ばれた気がした ◆AI/////3TQ :2009/02/02(月) 21:58:56 ID:FRFpqRR6
「今日食べるご飯が無い」

賢者の結論は絶望することでした。
愚者は明日に希望を持ちました。

どちらが幸せであったのか
一目瞭然でしょう?

21 :呼ばれた気がした ◆AI/////3TQ :2009/02/05(木) 22:39:55 ID:PgDRb/mh
誰しも何も知らないという事はないでしょう
知らない事を知らなければ
何も知らないという考えさえ生まれません

22 :名前はいらない:2009/02/06(金) 14:07:22 ID:nMR5mKSP
>>12
いい詩だね

23 :呼ばれた気がした ◆AI/////3TQ :2009/02/11(水) 02:18:34 ID:qeROa9ve
何時とも知れぬ間に
宵の夢も枯れ醒めて
心の揺れるままに迷った道は
もう進む事さえやめてしまった

自由帳に描いたラクガキは消え
日常のありふれた算段に変わり
使い古された青い言葉の数々は
指差して鼻で笑うようになった

誰にも大切なものがあった
信じられるもの 愛しい人
守りたい気持ちがあったのだ

信じられるものを信じる為だけに
頑なに守ろうとした愛しさは
壊れる事を恐れる屈強な壁を作って
硝子細工の少年を囲った
どうしても守りたいものがあったのだ

屈強な壁は全てを塞き止めた
刺々しい痛みの伴う言葉を
胸を貫く恨みの眼差しを
少年に迫る あらゆる困難をはじいた

そうして
本当に聞かなければならない 相手の言葉を
向き合ってみなければ分からない 相手の心を
何一つ知る事も出来ずに遠ざけてしまったのだ
守りたい気持ちは 壁の中で死んだ

日々の作業に蝕まれ費やされる
僅かな給金と共に空腹を満たし
ささやかな娯楽で暇を潰す
そのように>>12は静かに年老いていくのだ

24 :名前はいらない:2009/02/24(火) 17:32:11 ID:CeqJaM3V
>>22
本当に。いい詩だ。
柔らかな関西の言葉も繊細で綺麗。

25 :Mana魔名:2009/02/28(土) 02:54:26 ID:l/fcy4zL
唄が聞こえる真っ赤な夜に、このまま俺は果てしない闇に融けるのか
おまえの頬を翳める白い息が、そのまま雨の雫に吸い込まれていく
うろ覚えのフレーズに合わせて、俺は譜面に音符を書き加えていく
かすかに見える灯りが、ひとつふたつみっつと増えて、真紅に照らす
蔑みのポーズで誘うGO GO GIRLと憐れみの言葉で拒むNO NO BOYが
もつれながら愛し合うような、昔のフランス映画みたいな景色の中で
うっとりと夢見がちなBOYS&GIRLS ゆっくりと水の底へ飛び込んだ
かわいい折り畳みの羽根は水玉模様 濡れながら見る夢に浮世色めく
共通項はアンブレラ、逆さ吊りのペテン師と小悪魔なおまえのことさ
感覚が剥き出しになるような、一杯蕩けるカクテルと恋をしたくて
しっとりと濡れた唇に黒い花束を頂戴 ・・・だなんて冗談じゃないよ
ようやく見つけた最高の死に場所は、生憎もう定員オーバーだから
うまく踊れもしないワルツでは、あのステージにも立てはしないさ
か細いおまえの腕を掴んで、俺は許しのキスをひたすらに請い続けた

26 :呼ばれた気がした ◆AI/////3TQ :2009/03/08(日) 23:59:03 ID:KZ/It3Qb
労働に隷属されて思考停止した夢を
空白に埋もれた遺書が呼んでいるよ
廃墟の理想主義は ノスタルジー・エゴ

魔法を諦めたシンデレラが
手首を切って笑ったよ
腐ったカボチャの臭いは ノスタルジー・エゴ

儚さは 幼さは 切なさは 命の美しさ
たとえ存在した事に意味がなくても
変わらないもの 壊れないもの 終わらないものを求めるなら
それは きっと生きてさえいないものだよ

誰も望まなかった場所で 何もかも許す事ができたなら
全てが始まった終わりに帰ろう

27 :名前はいらない:2009/03/10(火) 09:28:56 ID:ELLoO+52
去年の落ち葉を吹き寄せながら軒深く山寺の春

28 :名前はいらない:2009/03/10(火) 09:30:30 ID:ELLoO+52

誤爆

29 :名前なし:2009/07/10(金) 21:29:30 ID:ZRxkYhXg
1 精肉王ピーアポント・モーラーはニューヨークの友人から手紙を受け取る。

シカゴ、屠場。

30 :名前なし:2009/07/10(金) 21:30:48 ID:ZRxkYhXg
モーラー  (手紙を読んでいる)
        「親愛なるピーアポント君、ここ数日来、
        食肉市場が全くどうにも行き詰ってしまっているということが
        はっきり認められる。南部の関税の壁は、我々全ての攻撃にもびくともしない。
        こういう情勢からいって、肉の商売から手をひくのが得策のようだ、ピーアポント。
        今日私はニューヨークの親しい友人からこういう指示を受けた」
        おや、俺の共同経営者が来たぞ。(手紙を隠す)
クライドル  どうしてそんな陰気くさい、顔をしてるんだピーアポント。
モーラー  覚えてるかい、クライドル、に、三日前のことだった---
       俺たち二人で屠蓄場を、通りかかった晩のこと---
       まだ新しい屠蓄機の そばまで寄って行っただろ
       覚えてるかい、クライドル、ブロンド色の大牛が
       空を見上げてのっそりと 立ってるところに一撃を
       喰らってたろ、あの時にゃ、自分がやられた気になった
       ああクライドル、俺たちの 商売ときたら血腥い。
クライドル  またぞろ例の弱気かい、ピーアポント?
        全く俺には信じられん。肉屋の巨人の 君たるものが、
        屠場の王者の君がだよ、屠蓄機械におぞけをふるい、
        たかが一匹、ブロンドの牛で、心を痛めてしょぼたれるとは!
        しかしいいかね、この僕以外は、誰にも弱音は もらすなよ。
モーラー  ああすまないな、クライドル!
       全く俺は屠場なんかを 覗いて見なけりゃよかったんだ!
       この商売に俺が手を 染め出してから七年てもの
       屠場行きは避けてきたのに。もうおしまいだ、クライドル
       やっていけない、今日中に やめるぞ、この血腥い商売は
       引き受けてくれ、俺の持ち株、君には安値で譲るから。
       出来ることなら君がいい。なぜって君ほどこの仕事に
       ぴったりはまった人物は、他には見当たらんからな
フライドル  安値ってえと?

31 :名前なし:2009/07/10(金) 21:32:04 ID:ZRxkYhXg
モーラー  昔からの 君と俺との仲ならば
       長い駆け引きもいらんだろう
       小切手で千万切りたまえ!
クライドル  レノックスさえいないとすりゃあ、高くはないといえるんだがね。
        あいつときたら 俺たちと どの缶詰でも張り合って
        ダンピングして 俺たちの 市場を荒らす奴だから
        あいつがくたばらないうちは、こっちが くたばらされちまう
        君しか倒せる者はない。奴が倒れぬうちはまだ
        機略縦横の君の頭を、使ってもらいたいもんだ。
モーラー  いやいやクライドル、もう駄目だ、哀れな牛のあの呻きが
       俺の胸から離れない。だからこそ今早いとこ
       奴を倒すが先決だ、なぜって今はこの俺は
       もう食肉業は廃業し 善人として暮らしたいのだ。
       さあクライドル、来いよ俺が
       君に打つ手を教えよう、レノックスの参る手を。
       でも参らせた その時は
       俺の仕事を引き継げよ、この商売は俺にはたまらん。
クライドル  レノックスさえくたばりゃあな!

(二人退場)

32 :名前はいらない:2009/07/10(金) 21:34:11 ID:Y5/9boor
いつも何してんの?

33 :名前なし:2009/07/10(金) 21:34:24 ID:ZRxkYhXg
2 大缶詰工場の没落

レノックスの精肉工場の前。

34 :名前なし:2009/07/10(金) 21:35:33 ID:ZRxkYhXg
労働者たち  俺たちは レノックス 精肉工場の 七万の労働者だ。その俺たちは
         こんな僅かな 賃金じゃ もう一日も この先 暮らしては いけないぞ。
         昨日はまた 給料が 突然 大幅に どかんと 引き下げられた。
         今日になると いまいましい またこんな 忠告が 張り出して あるじゃないか。
         うちの社の 給料に 満足が できなけりゃ 誰でもやめろと 言ってやがる。
         どうだ いっそのこと 俺たちみんな こっちから さっさと やめちまい、
         毎日 安くなる 賃金なんか、 糞食らえだと 言ってやったら。

(静寂)

労働者たち  ずっと前から こんな仕事は 俺たちゃ嫌気が さしてたんだ。
         工場何てなあ まるで地獄だ。 まだ俺たちが
         この工場に 縛られてるのは そりゃあただ
         冷たいシカゴの 恐ろしい 恐怖のせいだ だが今は
         十二時間も 働いたって
         コッペパンさえ 買えやしないし
         安いズボンも 手に入らぬ。 だとすりゃあ
         工場やめて ここを出て
         くたばったって 同じことだ

(静寂)

労働者たち  奴らはなぜ 俺たちを引き留めるんだ? この俺たちが
         牡牛同様 何をされても ぽかんと黙って 立ってるとでも
         思ってるのか? 俺たちは一体
         奴らの玩具か? それならいっそ くたばろう! さあ今すぐ
         出て行こう。

(静寂)

労働者たち  もうかれこれ 六時にならあ。
         なぜ開けねえんだ 搾取者め?
         牡牛が外で お待ちかねだ 肉屋め、開けろ!

(彼らは叩く)

         俺たちなんか 覚えちゃいねえか?

(哄笑)

35 :名前なし:2009/07/10(金) 21:59:07 ID:ZRxkYhXg
労働者たち  開けろ! 俺たちゃ
         入りてえんだ
         この汚っねえ穴蔵に 罪に穢れた調理室に入りてえんだ!
         血まみれの肉を 金持ちが
         食えるように ボイルするんだからさ。

(静寂)

         少なくとも 俺たちは要求する
         以前の賃金を、あれだって多いとはいえねえが。少なくとも
         要求する、十時間労働、少なくとも……
一人の男  (通過する)一体何を待ってんだい?
        知らないのかいレノックスが すっかり工場を閉めたのを

(新聞売りの少年、舞台を横切っていく)

新聞売り子  牛肉王レノックス工場を閉鎖! 七万の労働者失職、M・L・レノックス、
         精肉王として名だたる慈善家ピーアポント・モーラーとの激しい競争で犠牲となって倒れる。
労働者たち  ああ、酷いぞ!
         地獄でさえも俺たちにゃ
         扉を閉ざして しまったか!
         もうおしまいだ 俺たちは。冷酷無残なモーラーが
         うちの搾取者を締め上げた。
         そのとばっちりで俺たちが もう息も吐けない!

36 :名前はいらない:2009/07/10(金) 22:00:17 ID:Y5/9boor
教えてよ

37 :名前なし:2009/07/10(金) 22:00:29 ID:ZRxkYhXg
P・モーラー

街路。

新聞売り子  シカゴ・トリビューン正午版! 精肉王の慈善家ピーアポント・モーラー、世界最大のデラックス病院、モーラー病院の開院式に列席!

(モーラー、二人の男と通りかかる)

通行人  (もう一人の男に)あれはモーラーだが、一緒の男は誰だい?
もう一人の男  あれは私服刑事だ、用心棒みたいなもんさ、あいつ闇討ちを食いかねねえからね。


屠場の悲惨に慰謝を与えるため、救世軍黒麦藁帽隊は、伝道本部を出発する。ヨハンナの深みへの墜落の第一歩

伝道本部の前。

38 :名前なし:2009/07/10(金) 22:01:45 ID:ZRxkYhXg
ヨハンナ  (黒麦藁帽隊遊撃隊の先頭に立って)
       血腥い混乱の支配するこの暗黒の時代に
       無秩序が秩序正しく
       したい放題のことが計画的に行われ
       人間が非人間になったこの時代に
       私たちの町でも騒動が絶えず
       まるで屠場のような世の中に、
       暴動の危機迫るという噂に我ら使命を感じ
       目先のきかない民衆が乱暴な暴力を奮って
       自分たちの道具を打ち壊し
       自分にパンを与えてくれる仕事場を踏みにじらぬように
       私たちは再びこの世に、神をお迎えしましょう。
       その名も忘れられようとし
       悪口さえ言われ
       現実の生活の場には
       容れられなくなってしまった
       神様を。
       本当は神様こそ、どん底の人たちの唯一の救いです。
       だから私たちは神のために
       太鼓を打ち鳴らそうと決心しました
       神様が貧民街にも根をおろされ、
       神の声が屠場にも響き渡るように。
       (黒麦藁帽隊員たちに)そして私たちのこういう行動は、
       きっとこれが最後なのです。この堕落した世の中に
       しかも下層の人たちの手によって、今一度神を蘇らせる
       最後の行動だと思います。

(太鼓の響きとともに行進を続ける)

黒麦藁帽隊は朝から晩まで活動を続けたが、夜になっても成果は何もないと言ってもよかった

39 :名前なし:2009/07/10(金) 22:05:23 ID:ZRxkYhXg
レノックス精肉工場の前。

一人の労働者  奴らはまた家畜市場で、相変わらず取引をしてやがる。こいつが済むまでは俺たちの空きっ腹にもお引取り願ってなきゃいけねえんだ。
もう一人の労働者  会計課にゃ明かりがついてるぞ、儲けをはじいてやがんだ。

(黒麦藁帽隊がやってくる。「一泊二十セント」「コーヒーつき三十セント」「ソーセージ十五セント」などと書いた立看板を立てる)

黒麦藁帽隊  (歌う)
         目をとめよ!
         我らは見る、深みに落ちゆくものを。
         我らは聞く、救いを求める叫びを。
         我らは見る、救いの手を求める者を。
         車をとめよ、足(交通)をとめよ!
         落ちゆくものよ、勇気を持て!
         我らは来たり、目をあげよ!
         破滅に沈みゆく者よ、我らを見よ、おお、我らを見よ!
         破滅に沈まぬそのうちに、
         我ら生ける糧をもたらしぬ。
         我ら忘れず
         戸口の外に立てる人のあるを。
         救いは来たらずと言うなかれ、
         いまや時は変わりたれば。
         なべてもの我らとともに来たり進め
         さればこの世に不正は消えなん。
         いっさいを抛ちて、救いの道を歩め。
         我らタンクにうちまたがり、
         大砲と飛行機を差し向け
         海に軍船を進めん、
         汝ら同胞の一皿のスープをかちえんために。
         汝ら貧しき人々は
         大いなる軍勢なり。
         さればこそ今日の日にも
         なべてもの汝らに味方すべし。
         いざ進め! 立ち上がれ!
         我らは来たりぬ、沈みゆく者よ、
         目をあげよ!

(黒麦藁帽隊は歌いながら彼女らの伝道文書「閧の声」と匙と皿とスープを分ける。
労働者たちは「ありがとう」と言いながら、ヨハンナの演説に耳を傾ける。

40 :名前なし:2009/07/10(金) 22:07:42 ID:ZRxkYhXg
ヨハンナ  私たちは神様に仕える兵士なのです、
       この帽子のために、黒麦藁帽隊とも呼ばれております。
       私たちは太鼓を打ち鳴らし、旗を掲げて、
       不平が高まってい暴力行為の危機が迫る所に進軍し、
       忘れられている神を思い起こさせ、全ての人の心に神を取り戻させるのです。
       私たちは自らを兵士と呼んでおります、一つの軍隊であり、進軍して犯罪と戦い、
       貧困と戦い、われらを天国から引き離そうとするあらゆる力と
       戦わなければならないからであります。(自分でもスープを分け始める)
       さあ、温かいスープを召し上がってください。
       そうしたら、また何もかも違った風に見えてきます。
       でも、あなた方にスープをお恵み下さった方のことも、
       少しはお考えになってください。
       そうしてよくお考えになれば、地上ではなく、天上で努力することこそ、
       全ての解決なのだということが、お分かりになりましょう。
       天上において自分の占める場所を求める、この地上でではありません。
       天上で第一の者たらんとする、地上でではありません。さ、もうお分かりでしょう。
       地上の幸福などどれほど頼りになるものでしょうか。全然頼りにはなりません。
       不幸は雨のようにやってくるのです。誰が創るのでもありません、
       でもやってくるのです。あなた方の不幸は、誰が創るのでしょうか?
スープを飲んでいる者  レノックス株式会社だろ。
ヨハンナ  今、レノックスさんは、多分あなた方以上に心配しておいでです。
       一体あなた方は何をなくすというのです? あの方の方は数百万の財産をなくすのですよ!
一人の労働者  このスープにゃあ、脂肪がちょっぴり浮かんでるだけ、しかし健康的で水気たっぷり、熱さだけはけちけちしてねえや。
もう一人の労働者  黙ってろよ、減らず口叩くんじゃねえ! そのありがてえお言葉をきいてろ! スープを取り上げられちまうぜ。
ヨハンナ  静かになさってください! 皆さん、なぜ皆さんは貧しいのでしょう?

41 :名前なし:2009/07/10(金) 22:47:02 ID:ZRxkYhXg
一人の労働者  そうよ、そいつを教えてもらいてえもんだな。
ヨハンナ  私は皆さんに申し上げたいのです。
       皆さんが貧しいのは地上の富に恵まれていないからではありません---
       誰もが恵まれているわけにはいかないのです---
       皆さんは、より高いものがお分かりでないから、だから貧しいのです。
       あなた方が手に入れようとしている低級な楽しみ、例えば、この僅かな食事、
       こぎれいな住居、映画、こういったものはうわべの感覚のたのしみにすぎません。
       しかし神の言葉はずっと内面的な妙なる心の楽しみなのです。
       きっとあなた方は生クリーム以上に甘美なものは考えられないのでしょう、
       でも神の言葉はもっと甘美なのです。本当に甘美なのです、神の言葉は! 
       ミルクのようにです、蜂蜜のようにです。
       神の言葉とある時、私たちは、黄金の宮殿、
       大理石の御殿に住むことが出来るのです。
       皆さん、信仰の薄い方々、空の下の小鳥たちには職安は要りません、
       野の百合は仕事を必要としません、それでも神は彼らを養ってくださるのです。
       彼らが神を称えるからなのです。
       あなた方はみんな、上へ上へと昇って行きたいと思っていらっしゃいます、しかし、
       上とは何かが問題です。またその昇り方も問題です、
       そこで、私たち救世軍はあなた方にお尋ねしたいのです、上に昇って行くためには、
       人は本当は何を持たなくちゃならないのでしょうか?
労働者  ハイ・カラーだよ。

42 :名前なし:2009/07/10(金) 22:48:17 ID:ZRxkYhXg
ヨハンナ  いいえ、ハイ・カラーではありません。
       この地上で出世をするためにはハイ・カラーが必要かもしれません。
       しかし神の御前では、もっともっとそれ以上のものを、
       全く別の輝きを持たなければならないのです。
       しかし、あなた方はゴムの代用カラーさえも持てませんよ、
       人間の心を放り出してしまったからです。
       でも、一体皆さんは、どうやって上へ上がろうとおっしゃるのです。
       「上に上がる」ということを、皆さんの間違った頭でどう理解していらっしゃるのですか? 
       皆さんは暴力によって上に上がろうとしておいでです! 
       暴力が、破壊以上のものを生むとお思いのようですね! 
       皆さんは、反抗すればこの地上に天国が生まれると信じていらっしゃいます。
       でも、私は申し上げます、それでは天国どころか、混乱が生まれるばかりです。

(一人の労働者が走ってくる)

労働者  仕事の口がたった今
      一つ開いたぞ あそこだぜ!
      第五工場の会計が そっと教えてくれたのさ。
      便所の穴みてえな口だけどよ。
      行ってみよう!

(三人の労働者はスープのいっぱい入っている皿を置いて走り去る)

ヨハンナ  もしもし皆さん、どこへ行くんです? 神様のお話をしているんですよ! 聞きたくないんですか! どうしたの!
救世軍の一人の女  スープがなくなったわ。
労働者たち  スープはおしめえだとよ。
         脂肪のねえ、ちょっとばかりのな。
         そいでも何もねえよりはましだったけどな。

(一同、背を向けて立ち上がる)

43 :名前なし:2009/07/11(土) 00:53:51 ID:G6HUcp7U
ヨハンナ  そうですか、まあ座っていらしてください、損はさせませんよ。天国のスープはなくなりはしないのですから。
労働者たち  全く一体いつになったら
         屠場を開けてくれるのかい、
         あの人殺しどもめ!

(労働者たちは幾つかのグループを作る)

一人の男  俺のあばらやの支払いは、一体どうしたらいいんだ、
        月割りで十七回払いをすませ 最後の支払いの期間がきたが、
        払えなきゃ往来におっぽりだされる。
        とすりゃあ ぺんぺん草の生えた踏み慣れた床も
        二度とお目にはかかれねえ 吸いなれた濁った空気も
        二度と吸い込むことはできねえ。
第二の男  (ある輪の中で)俺たちゃシャベルのような手をぶらさげ
        トロッコみたいな首筋をおっ立て
        この手と首の買い手のつくのを待ってるが
        誰も買っちゃあくれねえんだ。
労働者たち  そして俺たちの道具といえば 山のような
         蒸気ハンマーもクレーンも
         みんな塀の向こうに閉じ込められてらあ!
ヨハンナ  まあ、一体どうしたのです? みんなさっさと背中を向けて行ってしまうの! 
       さあ、皆さん食事はお済み、たっぷりあがりましたか、ありがとう、
       なぜ皆さん、今まで私の話を聞いてくださったの?
一人の労働者  スープのためさ。
ヨハンナ  さあ出発です、歌いましょう。
黒麦藁帽隊  (歌う)
         戦の庭に進まん 激しさたける戦場に!
         いざ歌わん、力もて! 夜はまだ明けず!
         されど必ず朝は来たらん!
         やがて汝がもとに来たらん 主イエス・キリストは。
後ろからの声  モーラーんとこにまだ仕事があるぞ!

(労働者たちは若干の女たちを残して去る)

44 :名前なし:2009/07/11(土) 00:55:20 ID:G6HUcp7U
ヨハンナ  (元気をなくして)さあ楽器をまとめましょう。スープが
       なくなるとあの人たちは行ってしまったわね!
       お皿の縁の高さまでしか
       何かを求めて腰を上げない人たち。
       手に取ってみなければ
       何も信じようとしない人たち---自分の手だけは信じてるけど。
       一刻一刻を不安に生きながら
       地上のどん底から今はもう
       立ち上がろうともしないのね。
       飢えだけがあの人たちの相手なのです。
       歌を聴いても感動せず、深い心の奥底には
       どんな言葉も届かない。

(周りに立っている人たちに向かって)
       私たち救世軍は、飢えている地球の一部を、
       このちっぽけなスプーンで満たそうとしているようなものかしら。

(労働者たち戻ってくる。遠くから叫び)

労働者たち  (前の方で)一体なんて叫びだ。屠場の方から人の大波が流れてくるぞ!
声  (後ろで)モーラーとクライドルも工場を閉鎖したんだ!
   モーラーの工場も締め出しを食わした!
戻ってくる労働者たち  仕事を探しに走っていくと、その途中で俺たちは
               打ちひしがれた連中の大群にぶつかった。
               みんな仕事をなくし、
               こっちに仕事口はないかってんだ。
一人の労働者  (前の方で)ひでえぞ! あそこからも行列だ!
           どこまで続いてるかも分からねえ。モーラーも工場を閉めた。
           俺たちゃどこへ行ったらいいんだ?
黒麦藁帽隊  (ヨハンナに)行きましょう。すっかり濡れて冷え込んだわ 食事の時間よ。
ヨハンナ  こんな酷いことが、一体誰のせいなのか、私は知りたい。


45 :名前なし:2009/07/11(土) 00:56:34 ID:G6HUcp7U
黒麦藁帽隊  よしなさい! 関わり合わない方がいいわ!
         あんな連中はあんたの耳に、たっぷりいろいろなことを吹き込むわよ。
         あの人たちは怠け者、低い欲望だけに捕らわれている連中よ!
         大食らいで仕事嫌い 生まれた時から高級な
         心の望みをもたない人よ!
ヨハンナ  いいえ、私は知りたい。

         (労働者に)さあ言ってください、なぜ皆さんは、
         そんなに駆け回ってもちっとも仕事がないんですか?

労働者たち  血も涙もないモーラーが がめついレノックスと戦ってる。
         そのお蔭で俺たちは飢えてるんだ。
ヨハンナ  そのモーラーはどこにいるの?
労働者たち  あそこだ、家畜の取引される、
         大きな建物、家畜取引所だ。
ヨハンナ  そこまで行ってみるんだわ、だって
       知らなきゃいけないもの。
マルタ  (救世軍の一人)
      関わり合うのはおよしなさい! 沢山質問をする人は
      沢山答えを与えられるだけよ。
ヨハンナ  いいえ、こんな悲惨の張本人のモーラーという人に、私は会ってみたいの。
黒麦藁帽隊  そんなことをしたら、あなたのこれからの運命は酷いことになるのよ、ヨハンナ。
         この地上の諍いに、関わり合ってはいけないわ!
         争いに首を突っ込んだりすれば、きっと巻き込まれてしまうわよ!
         純粋さはすぐ汚されて ほんの僅かな暖かみも
         全てを支配する寒さにあって消えてしまうわ。
         暖かく包んでくれる暖炉の側から離れていくものは善良さもなくしてしまう。
         こうして一段一段と
         与えられない答えを求めて下へ下へと堕落していき、
         すっかり汚れに染まりきってしまうのよ!
         際限なく疑問を持って口を開く人たちは
         いつかは汚れに穢されて、埋められてしまうのよ。
ヨハンナ  私は知りたい。

(黒麦藁帽隊去る)

46 :名前なし:2009/07/11(土) 01:08:30 ID:G6HUcp7U
3 ピーアポント、モーラーは別の世界の息吹を感じる。

家畜取引所の前。

(下ではヨハンナとマルタが待っている、上では精肉業者レノックスとグレイアムが話をしている。レノックスは真っ青な顔。奥から株式市場の騒音)

47 :名前なし:2009/07/11(土) 01:09:32 ID:G6HUcp7U
グレイアム  無法者のモーラーに こっぴどい目にあったなあ
        なあ善人のレノックス! あの怪物がのしだすと
        こいつはもうとめどがねえ。あいつにゃ
        自然も武器、空気も売り物ってな具合。
        こっちがぽんぽに入れちゃったものさえ 二度売りしようってな奴だ。
        崩れた家から家賃を取り、腐っちまった肉も金にする。
        あいつに石をぶつけてみな、
        石まで金にすること請け合いだ。
        これほどきゃつの金の執念は止所がねえ、あんまり正常にこういう非常を持ち合わせてるので
        あいつ自身もこういう自分の衝動を
        抑えることができねえんだ。何故って、なあいいかい、
        あいつ自身は弱気で 金が嫌いときてる
        悲惨なことは見ちゃおれず 夜も眠れないありさまだ。
        だからあいつに近づいて 苦しそうに声を押しつめ
        こう言わなきゃ駄目だ、「モーラー、俺のざまを見な、
        俺の首の根っこから お前の手を離してくれ、
        お前の老後のことも考えな!」とね
        保証するが、あいつはたまげて ひょとしたら泣くかもしれねえ……
ヨハンナ  (マルタに)あんただけがマルタ、一緒に来てくれたのね、ここまで。
       他の人たちはみんな私を見捨てて行ってしまった まるで私が
       とんでもないことでもするかのように、警告の言葉を口にしながら
       おかしな注意だったっわ、あれは! マルタ、あなたにお礼を言うわ。
マルタ  私もあなたに警告したわ、ヨハンナ。
ヨハンナ  それでも一緒に来てくれた。
マルタ  でも、あなたにあの人が見分けられて、ねえヨハンナ?
ヨハンナ  きっと見分けてみせるわよ!

(クライドル、上の方に姿を現す)

48 :名前なし:2009/07/11(土) 11:18:10 ID:+PlrRGMx
クライドル  さあ、レノックス、もうこれで 値下げ競争もおしまいだ。
        お前が破産したからにゃ、こっちもしばらく店を閉じて
        市場の回復を待つってわけさ。俺の屠場を綺麗に洗い
        刃物にゃすっかり油をくれて 例の全く新式の
        機械を数台注文しよう、こいつを使ってみりゃ
        相当額の賃金も 出さずに節約できるわけだ。
        こいつは新しいシステムだ、全く巧妙きわまりねえ。
        スチール線のベルトに乗って 豚は運搬されていき
        一番上の階まで来ると、そこで屠蓄が始まるわけだ。
        ほとんど誰の助けも借りず 豚は一人で刃物の中に
        身投げするって寸法さ、素敵じゃないか、豚が自分で
        自分を屠るんだぜ。進んで腸詰になってくださる。
        何故って、こいつが上から下へ 一階一階と下りて行くうちに
        肉と皮とは泣き別れ 皮はレザーに変えられる。
        皮と分けられた豚毛からは 立派なブラシの出来上がり
        骨は捨てられて粉になる。肉だけがおのれの重味で
        下の缶目指して落ちていくんだ。
        素敵じゃないか。
グレイアム  結構だが ただね、その缶詰の行く先は?
        酷い時代だ!
        市場は荒れ果てて 商品はだぶついている。
        あんなに景気を誇った商売も 今はすっかりへたばった。
        とっくに商品で溢れんばかりの 市場を奪い合って君たちは
        お互いに価格を引き下げて 底値も割るというありさまだ。
        まるで水牛が草を取り合って戦ったあげく
        大事な草を踏み潰しちまうようなものだ。

(モーラーが彼の仲買人スリフトと一緒に、肉缶詰製造業者の一群の間から出てくる、彼の後ろには二人の私服刑事)

49 :名前なし:2009/07/11(土) 11:19:50 ID:+PlrRGMx
缶詰製造業者たち  はたして誰が生き残るか、こいつが目下の問題だ。
モーラー  レノックスはくたばった。(レノックスに)お前はおしまいだ、観念しろ、
       そこで今度はクライドル、お前にお願いしたいのだ
       レノックスが潰れたからには、契約書にも載ってる通り
       屠場を引き受けてくれないか。
クライドル  なるほど、レノックスはくたばった。しかし市場の
        よき時代も 終わりを告げたことになる
        だからさ、君もなモーラー
        君の株の代金の、千万ドルは値引きだぜ。
モーラー  何だと? この契約書にゃ
       価格がちゃんと記してある! ほらこれが、レノックスだ
       このれっきとした契約書と価格をよく見てもらいたい。
クライドル  なるほど、よき時代に結んだ契約書だ!
        しかし異常な不景気のことは この契約には書いてない
        いまさら俺がこの屠場を 一人で抱え込まされた挙句
        肉は一缶も売れんとなりゃ こっちも途方に暮れちまあ。
        やっと俺にも分かったぞ、お前が牛の殺されるのを見ちゃいられなくなったわけが、お前の肉がさ、
        ちっとも売れなくなったせいだな!
モーラー  違う、そいつは俺のハートが
       哀れな牛の呻きを聞いて、すっかり逆立ちしたためだ!
グレイアム  いやはや、何たる善人だ、今こそ俺は君って男の
        行為の偉大さがよく分かったよ、全くね、君はハートを使っても
        見通しをきかすって御仁だぜ。
レノックス  モーラー、僕はもう一度、君と話し合いを……
グレイアム  こいつの心の琴線に、触れてやるんだレノックス!
        全くこいつのハートときたら、情には脆いごみの穴だ!

(彼はモーラーのハートを突く)

モーラー  いて!
グレイアム  どうだ! ハートはちゃんとある!
モーラー  やったな、フレディ、よし、俺は クライドルと取り決めをして
       今後君から缶詰は 一切引き受けないようにしてやる、
       俺を殴ったりしたからな。

50 :名前なし:2009/07/11(土) 11:21:53 ID:+PlrRGMx
グレイアム  そいつはいけない、ピーアピィ! プライベートな事柄と商売を混同するってもんだぜ。
クライドル  いいとも、ピーアピィ、望むところだ。君のお望みに委したまえ。
グレイアム  うちの二千の労働者、こいつをどうしてくれるんだ、モーラー!
クライドル  なあに映画に行かせればいい! でもなピーアピィ、俺たちの契約は無効だよ。
        (手帳を開けて計算する)君の退陣について契約を交わした時には、
        君と僕が同じ三分の一を持っていた持ち株の値は、三百九十だった。
        そいつを君は僕に三百二十で譲った、当事なら安値だ。
        しかし今日日じゃ酷い高値さ、
        市場が手詰まりで株価は今は百ってありさまだからね。
        君に支払いを済まそうとすれば、
        俺の持ち株をすっかり市場へ売り飛ばさなきゃならん。
        こうすりゃ株価は七十に下がる、
        そうやって作った金で君に支払いが済ませると思うか? 俺は破産しちまうよ。
モーラー  そいつを君に聞いたからには、クライドル、俺はもう今すぐにも
        君がくたばっちまう前に 俺の金だけは絞っておくぞ!
        いいかい、クライドル、俺は全く仰天して
        いっぺんに汗が噴出した、せいぜい君にやれる期間は六日だね、
        いや待てよ、五日だ、君がそんな具合ならね。
レノックス  モーラー、俺のざまを見てくれ!
モーラー  なあレノックス、この契約書に、不景気な時代のことまで書いてあるかい?
レノックス  書いてないさ。

(レノックス、去る)

モーラー  (彼を見送る)どうやらあいつ身も心も、悩みに打ちひしがれたようだ。
       ところで俺は商売に夢中で そいつには気がつかなかった。
       全くあこぎな商売だ! 畜生道だよビジネスは!
       俺は嫌気がさしてきたよ、クライドル。

(クライドル退場。ヨハンナはその間にモーラー付きの刑事の一人に合図して呼び寄せて彼に何かを伝えていた)

51 :名前なし:2009/07/11(土) 11:23:06 ID:+PlrRGMx
刑事  ミスター・モーラー、あなたと面会したいって者が何人かおりますが。
モーラー  何だと、やくざ野郎めか? 羨ましそうな面してさ、
       それに暴力を使うんだろ? 俺は面会はご免だぞ
刑事  黒麦藁帽の団体の方が二、三人見えています。
モーラー  一体何の団体だ、そりゃ?
刑事  組織はかなり複雑に拡がっており、多数を擁しています。下層の奴らの間にもよく出向いているようで、神様の兵士と呼ばれています。
モーラー  ああそいつらの話なら、俺も聞いたことがあるよ。変な名前だな、
       神様の兵士だって……しかしね、俺に何の用があるんだ?
刑事  あなたとお話があると言っています。

(その間にも取引所の騒音は続いている、牡牛43、豚55、牛59など)

モーラー  よかろう、連中に会いたいと言ってやっても構わん。
       しかし連中に条件として、私が何か訊くまでは
       向こうからの発言はいっさい許さんと伝えてくれ。
       涙に訴えることも、歌を歌うのも厳禁だ、
       とくに哀れっぽい歌はいかん。
       私が連中に会ったあとで[なるほど気のいい連中だ、
       別に退ける必要もないし、
       俺に無理な要求なんかしそうにない」と考えたら、連中にとっても得になるのだ。
       ああそれからまだあった、わしがモーラーだってことを奴らに言っちゃならないぜ。

(刑事はヨハンナの方に行く)

刑事  会ってくださると言ってるよ、ただね
     何も尋ねちゃいかんそうだ、あの方が何か尋ねたときだけ
     お答えする約束だ。

(ヨハンナ、モーラーに向かっていく)

52 :名前なし:2009/07/11(土) 11:25:33 ID:+PlrRGMx
ヨハンナ  あなたがモーラーさんですね!
モーラー  おっとこいつは人違い。(スリフトを指して)あの方だよ。
ヨハンナ  (モーラーを指して)あなたがモーラーさんですよ。
モーラー  違う、あの方だ。
ヨハンナ  あなたです。
モーラー  どうして私だってことが分かった?
ヨハンナ  血まみれの顔をしているから。

(スリフト笑う)

モーラー  おかしいのか、スリフト?

(グレイアム、その間に姿を消す)

モーラー  (ヨハンナに)一体君らは日当に、一日いくらもらえるんだ。
ヨハンナ  二十セント、その上に、衣食住は支給されています。
モーラー  ぺらぺらの服だなあスリフト、スープも水っぽいんだろ、え?
       なるほど、服が薄っぺらで スープが薄くても構わんてんだな。
ヨハンナ  なぜ、モーラー、労働者を 締め出しちゃったりなさるのです?

53 :名前なし:2009/07/11(土) 12:18:54 ID:+PlrRGMx
モーラー  (スリフトに)一文の儲けにもならんのに、働く奴がいるとは驚きだ。
       こんな話があろうとは、一度も聞いたことがなかった。
       無償奉仕をしてるのに
       ちっとも悩みがなさそうだ。
       こいつらの目を見てみろよ、本当にまるっきり
       惨めな暮らしを恐がっちゃいない。
       (ヨハンナに)君たち黒麦藁帽隊は、全くおかしな連中だなあ。
       私はここで君たちに、わしから何をお望みか、
       聞きやしないさ。何しろ私は---馬鹿なごろつきどもから---
       血塗れのモーラーと言われてることは知ってるからね、
       あのレノックスの事業を奪い、俺たちの同業仲間では
       あの善人のクライドルにも酷い仕打ちをやってのけたと、どうせ言われてるんだよ。
       あんたたちにはこう言おう、こいつはみんなビジネスで
       君らに面白い話じゃない、だけども別の話というなら
       あんたらのご意見も伺いたい。私はこんな血腥い
       ビジネスはすぐにでも止める気なんだ それも一切合財だよ。
       ついこの間だ、この話は きっとあんたらにも面白かろう。
       私は見たんだ牛の処分を これが大変なショックでね、
       いっさい抛り出したくなったのさ、工場の持ち株にいたるまで
       売り払ったよ。額面は 一千二百万ドルなのに、
       そいつをたったの一千万で。それでも君らは私のことを
       正しいと思っちゃくれないかね、君たちの心に叶っていると?
スリフト  この人は牛の死ぬのを見て
       かわいそうな牛の代わりに
       憎い金持ちのクライドルを、殺す決心をしたんだよ。
       これが正しいことかねえ?

(缶詰製造業者たち、笑う)

54 :名前なし:2009/07/11(土) 12:20:18 ID:+PlrRGMx
モーラー  おかしけりゃ笑うがいいさ。お前らが笑ったってこっちは痛くも痒くもねえ。そのうちに泣きっ面かくことになるさ。
ヨハンナ  モーラーさん、一体どうしてこの屠場を 閉鎖しておしまいになったのです? そのわけを伺いましょう。
モーラー  このわしはね、でかい商売から手を引いた。
       それもそいつが残酷だからこそだ、こいつは大したことではないのかね?
       いいことだ、気に入ったとは、言っちゃくれんのかね?
       いやわかっとる、言わんでもいい、そのお蔭で不幸になった人もいる。
       口をなくした連中もいるってことは認めるよ、残念ながら避けられなかった。
       それによからぬ連中がいてね、この乱暴もののごろつきは
       もともと仕事には行きたがらない。
       それでもさ、わしが商売から手を引いたのは
       やっぱりいいことじゃないのかね?
ヨハンナ  まじめに聞いておいでなのかどうか、私には分かりません。
モーラー  このわしの嫌な声が 本心を言うことに慣れとらんので、
       そんなことを言われるんだ。あんたがわしを嫌ってることも
       だからわしにはよく分かる。何も言わないで結構だよ!
       (他の連中に)まるで別の世界から妙なる風がこの俺に、吹きつけてきたような気がするな。
       (みんなから金を集めて彼女に与える)
       さあ肉屋缶詰屋の諸君、募金だ、金を出したまえ!
       (彼は連中の懐から金を集め、ヨハンナに与える)
       貧しい人のために集めたこの金を、取ってください、娘さん!
       しかし覚えておいてくれよ、わしは義理など感じちゃおらんし
       夜もよく眠れるのだ。じゃあなぜ救いの手を差し伸べるか、
       あんたの顔が気に入ったせいだ、二十歳にもなろうってのに、
       まるでねんねえだからだよ。
マルタ  (ヨハンナに)あの人が正直に言ってるとは、とても信じられないわ。
      ごめんなさいね、ヨハンナ、私ももう行かなくちゃ。
      あなただってやっぱり、帰らなきゃいけないわ……
      本当にこんなことから手を引かなくちゃ!

55 :名前なし:2009/07/11(土) 12:21:29 ID:+PlrRGMx
(マルタ去る)

ヨハンナ  モーラーさん、でもこれじゃ本当に焼け石に水ってもんですわ。あの人たちを本気で救ってくださる気はないんですか?
モーラー  わしがあんた方の活動に 大いに賛成していると
       どこへ行っても言ってください。あんた方のような方が
       もっと増えてもらいたいとね。だけど貧乏人のことじゃ
       考え違いをしているようだ。
       奴らはよからぬ連中だ。わしは人間を見ても感動しない。
       人間は罪深くって人殺しみたいなもんだ。だけどな
       それはそれとしとこうよ。
ヨハンナ  モーラーさん、屠場ではみんなが、あなたこそこの悲惨の 張本人だと言っています。
モーラー  牛には大いに同情するが 人間の方はみんな性悪だ。
       あんたの計画に相応しいほど、人間はよくなっちゃいない。
       世界を変えるより前に、人間の方が変わらなくちゃ
       まあちょっと待ちな。
       (スリフトに小声で言う)あの娘が一人だけの時、内緒で金をやってみな!
       あの娘が恥ずかしがらずに、その金を受け取れるように、
       貧しい人にって言うんだよ。それからとっくり見物しな、
       どうせあんなはした金は、救いの役には立たないと思うが、
       役に立たねえと分かった時に、あの娘も自分のことに遣うだろう。
       そうしたら今度はこの屠場に、
       あの娘を連れて行ってやり、見学させてやるんだよ。
       貧乏人が性悪で、動物的で意気地がなく、仲間を裏切るのも平気なところを。
       見んな奴ら自身のせいだってことを。
       こいつはきっと役に立つぜ。
       (ヨハンナに)これがわしの仲買人のサリヴァン・スリフトってやつだが、あんたにこれから見学させてくれる。
       (スリフトに)だってなあ、おい、俺には全く堪えられんのだ、
       この娘のような連中が この世にいるっていうことが。
       黒麦藁帽の他は何も持たず、日給僅か二十セントで恐いもの知らずの連中だ。

(モーラー去る)

56 :名前なし:2009/07/11(土) 12:22:41 ID:+PlrRGMx
スリフト  (ヨハンナに)あんたが知りたいことが何か、別に俺は知る気はない。
       それでも何か知りたいなら明日ここまでやってきな。
ヨハンナ  (モーラーを見送る)あの人は決して悪人ではないわ、だってあの人は私たちの
       太鼓の響にすっかりおびえて、貧しい行いの渦巻きから飛び出してきました。
       天の叫びに耳を傾けた 最初の人は彼なんです。
スリフト  (去りかけながら)ほっときなよ、忠告しとくがね、屠場にいる連中とは関わり合わないほうがいいぜ、
       全く低級な悪党どもだからね、この世の屑って奴らなんだ。
ヨハンナ  その連中に会ってみたいわ。

57 :名前なし:2009/07/11(土) 12:41:09 ID:+PlrRGMx
4 仲買人のサリヴァン・スリフトはヨハンナ・ダークに貧乏人たちの性悪なところを見せてやる。ヨハンナはどん底への第二歩を進める。

屠場のある地区。

58 :名前なし:2009/07/11(土) 13:17:51 ID:+PlrRGMx
スリフト  さあ、ヨハンナ、お目にかけよう
       奴らがどんなに性悪か。
       あんたは同情してやってるが、
       奴らはそれには値しないぜ。

(工場の塀に沿って、二人は歩いていく。塀には「モーラー・アンド・クライドル缶詰工場」と書いてある。モーラーの名前は白いバッテンで消されている。門から二人の男が出てくる。スリフトとヨハンナは彼らの話を聞いている)

職工長  (若い労働者に)四日前だったかな、ラッカーニッドルって男が、ボイラーに落っこちやがってな、
      俺たちが機械を止めるのが遅かったもんだから、
      酷いことにベーコン製造工程に流されちまったんだ。
      これがそいつの上着だ、こいつが帽子だ。これをどっかに片付けてしまいてえもんだ。
      相変わらずこれだけは更衣室を一人分占領してるってのも嫌な感じだ。
      すぐにでも、燃やしちまうといいな、信用のできる男と思うから頼むんだぜ、
      こんなものがどこかで見つかろうものなら、俺の首は危ねえからな。
      工場が再開すりゃ、お前はラッカーニッドルの後釜には入れるんだぜ。
若い労働者  信用してください、スミスさん。

(職工長は門から戻って行く)

若い労働者  可哀想に、おっさんは今頃はベーコンに化けて世の中に出て行ってるんだろうな。
         だが、この上着は勿体ねえ、まだ使い物になるものな。
         ベーコン小父さんは今頃はブリキ缶の着物の中に収まってるから
         この上着には用はないってわけだが、俺の方はまだまだ使えるんだがなあ。
         構うことはねえ、こいつをもらっとこう。

(彼は上着を着、自分の上着と帽子を新聞にくるむ)

ヨハンナ  (よろめく)気持ちが悪くなってきたわ。

59 :名前なし:2009/07/11(土) 13:20:22 ID:+PlrRGMx
スリフト  これが世の中ってものだ。(若い労働者を引き止める)その上着と帽子は、どこから手に入れたんだ?
      そいつは事故にあったラッカーニッドルの奴のなんだろう。
若い労働者  その先は言わないでください、だんな。すぐに脱ぎますよ、あたしは酷く落ちぶれちまったんでさあ。
         実は去年、肥料会社だと手当てが二十セント余計だってのに釣られて骨粉会社に鞍替えしたんです。
         ところが、そこへ行ったら肺はやられ、結膜炎の酷いのに罹るって始末で、それ以来労働力もすっかり減退しちまいましてね、
         この二月から、二度しか仕事にありついてないんです。
スリフト  着物は脱がなくてもいい。お昼に七号食堂に来な。昼飯を食わせて、
      一ドル持たせてやるよ、ラッカーニッドルのおかみさんに、その帽子と上着の出所を言ってくれたらな。
若い労働者  そいつは酷すぎやしないかね、旦那?(ヨハンナとスリフトはさらに先へ歩いて行く)
ラッカーニッドルのおかみさん  (工場の門に座り込んで訴えている)
                    中に引っ込んでるお前さんたち、あたしの亭主をどうしたんだ?
                    うちの亭主は 四日も前に 仕事に出かけて いったままだ、
                    夜のスープを 温めとけと 言って出たまま 今日になるまで
                    ちっとも 帰っちゃ 来ないんだ!
                    あたしの亭主を どうしたんだ 人殺し!
                    あたしは 四日も ここでこうして 寒さの中を 立ってるんだよ、夜だって。
                    待てど暮らせど 返事がない、うちの亭主も 出てきやしない!
                    それでもあたしゃ へこたれないよ!
                    よくお聞き! このあたしは
                    亭主を返してもらうまで ここからどきはしないんだ、
                    うちの人に何かあったら ただじゃ済ませないからね!

60 :名前なし:2009/07/11(土) 13:21:58 ID:+PlrRGMx
(スリフトはおかみさんに近寄る)

スリフト  あんたのご亭主は旅に出たんだよ、ラッカーニッドルのおかみさん。
ラッカーニッドルのおかみさん  また旅に出たってことにしとくんだろう!
スリフト  あんたに話があるんだがね、おかみさん、ご亭主は旅に出たんだよ、
      あんたがこんなところに座り込んで馬鹿なことを言ってるのは、
      工場としてはまことに具合が悪いんだがね。だから、我々はあんたと話をつけたい。
      断っておくが法律的な義務はこっちにはないんだよ。
      ご亭主の行方を詮索するのを止めてくれたら、
      三週間お昼にうちの食堂で、無料で食事がもらえるようにしよう。
ラッカーニッドルのおかみさん  うちの人がどうなったか知りたいよ。
スリフト  フリスコへ出かけたといってるんだよ。
ラッカーニッドル  フリスコなんぞに行ったんじゃなくて、うちの人に何かあったんだろ、それで隠したいんだね。
スリフト  そう考えるんだったら、ラッカーニッドルのおかみさん、工場の食事をあげるわけにはいかんね、
       それどころか、あんたを訴えなきゃならんぜ。明日食堂にきてくれれば、会ってあげるぜ。

(スリフトはヨハンナの所へ戻って来る)

ラッカーニッドルのおかみさん  亭主を探し出さなくちゃ。あの人の他は誰一人、頼りにする人はいないんだ。
ヨハンナ  あの女は絶対に来ないと思うわ。お腹をすかした人にとって二十回分の食事は、凄いことかもしれないわ。
       でもその人にだってそれよりもっと大事なことがあるはずよ。

(ヨハンナとスリフトはさらに歩き続ける。工場の食堂の前にやってきて窓から覗いている二人の男を見る)

61 :名前なし:2009/07/11(土) 13:25:06 ID:+PlrRGMx
グルーム  座ってやがるな、職工長の野郎、俺がブリキ切断機に手を突っ込んだのはあいつのせいだ。
        ところがあの野郎はこんな所で、鱈腹つめこんでやがるぞ。あの豚が鱈腹食うことまで、こちとらが心配してやらなきゃならねえってのか。
        お前の棍棒を貸してくれ、俺のはすぐに折れちまいそうだ。
スリフト  (ヨハンナに)あいつに話しかけてみるから、あの男がこっちへ来たら言ってごらん、あんたは仕事を探しているってね。そしたら、あの連中がどんな人間かすぐ分かるよ。
       (グルームに近づく)どうやら一丁かますところらしいが、その前にあんたに話があるんだがね。
グルーム  今は暇がないよ、旦那。
スリフト  残念だな、あんたには特になる話なんだがな。
グルーム  じゃ、簡単にしてくれ。あのゲス野郎を見逃すわけにはいかねえんだ。
        俺たちの尻をひっぱたいて働かしてるきゃつの残酷なやり口の語法日を今日頂戴したに違えねえ。
スリフト  うまい話があるんだ。あんたにとっても役に立つと思うんだがね。
      私はこの工場の監査役だ。あんたの扱ってた機械はね、
      あんたが切り落とした指のことで大騒ぎしたもんで、
      たいていの奴がおっかながって尻込みするんでまだ遊んでるんだ。
      こりゃうまくない。誰か君の後釜がいるといいんだがね。
      たとえば、君が後釜を連れてきてくれたら、また君もすぐ雇ってもいいんだがよ、
      無論今までよりも楽な仕事で賃金もぐんとはずむつもりだ。
      そうだな、職工長なんかどうだい、君、あいつはどうやら最近はみんなに嫌われているらしい。
      分かるだろう。無論急いで探してくれなきゃ困る。
      さっきも言ったように、ブリキ切断機の係の後釜をね、
      あれが危険なことは確かだが。あそこにちょうど仕事を探している娘がいるようなんだがね。
グルーム  あんたのおっしゃること、信用してもいいんですね?
スリフト  ああ。

62 :名前なし:2009/07/11(土) 13:27:04 ID:+PlrRGMx
グルーム  あそこにいる娘ですか? どうも弱そうだな。あの機械は、すぐに疲れるような奴には向かないんですよ。
(もう一人の男に向かって)考えてみたが明日の晩の方がいいぜ、闇討ちは夜に限らあ。
(ヨハンナに近づいて)あんた、仕事を探してるのかい?
ヨハンナ  ええ。
グルーム  目はいいのかい?
ヨハンナ  いいえ、去年人工肥料する骨粉工場で働いていたんです。そこで肺をやられて酷い結膜炎にかかりました。
       二月から職がないんです。いい口があるんですか?
グルーム  いい口があるんだよ、あんたのような身体の弱い人にでもできるような仕事だがね。
ヨハンナ  他の仕事はないのかしら? あの機械のお仕事は、すぐに疲れる人には危険だって話ですけど、
       手元が狂うと、すぐに切断機に挟まれるんでしょ。
グルーム  そんなことは、嘘っぱちだ。仕事が楽なんでびっくりするぜ。
       あんた、頭に手を当ててよく考えてみるんだね、どうしてみんなが、この機械のことであんなおかしな話をするかってことをね。

(スリフトは笑ってヨハンナを脇に引っ張って行く)

ヨハンナ  もうこれ以上先に行くのは、私、恐いわ。この先何を見せられるんでしょう。

(彼らは食堂に入って行き、食堂の亭主と話をしているラッカーニッドルのおかみさんを見る)

ラッカーニッドルのおかみさん  (計算しながら)二十食分の昼食……それだけあったら……これをこうして、それからこうやって……

(彼女はテーブルに向かって座る)

食堂の亭主  食事をしないなら、出て行ってもらいましょう。
ラッカーニッドルのおかみさん  あたしは人を待ってるんです、今日か明日来るかって言ってたからね。今日のお昼の献立は何?
食堂の亭主  そら豆さ。
ヨハンナ  もう食堂に座ってるわ、
       てこでも動きそうもなかったのに。
       ひょっとしたら明日になれば、行くかもしれないとは思ってたけど、
       私たちよりも先にもう行ってるのね、
       そして私たちを待ってるんだわ。
スリフト  さあ、あの女に食事を持っていってあげなさい。きっとあの女も正気に返るよ。

63 :名前なし:2009/07/11(土) 14:06:57 ID:+PlrRGMx
(ヨハンナは食事を取りに行って、ラッカーニッドルのおかみさんの所へ持っていく)

ヨハンナ  明日にもならないのに来てるんですね?
ラッカーニッドルのおかみさん  二日ってもの何も食べてないからね。
ヨハンナ  でも、私たちが今日来るとはご存じなかったんでしょう?
ラッカーニッドルのおかみさん  そりゃそうだよ。
ヨハンナ  ここへ来る途中で聞いたんですけど、工場であなたの旦那さんが事故にあったらしいんですよ、みんな工場の責任です。
ラッカーニッドルのおかみさん  ふうん、すると食事をくれるって話は考え直したっていうんだね? それで三週間分の昼食はくれないってんだろう?
ヨハンナ  でもあなたは、あなたのご主人とはうまくいってたって話ですね? みんな言ってましたわ、あなたはご主人以外に頼る人がないって。
ラッカーニッドルのおかみさん  そうなんだよ、あたしゃ二日も食べてないんだよ。
ヨハンナ  明日まで待つ気はなかったんですか? あなたがご主人のことを諦めたら、誰もご主人のことをこれ以上とやかく言ってはくれませんよ。

(ラッカーニッドルのおかみさんは黙る)

ヨハンナ  食べちゃ駄目!

(ラッカーニッドルのおかみさんは彼女の手から食事をひったくりがつがつ食べる)

ラッカーニッドルのおかみさん  うちの人はフリスコへ行ったんだよ。
ヨハンナ  そして 倉庫や貯蔵庫は
       売れない肉でいっぱいなんだわ。もう腐りかかっている、
       誰も買い取る人がいないから。

(奥から上着と椅子をもった労働者が入って来る)

64 :名前なし:2009/07/11(土) 14:08:03 ID:+PlrRGMx
さっきの労働者  こんちは、じゃあ、ここで飯を食ってもいいんですね。
スリフト  あそこの女の人の隣に座りたまえ。(男、座る)
スリフト  (彼の後ろから)なかなかいい帽子を持っているじゃない。(労働者はそれを隠す)一体どこから手に入れた?
労働者  買ったんですよ。
スリフト  一体どこで買ったんだね?
労働者  店で買ったんじゃないんですよ。
スリフト  すると、どこから手に入れたんだ?
労働者  ボイラーに落っこちた男のものですよ。

(ラッカーニッドルのおかみさん、気分が悪くなる。彼女は立ち上がり出て行く)

ラッカーニッドルのおかみさん  (出て行きながら食堂の亭主に向かって)お皿はあのままにしておいてくださいよ。戻ってくるからね。
                    毎日お昼に食べに来ますよ、あの旦那に聞いてください。(去る)
スリフト  あの女は三週間毎日やってきて、動物みたいに皿に顔をくっつけたまま、がつがつ食うことだろう。
      ヨハンナ、もう分かったろうね、あの連中の悪さときたら全く止まるところを知らずさ。

65 :名前なし:2009/07/11(土) 14:09:32 ID:+PlrRGMx
ヨハンナ  貧しい人の悪いところを握ってるのねあなた方は! 何てうまく利用してるの!
       分からないの? あの人たちの悪さめがけて 雨が襲っているのです!
       あの女だって本当はきっと
       他のみんなと同じように 夫に誠を尽くしたかったのよ、
       あの人に住処を与えてくれた 夫のことも尋ねたでしょう、
       行方の知れなくなった人を 当然気にする間だけは。
       ところがあの人に持ち出された 代価はとても高かったのよ、二十食分!
       それにおかみさんに死んだ人の 上着を見せた若者だって
       本当は頼りにできる人、もし自分のことでなければ
       あんなことなんかしなかったはずよ。
       ところがあの人に持ち出された、餌がとっても高かったのよ。
       それに片腕の男の人が 私によせと言わなかったのはなぜ?
       ちょっとあの人だけに目をかけてやるという
       たったそれだけの代償が あの人には大変なことだったからよ。
       それでまっとうな怒りさえそれと引き換えに売り渡したのよ。
       たったあれだけの値段なのに!
       貧しい人の悪いところが 際限ないと言うのなら
       貧しさも際限ないのだわ、
       あなたが見せてくださったのは 貧乏人の悪いところじゃなくってよ、
       貧乏人の貧しさよ、
       貧しい人の悪いところを私に見せるつもりなら
       私は見せてあげられるわ、貧しい人の苦しみを。
       貧しい人が堕落してる? そんな話は間違いよ!
       あの人たちの悲惨な顔を見れば 違ってるってことが分かるでしょう!

66 :名前なし:2009/07/11(土) 14:33:10 ID:+PlrRGMx
5 ヨハンナは家畜取引所に貧しい人々を引き合わせる。

家畜取引所。

67 :名前なし:2009/07/11(土) 14:34:43 ID:+PlrRGMx
缶詰製造業者たち  俺たちは売る、缶詰肉を!
             さあ買い手、買ってくれ、缶詰肉を!
             新しい、たっぷりとした缶詰肉を!
             モーラー&クライドルのベーコンを!
             グレイアムのヒレ肉はとろけるようで!
             極上ケンタッキーのラードはお特用品!
買い手たち  水の上には偉大なる静けさが訪れ
         卸し商人には破産が訪れた!
缶詰製造業者たち  素晴らしい技術の進歩によって
             技師の勤勉と企業家の見通しによって
             モーラー&クライドルや
             グレイアムのとろけるようなヒレ肉も
             極上ケンタッキーのラードさえ
             価格は三分の一に下がった、
             買い手たち、買うんだ缶詰肉を!
             掴むんだよ このチャンスを!
買い手たち  山上には静寂が訪れた。
         お得意先のホテルの厨房はさっぱり顔を出さなくなり
         肉屋という肉屋は全て怖気を奮ってそっぽを向いた。
         仲買人の顔は青ざめ、俺たち卸商人は、
         肉の缶詰の面を見ると 反吐を吐きたくなってくる。
         我らの国の胃袋は
         缶詰肉を詰め込みすぎて
         見るのも嫌になったのだ。
スリフト  あんたのニューヨークの友人は何て書いてよこしました?
モーラー  いつもの伝で理論ばかり。こんな指令通りにしたら、
       今頃精肉トラストは、すっかり潰れてたところだよ、
       二、三週間もしないうちに、息の根が止まってたとこだ。
       一切合財の肉って肉を、危うく背負い込まされるとこだった、
       下らん戯言だよ!
スリフト  ニューヨークで関税を下げてくれ、南部も門戸を開いてくれて
      景気のきっかけさえ出来ていたら
      こっちの乗りかけた船で買いに回り
      笑いが止まらなかったとこですがね!

68 :名前なし:2009/07/11(土) 16:00:40 ID:+PlrRGMx
モーラー  そうくればお誂えむきだがね!
       いくら君が強気でも だからってこの不景気に
       やっぱり肉を買い込むかい。今はどんな手を使っても
       鵜の目鷹の目で見張られているのに。俺にはそんな勇気はないね。
買い手たち  俺たち卸し商人は山と詰まれた缶詰と
        倉庫いっぱいの冷凍肉を 抱え込んじまってるのに
        誰も買っちゃあくれないんだ!
        俺たちのお得意先の料理屋や肉屋は
        天上まで冷凍肉を抱え込んでいる!
        そして客が来ないかと喚いている!
        俺たちゃもう買わないぞ。
缶詰製造業者たち  俺たち製造業者は缶詰工場を持ち
             牛小屋にはぎゅうづめの牛、夜も昼も蒸気を吐きながら
             機械や塩汁や桶やボイラーが作業を続け
             唸ったり餌を食ったりしている牛を
             牛缶に変えようと思っているが、缶詰を欲しがる奴はもういない。
             俺たちはもうお手上げだ!
家畜業者たち  じゃあ俺たち、家畜業者の方はどうだ?
          誰も家畜は買っちゃくれねえ、俺たちの小屋じゃ牛や豚が、
          高いトウモロコシを餌に食い、汽車で発送中のやつは
          貨車の中でももりもりと食い、停車場に着いたとなりゃ
          餌を食ってるその上に、板囲いに寝かされて損料が毎日嵩んでいくんだ。
モーラー  もう刃物のほうが 牛を殺すのは嫌だってよ。
       死神様は店を閉じて、
       牛からそっぽを向かれちまった。
缶詰製造業者たち  (新聞を読んでいるモーラーに喚く)
             裏切り者のモーラーめ、仲間の悪口を言うつもりか!
             陰に隠れてこそこそと、大量の牛を売りに出して
             底値まで叩いたのがどいつなのか、俺たちには分かっているんだぞ!
             二、三日前からお前は肉を、売りにまわってるじゃないか!

69 :名前なし:2009/07/11(土) 16:02:09 ID:+PlrRGMx
モーラー  恥知らずの肉屋どもめ、おふくろのお腹で吠えるがいいや
       これまでさんざん苛められた 牛が吠えるのをやめたからな!
       さっさと自分のうちへ帰って、仲間の一人がこれ以上
       牛の呻きに我慢できず、牛よりは仲間に唸らせた方が
       まだましだと考えたって、言ってやりな!
       俺は良心と引き換えに金と安静が欲しいのだ!
一人の仲買人  (奥の取引所の入り口から怒鳴る)証券市場で大暴落だ!
          株はどんどん売りに出てる。
          以前のモーラー、今のクライドル会社が傾いて
          製肉トラスト全体の、相場をどん底の底値まで
          突き落としてしまったというわけだ。

(製造業者の間に大混乱、彼らは蒼白になって立っているクライドルに突進する)

缶詰製造業者たち  どういうことだ、クライドル、まっすぐ面を見て返答しろ!
             今度はお前が俺たちの 株価を叩いちまうのか?
仲買人  百十五だ!
缶詰製造業者たち  貴様の頭は空っぽか?
             自分がくたばるだけじゃ済まず 道伴れを捜そうっていう気なのか
             糞っ垂れの人殺しめ!
クライドル  (モーラーを指差して)あいつの周りに行くがいい!
グレイアム  (クライドルの前に立ってかばう)罠を仕掛けている奴は、クライドルとは違うんだ。
        俺たちは餌食にされかかってる!
        製肉トラストを独り占めする、仕事にかかってる奴がいるんだ!
        どうだモーラー、申し開きは!
缶詰製造業者たち  (モーラーに)こういう噂が流れてるぞ、モーラー、傾きかかったくらいドルから、
             君は金をむしろうとしてると。クライドルは物も言わずに
             君を指差しているんだぜ。

70 :名前なし:2009/07/11(土) 16:04:33 ID:+PlrRGMx
モーラー  このクライドル自身が、俺に見込みはないと白状しているんだ、
       その段になって俺がこいつの所へ貸してある金の支払いを一時間でも待つようなことをしてやったら、
       商人として俺を信用する奴はいなくなるだろう、俺は君からも商人として信用されることだけを願ってるんだ。
クライドル  (周りの人たちに)四週間ほど前だったか、俺はモーラーと契約を結んだ。
        モーラーは、全体の三分の一に当たる自分の持ち株を、千万ドルで俺に売りたいと言った。
        今日になってやっと俺にも分かったんだが、その日からこいつはこっそりと安い家畜を売りに出して、
        もう落ち目になりかかっていた値段をもっと叩いていったんだ。
        契約では、奴が欲しい時にいつでも金を請求できることになっていた。
        俺もこの男に払うつもりでいた、高値だったこの男の株の一部を抵当に金を借りてだな。ところがあの大暴落だ、
        モーラーの持ち株は今では、千万どころかたったの三百万だ、工場全部をひっくるめても三千万が千万になってしまったというわけだ。
        千万といえば俺がモーラーに借りてる額だし、モーラーが一日の猶予も与えず俺から請求している金額なんだ。
缶詰製造業者たち  俺たちはクライドルの親戚じゃないが、
             クライドルを蹴り落とす君のやり口が
             俺たちにも関わるってことは知ってるだろう。
             俺たちの商売をめちゃくちゃにしたのは
             全く君のせいなんだ。レノックスを潰すために
             値下げ競争をやったんで 牛間が馬鹿安になったんだ!
モーラー  狂ったようにめったやたらに牛を殺さなければよかったんだ、肉屋諸君! 今俺は金が要る。
       君たちが乞食して集めなきゃならなくても、耳を揃えて出してもらいたい! 俺には別の計画があるんでね。
家畜業者たち  レノックスは潰され、クライドルは傾いた! だのにモーラーは奴の金を引き出そうっていうんだ!

71 :名前なし:2009/07/11(土) 16:05:44 ID:+PlrRGMx
小相場師たち  俺たちちっぽけな相場師のことは、誰も考えちゃくれないのか。
          大物の破産するところや落ち着く先を、大騒ぎして
          見てる連中は、その巻き添えを食う奴のことまで見ちゃいない。
モーラー  俺たちの金はどうしてくれる!
缶詰製造業者たち  缶詰八万個を五十でどうだ、しかも今すぐだぜ!
買い手たち  一個だってご免だぜ!

(静けさ。黒麦藁帽隊の太鼓とヨハンナの声が聞こえる)

ヨハンナの声  ピーアポント・モーラー! モーラーはどこ?
モーラー  一体何の太鼓の音だ?
       俺の名前を呼ぶのは誰だ?
       ここだぞ、みんな血に染まった、口をしているところだぜ!

(黒麦藁帽隊が入って来る。彼らは彼らの闘いの歌を歌う)

72 :名前なし:2009/07/11(土) 16:06:56 ID:+PlrRGMx
黒麦藁帽隊  (歌う)目をとめよ!
         深みに落ちゆく男あり!
         救いを求める叫びあり
         救いの手を求める女あり。
         車を止めよ、足を止めよ!
         いたるところに破滅に沈みゆく者あるに 目を止めんとする人もなし!
         汝ら目を塞がんとするか?
         汝らの兄弟に声を与えざるか?
         汝らの食卓より腰を上げよ
         汝ら忘れたるか
         戸口の外に佇む者の多くあるを?

    あなた方はよく仰るようですね、世の中なんて変わらない。世の中の不正はいつまでも続くだろうと。
    しかし私たちは申し上げます。今こそいっさいを擲って進軍し救いの道を歩むべきだと。

         タンクにうちまたがり
         大砲 飛行機を差し向け
         海に軍艦を進むべし
         貧しき人に一皿のスープをかちえんために。
         今日の日にも
         全ての者を汝らの味方とすべし、
         善なるものは
         いまだ大群とは言えざるゆえに。
         前へと進め! 立ち上がれ! 突撃のため銃をとれ!
         いたるところ破滅に沈みゆく者あるに 目を止めんとする者もなし!

(この間にも取引所の戦いは続けられている。しかし一つの笑い声が次第に前の方に伝わってきて、叫び声と一緒に聞こえてくる)

缶詰製造業者たち  八万個を半値にしよう、しかも今すぐだ!
買い手たち  一缶だってご免だぜ。
缶詰製造業者たち  これじゃ俺たちもおしまいだ、モーラー。

73 :名前なし:2009/07/11(土) 17:36:35 ID:+PlrRGMx
ヨハンナ  モーラーさんはどこですか?
モーラー  逃げないでくれ、なあスリフト!
       グレイアムもメイヤーズも俺の前に立っていてくれ、
       ここで見つけられたくはないんだ。
家畜業者たち  シカゴじゃもう一頭だって、牛は売れやしねえんだ
          イノリイ州全体が 今日のうちにも破滅すらあ。
          肉の値段を吊り上げて、牛を飼えとけしかけておいて
          俺たちが牛を抱え込んだら
          今度は買う奴がいないとくる。
          モーラー 畜生、俺たちが酷い目にあったのはあんたのせいだ。
モーラー  もう商売の話はやめだ。グレイアム、帽子をとってくれ。退散しなくちゃならないんだ。俺の帽子は百ドルだ。
クライドル  くたばりやがれ。(去る)

74 :名前なし:2009/07/11(土) 17:38:50 ID:+PlrRGMx
ヨハンナ  (モーラーの後ろで)ここにいてください、モーラーさん、そして、私の申し上げることをお聞きください。
       他の方たちもどうぞ。お静かに、よろしいですか。
       私たち救世軍が、あなた方が取引をしているこのいかがわしい場所に乗り込んできたことは、きっとあなた方には具合の悪いことでしょう! 
       私はもう聞いています、あなた方が何をしているか。駆け引きや巧みな術策を使って肉の値段を吊り上げているのですね。
       でも、いつまでも隠しおおせると思っていらっしゃったら、それは大間違いというものですね。そして裁きの日には、全てが明らかになりましょう。
       主イエス・キリストはあなた方を一列に並べて、大きな目を開いてこうお尋ねになりますよ、
       わが牛いずくにありや? 汝らわが牛を用いて何事をなせるや? 汝らは牛を正当なる価格にて鬻ぐか? 牛どもはいずくに去りしか? 
       こうお聞きになったらあなた方はどうなさいます。
       その時あなた方はまごついて、いつも真実ばかり書いているわけではないあなた方の新聞に書かれているような言い逃れを探そうとなさったら、
       その時は牛たちがあなたの後ろで啼きますよ。
       あなた方が目の玉の飛び出るほど牛の値段を吊り上げようとしてどんなに牛を隠しておいたにしても。
       そして牛は啼きながら、全知全能の神の前に姿を現してあなた方に反対証言をしますよ!

(哄笑)

家畜業者たち  俺たち家畜屋たちにとっちゃ笑いごとじゃねえ! 夏も冬も天気を頼りにしている俺たちは神様のご機嫌を損ねたら大変だ。

75 :名前なし:2009/07/11(土) 17:40:13 ID:+PlrRGMx
ヨハンナ  一つの例を申しましょう。誰かが乱暴な水に逆らってダムを作るとします。そして何千という人たちがその人に手を貸します。
       その人はそれで百万ドル儲けます。でも水が増して、すぐにダムが壊れると、ダムの構築に働いた人たちは皆、
       いえそれ以上の人たちが溺れてしまうのです。---こういうダムを作る人は何者でしょう? 
       あなた方はその人のことをビジネスマンとか、無頼漢だとおっしゃるかもしれません、でも私たちは、そういう人を愚か者と名づけます。
       パンの値段を吊り上げ、人々の生活を地獄にする、あなた方はみんな愚か者なのです、哀れな、心貧しい愚かなる者なのです。
       たったそれだけの人間です!
買い手たち  (叫びながら)無謀きわまる価格競争と
         汚い利潤追求のおかげで
         あんた方は自滅だよ!
         愚かな奴だ!
缶詰製造業者たち  (言い返す)そっちこそ愚かな奴だ!
             経済恐慌に打つ手はない!
             俺たちの上には経済の法則が、絶対的に支配している。
             恐ろしい周期を以て、絶えず自然界の破滅が
             いつ知れず繰り返される!
家畜業者  俺たちの首を締め付けた、責任は誰も取らないのか?
        これほどあくどいことはねえ、悪知恵の窮みだよ!

76 :名前なし:2009/07/11(土) 17:42:36 ID:+PlrRGMx
ヨハンナ  どうしてそういう悪いことがこの世にあるのでしょう? 兄弟同士が生きるために必要な僅かなものを争いあって、
       僅かな生きる糧を隣人から奪うために、隣人の頭を斧で殴られなければならない世の中出る限り、世の中は変わりません。
       そして人間の胸の中のより高いものを求める心は、押し潰されてしまいます! 隣人への奉仕を顧客への奉仕とお考えになるといいのです! 
       そうしたら、あなた方だって聖書をすぐ理解なさるでしょうし、今日もなお、聖書が新鮮な教えであることが分かりましょう。
       奉仕の精神! 奉仕こそ隣人愛に他ならないものではないでしょうか? そうなのです、正当に理解するならば! 
       皆さん、貧乏人たちは十分に道徳というものを持たないとよく聞かされます、それはそうかもしれません。
       あの下層階級のスラム街には不道徳が巣食い革命の温床となっています。でも私は皆さんにお聞きしたいのです。
       その貧乏人は、何一つ持っていないのに、どうして道徳だけが持てるのですか? そうです、
       貧乏人が盗みをしないでも物が手に入るにはどうしたらいいのでしょう? 皆さん、道徳を買う購買力というものもあるのです。
       道徳を買う購買力を高めれば、あなた方も道徳を手に入れられるのです。道徳を買う購買力とは何か、
       全く単純なもの、自然なもの、つまりお金です、お給金です。現実の問題に帰りましょう、
       皆さんがこんな風にやっていけば、結局は自分で自分の肉を食べることになりましょう、
       なぜなら、あの外にいる人たちは購買力というものを全然持たないからです。
家畜業者たち  (非難をこめて)俺たちは牛を抱え込んでいるが、買ってくれる奴はもういねえ。

77 :名前なし:2009/07/11(土) 17:44:28 ID:+PlrRGMx
ヨハンナ  なのにあなた方、力を持った紳士の皆さんはここに座り込んで、あなた方の策謀に気がつくものはいないだろうと考えていらっしゃいます。
       そして外の世界の惨めさのことは何も知ろうとなさいません。でもまああなたたちに、あんなに酷く扱われたために、
       こんなありさまになってしまった、貧しい人たちをご覧ください。あなた方はこの人たちを同胞と考えてはいないのです。
       さあ出ていらっしゃい、苦しみに悩んでいる人たち、明るい光の中に。ちっとも恥ずかしがることはないのです。

(ヨハンナは取引所の人々に連れてきた貧民を見せる)

モーラー  (叫ぶ)奴らを連れて行ってくれ! (気絶する)
声  (後ろから)ピーアポント・モーラーが気絶した。
貧しい人々  奴らが全ての張本人だ!

(製造業者たちはモーラーを取り巻いて看護する)

缶詰業者たち  水だ、ピーアポント・モーラーに!
          医者だ、ピーアポント・モーラーに!
ヨハンナ  貧しい人の悪いところを、私は見せてもらいました。
       そこで今度はこちらから あなたに見せてあげましょう
       貧しい人々の貧しさを。この人たちの惨めな姿は
       あまり人目にはつきません。あなた方とは離れたところに
       財貨や生活必需品からも遠くに引き離されたまま
       こんな惨めなありさまで、いつまでも釘付けにされています。
       あなた方のためにね。そして手の届かない食物や
       暖かさをも与えられず、こんなに弱り果てている上に
       下等な食事の楽しみや、獣のような住まいに住む
       望みよりもっと高いものを、求める気持ちもなくしてしまいます。

78 :名前なし:2009/07/11(土) 17:55:38 ID:djzcdIdo
(モーラー、再び意識を取り戻す)

モーラー  まだ連中はいるのかい? お願いだから連中を目につかない所に連れて行ってくれ。
缶詰製造業者たち  麦藁帽の連中かい? 奴らを追っ払うのかい?
モーラー  そうじゃない、その後ろの奴らだ。
スリフト  あんたたちが消えるまで、この人は目を開けないよ。
グレイアム  ははあ、あの連中を見てることが出来ないのかねえ?
        奴らをああしちまったのは君じゃないか。
        君が目を塞いだぐらいじゃ 連中はなかなか
        出て行きはせんよ。
モーラー  お願いする、奴らをどうか追っ払ってくれ。俺は買う!
       みんな聞いてくれ、ピーアポント・モーラーは買うぞ!
       こういう連中が仕事にありついて出て行くように。
       君らが二月ってもの作りに作った肉缶詰を
       そっくり俺は買っちまう。
缶詰製造業者たち  買ったぞ! モーラーが買ってくれた!
モーラー  時価でだぞ!
グレイアム  (彼を支えて)倉庫に寝かせてあるやつもか?
モーラー  (床に横たわったまま)買うとも。
グレイアム  五十でか?
モーラー  五十で。
グレイアム  奴が買ったぞ! みんな聞いたか、奴が買ったぞ!
仲買人  (メガホンで後ろに怒鳴る)ピーアポント・モーラーが製肉市場を持ち直すぞ。
      契約によれば彼は、本日の時価五十で製肉トラストの在庫品全部を引き受けることになり、
      また今日から二ヶ月間の製品全部も同じように五十で買い上げる約束をした。
      製肉トラストは十一月十五日以降ピーアポント・モーラーに少なくとも八千万ポンドの缶詰肉を納入する。
モーラー  だが今はなあ、みんな、俺を連れて行ってくれ。

(モーラーは運び去られる)

79 :名前なし:2009/07/11(土) 17:57:18 ID:djzcdIdo
ヨハンナ  ええもういいわ、連れて行かれても!
       私たちが畑の馬のように伝道の仕事を続けているのに
       あなた方上にいる連中は、こんなことばかりしているのね!
       あなた方は私に口を噤んでいろと言いましたね。
       一体皆さんは何者です
       神の声を告げる口に蓋をしておこうなんて?
       たとえ牛でも、唸っている口を塞いではいけないのに、
       私は演説をやめませんよ。
       (貧乏人たちに)月曜日にはまた仕事の口が出来ますよ。
貧乏人たち  こういう連中には普段はなかなかお目にかかれねえや。
         両脇の二人ならまだお目にかかることもあるが、こっちの方があの男より、もっとたちが悪そうだ。
ヨハンナ  さあお別れに歌いましょう。「パンの欠くることはなし」
黒麦藁帽隊  (歌う)
         神に身を捧げし者に
         パンの欠くることはなし。
         神に身を捧げし者は
         神の懐にあれば
         苦しみに悩むことなし、
         神のみ許に飢えもなければ。
買い手たち  奴らは頭がおかしくなった、我らの国の胃袋は
         缶詰肉を食いすぎて 見るのも嫌になったのだ。
         ところが奴は誰も買わぬ
         肉を缶詰に詰め込むんだ。あいつの名前は消しちまえ。
家畜業者たち  さあ、値段を吊り上げろ、惨めな肉屋の連中め!
          家畜の値段を倍にしなきゃ 一グラムだって売らないぞ
          いよいよ肉が要るんだろう。
缶詰製造業者たち  君らのボロ肉は抱えていたまえ! 俺たちは買わねえからね。
             ごらんのように今結んだ契約は
             ただの紙切れにすぎないのだ。契約した当の男は
             正気じゃなかったのだ。こんな商売をしようったって
             フリスコからニューヨークにいたるまで
             一セントの金も工面できねえ。

(業者たち退場)

80 :名前なし:2009/07/11(土) 17:58:31 ID:djzcdIdo
ヨハンナ  本当に神のみ言葉に興味をお持ちの方、相場の告げることばかりでなく、神のお告げに関心のある方も、
       皆さんの中に何人かはおいででしょう、ちゃんとした方、商売をしながらも神を恐れておいでの方が。
       私たちはそういう方に反対する気はちっともありません。ですからそういう方は、日曜日の午後二時、
       リンカーン・ストリートにある私たちの伝道本部の礼拝においでください、二時からです。三時からは音楽があります、入場は無料です。
スリフト  (家畜業者たちに)あのピーアポント・モーラーは、約束は守る男だ。
       さあ、これで一息つける! 市場は持ち直すに違いない!
       パンを与えるものも パンを貰うものもみんな聞いてくれ!
       苦境はついに切り抜けた!
       お互いの信頼や労働協調が脅かされていたが
       雇用者の諸君も被雇用者の諸君も今こそ屠場に行って門を開くのだ!
       合理的な忠告は合理的に聞き取られ
       理性が再び支配するようになったのだ。
       門は開かれ、煙突は煙を吐き出した!
       労働双方がお互いに仕事を必要としているんだ。
家畜業者たち  (階段の所でヨハンナに向かって)私たち家畜屋は、あなたの登場と弁説に
          非常な感動を受けました
          心の底から揺すぶられました、なぜって私も
          酷い悩みを持つからです。
ヨハンナ  いいですか皆さん、モーラーには
       私が気をつけていますから。あの人は目が醒めたのです。
       もしあなた方にどうしても必要なことがおありなら
       私と一緒にいらっしゃい、モーラーはきっと助けてくれます。
       なぜって今はあの人は、みんなが救われてしまうまで
       心が落ち着かないのです。
       あの人は誰でも助けられる人
       あの人を追いかけて行きましょう。

(ヨハンナと救世軍退場、家畜業者たち、彼女らに従う)

81 :名前なし:2009/07/11(土) 18:01:36 ID:djzcdIdo
6 ふさぎの虫

市の商業区。仲買人サリヴァン・スリフトの家、入り口の二つある小さな家。

82 :名前なし:2009/07/12(日) 01:41:59 ID:Xd0i3vxs
モーラー  (家の中で、スリフトとしゃべっている)ドアを締め切っておいてくれ、できるだけの明かりをつけて、
       俺の顔をよく見てくれ、スリフト、この顔を見たら分かるかね。
スリフト  何がです?
モーラー  俺の職業が何かがさ。
スリフト  肉屋だってことがですかい? 一体あなたはあの娘の演説を聞いて、お宗旨変えでもしたんですかい?
モーラー  一体何をしゃべっていたんだあの娘は?
       俺は何も聞いていなかったんだよ、
       惨めな面した連中が あの娘の後ろにいたもんで。
       その惨めさっていう奴のほうが、
       俺たちを片付けようとしている
       奴らの怒りよりもっと効き目があって、
       俺はもう見ていられなくなった。
       なあ、スリフト、今ここで俺は
       商売について本音を吐くよ。
       人間が生皮を引っぺがしあう
       残酷な売った買ったの取引だけじゃ
       この先やってはいけないのだ。
       苦しみの呻きをあげている、
       人間の数が多すぎる、それがまだまだ増えていく。
       俺たち血まみれの屠場で
       ぶっ倒れていく連中を宥めようったってもう駄目だ。
       奴らにひっとらえられたら
       俺たちは腐った肉みたいに
       舗道に叩きつけられるだろう。
       ここにいる俺たちみんなは、
       畳の上じゃ死ねねえのさ。
       俺たちがまだ往生しないうちに、
       群集が俺たちを壁に並べて銃殺し、
       世界から俺たちやその一党を
       掃き出しちまうこったろう。

83 :名前なし:2009/07/12(日) 01:43:25 ID:Xd0i3vxs
スリフト  奴らのせいであんたはすっかり取り乱しちまいましたね! 
      (傍白)やっこさんに血の滴るビフテキを食わせなきゃな。また例の弱気を起こしたんだ。
      生の肉をたっぷり食えばきっと気を取り直すだろう。(ガスオーブンの所へ行ってステーキを火にかける)
モーラー  馬鹿馬鹿しくて安っぽい
       浮世離れの 演説が、丸暗記した おしゃべりが
       一体なんでぐっとくるのか、何度も俺は考えた。
       きっとそれはあの連中が 雨も空腹もものともせず
       ただで十八時間働いているせいだ。
スリフト  下からは火がついていて 上の方は凍っている。
       こういう町じゃどこでもきっと
       まっとうでないことをあれこれ見つけて
       演説する奴がいるもんでさあ。
モーラー  何の演説をしてると思う?
       上から下への墜落が 何年越しに続けられ
       地獄に堕ちる人間の 喚きが止んだこともない
       騒ぎの絶えぬこの町で ああいう声を聞かされると
       馬鹿らしくても、野蛮ではない
       あの声に強く打たれてしまって
       背中の棍棒でどやされて
       背筋に電流が走るような気になる。
       しかし今までのことは実は、ただの逃げ口上にすぎないんだ、スリフト
       俺が恐がっているものは、神とは別のものなんだ。
スリフト  そいつは一体何ですか?
モーラー  俺たちの上にいるものじゃなくて
       俺たちの下にいるものなんだ! 屠場に立ちんぼしてる奴だ。
       一晩ぶっ通しで立ってはいないが 朝になれば起き上がる奴だ。
       俺にはなんだか分かっているさ。

84 :名前なし:2009/07/12(日) 01:45:18 ID:Xd0i3vxs
スリフト  肉を一切れ食いませんか、ピーアポント? もう肉を食っても両親は痛まないはずですよ、
      なぜって今日からあなたは牛の処理とは関係がないんですからね。
モーラー  食わなきゃいかんと思うかね? 多分やってのけられる。今こそ俺はやれるように ならなくちゃいかんのだろ?
スリフト  さあこれでも食べて、あなたのおかれている立場をよく考えるんですね、あんまり芳しくはなさそうですぜ。
      忘れちゃいないでしょうね、缶詰になってる奴を一切合財今日自分が買い込んだってことは? 
      私はね、モーラー、あなたの腹の大きい所にはすっかり驚いてるんですがね、あなたの状況を簡単に説明させてください。
      表面的な深刻でもないものかもしれませんがね。まずあなたは、千万ポンドの在庫品を引き受けた。
      こいつを次の週にはあなたは、何とか市場で捌かねばならないわけですが、市場はもう一缶だって呑み込めませんぜ。
      あなたはそれに五十も支払った、ところが値段は少なくとも三十までは下がるでしょうな。
      値段が三十か二十五に下がる十一月十五日に、製肉トラストはあなたに五十で八千万ポンドを供給する約束です。
モーラー  スリフト、俺はおしまいだ!
       破産したんだ、この俺は、肉を買い込んじまったから!
       何てことをしでかしたのか!
       世界中の肉って肉を すっかり背負い込んじまったんだ。
       地球をかつぐアトラスみたいに 肩に缶詰の山を背負って、
       橋桁に躓いちまうのだ。まだ今日の朝までは
       多くの連中が倒産前で、
       奴らが倒れるところを見て、笑ってやろうと思っていた。
       そうして奴らに面と向かって
       缶詰肉を買う馬鹿なんか 一人もいないぞと言う気だった。
       そんなつもりで あそこへ出かけて行ったのに、
       思わず買うぞと言っちまった。
       スリフト、俺は肉を買った、俺はもうおしまいだ。
スリフト  ニューヨークのあんたの友人は 何とか言って寄越しました?
モーラー  肉を買えと言ってきた。
スリフト  何ですって?
モーラー  肉を買えとさ。

85 :名前なし:2009/07/12(日) 01:46:33 ID:Xd0i3vxs
スリフト  それじゃ肉を買ったからって、嘆くことはないでしょう?
モーラー  そうだ、奴らはこの俺に、肉を買えと書いて寄越したんだ。
スリフト  そしてあんたは肉を買った。
モーラー  本当にその通りだ、なるほど俺は肉を買った、
       でも俺が買ったのは、手紙に書いてあったせいじゃない。
       (手紙に書いてあることなんか、正しくないに決まってる、
       机上の空論にすぎんのだ)もっと立派な理由から
       俺は肉を買ったんだ、ある人物に感動したんだ。
       俺は誓うぞ、今朝初めて手に入れたこの手紙なんか
       まだ目を通してもいなかった。
       ところでこの手紙だが「親愛なるピーアポント!」
スリフト  (先を読む)「今日は君に、我々の撒いておいた金がいよいよ効果を上げたらしいとお伝えできる。
       大多数の議員たちは関税に反対投票をするだろう。だから肉を買うのが得策らしい、ピーアポント、明日また手紙しよう」
モーラー  こんな具合に 俺たちは 金の虜になっている、
       こんなことはもう止めよう。こんなことが動機になって
       すぐ戦争も起こるのだ。汚い金を取り合って
       何万の人間が血を流す。こんな報告の手紙だって
       よいことは生まれんように思う。
スリフト  この手紙の差出人が、誰であるかが問題だ。
      収賄したり 関税の壁を払ったり 戦争を起こす、
      こんなことはそんじょそこらの奴に出来ることじゃない。
      この手紙の差出人は 偉い人間なんですかい?
モーラー  高等な連中だよ。
スリフト  一体誰なんです?

(モーラー、微笑む)

86 :名前なし:2009/07/12(日) 01:48:14 ID:Xd0i3vxs
スリフト  それじゃあ、まだこれから先、値の上がることもあるんですかい?
      だったら俺たちの損害は軽く済ませられるってもんだ。
      家畜屋たちが必死になって、多量の肉を売りに出し
      値を下げることさえなかったら、その見通しもあるでしょう。
      しかしそうはならないな。駄目だ、モーラー、この手紙は
      俺には理解がつきかねる。
モーラー  こういう想像をしてみるんだ。
       ある奴が盗みを働いて、現行犯で捕まったとね。
       もしもそいつが捕まえに来た奴を、殴り倒してしまわなかったら
       そいつはもうおしまいだ。しかし殴り倒しさえしてしまえば、そいつは何とか切り抜けられる。
       これなるこの手紙に---書いてあることは間違いだが---こいつが正しくなるためには
       あこぎな仕事の必要がある。
スリフト  どんな仕事です?
モーラー  さすがの俺もそいつには 手をつける勇気がない仕事だよ。なぜって俺は今から平和に生きるつもりだからな。
       他の奴らはあこぎな仕事で 儲けたいだけ儲けるがいい。
       奴らは儲けるに決まってる、手当たり次第肉さえ買えばね。
       家畜業者の連中には、肉がだぶついていると嚇かして
       レノックス工場の閉鎖を思い出させ
       奴らの肉を取り上げればいいのだ。これが一番大事なことだ、
       家畜業者の連中から、肉を巻き上げることがだな。もちろん馬鹿な家畜屋は
       今度も騙されることだろう、しかしそんなことには、
       俺はもう二度と手を染めない。
スリフト  やっぱり肉を買うべきじゃ なかったですよね、ピーアポント!
モーラー  そうだ、やっぱりまずかったよ、スリフト。
       この件から足が洗えるまでは
       帽子も靴も買えんのさ
       百ドルの金でも握って 足を洗えたら幸せさ。

(太鼓の音。ヨハンナ、家畜業者たちとともに登場)

87 :名前なし:2009/07/12(日) 12:30:09 ID:Xd0i3vxs
ヨハンナ  あの人をこの建物(巣)からおびき出しましょう、虫でも捕まえる時みたいに。
       ふさぎの虫に取り付かれた、あの人を捕まえてしまうんです。そっち側に立っててください。
       私がこっちで歌うのを聞けば、あの人は向こう側から逃げようとします。私に会わないで済むようにね、あの人、私に会うのが嫌なんです。
       (笑う)それに私と一緒にいる人とも会いたくないの。

(家畜業者、右側の戸口の前に立つ)

ヨハンナ  (左側の戸口に立つ)出ていらっしゃい、モーラーさん、イノリイ州の可哀想な家畜屋さんたちのことでお話があるんです。
       それに私と一緒に、あなたがいつ工場を再開するか、聞きたがってる方もいらっしゃいます。
モーラー  スリフト、別の出口はどこだ。あの娘に俺は会いたくない、それよりあの娘と一緒にいる連中にはなお会いたくないんだ。それに俺は工場なんかもう再会しないんだよ。
スリフト  こっちからお出なさい。

(二人は右手のドアの方に行く)

家畜業者たち  (右手の戸口で)さあ出て来るんだ、モーラー、俺たちが酷い目に会ったのはみんなお前のせいなんだぞ、
          イノリイ州の一万以上の家畜屋は、どうしていいか途方に暮れているんだ。さあ俺たちの牛を買ってくれ。
モーラー  スリフト、ドアを閉めてくれ! 買わんよ俺は。
       缶に詰め込まれた奴ならば
       世界中の肉って肉を
       喉元まで詰め込まれたこの俺に
       他の世界[シリウス星]の肉までも すっかり背負い込めという気かい?
       地球を背中に背負い込まされて、へたばっているアトラスに、
       土星まで運搬してくれと、言いに行くようなもんだ。
       それで一体この俺から、誰が買い上げてくれるんだ?
スリフト  せいぜいグレイアムたちでしょう、奴らには家畜がいるんだから!

88 :名前なし:2009/07/12(日) 12:31:51 ID:Xd0i3vxs
ヨハンナ  (左手のドアの前で)家畜屋さんたちに救いの手が差し伸べられるまでは、ここからどかないつもりですよ。
モーラー  せいぜいグレイアムたちくらいかな、奴らは家畜が必要だ。スリフト、どうか出て行って奴らに言ってくれ、二分間考える余裕をくれとね。
スリフト  (家畜業者どもに)ピーアポント・モーラーは、あなた方の件についてよく考えてみたいそうだ、二分考える余裕をくれとさ。

(スリフト、家の中へ戻って来る)

モーラー  買わないよ。(計算を始める)スリフト、俺は買う。豚でも牛でもなんでもかんでも持って来い、
       脂の匂いのするものなら、一切合財買ってやる、油の片なら何でもいいから持って来い、俺が買い手だ、今日の時価の五十で買おう。
スリフト  モーラー、帽子も買えないくせに、イノリイ中の家畜を飼うんですか。
モーラー  ああ、買うともまだこの上も。やっと決心が決まったんだ。
       まず仮にaとしよう。(戸棚に書き付ける)
       誰かが間違いをやらかしたとする、そいつがaだ
       感情の虜になったために、誤りaをやらかしたんだ、
       それからまたbをやらかす、bもやっぱり誤りだ、
       ところが今度はaとbを、加えると誤りじゃなくなるんだ。
       家畜屋たちを中に入れろ、みんな人のよい連中だ
       酷く困ってるくせに、きちんとした身なりをして
       奴らのなりを見ていても、胸が悪くはならんのだ。
スリフト  (家の前に歩み出て、家畜業者の方に行く)イノリイ州を救い、農場主たちや家畜業者たちの破滅を避けるために、
       ピーアポント・モーラーは、市場にある家畜全部を買い上げる決心をした。
       しかし契約書には彼の名前は出ないのだ、彼の名前が出てはまずいからな。
家畜業者たち  ピーアポント・モーラー万歳、家畜取引は一息ついたぞ! (家に雪崩れ込む)
ヨハンナ  (彼らの後から叫ぶ)モーラーさんに言ってください、私たち救世軍は神の名においてお礼を申し上げます。
       (労働者たちに)家畜の売り買いがうまく行けば、あなた方もまたパンを手に入れられますよ。

89 :名前なし:2009/07/12(日) 12:32:55 ID:Xd0i3vxs
7 商人たちはお寺から追放される。

黒麦藁帽隊の本部。

(黒麦藁帽隊は長いテーブルに向かって腰を下ろし、
彼女らの集めて来た未亡人や孤児たちの貧者の一燈をブリキの箱から出して数えている)

90 :名前なし:2009/07/12(日) 12:35:28 ID:Xd0i3vxs
黒麦藁帽隊  (歌う)
         歌いつつ寡婦や孤児らの貧者の一燈を集めよ!
         苦しみは大いなるかな!
         家もなくパンもないけれど
         全能の神は彼らに
         いかにしてか糧を与えたまわん。
ポーラス・スナイダー救世軍少佐  (身を起こす)少ない、少ないな! 
                      (奥にいる貧乏人に向かって、その中にはラッカーニッドルのおかみさんやグルームもいる)
                      また来てるのか、あんたたちは! ちっともここから出て行かないんだね。屠場ではまた仕事を始めてるんだろ!
ラッカーニッドルのおかみさん  どこでだね? 屠場は閉まってますよ。
グルーム  また開くって話でしたがね、開いちゃいませんや。
スナイダー  金庫にあんまり近寄っちゃいかん。

(彼はもっと後ろに行くように指示する。家主のマルベリーが入って来る)

マルベリー  家賃の方はどうなりましたね?

91 :名前なし:2009/07/12(日) 12:38:35 ID:Xd0i3vxs
スナイダー  親愛なる救世軍の皆さん、親愛なるマルベリーさん、それから敬愛すべき聴衆の皆さん! 
        さて、金を調達するという厄介な問題についてお話します---善行は自ずと現れるものですが、何よりも宣伝を必要とするものであります---
        これまで我々は、貧乏な方々、もっとも貧乏な方々に依存してまいったのでありますが、と申しますのも、
        神の助けをもっとも必要とする人々こそ、神に対する施し物もおありだろう、大衆こそ喜捨してくれる、
        という考えから出発したからであります。ところが、残念ながら、まさにそういう層の方々が、
        神に対してまったく理解できない、打ち解けない態度を見せているということを思い知ったわけであります。
        しかしながらこれはそういう人たちが無一物であるせいだろうと思います。しかるがゆえに、小官ポーラス・スナイダーは、
        あなた方の名においてシカゴの富める者、裕福な人々をお招きしたのであります。すなわち次の土曜日にシカゴ市の不信仰及び物質主義に対して、
        特にもっとも下層なる人々に対して我々が開始せんとする戦いを支持してもらうためであります。
        その金のうちから、我々はわが親愛なる家主、マルベリー氏がこれまで待っていてくださった家賃を支払うことになりましょう。
マルベリー  そうしてくださりゃありがたいんですがね、しかし家賃のためならそう心配はなさらんでな。(去る)
スナイダー  さあ、皆さん、喜びの気持ちで自分の仕事を始めてください、入り口の階段は特に念入りに掃除してください。(黒麦藁帽隊退場)
スナイダー  (貧民たちに)どうかね、閉め出された連中は相変わらず辛抱強く屠場が開くのを待ってるのかね? それとももう危険なことを喚き出したかね?
ラッカーニッドルのおかみさん  昨日から喚き立ててますよ、工場に注文が来たのは知ってますからね。
グルーム  みんな言ってまさあ、暴力を行使しないと二度と仕事にはありつけないって。

92 :名前なし:2009/07/12(日) 14:06:38 ID:Xd0i3vxs
スナイダー  (独白)そいつはありがたい。石を投げつけられてこっちへ追われて来れば、
         製肉業の大物だってここへやって来て、我々の教えを聞く気になるだろう。
         (貧民たちに)せめて薪でも割ってくれないかね?
貧乏人たち  もう薪もありませんよ、少佐さん。

(缶詰製造業者クライドル、グレイアム、スリフト、メイヤーズが現れる)

メイヤーズ  グレイアム、いくら考えても分からん、一体家畜はどこにいるんだ?
グレイアム  俺もだよ、家畜はどこにいるんだ?
スリフト  俺もさ。
グレイアム  ほう、あんたもかい? するとモーラーにも分からないんだろうな。
スリフト  モーラーにも分からないだろうよ。
メイヤーズ  すると、いっさい買い占めた豚野郎がどっかにいるわけだ。
        そいつは俺たちが契約上、缶詰を提供する義務があり
        肉が要るっていうことも
        委細承知している奴だ。
スリフト  誰かな、そいつは?
グレイアム  (彼のみぞおちに一発食らわす)この野郎!
        俺たちを騙そうったってそうはいかん。ピーアピィに言ってくれ、
        俺たちを騙すわけにはいかないってな! 何しろ死活問題なんだから!
スリフト  (スナイダーに)あんたは一体俺たちに何の用があるんだね?
グレイアム  (再び彼に一発くれて)あの連中のお望みは一体何だい、え、スリフト?

(スリフトは、金を与える仕草をとても大袈裟にやる)

グレイアム  図星だ、スリフト!
メイヤーズ  (スナイダーに)はっきり言っていただこうかね?

(彼らは懺悔用のベンチに座る)

93 :名前なし:2009/07/12(日) 14:08:23 ID:Xd0i3vxs
スナイダー  (説教壇から)私たち救世軍は、屠場の前は五万の人たちが職を失って立ちん坊だと聞いております。
         中には、もう収まらずに、自分で救いを求めようなどと言っているものもいるそうです。
         五万の人たちが仕事をなくして工場の前に立っている責任は、あなた方にあると言われているのではないでしょうか?
         その連中はあなた方から工場を奪い取ってこう言うでしょうよ、
         ボルシェヴィキのように行動して、誰もが働き食えるように、工場を自分たちの手に入れようとね。
         なぜならば、こういう噂がもう広がっていますからね。
         「不幸というものは雨のように自然に起こるのではなく、その不幸を種にして利益を得ようとするものによって惹き起こされるのだ」とね。
         しかし、我々救世軍ならその連中にこう言ってやります。
         「不幸は雨のようにやってくるもので、どこから来るのかは誰にも分かりはしません、あなた方は苦しみを受けているが、それはいつか報いられますよ」とね。
缶詰製造業者たち  何のために報いの話までするのかね?
スナイダー  死後の報酬のことですから大丈夫です。
缶詰製造業者たち  そうしてくれる代わりにいくら出せと言うんだい?
スナイダー  月に八百ドルです、私たちは温かいスープと高らかな音楽を必要とするからです。
         我々はあの連中に約束してやります、金持ちは罰を受けるだろうと、それも死後の世界でね。
         (三人は腹を抱えて大笑いする)
スナイダー  こういうことをしてさしあげて、しかも月八百ドルでいいのですよ!
グレイアム  あんたにはそんなに要らんよ、そう、五百ドルだな!
スナイダー  七百五十ドルでもよろしいのです、しかし、その場合には……
メイヤーズ  七百五十ドルならいけるのか、じゃ五百ドルといこう。
グレイアム  五百ドルは絶対に要るだろう。(他の者たちに)そのくらいはやらなくちゃいかんな。

94 :名前なし:2009/07/12(日) 14:10:09 ID:Xd0i3vxs
メイヤーズ  (前の方で)おい、白状しろ、スリフト、あんたは家畜を持ってるんだろう?
スリフト  モーラーも俺も一セントだって家畜を買いやしなかったよ。それは俺がここにこうしているぐらい真実だよ。神様が証明してくれるさ。
メイヤーズ  (スナイダーに)五百ドルっていうのかね? 大した額だ。一体誰に払わせようっていうんだね?
スリフト  そうだな、あんたに払ってくれる人を探さなくちゃな。
スナイダー  はいはい。
グレイアム  白状しろ、ピーアピィは家畜を持ってるんだろう。
スリフト  (笑って)奴らもみんな貧民らしいよ、スナイダーさん。

(スナイダーを除いてみんな笑う)

グレイアム  (メイヤーズに)この男には洒落が通じないんだ。虫が好かねえ奴だな。
スリフト  肝心なことはだ、あんたがどっちの味方なのかってことだな。バリケードのあっち側かこっち側かってことだが?
スナイダー  救世軍は戦闘を超越しているのです、スリフトさん。つまりこっち側だということです。(ヨハンナ、登場)
スリフト  これが家畜取引所のジャンヌ・ダルクですよ!
三人  (ヨハンナに噛み付くように)俺たちは、あんたのやり方がどうも気に食わんのだ。あんた、モーラーにちょっと伝えてもらえないかね! 
     あんたから言ってもらうと効き目があるって話だからな。やっこさんあんたに食わしてもらっているって噂だね。
     つまりだ、家畜は市場からすっかり引き上げられちまったのさ。だからどうしたって、俺たちはモーラーに気をつけていなくちゃならんわけだ。
     あんたならやっこさんをどうにでも口説けるんだろう。やっこさんに家畜を吐き出させてもらいたいんだ。
     ええ、どうだね、あんたがそいつをやってくれれば、俺たちは、救世軍に四年間家賃を払ってやるがね。
ヨハンナ  (貧乏人を見て驚いている)ここで何をしているんですか?
ラッカーニッドルのおかみさん  (歩み出て)昼食二十食分はもう腹に入れちゃったよ。またあったからって怒ることはないだろ。
                     あんたの目に触れたくはないけどね。いくら空腹をごまかしてもまたひもじくなると、ここに足が向いちまうのさ。

95 :名前なし:2009/07/12(日) 14:11:30 ID:Xd0i3vxs
グルーム  (前に出て)あんたにゃ会ったことがあるね、俺の腕をもぎ取った
       刃のある機械で働くようにって、
       薦めたのは俺だ。今はもっと酷いことでもやりかねないよ。
ヨハンナ  なぜあなた方は働かないんです、私はあなた方に仕事を心配してあげたのに。
ラッカーニッドルのおかみさん  どこにだね、屠場は閉まってるよ。
グルーム  また工場は始まったってことだが、いっこう始まっちゃいないのさ。
ヨハンナ  (製造業者たちに)じゃ、あの人たちはまだ待ち続けているんですか?
       (缶詰製造業者たちは黙っている)
       なのに私は、あの人たちが救われたんだと思っていました。
       七日前からあの人たちに雪が降り注いでいるのです、
       あの人たちの命を奪う同じその雪が
       あの人たちを人の目から隠して見えなくしてしまう。
       誰も忘れたがっていることを、私もあっさり忘れてしまい、
       何事も収まった気でいました。
       誰もがもう済んだと言えば、誰も先を聞こうとはしないものです。
       (缶詰製造業者たちに)でもモーラーはあなた方から肉を買ったでしょう?
       私が頼み込んだので、あの人は買ってくれたのです!
       ところがあなた方は相も変わらず、工場を再開しないんですね?
三人  その通り、俺たちは開こうと思っていたんだがね。
スリフト  ところがあんた方はまず牧場主たちの首を締めようとしたじゃないか!
三人  家畜もいないのに、どうやって家畜を殺したらいいんだね?
スリフト  モーラーと俺は、あんた方から缶詰肉を買った、あんた方が仕事を始め、そうして労働者も肉を買えるようになることを前提としてだよ。
       我々があんた方から買い上げた肉を、一体誰が食べるんだね? 消費者が払えないとしたら、一体俺たちは誰のために肉を買ったんだね?

96 :名前なし:2009/07/12(日) 15:22:33 ID:Xd0i3vxs
ヨハンナ  あなた方は、巨大な工場や施設に働いている人たちの道具を握っていらっしゃるんですから、
       せめてその人たちを受け入れてやらなきゃいけません。
       でないとあの人たちは、すっかり途方に暮れてしまいます。つまり一種の搾取が行われているのです、
       そして、最後の血の一滴まで絞られている可哀想な人たちに、おしまいには棍棒を手にとって苦しめている人の頭を殴る以外に、
       自分を救う方法がなくなれば、あなた方は恐がるでしょうね。私には分かっています、その時こそ宗教は蘇り、
       立ち騒ぐ彼を静める油の役目を果たすのです、しかし、だからといって神様は、あなた方の言いなりになって、
       あなた方の豚小屋を掃除してくださるほど、人がよくはありません。私は、そこらじゅういろんな人のところを駆け回りながら、
       私が上にいるあなた方を助ければ、あなた方の下にいる人たちも救われるものと考えました。
       同じ一つの目的のためにやっていることと考えていました。でも私は本当に愚かでした。
       貧しい人たちを救おうとするなら、あなた方の手から救い出さなければならないのでしょうね。
       一体あなた方は、およそ人間の面影を備えたものにまるで畏敬の念を持たないのでしょうか? 
       だったらいつかは、他人もあなた方のことは人間とは思わずに野獣だと考えて、社会の秩序と安全のためにあっさり打ち殺すことになるでしょう。
       あなた方がこうして神の家にやってくる自信をまだ持っているのは、ただ、あなた方が汚れたお金を持っているからなのですよ。
       それがどこからどうやって、あなた方の手に入ったのか、誰でも知っていることです。まともなことで手に入れたのではありません。

97 :名前なし:2009/07/12(日) 15:24:19 ID:Xd0i3vxs
       あなた方が神の御許にやってきたのは間違いです。すぐにでも追い払われなければなりません。そうなのです。
       そんな馬鹿みたいにぽかんと眺めるのは止めなさい、人間を牛のように馬鹿扱いしてはならないことは勿論です、
       でもあなた方は人間ではないのです、出て行ってくださいすぐに。さもないと私はあなた方にかかっていきますよ。
       私を止めないでください。今こそ私は自分の仕事が何か分かりました、今にしてようやく私にはそれが分かったのです。

       (ヨハンナは旗を逆に持って、それで彼らを追い出す。戸口に黒麦藁帽隊が現れる)

ヨハンナ  出て行きなさい! あなた方は神の家を牛小屋にするつもりですか? 第二の家畜取引所にするつもりなんですか? 
       出て行きなさい! ここにはあなた方のようはありません。そういう顔を私たちは見たくないのです。
       あなた方は値打ちのない人間です、出て行ってください、お金がいくらあっても。
三人  そりゃありがたい。だがね、俺たちが出て行くと、四十回分の家賃も否応なしに出て行ってしまうんだがね。
     どっちみち、俺たちは一文だって無駄は出来ないんだからな。家畜市場もいまだかつてなかったような恐ろしい時代に向かっていくんだから。

(缶詰製造業者たちは去る)

スナイダー  (後から彼らを追って走っていく)待ってください皆さん、いかないでください! あの女にはそんな権限はないんです! 
         あれは頭がおかしいんです! すぐにくびにします! あなた方のおっしゃるように、どんなにでもあの女の処分をいたします!
ヨハンナ  (救世軍の人たちに)あんなことをしたのは家賃のためには具合がよくなかったようですね。でもああいうことを黙って見ているわけにはいきません。
       (ラッカーニッドルのおかみさんとグルームに)あの奥にお座りなさい、スープを持ってきてあげましょう。

98 :名前なし:2009/07/12(日) 15:26:05 ID:Xd0i3vxs
スナイダー  (戻ってきて)貧乏人たちをお客に招いて雨水でもご馳走しろ!
         天国へ行っても連中は神のお慈悲はいただけず
         また雪を浴びるんだといってやるがいい!
         謙虚の徳を忘れ 怒りに身を委すとは何事だ!
         心の穢れた連中を威張って追い出すことは何でもない。
         しかし我々のパンのことで文句は言わないでもらいたい。
         パンのことで好奇心を持ちすぎるくせに、
         やっぱり自分だってパンは食べるんだろ! さあ、出て行ってもらおう。
         あんたのような浮世離れは雪の中へ出て行って、雪の降る中で凍えながら自分の正義を守るがいいんだ!
ヨハンナ  ということは、制服を脱げということですか?
スナイダー  制服を脱いで荷物をまとめるんだね! この家を出て行ってもらいたいな。
         あんたが連れ込んだ無頼漢どもも、一緒に連れてってもらいたい。あんたの後をついてまわるのは無頼漢と人間の屑だけなんだ。
         あんた自身もごろつきの仲間になるがいい。荷物を持って行きなさい。

(ヨハンナは出て行き、小さなトランクを持って田舎娘のような服を着て戻ってくる)

ヨハンナ  お金持ちのモーラーの所へ参ります。
       あの人は神を怖れる気持ちも善意も持たないわけではなく
       私たちを助けてくれる意思も持っているのです。
       もう二度とこの上着も黒麦藁帽もかぶる気はありません。
       あのお金持ちのモーラーを私たちの一人として
       心から悔い改めさせ 心の目覚めを歌うこの神の家へ
       あの人を連れて来るまでは、
       戻って来ないつもりです。
       あの人たちは癌の腫瘍のような
       お金に耳を奪われ
       人間らしい顔も侵されているのでしょう。
       そのために遠く引き離されて、
       どんな助けを求める声も
       届かないところにいるのです!
       可哀想な不具者です!
       でもあの人たちの中にだって正しい人もいるでしょう! (退場)

99 :名前なし:2009/07/12(日) 15:27:19 ID:Xd0i3vxs
スナイダー  可哀想な世間知らずめ!
        あんたには分からないのかね、
        巨大な組織の中で雇用者と被雇用者が対立しているんだ
        戦闘中の敵同士だ、およそ和解は出来ないものだ。
        その間を駆け回って、仲介しようというのかね
        結局誰の役にも立たず破滅してしまうんだよ。
マルベリー  (入って来る)もうお金は出来ましたかね?
スナイダー  この地上に神が見つけてくれたささやかな家、ささやかなと申し上げますよ、マルベリーさん、
         この家の家賃は神様が支払ってくださいましょう。
マルベリー  ははあ、払ってくださる、それは結構ですな。それが問題なんですよ! スナイダーさん! 
         神様がお支払いくださる、結構です。しかし神様でも払ってくださらないとすれば、こりゃ駄目です。
         神様が家賃を払ってくださらなければ、神様にはお引越し願いましょう、土曜の夜には、いいですか、スナイダーさん? (去る)

100 :名前なし:2009/07/12(日) 15:29:38 ID:Xd0i3vxs
8 ピーアポント・モーラーは資本主義と宗教の不可欠性について語る。

モーラーの事務所。

101 :名前なし:2009/07/14(火) 00:23:15 ID:WXXQ67/i
モーラー  スリフト、その日はついに来たぞ
       お人よしのグレイアムやあいつと一緒に
       家畜の安値を待とうと思ってた連中が
       俺に提供する義務のある
       肉を買い込まなきゃならん日が。
スリフト  奴らは安くは買いませんぜ、
      今日日じゃシカゴの家畜市場で唸っている牛うや豚は
      全て俺たちのものなんだ。
      奴らがこっちに引き渡す義務のある
      豚って豚は一匹残らず
      俺たちの所で買わされる、
      こいつは高くつきますぜ。
モーラー  さあ今こそ買い手たちに、仕事にかからせるんだぞ、スリフト!
       家畜市場に出かけて行き、牛や豚はどこかにいるかと訊いて回って
       市場を悩ませてやるんだな。
       家畜らしければ何でもいいから、
       手に入れたいがどこかと訊くんだ。
       そうすりゃたちまち値は上がる。
スリフト  ところでヨハンナの消息は? 家畜市場の噂では、
      あんたはあの娘と寝たってことですが。
      私はそいつを打ち消した。あの娘が教会から私たちを
      追い払ったあの時以来、あの娘は消息不明です。
      まるで黒いシカゴの町が、あの娘を呑み込んじまったみたいに。
モーラー  あの娘が君らを追っ払った、あの話は気に入ったよ。
       全くあの娘ときたら、恐いもの知らずというわけだ。
       もしも俺が居合わせたとしても あの娘に追い出されてただろう。
       俺みたいな奴が入れないってことが
       わしの気に入ってるとこだ。あの娘も教会も気に入った。
       スリフト、値を八十に上げろ、そうなりゃグレイアムたちは、
       すっかりへたばってしまうだろう、そいつを俺たちは踏みつけて、
       跡形もなくしてしまうんだ。
       肉は一オンスでも出す気はねえ、
       今度こそ奴らを徹底的に丸裸にしてやるんだから。
       これこそ俺の本領だ。

102 :名前なし:2009/07/14(火) 00:25:04 ID:WXXQ67/i
スリフト  あなたが先頃さらけ出した弱気をすっかり返上したのは
      大変結構だと思います。それじゃここからひとっ走り
      家畜の買い上げのありさまを覗いてくるとしようかな。(去る)
モーラー  今こそこの憎たらしい町の
       皮まですっかり剥いでやるぞ。あの青二才どもに
       食肉商売を教えてやらあ。奴らに目にもの見せてやり
       「極悪非道」と喚かせてやるぞ。

(ヨハンナ、トランクを持って入って来る)

103 :名前なし:2009/07/14(火) 00:26:38 ID:WXXQ67/i
ヨハンナ  こんにちは、モーラーさん。あなたを捕まえるのはなかなか難しいんですね。荷物はしばらくそこに置かせていただきます。
       もう、救世軍にはいないんです。なんだか曖昧な所があるんです。それで一度、モーラーさんのその後の様子を拝見しにいこうと考えました。
       神経をすり減らす伝道の仕事を止めましたので、これからは一人一人の人間を伝道の相手にすることにしました。
       ですから、許してくださるなら、あなた一人を相手にいたします。
       本当はね、あなたが、他の人たちよりずっと近づき易い方だってことは、分かっていたんです。
       その馬の毛のソファーは立派なものですね。でもなぜカバーをかけておくのですか、それにくしゃくしゃなんですね。
       そう、あなたは事務所にお休みになるんですね? 
       あなたのような方は、大きな御殿のような家に住んでらっしゃるに違いないと考えてましたのに。
       (モーラーは黙っている)でもモーラーさん、牛肉王の身分のあなたが、こんな小さなところに住んでいらっしゃるのは正しいことです。
       なぜか私、あなたにお会いすると、神様の話を思い出すのです。神様が天国の楽園のアダムの所へやって来て、こうおっしゃるのです。
       「アダムよ、お前はどこにいるのだね?」ご存知でしょうか? (笑う)
       アダムはまたもや、木の茂みのかげで肘の先まで雌鹿の身体の中に手を入れているのです。
       血まみれになって神の声を聞くのです。そこでアダムは、そこにいないようなふりをするのです。
       でも神様は少しも容赦なさらないで、なおもおっしゃいます。「アダムよ、お前はどこにいるのだね?」
       すると今度はアダムも、小さな声で顔を真っ赤にしながら言うのです。
       「よりによって、私が雌鹿を殺したところにお出になりましたね、神様。
       何も知らないでください、分かっております、こんなことはしてはいけなかったのです」
       でもあなたの良心はきっともうこんな話をお聞きになっても痛まないはずですわね、モーラーさん。

104 :名前なし:2009/07/14(火) 00:28:03 ID:WXXQ67/i
モーラー  すると、あんたはもう救世軍にはおらんのかね?
ヨハンナ  ええ、モーラーさん。これから先も。
モーラー  すると、いったいなんで暮らしているんだね?

(ヨハンナは黙っている)

モーラー  すると失業中かい。救世軍を辞めてどのくらいになるのかね?
ヨハンナ  八日です。
モーラー  (奥へ入って泣く)何と変わり果てたもんだ、たった一週間の間に!
       あの娘は何をしていたんだ? 誰と付き合っていたんだろう?
       何か言いたそうにしているが、一体何のことだろう?
       あの娘がどこで暮らしてきたのか、私には全く分からんぞ。

(盆の上に食事をのせて持って来る)

       あんたはすっかり変わったようだね、さあ食事を
       持って来てあげた。わしは食べん。

(ヨハンナは食事をじっと見る)

ヨハンナ  モーラーさん、私がお金持ちの人たちを救世軍の本部から追い出したもので……
モーラー  ……あの話はわしにはとても面白かったよ、それに私にはいいことだと……
ヨハンナ  家賃で暮らしている大家さんが、次の日曜までに出てもらいたいと言ったんです。
モーラー  なるほど、すると救世軍は目下財政的には苦しいのだね?
ヨハンナ  そうなんです。ですから私は一度モーラーさんをお訪ねしようと思ったのです。(がつがつ食べ始める)
モーラー  心配しないでも大丈夫だ、私が市場へ出かけていって、あんたが他に必要な金を作ってあげよう。
       私にだってまだそれくらいは出来る。いいとも、この町を丸裸にしてもその金は作るよ。あんた方のためにするんだ。
       無論金を作るのは大変なことだ、だが、わしはやるよ。それでいいんだろ、あんた方には。
ヨハンナ  ええ、モーラーさん。

105 :名前なし:2009/07/14(火) 00:29:16 ID:WXXQ67/i
モーラー  じゃ、帰ってあんた方の仲間に言いなさい、金は土曜までに届く。モーラーが調達してくれるとな。
       モーラーがたった今金を作りに家畜市場に出かけて行ったとね。あの五万の労働者の問題は、思うようにうまくはいかなかった。
       あの連中にすぐに仕事を見つけてやるわけには行かなかったよ。しかし、わしはあんたを助けてはやれる、
       あんたの救世軍の面倒を見るくらいのことは出来る、あんた方のために金を作ってあげよう。さあ、走って行って、あんたの仲間に言いなさい。
ヨハンナ  はい、モーラーさん。
モーラー  約束の書面を書いた。これを持って行きなさい。
       わしだって屠場での仕事の口を待っている
       連中を可哀想に思うよ。それも大した仕事じゃないのにな。
       五万の連中が、
       屠場で立ちんぼで夜になっても帰ろうとしないんだな!

(ヨハンナ、食べるのを止める)

       しかしこいつも商売だ、生死を賭けた商売なんだ、
       俺が自分の階級で、第一人者になりうるか、
       それとも暗い屠場への、破滅の道を歩むかって問題だ。
       だのに人間のかすどもが 屠場にいっぱいひしめきあって
       ことを面倒にしているのだ。
       こっちの事情は説明したが、わしはあんたのその口から
       商売のことももちろん含めて、わしのしたことは正しいと、
       ぜひとも言ってもらいたかった。わしはあんたの忠告を聞いて
       製肉トラストから肉を買い 家畜屋の牛も買ってやった、
       わしがよいことをしていると、証明してもらいたいのだ。
       あんた方は貧乏で、頭の上の屋根までも
       取られそうだと聞いたから、証明してくれさえしたら、
       一肌脱いであげたいんだ、わしの立派な心がけを見せてあげたいからね。
ヨハンナ  すると労働者は相変わらず、屠場の前で待たされるわけですか?

106 :名前なし:2009/07/14(火) 01:30:59 ID:WXXQ67/i
モーラー  なぜ金に反感を持つんだ? あんただってお金がなけりゃ
       すっかり様子が変わっちまうだろ?
       金のことをどう思ってるんだ? 言ってごらん、
       わしは知りたい、頭の悪い奴らのように
       金を穢らわしいと思ってはいない。現実をよく考えなさい。
       俗っぽい真理って奴は、感じはなるほど悪いかもしれんが、
       真実には違いないんだ、何もかもぐらついて、
       偶然の手に委ねられ、お天気まかせってのが人間だ。
       しかし金ってものは、何かを改良する手段なのだ、
       少数の人のためにしろだ。おまけにさ、この世の仕組みを見てごらん!
       人間が思考を始めてから、幾度も挫折を続けながら、何度も新規まき直しで
       作り出してきたこの機構を。
       絶えず犠牲を要求する。巨大なこの機構は、
       創り出すのは難しいの、しかも常に労苦に呻吟しながら
       創り出されてきたものだ。この地球の不都合な条件から
       無理矢理可能なことを推し進める、いつの時代もそうだった。
       そしていつの時代にもこの機構は、最上の連中に守られてきた。
       だっていいかね、もし俺がこういう仕組みに反対し、
       夜もろくろく眠れなくなり、そういうことから手を引いても、
       大して大勢には影響ない、せいぜいたった一匹の蚊が
       山崩れを塞ぎ止める仕事から 手を引いたようなもんだ。
       俺はいないも同然で、いっさいは俺を踏み越えて
       進行を続けていくだろう。
       これまでのいっさいのことが 根こそぎひっくり返れば話は別だが、
       これまでとは全く別の、前代未聞の新しい人間の評価に従って
       今までの世界の仕組みが根本から変わればともかくね。
       でもこの新しい世界観ってやつはあんた方だって嫌だろう。

107 :名前なし:2009/07/14(火) 01:32:07 ID:WXXQ67/i
       俺たちだってご免だよ、俺たち資本家もあんた方の神様も
       不必要だって言うんだから。神様も役目がなくなって
       片付けられてしまうんだぜ、だからあんたたちは俺たちと
       手を組まなければいけないんだ。あんた方は自分では
       犠牲は捧げないだろうし、俺たちだってあんた方に
       犠牲になれとは言わないが、犠牲になっていく奴には
       祝福を垂れてもらいたいんだ。
       要するに、あんた方は
       神様をまた担ぎ出すことさ
       たった一つの救いとしてね。
       神様のために太鼓を鳴らし、
       貧民街の真ん中に、神様に根を下ろしていただいて
       神のみ声を屠場に響かせてくれりゃいいんだよ。
       そうしてくれれば十分さ。
       (書面を差し出す)さあ、君の取り分を持って行きな、しかしこいつを受け取る前に
       何でこいつをもらうかってことは、知っておいてもらいたい!
       ほうら、これが証文だ、四年分の家賃を払うと書いた。
ヨハンナ  モーラーさん、あなたがおっしゃってることが、
       私にはよく分かりません、また分かろうとも思いません。
       (立ち上がる)やっと神様に救いの手が、差し伸べられることになったのを
       私は喜ばなきゃいけないのです。それは分かっているのですが、
       でも私は本当は、まだ救いの手の届いていない
       あの人たちの仲間なのです。あの人たちの所には
       まだ援助はされていません。
モーラー  救世軍に金をもって帰ってやりさえすれば、
       また連中に引き取ってもらえるよ。拠り所のない生活は
       あんたのためによくないよ。救世軍の連中だって
       目当ては結局金なんだぜ、それが悪くはちっともないんだ。

108 :名前なし:2009/07/14(火) 01:33:23 ID:WXXQ67/i
ヨハンナ  救世軍の人たちが
       あなたのお金を受け取るなら、勝手に受け取ればいいんだわ。
       でも私は屠場で待っている人たちの仲間になります。
       工場が再開するまでは、
       私はあの人たちと同じものしか食べないつもりです。
       雪があの人たちの上に降りかかるなら、私も雪を浴びましょう。
       あの人たちのやってる仕事を私もやってみる気です。
       私だってお金はないし、正直な仕方でやっていけば
       稼ぎはまるでない人間です、仕事の口がない時は
       私の仕事だってないのです。
       貧しさを食い物にしているあなたは
       貧しい人を見ていられないとおっしゃるけれど、
       自分がちっとも知らないことを
       ちっとも認めようとはなさらない。
       あなたのせいで放り出されて、
       屠場に座り込む人のことは、
       見て見ぬふりをしているのです。
       もしこれから先私にお会いになりたい時があったら、
       私は屠場におりますからね。(退場)
モーラー  いいかモーラー、
       お前は今夜、一時間ごとに起きるんだ、
       窓から外を眺めて、雪が降っているかどうか見るんだぞ。もし雪が降っていたら、
       その雪はお前の知っている、あの娘の上に降っているんだ。

109 :名前なし:2009/07/15(水) 23:46:41 ID:qm+gdX27
9 ヨハンナのどん底への第三の歩み、吹雪。

a
屠場のある地区。

(ヨハンナ。彼女の傍にグルームとラッカーニッドルのおかみさん)

110 :名前なし:2009/07/15(水) 23:47:27 ID:qm+gdX27
ヨハンナ  ねえ、一週間前のある晩
       私はこんな夢を見たのよ、
       目の前に小さな原っぱが見えたの。
       本当に小さな原っぱで、小さな木の影もはみ出すくらい。
       大きな建物に挟まれて、
       おまけに数え切れないほどの 群衆がひしめいていたからです。
       そんな狭い場所なのに、その群集の数といったら
       雀さえそれだけは入りきれないと 思われるくらいの数でした。
       それほどの人がひしめいていたので
       原っぱはひしゃげてしまい、
       真ん中がだんだん盛り上がってきました。
       原っぱの縁のところに
       群集は必死でしがみついてぶら下がっていました。
       そのうちどこからともなく、意味もはっきりしない
       叫びが流れてくると、人々は流れのように動き出しました。
       そこで私は行列を見たのです、街路を、
       そしてよく知っている
       シカゴの町を、あなた方を見たのです!
       あなた方は行進していました、その中に私もいました。
       行列の先頭に、ものもいわず、兵士のような足取りで、
       額から血を流し、自分も知らないような勇ましい言葉を
       叫びながら歩いている私が見えたのです。
       四方八方から、沢山の行列が歩いていきますが
       私は五人にも六人にもなって
       同時にいろんな行列の先頭に立っているのです!
       若い私、年とった私、泣いている私、いろんな私が歩いていました。
       やっと私らしくなくなって我を忘れ、慎みも怖れも忘れて
       罵り叫んでいる私もいました!

111 :名前なし:2009/07/15(水) 23:48:27 ID:qm+gdX27
       私の足の触れるものは、全て変わっていきます
       物凄いばかりの破壊力です。私の及ぼす影響力が、
       天体の運行にまではっきり作用を起こしていきます、
       そして私たちの知っている隣近所の町々を根本から変えていくのです。
       こうして行列は進んでゆき、私も一緒に進みました。
       雪に包まれていましたから、敵の攻撃をかわせました、
       飢えを忍んできたせいで身体が透明になっているので、
       敵の的にもなりません。もともと居場所がなかったので
       敵には目標がつかめません。苦しみには慣れっこなので、
       誰も苦しくはなかったのです。
       こういう具合で行列は、どうせ頼りにならぬ場所を捨て
       どこでも自分の居場所にしながら、果てしなく進んでいったのです。
       こんな夢を私は見ました。
       今日になったら私にはやっと意味が分かってきました。
       明日にならないうちに私たちはこの屠場を出発し
       夜明けにはあなた方の町シカゴに到着するんです。
       私たちの貧しさを、この酷い惨めさを、晒しものにするのです。
       町の広場に出かけていって人間らしい顔をした人に、この惨めさを訴えるのです。
       それから先はどうなるか、それは私にも分かりません。
グルーム  ラッカーニッドルのおかみさん、あんたにはよく分かったかい? 俺にはさっぱり分からねえ。
ラッカーニッドルのおかみさん  この女が救世軍の本部であんなに大口開けて喚かなかったら、
                    今でもあたしたちは暖かい思いをしてスープをすすっていられたのによ。

112 :名前なし:2009/07/15(水) 23:49:55 ID:qm+gdX27
b
家畜取引所。

モーラー  (缶詰製造業者たちに)ニューヨークの友人たちが俺に手紙を寄越してくれた。
       今日南部諸州の関税法が撤廃されたよ。
缶詰製造業者たち  畜生、関税がなくなったって?
             ところがその段になって俺たちには
             売る肉がちっともない!
             とっくに安値で売っちまったからな。
             今度は値上がりしていく高価な
             肉を買わなくちゃならないのか!
家畜業者たち  畜生、関税がなくなったって?
          ところがその段になって俺たちには
          売る家畜がちっともない!
          とっくに安値で売っちまったからな!
小相場師たち  畜生、人間の経済の
          永久の法則が、俺たちには
          永久に分からないのか!
          何の前触れ一つなく
          火山がいきなり爆発して
          あたり一面を砂漠にしちまう!
          何の前触れ一つなく
          砂漠の海の真ん中から
          ぽっかり金儲けの小島が浮かび出て来るんだよ!
          誰にも教えてもらえないし、
          誰にも分からないことなんだ!
          ところが一切合財をさらっていく 汚ねえやつがいるもんだ!

113 :名前なし:2009/07/15(水) 23:51:11 ID:qm+gdX27
モーラー  そういうわけで しかるべき値の
       缶詰肉が要るわけだから
       俺はあんた方に缶詰肉を
       引き渡すように要求したい。
       契約によってもらえる分は
       すぐにでも引き渡してもらいたい。
グレイアム  あの時の値段でかね!
モーラー  契約書通りにだよ、グレイアム!
       すっかり取り乱している時に結んでしまった契約だが、
       今思い出してみると確か八千万ポンドだね。
缶詰製造業者たち  値段がこれから上がろうというのにどうやって家畜を手に入れたらいいんだ?
             誰かが家畜を買い占めちまった。
             その買い占めたやつが誰か、知ってるやつは一人もいない
             モーラー、どうか俺たちの契約を解消してくれないか!
モーラー  お気の毒だが、こっちだってどうしても缶詰が要るんだよ。
       でも家畜はたっぷりいるぜ、ちょっと高いは高いがな、立派なやつが、
       たっぷりな。買えばいいじゃないか!
缶詰製造業者たち  家畜を買えだと、今になって畜生、何をいいやがる!

114 :名前なし:2009/07/16(木) 00:14:49 ID:LAN7/xgs
c
屠場の近くの小さな飲み屋。

(男女の労働者たち、その中にヨハンナ。黒麦藁帽隊がやってくる。
ヨハンナは立ち上がり、次のことが行われている間、絶望したように彼女らに出て行くように合図する)

115 :名前なし:2009/07/16(木) 00:16:34 ID:LAN7/xgs
ジャクソン  (救世軍少尉、忙しげな歌の後で)
        兄弟たちよ、なぜあなた方は、イエス・キリストのパンによって力を得ようとはしないのですか?
        私たちはこんなに晴れやかで楽しいのです。
        われらが主イエス・キリストを見出したからです。
        イエス・キリストの御許へ参りましょう、直ちに!
        ハレルヤ!

(救世軍の一人の女は、労働者たちに語りかけながら、その間に自分の同僚に合いの手のように自分の意見を挟む)

マルタ  (こんなことをしたって無駄でしょうね?)兄弟の皆さん! 姉妹の皆さん! 
      私だって皆さんと同じように、かつては悲しそうに道端に立っていたのです。私の中に巣くっているアダムのような原罪人間は、
      食べること、飲むことの他は、何も求めませんでした、でもやがて私はわが主イエスを見出したのでございます。
      すると私の心は晴れやかに楽しくなったのです、そして今は(この人たちは聞いてやしないわ!)
      わが主イエスのことを考えただけでそうなります。イエスは私どもがいかに悪業を重ねる身でありましょうとも、
      苦しみを通じて我々を救済してくださるのです。で、私はもはや飢えも乾きも覚えません、
      われらが主イエスの言葉を求める飢え渇きの他は何もありません(何の役にも立たないわ)。
      主イエスの御許には暴力はありません、平和があるのです。憎しみはありません、愛があるのです。(全然無駄だわ!)
      どうか、この鍋の火の消えることのないようにお願いします!
黒麦藁帽隊  ハレルヤ!

(ジャクソンは鍋を回す。しかし誰もその中に金を入れるものはいない)

         ハレルヤ!

116 :名前なし:2009/07/16(木) 00:17:46 ID:LAN7/xgs
ヨハンナ  こんな冷たい所に来て
      演説なんかまでやって、みんなを怒らせないほうがいいのに!
      私だって、今はもう
      あんな言葉は聞きたいとは思わないのに。
      昔は本当に大好きでいていい気持ちにもなれたものだけど! 一人でいいから
      中の誰かが一言こう言って何かに訴えてやれないかしら、ここは
      雪と風しかない場所、黙った方がいいわ! と。
一人の女  やらしておきゃいいさ。あの連中だって、ちっとばかり暖かさと食べ物が欲しいからこそ、こんな仕事もしなくちゃならないのさ。
        私だってやりたいくらいだよ!
ラッカーニッドルのおかみさん  いい音楽だったじゃないか!
グルーム  美しきものは短し。
ラッカーニッドルのおかみさん  あの連中はいい人たちだよ。
グルーム  いいものは短い、短いものはいい。
さっきの女  なんだってあの連中は、私たちと話し合いもしないで悔い改めさせようとするんだね?
グルーム  (金を数える仕草をして)慈善鍋の火を絶やさないようにしてやる気があるかい、スウィンガーンのおかみさん?
さっきの女  そりゃあ音楽はとってもよかったよ。でもね私は待っていたのさ、
        スープの一皿でもくれるんじゃないかってね、だって鍋を持っていたからね。
一人の労働者  (驚いて)へえ、本当にそんなことを考えていたのかい?
ラッカーニッドルのおかみさん  あたしだって不言実行の方が好きだね。お話ならもうたっぷり聞いてるよ。
                    あの連中が黙ってくれたら、今夜の行く先の才覚がついたかもしれないよ。
ヨハンナ  ここには何かをやってみようとする人たちはいないんですか?
さっきの労働者  いるよ、共産党だ。
ヨハンナ  その人たちは、犯罪を唆している人たちじゃないんですか?
さっきの労働者  違うよ。

(静寂)

117 :名前なし:2009/07/16(木) 00:18:34 ID:LAN7/xgs
ヨハンナ  どこにいるんです、その人たちは?
グルーム  ラッカーニッドルのおかみさんが知ってるよ。
ヨハンナ  (ラッカーニッドルのおかみさんに)どうして知っているんですか?
ラッカーニッドルのおかみさん  いいかね、あたしがまだあんたのような人たちを当てにしなかった頃は、
                    うちの亭主のことでちょいちょいその人たちのところへ相談しに行ったものさ。

118 :名前なし:2009/07/16(木) 01:06:15 ID:LAN7/xgs
d
家畜取引所。

缶詰製造業者たち  俺たちは家畜を買うぞ! 若い家畜!
             太らせた家畜! 仔牛! 牡牛! 豚!
             さあ、売りに出してくれ!
家畜業者たち  何一つありやしねえ! 売れるものは一切合財
          みんな売っちまったよ。
缶詰製造業者たち  売り切れだ? 駅には家畜が 鮨詰めじゃねえか。
家畜業者たち  売約済みのだ。
缶詰製造業者たち  誰に売ったんだ?

(モーラー登場)

缶詰製造業者たち  (彼の方に殺到する)シカゴじゃ牛は手に入らん!
             ちょっと猶予をくれないか、モーラー。
モーラー  決まった通りにしてもらうよ、肉を提供してもらうぜ。
家畜業者たち  ケンタッキーの牛八百を四百でいこう。
缶詰製造業者たち  話にならん、お前ら気でも狂ったか? 四百だって?
スリフト  俺が買った。四百だ。
家畜業者たち  牛八百をサリヴァン・スリフトに四百で。
缶詰製造業者たち  モーラーのやつだ。俺たちが言った通りだ。奴なんだ!
             いかさま野郎め、俺たちに缶詰肉を寄越せと責めながら
             家畜を買い上げていやがるんだ! あいつに缶詰で渡すのに必要な肉を
             あいつから買わなくちゃならないんだ!
             汚い肉屋め! いっそ俺たちに肉を切り取ってくれ!
モーラー  君たちが牛だってなら、君たちを見て食欲が起きても不思議はないわけだ!
グレイアム  (モーラーに向かって突進しようとして)生かしちゃおけねえ、こいつ、ぶち殺してやる!

119 :名前なし:2009/07/16(木) 01:07:01 ID:LAN7/xgs
モーラー  そうかい、グレイアム。じゃ、こっちは君の肉の缶詰がほしい!
       自分を缶に詰めればいいんだ。
       わしは君たち商人に、肉商売というものを
       とっくり教えてやりたいね! 今後はここからイノリイ州にいたるまで、
       四つ足のものなら仔牛だろうが、なんだろうが
       俺の所でしか買えんぞ。しかもいい値段でだ。
       まず手始めに、牛五百を五十六で売りに出そうぜ。

(静寂)

       あまり需要がないのかな、ここじゃ誰も牛が要らないとみえる。
       それじゃいっそ六十といこう! 俺の缶詰も忘れんようにな!

120 :名前なし:2009/07/16(木) 01:09:50 ID:LAN7/xgs
e
屠場のほかの場所。

(プラカードには「屠場をロックアウトされた労働者は団結せよ! ゼネストに立ち上がれ!」と書いてある。
小屋の前には労働組合の本部から派遣された二人の男。彼らは労働者の一団と語り合っている。ヨハンナが来る)

121 :名前なし:2009/07/16(木) 01:11:42 ID:LAN7/xgs
ヨハンナ  あれが失業者の問題の指導者の方たちですか? 私もお手伝いします。
       私は公衆広場や大きなホールでも演説をしたことがあります、経験があるんです。
       どんな困難も忘れません。立派に説明できると思います。私の考えではすぐに何か手を打たなくてはいけないのです。
       私もいろいろなプランをもっています。
組合の指導者  みんな聞いてくれ、今のところ缶詰肉屋の連中は工場再会の気持ちをこれっぽっちも見せちゃいない。
           まず初めにあの搾取者ピーアポント・モーラーは、工場の再開を促進するような気配を見せた、彼は製肉業者に大量の缶詰を発注したからだ。
           業者は契約によってモーラーにこの缶詰を提供する義務がある。ところが缶詰に必要な肉は、
           モーラー自身が握っていてそれを出そうなどとはちっとも考えていないことが判明した。
           今我々に分かっているのは、我々労働者が肉屋どもの言いなりになっていたんでは、もはや屠場に戻ることは出来ないし、
           前の賃金でも働けないということだ。こういう状況のもとにあっては、我々の救いはただ暴力の使用だけだということを認識せざるを得ないのだ。
           市内の大工場は遅くとも明後日にはゼネストに入ることを約束してくれた。この報告を屠場のあらゆる場所に伝えなければならない。
           なぜなら、このニュースを知らない限り、何らかのデマに踊らされて大衆は屠場を離れ、
           肉屋どもの提供するゼネストは中止になったとか、ありとあらゆるデマを撒き散らすに違いない。
           それゆえ、ガス、水道、電気の公共企業の組合がストライキによって我々を支援しようとしていることが書いてあるこの手紙を、
           今夜七時に、屠場の各所で我々の指令を待っている代表に手渡してもらわなくちゃならないのだ。
           ジャック、これを仕事着の下に隠していってシュミット小母さんの食堂の前で代表者を待っていてくれ!

(一人の労働者が手紙を取り、去る)

122 :名前なし:2009/07/16(木) 01:13:10 ID:LAN7/xgs
別の労働者  グレイアム工場の代表者の分を俺にくれ、俺は奴を知ってるんだ。
指導者  二十六番街ミシガン公園の角だ。

(労働者は手紙を受け取り、去る)

指導者  十三番街、ウェスティングハウス・ビルのそばだ。(ヨハンナに)一体あんたは何者だね?
ヨハンナ  勤め先を首になったんです。
指導者  どこの職場だね?
ヨハンナ  新聞を売っていたんです。
指導者  誰のために働いていたんだね?
ヨハンナ  新聞売り子です。
一人の労働者  きっとスパイだぞ。
指導者  そうじゃない、俺はこの人を知っている、救世軍にいたんだ、警察にもそう思われている。
      この娘が俺たちのために働いているなんて、誰も疑う奴はいないだろう。都合がいいぞ、
      クライドル工場の仲間が来ることになっているあそこは、ポリの見張りが厳しい。この娘ほど目立たない人間は、他にいないようだ。
第二の指導者  この娘に渡した手紙を、この娘がどうするか誰が保証する?
第一の指導者  誰も保証はしない。(ヨハンナに)
          網の目が一つでも破れちまったら
          もう網の役には立たない
          魚は破れ目から出入して
          網なんかないも同然になる。こうなったら突然
          網の全部の目が役に立たなくなるんだよ。
ヨハンナ  四十四番街で新聞を売っているんです。スパイなんかじゃありません。心からあなた方の問題を考えているんです。
第二の指導者  俺たちの問題? じゃ、あんたの問題ではないのかね?

123 :名前なし:2009/07/16(木) 21:49:36 ID:4b1nWP7f
ヨハンナ  工場主があんなに沢山の人たちを路頭に放り出したのに、それでも一般の人たちは無関心なんです。
貧しい人たちの貧しさがお金持ちの利益になればいいと言わんばかりじゃないですか! 
もしかしたら貧しさそのものが、貧しい人たちの仕事のように考えられているのかもしれません!

(労働者たち、げらげら笑う)

ヨハンナ  こんな非人間的なことはありません! 私は、モーラーのような人のことを考えてみるのです。

(再び爆笑)

ヨハンナ  なぜ笑うのです? 私にはあなた方の悪意が正しいこととは思えないのです。
       あなた方がモーラーのような人間は人間じゃないと、何の証拠もなく信じようとしている悪意を正しいことと思えないのです。
第二の指導者  証拠はないわけじゃないよ。この娘に手紙を渡しても大丈夫だな。
           あんたは知ってるね、この娘を、ラッカーニッドルのおかみさん?
           (ラッカーニッドルのおかみさんは頷く)この娘は正直なんだろうね?
ラッカーニッドルのおかみさん  正直だよ、この人は。
第一の指導者  (ヨハンナに手紙を渡す)グレイアム工場の第五倉庫に行ってくれ。
           三人の労働者がやってきて、辺りを見回しているのを見たら、クライドル工場から来たのか、と訊いてみるんだな。
           その連中にこの手紙を渡してもらいたいんだ。

124 :名前なし:2009/07/16(木) 21:51:06 ID:4b1nWP7f
f
家畜取引所。

小相場師  株はどんどん下がっていく! 屠場は
        株で食ってる俺たちは、一体どうなっちまうんだ!
        ちびちびと小金を貯め、そのへそくりをすっかりはたいた
        もともと無力な中産階級は、一体どうなっちまうんだ?
        あのグレイアムのような奴は、細切れにして吹っ飛ばせ。
        俺たちがあいつの血腥いさじにくっついて、
        配当を貰っていた株券を、
        あいつが紙屑にしちまわんうちにだ。
        さあ家畜を買いこんでくれ、価格はいくらでもいいじゃないか?

(この場面の間、支払いを停止した会社の名が呼ばれている、「メイヤーズ株式会社は取引停止」など)

缶詰製造業者たち  俺たちにはとても買えん、値は七十まで来ちまったんだ。
買い手たち  奴らをぶっ倒せ、奴らは買わないぞ、あの大物どもめが。
缶詰製造業者たち  牛二千を七十って声がかかった。
スリフト  (柱のそばのモーラーに)値をもっと引き上げなさい。
モーラー  ごらんのところ君たちは、わしが仕事を作り出す気で
       君たちと結んだ契約を 果たせなくなったらしい。
       ところが仕事の口も出来ず、連中は外の屠場に
       相変わらず立ちんぼだというじゃないか。しかし今こそ
       君たちの後悔する時が来たんだ、もういい加減に売約済みの
       缶詰を寄越してもらいたい!
グレイアム  それがこっちにゃできないんだ、なぜって肉がすっかり
        市場から消えちまったからだ! 牡牛五百頭を七十五で。
小相場師たち  そいつを買えったら、犬畜生め!
          奴らは買わねえ、それより屠場を人の手に
          引き渡すほうがましなのか。

125 :名前なし:2009/07/16(木) 21:52:36 ID:4b1nWP7f
モーラー  これ以上高値はつけられんよ、スリフト
       奴らももうお手上げだ。
       奴らを出血さすのはいいが、
       くたばらしちゃったらおしまいだ、
       奴らが参ってしまったら、こっちもおしまいになるんだから。
スリフト  なあにまだ限界じゃない、もっと値を張りましょう。牛五百頭を七十七で。
小相場師たち  聞いたか、え、七十七だと! 一体なぜあんたたちは
          七十五で買わなかった? 
          もう七十七になってるぞ、そしてまだまだ上がるんだ。
缶詰製造業者たち  俺たちはモーラーに缶詰を引き渡して五十しかもらえんのに、そのモーラーから牛を七十じゃ買えやせん。
モーラー  (二、三の者に尋ねる)俺が屠場にやった連中はどこだ?
一人の男  あそこに一人いますよ。
モーラー  さあ、話してくれ。

(刑事一が報告する)

刑事一  大変な群集です。あれじゃヨハンナを探して名前を呼んでも、ヨハンナって女が十人も百人も名乗り出てきますよ。
      座り込んで待っている連中は、顔も名前ももう区別がつきません、おまけに一人の人間の声なんてとても聞こえるもんじゃありません。
      走り回って迷子になった家族の名を呼んでいる連中も沢山います。組合が活動している地帯では特に情勢が不穏です。
モーラー  なんだって? 組合が動いている? 警察は組合を暴走させとく気か? 何たることだ! 
       すぐに警察に電話して、わしの名前を言うんだな、俺たちが税金を払ってるのは何のためか訊いてみろ。
       扇動者の頭にがんと食らわして、奴らに思い知らせてもらいたいと言え。

(刑事一去る)

126 :名前なし:2009/07/16(木) 21:53:56 ID:4b1nWP7f
グレイアム  俺たちを参らす気だって言うなら、
        千頭を七十七で譲ってくれ、モーラー、
        これで俺たちもおしまいだ。
スリフト  五百頭は七十七でグレイアムが買った。残りのやつは八十だ。
モーラー  (戻って来る)俺はもうこの商売があまり面白くなくなったぜ、
       スリフト、全くこれじゃやりすぎかもしれん。
       八十まで上げてもいいが、八十で売ってやれ。
       その辺で手離して奴らを勘弁してやろう。
       これでもう沢山だ。町にも一息つかせにゃならん。
       わしには別の心配があるんだ。
       スリフト、仲間の首を締め付けるのは、
       わしの思っていたほど愉快なことじゃなかったよ。

(刑事二を見る)

       あの娘が見つかったか?
刑事二  駄目です、救世軍の制服をきた女は一人もいませんでした。屠場には十万からの人です、
      おまけに真っ暗で、突き刺すような風が叫び声をかき消しちまうんです。おまけに警察が屠場の連中を排除し始めました。
      もう弾丸が飛び始めてますよ。
モーラー  発砲したか? 相手は? ああ、もちろん相手は分かってる。
       変だな、ここじゃまだ全然聞こえん。
       するとあの娘はまだ見つかっていないのに、弾丸が飛び出したんだね?
       電話ボックスに行って、ジムを探して伝えてくれ、
       もう電話はかけるなとね、でないとまた
       発砲を命じたのは俺たちだなんて言われるからな。

(刑事二、去る)

メイヤーズ  千五百頭を八十で。
スリフト  八十じゃ五百頭しか売らないよ!
メイヤーズ  八十で五千売れ! この強欲め!
モーラー  (柱の所に戻って来る)スリフト、俺は気持ちが悪くなってきた、折れてやりな。
スリフト  まだそんな気はありませんな。奴らはまだ買えますよ。あんたが弱気を起こしても、私はまだまだ上げますぜ。

127 :名前なし:2009/07/16(木) 21:55:18 ID:4b1nWP7f
モーラー  俺は一息つきたいんだ、スリフト。
       商売は君が続けてくれ。俺にはもう出来ない。俺の
       気持ちに従って続けるんだぞ。俺のせいでこの上
       また何か起こるぐらいなら俺はいっさいを投げ出したいよ! 八十五から上はもう上げるな!
       俺の気持ちに従ってくれ。俺の気持ちは分かるはずだ。

(去っていく時、彼は新聞記者たちに会う)

新聞記者たち  なんかニュースはありますか、モーラー?
モーラー  (走り去りながら)屠場中に、今俺が家畜をすっかり手放したから、家畜が手に入るようになったと広告してくれ、
       こうでもしないと暴力沙汰が持ち上がるからな。
スリフト  牛五百を九十だ!
小相場師たち  俺たちはモーラーが八十五で
          売りたいって言ったのを聞いたぞ。スリフトは全権委任されてはいない。
スリフト  嘘だ。これから俺はお前たちに教えてやるつもりだ。
      缶詰の肉を売りながら
      肉はまるでないってのが
      どういうことか教えてやる!
      牛五百を九十五だ。

(怒鳴り声)

128 :名前なし:2009/07/16(木) 22:12:03 ID:4b1nWP7f
g
屠場。

(大勢の待っている人たち、その中にヨハンナ)

人々  何だってあんたはここに座っているんだね?
ヨハンナ  手紙を渡さなくちゃならないんです。男の人が三人来ることになっているんです。

(新聞記者の一団が、一人の男に案内されてやってくる)

男  (ヨハンナをさして)あの女ですよ。(ヨハンナに)新聞社の人だ。
新聞記者たち  ハロー、あんたが黒麦藁帽隊のヨハンナ・ダークですか?
ヨハンナ  違います。
新聞記者たち  僕らモーラー氏の事務所で働いているんですがね、あんたは工場が再会するまでは、屠場を出て行かないと誓ったって話ですね。
          ほら、これを読んでごらんなさい、一面のトップ記事を。(ヨハンナは顔を背ける、新聞記者は読み上げる)
          我らが屠場の聖女マリアは神が屠場の労働者たちと同盟を結ぶことを宣言した。
ヨハンナ  そんなことを言った覚えはありません。
新聞記者たち  ダークさん、世論があなたを支持していることをお知らせしたいですね。
          いささかも良心の咎めを感じない相場師たちを除いては、全シカゴがあなたに同意しているんですよ。
          あなたの黒麦藁帽隊は、これで大成功を収めたわけですね。
ヨハンナ  もう救世軍にはおりません。
新聞記者たち  そうはいきませんよ。僕らにとっては、あんたは救世軍の一員なんですからね。
           しかしあんたのお邪魔をするつもりはありません。後ろの方で待機してますよ。
ヨハンナ  帰っていただきたいんです。

(彼らはちょっと離れた所に腰を下ろす)

129 :名前なし:2009/07/16(木) 22:13:59 ID:4b1nWP7f
労働者たち  (奥の方から聞こえてくる)
         困苦が絶頂に達しなければ
         奴らは工場を開けないぞ。
         悲惨がとめどなく高まるようになれば
         奴らも工場を開けるだろう。
         だが 奴らは解答を寄越すべきだ。
         ここを離れるな、解答を受け取るまでは!
反対の声  (同様に奥から)
        間違いだ! 俺たちの悲惨がいくら増大しようと
        奴らは再開しやしないぞ!
        儲けが増大しないうちはな。
        奴らは大砲や機関銃で解答するに決まってる。
        俺たちは自分の手でしか 自分を救うことは出来ないんだ。
        俺たちが 呼びかけを出来るのは
        俺たちの仲間だけなんだ。
ヨハンナ  あなたもそう思う、ラッカーニッドルのおかみさん?
ラッカーニッドルのおかみさん  ああ、あれが本当なんだよ。

130 :名前なし:2009/07/16(木) 22:15:12 ID:4b1nWP7f
ヨハンナ  こういう仕組みが分かってきました。表面的には
       ずっと前から知っていたことですが、全体との繋がりが
       分かっていなかった! 上の方には少数の人が、
       下の方には沢山の人が座っています。上の人は下の人に向かって
       上がって来いと呼びかけます、みんな上で
       暮らせるように、でも、よく見ると上の人と下の人たちの間に
       邪魔なものが横たわっています、
       道のように見えながら道ではなく
       板のようなものなのです。それが今はっきり分かってきました。
       それはシーソーの板なんです。この仕組み全体が
       二つの端を持ったシーソーなのです、両端には連関があります、
       上の人は上にしか座らない、
       数の多い下の人が下に座っているからです。
       下の人が下にいる限り上の人は上にいます。もしも
       下の人が、自分の下の席を捨てて
       上の方にやってきたら、その時初めて
       上の人が上に座っていられなくなる、
       だからこそ 少数の人は、下の人が永久に下に座り
       上に上がってこないようにしておこうとせざるを得ないわけです。
       それに下の人の数は、上より多くなければいけない
       でないとシーソーは静止していません。それがシーソーってものでしょう。

(新聞記者たちは立ち上がり、奥に行く、新しいニュースが入ったからだ)

一人の労働者  (ヨハンナに)あの連中と関係があるのかい?
ヨハンナ  いいえ。
その労働者  でも、連中と話してたじゃないか。
ヨハンナ  他の人と間違えられたんです。
年とった男  (ヨハンナに)すっかり冷え込んじゃったじゃないか。ウィスキーを一口やったらどうだい? 
        (ヨハンナは飲む)おっとっと! 待った待った! まるで腹の中まで管が通ってるみたいだな、大した飲みっぷりだ。
ヨハンナ  そう思う、ラッカーニッドルのおかみさん?
ラッカーニッドルのおかみさん  本当に、そうだよ。

131 :名前なし:2009/07/16(木) 22:16:46 ID:4b1nWP7f
一人の女  恥知らずの女だよ!
ヨハンナ  何ですって?
その女  恥知らずって言ったのさ! お年寄りのウィスキーをすっかり飲んじまってさ!
ヨハンナ  黙っていたらどう、お馬鹿さん! おや、私のショールはどこにいったのかしら? また盗まれたわ。
       もう我慢できない! この人たちは私のショールを盗ったんです! 誰なの、私のショールを盗った人は? 
       すぐに返しなさい。(隣に立っている女の頭に被っている袋をひったくる。その女は抵抗する)
       さあ、あんたなのでしょう。嘘をついても駄目、その袋を寄越しなさい。
その女  助けて、この女が私を殺すよ。
一人の男  静かにしろ!

(一人の男が彼女にぼろ布を投げつける)

ヨハンナ  あなた方の言う通りにしていたら、この行列の中で
       私は丸裸にされてしまうわ。
       夢ではこんなに寒くはなかったのに。愛の夢に
       すっかり力づけられ、大きな計画を持ってここへやって来た時には、
       ここがこんなに寒いとは、夢にも思ってもみなかった。
       今私は暖かいショ−ルがないのが、一番こたえます。
       あなた方はすっかりお腹を空かせて、食べるものは何もない。
       この人たちは私からスープを期待しています。
       あなた方はすっかり凍えている。
       でも私はその気になればいつでも
       暖かいショールに包まることが出来る
       旗を持ち、太鼓も打てるし
       天にましますあの方のことを演説することもできるのです。
       あなた方は何を失ったというの!
       私が見捨ててきたものといったら
       神のお勤めだけじゃなかったのです、
       長いことやり慣れていた立派な仕事も、生きていけるだけの仕事も
       日々のパンも、衣食住もみんな捨ててきたのです。

132 :名前なし:2009/07/16(木) 22:18:19 ID:4b1nWP7f
       本当に、まるでお芝居のよう、
       切実な苦しみもないのに
       私がここに留まっているのは
       相応しくないように見えてくる。それでもやっぱり、
       立ち去ってはいけないのです。
       私は今もはっきり言います。
       この食べもせず寝もせずに、どうしていいか分からないまま
       慣れきった飢えに苛まれ、酷い寒さに苦しめられて
       それでも生き続けていくことは
       何と恐ろしいことでしょう 首を締め付けられるように恐いのです。
労働者たち  ここに留まっているんだぞ! 何があっても離れ離れになるな!
         一緒に団結してさえいれば
         きっと自分を救えるんだ!
         いいかね、君たちは
         世論の支持に裏切られ
         買収された組合にも裏切られた。
         誰の言うことも聞いちゃいけない、何も信じちゃいけない
         本当の変革に通じていく
         提案なら何でもよく吟味するんだ。そうして何よりもまず学んでいけ、
         暴力を使うことしか解決はない
         しかも自分たち自身の手で行使した場合だけだと。

(新聞記者たちが戻って来る)

新聞記者たち  ハロー、娘さん、あんたは大成功だよ、今聞いたばかりなんだがね、
          あの百万長者のピーアポント・モーラーは家畜を全部押さえていたんだが、
          まだまだ値が上がろうっていうのに、その家畜を屠場へ手放すっていうんだ。
          事情がこういうこととなりゃあ、明日にでも屠場の仕事は始まるね。
ヨハンナ  まあ、素晴らしいニュースだわ!
ラッカーニッドルのおかみさん  そんなことは嘘に決まってるよ、仲間がそういう嘘のことを話してくれた。
                    あたしたちの手紙に書いてることだけが本当のことなのさ。

133 :名前なし:2009/07/16(木) 23:58:15 ID:4b1nWP7f
ヨハンナ  聞きましたか、皆さん、仕事があるんです!
       胸の氷はとけました。少なくとも
       あの人たちの中でも正しい心を持った人は
       間違った行いを止めたのです。人間として要求されたので
       あの人も人間として答えてくれたのです。やっぱりこの世の中には
       善なるものはあるのです。

(遠くで機関銃の音が聞こえる)

       あれは一体何の音?
新聞記者たち  屠場処理の命令を受けている軍隊の機関銃さ。屠場が再開されるということになったら、
          暴力をいろいろ用いろと呼びかけている扇動者を黙らせておかなくちゃならんわけだ。
一人の女  もう家に帰った方がいいのかね?
一人の労働者  また仕事にありつけるなんてことが、本当の話かどうか、どうして分かるんだよ?
ヨハンナ  この人たちがそう言ってるのに、どうして本当の話しじゃないっていうの? こういうことで誰だって冗談を言う人はありません。
ラッカーニッドルのおかみさん  そんな馬鹿なことを言うもんじゃないよ。あんたはまるで分かってないんだ。
                    この寒さの中に、まだいくらも座っちゃいないからね。(立ち上がる)
                    あたしは仲間の所へひとっ走りして、もうデマが飛んでいるってことを教えてくるよ。
                    あんたはここからちょっとでも動いたらいけないんだよ、手紙を持ってるんだからね。いいね。(去る)

(機関銃の銃声)

ヨハンナ  あの音は何かしら?
一人の新聞記者  軍隊の機関銃の音さ、屠場が再開されることになったので、
            屠場から暴力行使を呼びかけている扇動者を一掃する命令を受けたんだ。
一人の労働者  安心してここにいなよ、屠場は大きいからな、軍隊がここまで来るには、まだしばらく間があるさ。

134 :名前なし:2009/07/16(木) 23:59:16 ID:4b1nWP7f
ヨハンナ  あそこにはどのくらいいるんでしょう?
新聞記者たち  十万だそうだ。
ヨハンナ  そんなに沢山?
       それだけの人が学んでいるの、雪に吹きさらされたまま
       非合法の場所で、まだ見たこともない学校で
       飢えを先生に市ながら、苦しみもみんなに教えます
       どうしてもしなきゃならないことを、必然を教えます!
       そして十万の生徒は、そこで何を学ぶのでしょう?
労働者たち  (後ろで)みんな一緒に固まっていれば
         奴らは君たちを叩き潰す。
         それでも一緒に固まってろ!
         君たちが戦えば
         奴らのタンクは君たちを引き潰す。
         それでも君たちは戦いたまえ!
         この戦いは負けるだろう。
         それにたぶん次の戦いも
         やっぱり俺たちの負けだろう。
         しかし君たちは戦いを学び
         身に沁みて知ることだろう
         暴力を使わなくちゃやっていけぬと、
         自分自身の手でやってみたら。

135 :名前なし:2009/07/17(金) 00:00:29 ID:4b1nWP7f
ヨハンナ  待って、それ以上学んでは駄目!
       そんな冷酷なやり方では駄目!
       無秩序や混乱と戦うにも
       暴力だけは使わないで。
       もちろん、暴力を使いたい誘惑はとても大きいでしょう!
       こんな夜がまた一夜、こんな無言の圧迫が
       またひとしおと重なれば
       誰だって落ち着いてはいられません。きっとあなた方は何年も
       こうした幾夜を一緒に固まって
       冷静に考えることを学び、恐ろしい考えを続けてきました。
       もちろん、この暗闇の中では
       暴力が集りあい
       弱い人たちが手を組み片付けられない
       人たちが団結しました。
       しかしここで調理された料理は
       一体誰が食べるのでしょう?
       私はもういきます。暴力を用いられて行われることは、いいことであるわけがない。
       やっぱり私はこの人たちの仲間ではないのです。
       もしも私が子供の時から貧しさと飢えに痛めつけられて暴力を教えてもらっていたら、迷わずにあの人たちの仲間になれたでしょう。
       でも私は行かなくちゃならないのです。(彼女は座ったままでいる)
新聞記者たち  もう屠場は出て行った方がいいと思うんだけどね。あなたは大成功を収めたし、問題はもう解決したんだよ。

(去る。奥の方から叫び声、それが次第に波のように前へとひろがっていく)

労働者たち  (逮捕された指導者に)本部の連中が引っ張られたぞ。

(二人の労働者が私服刑事に手錠をかけられて連行されていく)

一人の労働者  (逮捕された指導者に)安心しろよ、ウィリアム、いつかきっとその日が来るぜ。
別の労働者  (一団の後ろから叫ぶ)血に飢えた密偵め!
労働者たち  奴らが、こんなことで押さえつけられると思ったら見当違いだ。
        連中はもうこれまで長いこと何もかもこれでやってきたのだ。

(幻覚の中でヨハンナは自分が犯罪者になって、これまで親しんだ世界の外にいるところを見る)

136 :名前なし:2009/07/17(金) 00:02:17 ID:4b1nWP7f
ヨハンナ  私に手紙を渡してくれたあの人たちは一体どうして
       手錠をかけられているのでしょう? 一体どんなことが
       あの手紙に書いてあったのでしょう。
       暴力で行われねばならないことや
       暴力を生み出すようなことは、
       私には全然出来ないでしょう。ああいう人はきっとなにか
       同胞である人間たちに悪い企みを沢山持っていて、
       人間の間で普通に行われる話し合いなどしようとしない。
       世間の仲間入りをしなくなってしまったので
       普通の世の中では居心地も悪くなり、自分の
       いるところがないのです。ああいう人が頂く星は
       昔からの運行によらないで
       違った動きをしています、言葉だって
       昔とは全く違った意味なのです。
       どこまでも不正をつけ回しているので
       そのために自分もつけ回されているああいう人は
       もう純粋潔白とは言えません。
       全てのことを邪気をもって見るのです。
       私はそんな風にはなれない。だから私は立ち去るのです。
       三日の間、この缶詰街の屠場の泥沼の中に
       ヨハンナの姿が見られました。
       この泥沼を清らかにし、どん底の人たちの所に
       近づこうと、一段一段深みに下りていきました。三日の間下へ下へと
       呼びかけを続けながら、次第次第に衰弱していき、
       三日目にはとうとう泥沼の底に飲み込まれてしまったのです、
       寒すぎるわと言いながら。

(立ち上がり、去る。雪)

ラッカーニッドルのおかみさん  (戻って来る)みんな嘘っぱちだ! あたしの隣にいたあの女はどこに行っちまったね?
一人の女  行っちまったよ。
一人の労働者  初めっからそう思ってたんだ、雪が本降りになってきたら、あの女は行っちまうだろうってな。

137 :名前なし:2009/07/17(金) 00:04:34 ID:4b1nWP7f
(三人の労働者がやってきて誰かを探し、辺りを見回す、見つからないので立ち去る。暗転の間に次の文字が現れる)

雪が人を追い立て始める
それでも留まっている者は誰だ?
いつもそうだが今日もまた、
残っているのは石の地面と貧しい人々。

138 :名前なし:2009/07/17(金) 00:40:02 ID:Odf3Pydr
h ピーアポント・モーラーは貧困の境界を踏み越える。

シカゴの街角。

139 :名前なし:2009/07/17(金) 00:41:32 ID:Odf3Pydr
モーラー  (刑事の一人に)この先は行くな、引き返そうじゃないか、どうだね?
       君は笑ったな、隠さなくてもいい! わしが
       ここから引き返そうとしたら君は笑った、
       認めたまえ。また銃声がしている。
       どうやら抵抗しているらしいな、どうだ? ああそうだ
       注意しておこうと思うんだ、屠場まで近づくたびにわしは
       二度も三度も引き返したが、なぜだか考えちゃいけないぞ!
       考えたって役に立たんし、考えてもらうために君らを雇ってるわけでもない。
       自分で理由を探してみたい。屠場の連中はわしを知っている。
       ほらまた君たち考えてるな。わしは
       馬鹿な奴らを雇ったらしいね。ともかく
       ここから引き返そう。わしの探している女の子が
       もう分別を取り戻して、今にも
       地獄の修羅場になろうとしている下町から引っ返してくれればいいが。

(新聞売り子が通りかかる)

       おい新聞をくれ、家畜市場の具合はどうなんだ!

(読んで真っ青になる)

       事実を一変させることが起こったに違いない。
       はっきりここに印刷してある。
       家畜の建値が三十になっても一頭も売れないのか!
       缶詰業者が破産して家畜市場を引き上げたからだと
       はっきりここに書いてある。
       モーラー及びその友人スリフトの損害が
       一番大きいとも書いてある。とするとこれでけりがついた。
       それが目的じゃなかったが、とにかく一息つける結末だ。
       わしだってもう連中を救うことは出来やしない。
       なぜってわしの家畜はみんな
       誰にでも使ってもらえるように、手放しちまっているからだ。
       だけど誰も買わなかった。だからわしは今は自由で
       何も求めることもない。そういうわけでわしは今
       貧民街に入る境界を踏み越えるところだが、
       君たちには辞めてもらおうと思う。君たちが要らなくなったのだ。

140 :名前なし:2009/07/17(金) 00:42:36 ID:Odf3Pydr
        これから先はもうわしを殴り殺す奴はいないから。
二人の刑事  それじゃ帰ってもいいんですね。
モーラー  いいとも、そして俺だって好きな所へ行けるんだ、
       屠場にさえ行ってみられる。
       俺たちがこの町に作り上げた汗と金の結晶はどうだった、
       まるで世界一大きくて、効果で、実用的な
       すごい建物を建てた気でいたが、
       しかしうっかりして、しかも材料費が安くて、
       建材に犬の糞を使ったもんで、
       その中に住んでいると気色が悪く
       彼の名声も終わりになり
       世界一嫌な悪臭を放つようになったってことだ。
       こんな建物から抜け出られた奴は、
       快活な男にならなくちゃいかん。
刑事の一人  (去りながら)そういうわけで、あいつもおしまいだ。
モーラー  低級な奴なら不幸に逢うと、
       打ちのめされることだろう
       しかしわしなら不幸に逢えば、
       精神的に高められるんだ。

141 :名前なし:2009/07/17(金) 00:43:25 ID:Odf3Pydr
i
屠場の人気のない場所。

(雪が吹きつける中で、ラッカーニッドルのおかみさんがヨハンナに出会う)

142 :名前なし:2009/07/17(金) 00:44:41 ID:Odf3Pydr
ラッカーニッドルのおかみさん  あんただったのかい! どこに行ってたんだね? 手紙は渡したのかい?
ヨハンナ  いいえ。ここを離れちゃったものですから。
ラッカーニッドルのおかみさん  そんなことだろうと思っていたよ。すぐに手紙をこっちへおよこし!
ヨハンナ  いいえ、あげるわけにはいきません。そばに寄ってこなくてもいいわ。この手紙には、また暴力のことが書いてあるんです。
       もう何もかもすっかり片付いたのに、あなた方はまだ何か企んでいるんですね。
ラッカーニッドルのおかみさん  そうかい、あんたからみるとすっかり片付いたのかい? あたしはあんたのことを正直だって言ってあげた。
                    ああ言ってやったもんであんたに手紙を渡しちゃったんだよ。ところが、あんたときたらペテン師なんだ、
                    別の連中の仲間なんだ。人間の屑なんだ! 預かっていた手紙をおよこし

(ヨハンナは雪の降りしきる中に姿を消す)

                    ねえ、およこしったら! また行っちまった。

143 :名前なし:2009/07/17(金) 01:08:04 ID:Odf3Pydr
j
他の場所。

(町に向かって駆け込んできたヨハンナが、通りすがりの労働者の話を聞く)

144 :名前なし:2009/07/17(金) 01:10:32 ID:Odf3Pydr
第一の労働者  はじめに奴らはまた屠場の仕事が始まって完全雇用になるって噂を撒き散らしたんだ。
           それで労働者の一部が、明日の朝早く仕事にありつこうと思って屠場から帰り出すと、
           今度は出し抜けに屠場はもう仕事を始めないという噂が流れ出したんだよ、モーラーが破産したからってんだな。
第二の労働者  やっぱり共産党が言ってた通りだな。みんな離れ離れになっちゃいけなかったんだ。
           シカゴ中の組合が全部、明日はゼネストを宣言するところだったんだから、尚更だよ。
第一の労働者  それはここじゃ聞いていなかったぜ。
第二の労働者  そりゃまずい。連絡が一部は伝わらなかったに違いない。それを知っていれば、大部分の連中は残っていただろうよ。
           ポリがどんなに暴力を奮っても。

(ヨハンナはその辺をうろうろしながら、声を聞く)

声  目的を果たさなかった者には
   何の言い訳も許されない。
   倒れて石にぶつかったものに、石は言い訳しないのだ。
   目的を果たしたものでさえ、
   果たすまでの困難の話で、仲間を悩ましてはいけない。
   黙って任務だけを果たし
   役目を交替するだけなのだ。

(ヨハンナは立ち止まっていたが今度は別の方向に走り出す)

声  (ヨハンナ立ち止まる)我々は君にある任務を与えた。
   我々の事態は切迫していた。
   君が誰だか我々は知らなかった
   だから君はこの任務を果たすことも出来たし
   我々を裏切ることも出来た。
   役目は果たしてくれたのかね?

(ヨハンナは走り続けるが新しい声に引き留められる)

声  待たれている所には、辿りつかねばならないんだ。

(声から逃れようと辺りを見回すと、四方八方から声が聞こえてくる)

145 :名前なし:2009/07/17(金) 01:11:55 ID:Odf3Pydr
声  網の目が一つでも破れちまったら
   もう網の役には立たない、
   魚は破れ目から出入して、
   網はないも同然になる。こうなったら突然
   網の全部の目が役に立たなくなるんだよ。
ラッカーニッドルのおかみさんの声  あたしはあんたに太鼓判をおしたのよ。
                       だけど本当のことが書いてある
                       手紙は渡さなかったじゃないか。
ヨハンナ  (膝をつく)ああ真実が、明るい光が欲しい!
       この酷い時代に吹雪で何もかも真っ暗!
       先のことは何も見えないわ!
       本当に吹雪の酷い暴力!
       身体はこんなに弱っている!
       飢えがいつまでもなくならないのはなぜ?
       夜の霜がいつまでも溶けないのはなぜ?
       どうしても引き返さなくちゃいけないわ!

(彼女は駆け戻る)

146 :名前なし:2009/07/17(金) 12:56:22 ID:Z+hGfo8X
10 ピーアポント・モーラーは身を落としそれから向上する。

黒麦藁帽隊の本部。

147 :名前なし:2009/07/17(金) 12:57:35 ID:Z+hGfo8X
マルタ  (他の隊員に)三日前に製肉王のピーアポント・モーラーから使いの人が参りまして、
      ピーアポント・モーラーご自身が私たちの家賃を引き受けてくださり、また貧しい人のための運動を私たちと一緒にしたいと伝えていらっしゃったの。
マルベリー  スナイダーさん、土曜日の晩になりました。まるでただみたいな家賃を払っていただくか、家を開けていただくかしてもらいましょう。
スナイダー  マルベリーさん、ちょうどピーアポント・モーラー氏を待っているところなんです。あの方が援助を約束してくださったんですよ。
マルベリー  おい、ディックに、アルバート、家具を往来に運び出せ。

(二人の男、家具を往来に運び始める)

黒麦藁帽隊  ああ、懺悔台が運び出されています。
         パイプオルガンと説教台にも
         手がかけられようとしています。
         もっと大声で叫びましょう、
         大富豪のモーラーさん
         どうかお金を持って 私たちを
         助けに来てください!
スナイダー  機械も錆びついてしまった屠場には七日前から
        仕事に見放された群集が立ちんぼしています。
        住むに家なく、また降り出した雨の雪の中に立っているんです。
        彼らの上には未知の定めが覆い被さっているのです。
        ねえマルベリーさん、今こそ暖かいスープと、
        音楽を与えてやりたいもんです、私たちにはそれがあります。
        今私の頭の中では、神の国がもうはっきりきちんと存在しているのです。
        神様はちゃんと楽隊をもち、本当に脂肪もたっぷり入った
        スープも用意されており、何もかも考えて下さっています、
        それにボルシェヴィズムもすっかり死に絶えてしまったんじゃありませんか。

148 :名前なし:2009/07/17(金) 12:59:01 ID:Z+hGfo8X
黒麦藁帽隊  我らのシカゴの町に、信仰の堤防は破られ
         押し寄せる唯物主義の汚泥の流れは
         最後の家まで押し流さんと迫り来る。
         家は既に傾き、見よ、今沈みゆく!
         されど待ち堪えよ、やがて富豪モーラーは現れん!
         全ての金を携えてモーラーは いまや道を急ぎつつあり!
一人の隊員  信者の皆さんは、一体どこにいっていただいたらいいのでしょう、少佐?

(三人の貧民がやってくる。モーラーがその中に混じっている)

スナイダー  (彼らに怒鳴りつける)どうせスープが欲しいんだろ! ここにはスープはないんだよ! 
        神様のみ言葉しかあげられない! み言葉が聞きたいなら、表にいれば聞かせてやるよ。
モーラー  神様の御許に、三人で参りました。
スナイダー  じゃその辺に腰掛けて静かにしていてもらいたい。

(三人は腰を下ろす)

一人の男  (入って来る)ピーアポント・モーラーさんはここかね!
スナイダー  いいえ、私たちも待っているんですがね。
男  缶詰業者たちが話があると言ってるんだ、家畜業者たちはあいつを探して喚いてるよ。(退場)
モーラー  (前の方で)連中はモーラーって奴を探しているそうだ。
       わしはそいつを知ってるが、間抜けな奴だ。今連中は
       天国と地獄、上と下を駆け回って
       そこらじゅうそのモーラーを探しているよ。
       そいつときたら一生涯、酔っ払いや
       浮浪人より、ずっと間抜けな男だった。

(立ち上がって、黒麦藁帽隊の方へ行く)

       わしは百ドル貸してくれと言われた
       ある男を知っている。奴は昔は千万も持っていたが
       やってきた時には百ドルもくれず
       千万の金はよそで抛り出して、
       悔い改めたわが身だけを差し出したのだ。

(黒麦藁帽隊の二人を連れてきて、懺悔台に座らせてもらう)

       わしは悔い改めたいんだよ。
       一体これまでこの台でね、皆さん、
       わしのように低く跪いた者があったろうか。

149 :名前なし:2009/07/17(金) 13:00:52 ID:Z+hGfo8X
黒麦藁帽隊  信念を失うことなかれ
         信ずる心を失うことなかれ!
         かの人は必ず来たらん
         金を携えて近づかん。
隊員の一人  あの人はもう来たかしら?
モーラー  皆さんに賛美歌をお願いしたい!
       わしの心は軽やかだが同時に重くもあるんでね。
二人の楽師  一曲だけです、それ以上はご免ですよ。

(楽師は賛美歌の前奏を始める。黒麦藁帽隊は気もそぞろでドアの方ばかり気にしながら歌う)

スナイダー  (帳簿に身を屈めて)私が何を計算しているか、それは言わないでおこう。静かに! 
        私に経理簿を持ってきておくれ、それから未払いの請求書もね、やっとこいつを片付けられる。
モーラー  私はこれまで行ってきた
       搾取、暴力の濫用を、個人の所有の名のもとに
       行ってきた全ての人々からの収奪を
       告白してわが身を責めたいのです。七日というものこの私は、
       シカゴという町をしめつけ、ついにくたばらせてしまったのです。
隊員の一人  この人がモーラーだわ!
モーラー  しかし同時にわしの方も、その七日目が来た時に
       何もかも手放したってことを申し上げたい。
       ここにこうしているわしは、本当に無一文なのです。
       罪がないとは申しません、ただ後悔はしているのです。
スナイダー  あんたがあのモーラーですか!
モーラー  その通り、後悔に身を切られる重いです。
スナイダー  (大声で叫ぶ)なのに手ぶらで来たんですか? (黒麦藁帽隊に向かって)
        さあ荷物を纏めなさい、これで支払いは一切出来ないと分かった。
楽師たち  こっちの払いを済ませれくれるお金も持って来てくれるとあんたたちの待っていたその人間がこの人なら
       ---帰っても文句はないでしょう! さようなら。(去る)

150 :名前なし:2009/07/17(金) 13:02:48 ID:Z+hGfo8X
黒麦藁帽隊の合唱  (出て行く楽師の後から)
              祈りつつ我らは待ちぬ
              富める人モーラーを、されど現れしは
              悔い改めし人。
              彼は心を持ちきたりぬ、
              されど金はもたらさず。
              さらば我らが心は感動に打たれども、
              我らが顔は期待外れに歪みたり。

(隊員たちは前後の椅子やベンチに腰を下ろして最後の賛美歌を入り乱れて歌う)

              ミシガン湖のほとりに
              我ら泣きぬれて座りぬ。
              聖なるみ言葉を壁より外し
              賛美歌を勝利を知らぬ旗にて包まん
              我らはもはや負債を払えず
              厳しさに向かう冬の吹雪は
              我らめがけて吹き付ける。

(彼女たちはさらに「戦いに進まん」を歌う。モーラーは一人の隊員の肩越しに歌詞を見ながら一緒に歌う)

スナイダー  静かに! さあ、出るんだ、みんな、出て行くんだ。(モーラーに)特にあんたは出て行ってもらいます! 
        四十か月分の家賃ってやつは、一体どうしてくれるんだ? 
        ヨハンナはその家賃をくれると言った悔い改めた連中を追い出して、その代わりにこの男を寄越したのだ!
        ヨハンナ、四十か月分の家賃を返してくれ!

151 :名前なし:2009/07/17(金) 14:04:52 ID:Z+hGfo8X
モーラー  あんた方は私の弱い所につけこんで、
       私の影に当たるところに、神の御堂を建てたいらしい。
       あんた方から見ると人間とは、自分を助けてくれるもののことらしい、
       ちょうどわしから見て人間とは わしの獲物であるみたいに。
       でも人間というものが救われる者のことであるにしても
       大した変わりはないだろう。とすればあんた方には
       溺れていくものも必要だ。
       なぜってあんた方の仕事は
       溺れる者の掴む藁ってことになるのだからね。
       商品の流通も天体の運行も
       全ては結局こうなるのだよ。
       こういう教えを学んだ後じゃね、スナイダー、
       たいていの人は苦い気持ちになるもんだ。
       しかしよく分かったよ、今の状態みたいな私じゃ
       あんた方にとっては期待外れってわけなんだね。

(モーラー、立ち去ろうとする。製造業者たちがドアの所で彼を迎える。一同はみんな青ざめている)

缶詰製造業者たち  モーラー、あんたは立派な人だ! こんなところまであんたを探して
             あんたの偉大な顔に複雑な感情が表れているところを
             お邪魔して申し訳ないが、失礼するよ。俺たちはみんな破産したんだ。
             俺たちの周りは混沌としたありさまで
             まだ聞いたこともないような意見が上からのしかかってくる。
             君は一体この俺たちにどんなことをしようとしているんだ!
             次の打つ手は何なんだい!
             俺たちはみんな君の手で、首筋を逆撫でされているような気がするんだ。

(家畜業者たちがどやどや入って来る。彼らも蒼白である)

152 :名前なし:2009/07/17(金) 14:06:38 ID:Z+hGfo8X
家畜業者たち  糞いまいましいモーラーめ こんなとこに潜ってやがったか?
          悔い改めるのはよしにして、家畜の代金を払ってくれ。
          魂なんぞいらねえから、金のほうを出してくれ!
          こんな所で良心の重荷を軽くしようなんて虫がいい、
          俺たちの財布の方をあんなに軽くしやがったくせに!
          家畜の代金を払ってくれ!
グレイアム  (進み出る)モーラー、今朝から始まって延々七時間も続けられ、
        俺たちをどん底に突き落とした、あの戦いのいきさつを
        ここで手短に話してもらうぜ。
モーラー  ああ、永遠の戦いか! 鉄棒で頭を殴りあい
       血みどろになって戦った、人類太古の昔から、
       今日までちっとも変わっていない。
グレイアム  覚えてるだろう、君はまだ契約を使って僕らを手許に
        抑えておいたんだ。始めは肉を納入する契約、
        その後は肉を買い入れる契約で、この間の買い入れも君からしなくちゃならなかった、
        なぜって肉を持ってる奴が、君だけしかいなかったからな。
        さて君が十二時に、取引所を出て行った時、
        スリフトのやつは俺たちの首をいっそう締め上げたんだ。
        残酷な叫びをあげながら
        あいつは全くきりもなく値を吊り上げていったんだ。
        とうとう九十五まで上がった。するとナショナル銀行が
        ストップをかけてくれたんだよ。人のいい老舗の銀行は
        金切り声をあげながら、全責任を背負い込んで
        カナダ生まれの若い家畜を、混乱した市場に送り込んだ。

153 :名前なし:2009/07/17(金) 14:08:52 ID:Z+hGfo8X
        そこで値段は揺れながら止まった。ところが狂ったスリフトは
        はるばる送り込まれてきた、二三頭の牛なんか
        てんで目にも入らない。そいつもやつは九十五で
        すぐに押さえてしまったんだ。海をすっかり飲み込んで
        それでも渇きが止まらずに、ひとったらしの水でもあれば
        嘗め尽くそうと舌なめずりする、酔っ払いそこのけのありさまで。
        気のいい老舗の銀行も、震えながら様子を眺めるばかり、
        さすがにこの時銀行に、助勢を買って出た奴がいる。
        ロウレーヴィ、ワロックス、ブリガムも黙っちゃいない。
        みんな老舗で名が通った、非の打ち所のない連中だ。
        持ち物のいっさいことごとく、消しゴムの切れ端まで抵当に入れて、
        三日のうちにアルゼンチンやカナダから、牛という牛を一匹残らず
        調達しようとかかったのだ。まだ生まれていないような牛まで
        牛に似たもの豚に似たものならひっくるめて、買い付けにかかったわけなのだ。
        ところがスリフトは怒鳴った、「三日後なんてとんでもない
        今日だぞ、今日のことなんだ!」と。そしてもっと値を吊り上げた。
        そこで銀行の連中も、涙を滝のように流しながら
        最後の戦いに飛び込んだ。なぜって肉は納入せねばならず
        それには肉を買わなきゃならないからな。
        レーヴィさえスリフトの仲買人の腹に、泣きながら一発食らわしたもんだ。
        ブリガムは髪を掻き毟って、九十五かと叫んでいた。
        ちょうどこの瞬間なら、象がのそりと入ってきても、ぐしゃりと踏み潰されただろう
        小僧たちさえやけくそになって、何もものも言わないで
        噛みつき合いを始めていた。ちょうど昔の戦争で
        戦っている騎士同士を、のせた馬まで夢中になって
        相手の馬の横っ腹に噛みつこうとしたようなもんだ。

154 :名前なし:2009/07/17(金) 14:10:26 ID:Z+hGfo8X
        日ごろはあまり熱のない取引所の見習いの奴までが
        この日だけはのぼせあがって、歯ぎしりしているのが聞こえた。
        とにかく俺たちは買い続けた、買わなきゃならん破目だったから
        とうとうスリフトはおしまいに「さあ百だ」と怒鳴った。
        この瞬間にしーんとなった。針の落ちる音も聞こえるぐらい。
        さすがの銀行の連中も、まるでスポンジが潰れるみたいに
        音もたてずにぐにゃぐにゃっと潰れてしまったというわけだ。
        昔はあんなに力もあり、しっかりもしていたのにな。
        連中はそこらで息を止め、取引も止めてしまったのだ
        それから老人のレーヴィが微かな声でこう言った
        それでも誰にも聞こえたのだ。
        「君たちはまだ屠場にあくまでしがみついているがいい、
        俺たちはもう契約はとても果たしていけないから」と、
        こうして缶詰業者たちは一人また一人と次々に
        屠場を投げ出してしまったんだ、閉鎖されてもう役に立たない屠場を
        君とスリフトの足元に投げ出していったのだ。
        みんな引っ込んでしまったから、投機屋も代理人も
        鞄の口を閉じてしまった。ついにこの瞬間が来ると
        まるで開放されたみたいに、呻き声をあげながら
        牛肉の価格もみるみるうちに、底なしの沼に落ちていった。
        もう契約に縛られて、肉を買う奴もいないのでね。
        相場付けをするたびに、価格は下がっていったのだ。
        まるで高い岩から岩を、底なしに淵に向かって
        落ち込む水の勢いで。三十まできてやっと止まった。
        こういうわけでモーラー、君の契約はもう値打ちがない。
        俺たちの首を押さえるどころか、君は俺たちを絞め殺した。
        死んだ人間の首を締めても、何の役にも立たないぜ。
モーラー  そうか、スリフト、君に任せた戦いを、君はこんな風にやっちまったのか?
スリフト  俺の首を切り落としてくれ。

155 :名前なし:2009/07/17(金) 14:11:47 ID:Z+hGfo8X
モーラー  お前の首など役には立たん、
       せめて帽子でも寄越すがいい、これなら五セントの価値はある。
       誰も買わないわしの家畜は、どこへやったらいいというんだ!
家畜業者たち  そんなにのぼせ上がらないで
          どうか俺たちに言ってくれ。
          あんたが買い上げてくれたけど
          まだ支払いの済んでいない、家畜の金はどうやって
          払ってくれるつもりなんだ。
モーラー  すぐに払う、この帽子と靴でな、
       ほら、この帽子が千万だ。
       俺の靴の片っぽで五百万だ、もう片っぽは要るんでな。
       これでいいかい?
家畜業者たち  ああ、俺たちが数ヶ月前
          心を込めて丹精した
          元気な子牛や見事な牛たちを
          遠いミズーリの停車場へ
          引っ張っていったあの時には、
          走っていく汽車の後から、
          家族のものが声をかけた、
          仕事で潰した声を嗄らして、
          「儲けを飲んじゃいけないよ!
          家畜の値段が上がるように……」と。
          その俺たちはどうしたらいい、
          どの面下げて帰れるんだ。
          牛の綱だけぶら下げて
          空の財布で帰れってのか?
          こんなざまで帰れってのか? どうだ、モーラー!
さっきの男  (入って来る)モーラーさんはどこですか? ニューヨークから手紙です。

156 :名前なし:2009/07/17(金) 16:43:34 ID:vHAe9s+K
モーラー  その手紙の宛名人のモーラーはあたしだよ。(それを聞いて脇で読む)
        「この前は君に、牛を買いたまえと手紙をした。今日は我々の家畜業者としかるべき協定を計って家畜の数を制限し、
        価値を正常に戻すようにアドバイスしたい。このことで君の用事があったらいつでもお役に立つつもりだ。
        明日詳しいことを書こう、ニューヨークの友より」。駄目だ駄目だ、もう、そうはいかん。
グレイアム  なぜ駄目なんだ。
モーラー  俺はニューヨークに友人がいる、こいつらは逃げ道を
       知ってるみたいに言ってるが、俺の見たところじゃ
       この手は使えない、自分で判断してみな。(彼らに手紙を渡す)
       今はもう何もかもこれまでとは
       まるで違っているように見える。諸君、これ以上は足掻くなよ。
       君らの財産は消えちまった、しかしよく分かってくれ
       確かな財産はなくなった、しかし俺がそう言うのは
       我々が俗世的な財貨から見放されたからじゃない。
       財産に恵まれん奴は沢山いる。
       しかし俺たちが貧しいのは
       高いものを求める心を持ち合わせていないからだ。
       だから俺たちは貧しいんだ!
メイヤーズ  君のニューヨークの友人とは一体どんな連中だ?
モーラー  ホーガンにブラックウェルだ、セル……
グレイアム  じゃ、ウォール・ストリートの連中か?

(居合わせた人々に囁きが伝わる)

モーラー  我らが奥底の人間性だ、これまで俺たちの中じゃ押さえつけられていた……
缶詰業者と家畜業者たち  モーラー、君は立派な男だ。
                 どうか君の高尚な、神への思いから覚めて、
                 我々下賎な奴らの所へ、降りてきてはくれないか!
                 全てのものを押し流そうと追ってくる混乱のことを
                 もう一度よく考えて、君が求められている責任ある地位を
                 どうか再び引き受けてもらいたい。

157 :名前なし:2009/07/17(金) 16:44:57 ID:vHAe9s+K
モーラー  わしはあんまり気が進まん。
       一人でやる勇気もとてもない。なぜってこの耳の底には
       屠場の不平やざわめきや機関銃の響きがまだ残ってるからな。
       権限というものが大幅に法律的に与えられ、そして社会の福祉のために
       それが絶対必要だと理解されるようにならなけりゃ
       思惑通りにはいきゃせん。こんな具合にやれるとしたら
       できんこともないかもしれんが。
       (スナイダーに)君のとこみたいなお宗旨の店は沢山あるのかね?
スナイダー  ええ。
モーラー  それでどんな風にやってるかね?
スナイダー  苦しいようですね。
モーラー  経営は苦しいが沢山あるのだね。
       もし我々が救世軍の
       事業を大いにもり立てていったら
       君たちはスープの用意をしたり
       音楽や適当な聖書の言葉や
       必要とあらば宿舎の世話まで
       すっかり引き受けてその上に、どこへ行っても我々が
       善良な人間だということを、演説して回ってくれるかい?
       この酷い時代の中でよいことを企てる人間だと?
       なぜって今残されている道は 非常に厳しいと思われるかもしれない
       非常の措置だけなのだ。この措置を必要とする人間がいるんだ、
       それもかなり沢山の人だ、大多数といってもいい
       いや、ほとんど全ての人だ。
       この措置を通じてのみ、もちろん欠点もないではないが
       我々の今行っている売買のシステムというものが
       初めて救われることになるのだ。
スナイダー  ほとんど全ての人のためにね、分かりました。やりましょう。
モーラー  (缶詰業者たちに)君たちの屠場は一つにまとめて
       一大カルテルを創ろうじゃないか。
       その持ち株の半分を、私が引き受けることにしよう。
缶詰製造業者たち  素晴らしい頭脳だ!

158 :名前なし:2009/07/17(金) 16:46:22 ID:vHAe9s+K
モーラー  (家畜業者たちに)今度は君たち、聞きたまえ。(彼らは囁く)
       我々を苦しめていた困難はすっかり解消した。
       貧しさと飢え、不法行為、暴力、
       これにはみんな原因があったが、その原因はみな明らかになった。
       肉が多すぎるってことだ、今年なんか食肉市場は
       肉が詰め込まれすぎていたんだ。そういうわけで家畜の価格も
       ただ同然まで下がっていった。価格を維持していくために
       缶詰業者と家畜業者は共同で協定を結ぶことにし、
       際限のない家畜の飼育に、限界線を設けるのだ。
       市場に出される家畜の数も、制限されることになる。
       今いる家畜の余分な数は、減らしてしまうことにして
       三分の一の数の家畜は焼き捨ててしまえばいいんだ。
一同  簡単しごくな解決だ。
スナイダー  (申し出る)それだけ沢山の数の家畜が、
        焼き捨てるほど値打ちがないなら、
        街頭に立っている貧しい人々にやってしまったらどうでしょう
        あの連中ならその肉がたっぷり要ると思いますが。
モーラー  (微笑む)スナイダーさん、残念ながらあなたには
       事態の核心が全く把握できていないようだ。
       街頭に立っているあの連中も消費者なんだよ!
       (他の連中に)なかなか信じられんだろうが。

(みんなもいつまでも微笑んでいる)

       なるほどああした連中は、酷く低級に見えるだろうし、
       世の中の余計者、厄介者のように見えるが、
       しかしよくよく見てみれば連中も立派なお客さんだ、
       このことを理解できるやつがそういなくても、いっこう構いはしないがね。
       今必要なのは、労働者の三分の一を閉め出すことだ
       なぜなら市場を行き詰らせたのは、生産過剰のせいもあるんだ。
       だから生産のほうだって、制限しなきゃならんのだ。
一同  唯一の解決策だ!
モーラー  そして賃金を引き下げる!
一同  コロンブスの卵だ!

159 :名前なし:2009/07/17(金) 16:47:38 ID:vHAe9s+K
モーラー  こういう処置が行われるのは
       血腥い混乱の支配するこの暗黒の時代、
       人間が非人間になったこの時代に
       町には不穏な情勢がやまぬこの時に

(なぜってこのシカゴの町は、またゼネストの噂に脅かされている)

       目先の効かない民衆が
       乱暴な暴力を使って
       自分たちの道具を打ち壊し、
       自分にパンを与えてくれる仕事場を
       破壊しようとすることを止め、秩序と平静に戻るように
       我々はあなたたち救世軍に、豊かな資金を与えることによって
       秩序を求めるその活動を、可能ならしめんとするものです。
       もちろんあなた方の中には、その姿を見せただけで、人間の信頼を勝ちうるような
       ヨハンナに続く人が現れるでしょう。
仲買人たち  (飛び込んでくる)素晴らしい報せだ、我々を脅かしていたゼネストはすっかり潰された、
         平静と秩序をかき乱そうとした犯罪人どもは刑務所にぶち込まれた。
スリフト  さあ、大きく息をつこう。市場はきっと正常に戻る!
      死線はいまや越えられた!
      困難極まる仕事が成し遂げられた。
      もう一度我々は、この計画を主張する。
      世界は今や俺たちから見て、快適な運行を始めたんだ。

(オルガンの音)

モーラー  今こそ扉を開く時だ。
       苦しんでいる惨めな人たちの皿にはたっぷりスープを盛り、
       音楽の音色を合わせなさい。そして我々も
       あなた方のベンチの最前列で
       悔い改めることにしよう。
スナイダー  さあ広々と扉を開こう!

(ドアが大きく開かれる)

160 :名前なし:2009/07/17(金) 16:48:59 ID:vHAe9s+K
黒麦藁帽隊  (ドアの方を見ながら歌う)
         さあ、網を張りましょう。連中はきっとここにやってきます!
         ちょうど今自分の最後の棲家を出るところです。
         神は彼らに寒さを差し向け
         神は彼らに雨を差し向けて追い立てる。
         追い立てられた人たちは、だからきっとここにやって来る。
         さあ網を張りましょう、
         来たれや来たれや、いざ来たれ!
         諸手を挙げて迎えん!

         閂を下ろしてしまいましょう、誰も出て行かないように!
         あの人たちはこっちへ向かってやってくるところです!
         仕事が全くなくなってしまい
         目も見えず、耳も聞こえなくなっていれば
         中に入ってきた人は、きっとここから出て行かない。
         だから閂を下ろしましょう。
         来たれや来たれや、いざ来たれ!
         諸手を挙げて迎えん!

         入ってくるものはみんな、一ヶ所に集めましょう!
         帽子も顔もかさぶたもロープも靴も足も。
         帽子を持って入ってくるものはもういない、
         みんな感動的に入ってくるのです!
         さあ、これから入ってくるものを一箇所に集めましょう!
         来たれや来たれや、いざ来たれ!
         諸手を挙げて迎えん!

         私たちはここにいます! みんなここにやって来ます!
         ごらんなさい、獣のように貧しさに追い立てられてここにやって来る!
         ごらんなさい、ここに来るほかないのです!
         ごらんなさい、みんなここに来ます!
         ここに来たらもう誰も逃げない、私たちがここに立っているから!
         来たれや来たれ、いざ来たれ!
         諸手を挙げて迎えん!

161 :名前なし:2009/07/17(金) 17:18:36 ID:vHAe9s+K
11

a
屠場。グレイアム工場の倉庫の前あたり。

(空地には、ほとんど人がいない。ただ、労働者のいくつかの群が、通り過ぎるだけ)

162 :名前なし:2009/07/17(金) 17:19:55 ID:vHAe9s+K
ヨハンナ  (やって来て訊ねる)手紙を探している三人の人がここを通りませんでしたか?

(奥の方に叫び声が起こり、前の方に伝わってくる。やがて、兵隊に護衛されて五人の男がやって来る。
二人は組合本部の者、三人は電機工場の者。突然、本部の一人が立ち止まり、兵隊に話しかける)

男  こうやって俺たちを牢屋に連れて行くんだから、俺たちが何をしたか知ってるんだろうね、君たちは。
   俺たちは君たちの味方だからこそ、ああいうことをやったもんだ。
兵士  俺たちの味方だって言うなら、さっさと前進してもらいてえ。
男  ちょっと待ってくれ!
兵士  恐くなったのか?
男  そうだ、恐くもあるよ。でもしゃべってるのは、恐いからじゃない。
   俺はただ君たちが俺たちを捕まえたのがなぜか話したいから、ちょっと止まってもらったんだ。
   君たちにはそのわけが分かっちゃいないらしいからな。
兵士たち  (笑う)いいとも、言ってみな、なぜお前を捕まえたのか。
男  自分が無産階級なのに、あんた方は有産者を助けているんだよ。無産者を助ける可能性を君たちが知らないからだ。
兵士  そうかい、さあ、もう行こうぜ。
男  労働者が失業者を助け始めているんだ。だからその可能性は近づきつつあるんだ。そのことをよく考えてみれくれ。
兵士  俺たちに逃がして欲しいということなんだろう?
男  俺の言うことが分からないんだな? 君たちにとってもやがてその時が来るってことを、知らなくちゃいけないんだよ。
兵士  もう歩いてもいいかい?
男  ああ、もう歩いてもいい。

(彼らは歩き続ける。ヨハンナは立ち止まり、捕らえられた人たちを見送る。すると、そばで二人の男がしゃべっているのが聞こえる)

一人の男  あれはどういう連中なんだ?
もう一人の男  あの連中の誰も彼も
          自分のことはすっかり忘れて
          他人のパンを得るために
          休みなく駆け回っているんだ。
一人の男  何で休みなく駆け回ってるんだ?
もう一人の男  不正が堂々と往来をのさばって歩いているのに、
          正しい人間は陰に隠れているから。

163 :名前なし:2009/07/17(金) 17:21:47 ID:vHAe9s+K
一人の男  あの連中はどんな目に逢うのだ?
もう一人の男  あの連中はみんな、
          安い賃金で働き、多くの世の人のためになっているのに
          誰も与えられた生涯を満足に終わる者はいないんだ。
          自分のパンを食べるかわりに、満ち足りて死んでいくかわりに
          立派な葬式をしてもらうかわりに
          連中は寿命の来ないうちに打ち殺され、踏み潰され、汚名を着せられてしまうんだ。
一人の男  そういう人たちの言葉を、なんだって誰も聞いてやらないんだ?
もう一人の男  何人かの犯罪者が、射殺されたり牢屋に投げ込まれたりしたって記事を
          新聞で読んだとしたら、それはその連中のことなんだよ。
一人の男  いつまでもこんなことが続いていくんだろうか?
もう一人の男  そんなはずはない。

(ヨハンナが振り向くと、新聞記者に声をかけられる)

新聞記者たち  屠場の聖女様じゃないか? ハロー! どうもうまくいかなかったね! ゼネストは潰されちまった、
          屠場は再開するにはするが、再雇用は三分の二でね、おまけに賃金も三分の二ということだ。ところが肉は高くなったね。
ヨハンナ  労働者たちは了解したんですか?
新聞記者たち  無論ね。労働者の一部しかゼネストの計画を知らなかったんだよ。
          しかも知っていた一部の連中は警察に暴力で蹴散らされてしまったのさ。

(ヨハンナは倒れる)

164 :名前なし:2009/07/17(金) 17:22:42 ID:vHAe9s+K
b
グレイアム工場の倉庫の前。

(労働者の一団、ランタンを持っている)

165 :名前なし:2009/07/17(金) 17:23:51 ID:vHAe9s+K
労働者たち  この辺に倒れているはずだがな。あそこからやって来て、
         この辺で俺たちの仲間に公共企業の人たちもストライキをやるそうですよって呼びかけていたんだ。
         吹雪が吹きまくったんで、あの女は兵隊に気がつかなかったらしいんだ。兵隊の一人が銃床尾で殴り倒したんだよ。
         その瞬間だけは俺にもはっきりあの女が見えたんだ。あっ、あそこに倒れている。こういう人も沢山いるんだろうな。
         おや、例の女じゃない! これはいい年をした女工だった人だ。ここで倒れているのは俺たちの仲間じゃない。
         兵隊が来るまで寝かせておこうや。兵隊が片付けてくれるだろう。

166 :名前なし:2009/07/17(金) 18:25:55 ID:vHAe9s+K
11 屠場の聖なるヨハンナの死と聖徒列叙。

(救世軍の家は今は立派に飾り付けられている、
新しい旗を持った黒麦藁帽隊、精肉屋(缶詰業者)、家畜業者、買い手たちがグループに分かれて立つ)

167 :名前なし:2009/07/17(金) 18:40:40 ID:vHAe9s+K
スナイダー  こうして我らの大願は成就。
        神は再び地上に権威を獲得。
        我らは高き者を服せしめ、
        低き者を我らに倣わしめた、
        高き者も低き者も
        いまや我らの許に求むるものを知る。
        遂に我らの大願は成就。
        遂に万事はめでたく終わった。

(貧乏人の一団が入って来る、先頭に警官に支えられたヨハンナ)

警官  宿無しの女性一命
     重病瀕死の状態で
     屠場で発見されました。
     この人の最後の住所は
     ここということになってるんでね。
ヨハンナ  破滅した人は、この手紙をまだ
       私から持っていってくれません。
       私の生涯でただ一度だけ
       依頼されたよいお仕事!
       それをまだ果たせなかった。

(貧乏人たちがスープを貰うためにベンチに腰を下ろす間に、スリフトが製造業者やスナイダーと話す)

スリフト  これが我らのヨハンナだよ、全くちょうどいいところにやって来たものだ。彼女を偉人として扱おう。
      だって、結局、俺たちが数週間の危機を切り抜けられたのは、この人のお蔭なんだから。
      彼女が屠場での人間愛の活動を行い、貧者の味方となって我々に反対演説をしてくれたお蔭で、俺たちは救われたんだ。
      彼女を屠場の聖女ヨハンナにしようじゃないか。彼女を聖人の列に加え、尊敬を捧げることを拒むまい。
      いやそれどころか、彼女は俺たちの間で聖女と仰ぐことで、俺たちも人間性を大いに尊重してるってことを証明しようじゃないか。

168 :名前なし:2009/07/17(金) 18:41:56 ID:vHAe9s+K
モーラー  俺たちの心の真ん中にだって、
       子供の純な心も宿る。
       俺たちのコーラスの歌声の中に
       この娘の澄んだ声を響かせてもらおう。
       悪しきを祓い清めてもらおう。
       俺たちみんなのために語ってもらおう。
スナイダー  立て、屠場のジャンヌ・ダルク。
        貧しきものの味方、どん底の天使。
ヨハンナ  どん底に吹く酷い風! もの言わぬ雪だって
       叫びをあげずに済むかしら?
       さあスープを食べてください
       最後のぬくもりをなくさないように、
       もうなくすもののない皆さん! スープを召し上がれ!
       まるで家畜みたいに
       おとなしく生きていたかった
       でも私に委された、この手紙をどうしても渡さなければ。
黒麦藁帽隊  (ヨハンナに向かって)ああこの女は取り乱しています
         一晩中光を求めてさまよったのですもの。
         あなたは人間的に行動したんです。
         あなたは人間的に迷ったのです。
ヨハンナ  (他の隊員たちにまた黒麦藁帽隊の制服に着替えさせられながら)
       また工場の作業が始まりました、聞こえてきます、
       こういう仕組みにとどめをさすことは
       今度も出来なかったのです。
       世界はちっとも変わらないまま
       また昔の軌道に乗りました
       世界を変えることが出来そうになった時
       私はついていきませんでした。
       貧しい人を助けてあげられそうになった時
       私は出て行きませんでした。
モーラー  ああ、人間はその本性から
       俗世のことには耐えられない。
       崇高な歩みを続けながら
       日常的な耐え難い
       世俗の塵の世を去って、
       見果てぬ無限の高みの中へ
       目標を越えて突き進むのだ。

169 :名前なし:2009/07/17(金) 18:43:39 ID:vHAe9s+K
ヨハンナ  私はそこらじゅうの市場で演説をして回り
       数え切れない夢もみました。
       でも私は虐げられた人に災いをもたらし、
       虐げる人に役立ったのです。
黒麦藁帽隊  ああ、精神に欠けたる業は
         いかほどの努力に重ねらるとも、
         魂なき寄木細工にすぎず。
製造業者たち  いずれにせよ精神的なものが、
          商売と一緒になればこれほど素晴らしいことはない。
ヨハンナ  一つだけ私は学びました、死んでいく私が
       分かったことを皆さんのために伝えたい。
       あなたたちの心のうちにも何かが宿っていますが
       それは表に出てこないとはどういうことです。知っていても
       結果の出てこないもののことは、分かりやしない。
       たとえば私は何一つ、果たすことが出来なかった。
       なぜなら私の行いでいいといわれるものはなかったから、永久にいいとは思えません。
       本当に人の助けになることの他は、いいことなんかないのです、
       世界を根底から変えることの他は、立派なことなんかないんです。
       世界は変革を必要としています。
       まるで呼び寄せられたように私は、虐げられた人たちの所へ行ってきました。
       全く善行なんて何の効き目もなく、立派な心ばえなどはなもひっかけられないものでした!
       私には何一つ変えられませんでした。
       今急いでこの世を去っていく私は、恐れず皆さんに申し上げます、
       善人として一生を送ってこの世を去ることなんか心配せずに
       世を去っていく時までに、世界の方が今とは違った
       善なる世界になっているように、心がけるべきです!
グレイアム  この娘の説教がまともなら、許してもらえるように計ってやろう。
        この娘がかつて屠場に行ったということを俺たちも忘れちゃいないんだ。

170 :名前なし:2009/07/17(金) 18:47:16 ID:vHAe9s+K
ヨハンナ  なぜなら、上の下の間には深い溝があるのです。
       ヒマラヤ山と海の底の間よりももっと大きな谷があります。
       上で起こっていることは下の人には分からない。
       下で起こっていることは、上の人には分かりません。
       上と下とには、二つに違った言葉があり、二つの違った尺度があります。
       人間の顔を持っていながらお互いには分かり合えないのです。
缶詰製造業者と家畜業者たち  (ヨハンナの声をかき消すように、わざと大きな声で)
                    建物を高く建てていったら上と下とが分かれてくるさ。
                    だから、誰でも自分の居場所を離れてはいけないのだ。
                    どこまでもどこまでも自分に相応しいことをやるべきだ。
                    そいつをうっかり忘れるやつは我々の調和を破壊する。
                    下じゃ、下のものが分を守ってこそ重要な存在になる。
                    上でも、正しいものは正しいことをしているんだ。
                    必要欠くべからざる分子だが煩く要求を持ち出す奴、
                    いなくちゃ困るが自分たちがいないと困ることをよく知っていて
                    下層階級の不平分子に呼びかける危険な連中は、くたばってもらいたい。
ヨハンナ  下にいる人は下の方に留めておかれるでしょう。
       上にいる人が上の方に留まっていられるように。
       そして上の人たちの卑劣さは本当に限りがないのです。
       たとえ改心したとしても何の役にも立ちません。
       上の人たちが作った仕組み、搾取と無秩序のあの仕組み
       非人間的で出鱈目な、あの仕組みは途方もないものなのです。
黒麦藁帽隊  (ヨハンナに)あなたは善人でいなくちゃいけない! 黙っていなくちゃいけない!

171 :名前なし:2009/07/17(金) 20:00:32 ID:vHAe9s+K
缶詰製造業者たち  ふらふら空中に漂っている奴はいつになっても向上できない。
             上がるってことは、他の者の上に上がるってことなんだからな。
             上のものに手を伸ばすことは下へ向かう第一歩にもなるのだ。
モーラー  行動すればあんたは傷ついてしまうんだ、ああ。
黒麦藁帽隊  靴が血に汚れることを絶えず心に留めつつ。
製造業者たち  その靴を脱ごうとしちゃいけない! あんたには靴が要るんだ。常に新たに。
黒麦藁帽隊  あなたは常に上の方を目指さなくちゃいけないわ、でも後悔も忘れちゃいけませんよ!
缶詰製造業者たち  何でもおやりなさい!
黒麦藁帽隊  おやりなさい、でも常に良心の呵責を以て! 
         自己を見つめるもの 自己を軽蔑するもの
         それがあなたの良心です。
         商うものは心せよ、
         仕入れの時にあっても
         とりわけ空取引を行う時
         いつも欠くことのできないものは
         常に変容を重ねていく
         神のみ言葉なのです。
ヨハンナ  だからこそ下層社会にいながら
       目には見えない神が存在し、貧しい人を助けたもうなどと
       世迷言を言い続ける人は、
       道路に叩きつけてやって、くたばらしてしまうのがいいんです。
スリフト  みんな何か言わなくちゃいけないな、この娘の言葉を抑えるようにな。何でもいい。何か言わなくちゃいけない、だが、大きな声でな!
スナイダー  ヨハンナ・ダーク、二十五歳、シカゴの屠場にて、神の奉仕を行ううちに、肺炎に倒れる、女闘士にして犠牲者!
ヨハンナ  精神的に高みに到達することが出来るなどと人を言いくるめながら
       自分も泥沼から抜け出せないでいる、
       そんな連中の頭は道路に叩きつけてやればいいのです。
       暴力が支配しているところでは、暴力だけが助けになる
       人間がいるところでは、人間だけが救いなのです。

172 :名前なし:2009/07/17(金) 20:02:01 ID:vHAe9s+K
一同  (ヨハンナの演説がもはや聞こえなくなるように、コラール[聖歌]の第一節を歌う)
     富めるものに富を与えたまえ、ホザナ!
     富めるものに徳を与えたまえ、ホザナ!
     持てるものに与えたまえ、ホザナ!
     国も町も彼に与えたまえ、ホザナ!
     勝てるものにしるしを与えたまえ、ホザナ!

(朗唱の間にラウドスピーカーが恐るべきニュースを伝え始める。ポンドの没落! 三百年来始めてイギリスの銀行閉鎖! 
合衆国に八百万の失業者! 五カ年計画成就! ブラジルはコーヒーの一年分の収穫量を海中に投ずる! ドイツに六百万の失業者! 
合衆国の三千の銀行取り付け! ドイツでは商工会議所、銀行が国家の手で閉鎖! デトロイトのヘンリー・フォード工場で警官隊と失業者が衝突! 
ヨーロッパ最大のトラスト、マッチトラスト壊滅! 五カ年計画四年で完成!)

(これらの恐るべき報告に反応して、今朗唱をしていない連中はお互いに乱暴な罵詈雑言を喚き合う。例えば
「汚い豚肉屋め、沢山屠蓄しすぎやがったんだ!」「惨めな家畜屋め、手前らがもっと豚を飼育してやがったら!」
「がりがりの禁欲亡者め、貴様らがもっと人を雇ってもっと賃金を払ってりゃよかったんだ。そうしないから俺たちの肉を買ってくれる顧客がいないんだ」
「仲買なんて仕組みがあるから肉が高くなるんだ」「家畜の値を吊り上げているのは穀類を横流ししている奴らだ」
「鉄道の荷物運賃が俺たちの首を締め付けるんだ」「銀行利子で俺たちは破産だ!」「こんな高い家畜小屋や倉庫の損料を誰が払えるかってんだ」
「なぜお前たちは企業を縮小しないんだ」「俺たちは企業縮小もしてるのに、お前たちはそいつをやろうとしないんだ」
「お前たちだけのせいなんだぞ」「お前たちを絞め殺さないうちは、事情はよくならねえ」
「お前なんかとっくに臭い飯を食っていいんだ」「お前がまだ娑婆の風に当たってられるのは不思議だよ!」など。)

173 :名前なし:2009/07/17(金) 20:04:27 ID:vHAe9s+K
一同  (合唱歌の二、三節を歌う。ヨハンナの声はもう聞こえない)
     富めるものに慈悲を与えたまえ、ホザナ!
     この腕に、ホザナ!
     お恵みを与え、ホザナ!
     持てるものを助けたまえ、ホザナ!
     満ちたるものに慈悲を垂れたまえ、ホザナ!

(ヨハンナがもう話すのを止めたのが分かる)

     神よ汝の助けとなる階級を授けよ、ホザナ!
     豊かなる手もて、ホザナ!
     憎しみを消し去りたまえ、ホザナ!
     笑うものとともに笑いたまえ、いざ、ホザナ!
     悪行を福と化したまえ! ホザナ!

(この節の間に隊員たち、ヨハンナにスープを飲ませようとする。
彼女は二度スープを押し戻し、三度目に皿を掴んで高く差し上げて中身を空けてしまう。
それから彼女は崩れて腕の中に支えられている。
致命的な傷を負った彼女にはもう生のしるしは見えない。モーラーとスナイダー、彼女に歩み寄る)

モーラー  この娘に旗をやりなさい!

(彼女に旗が渡される、旗は彼女の手から落ちる)

スナイダー  ヨハンナ・ダーク、屠場において、神への奉仕を行ううちに肺炎にて没す、享年二十五歳、女闘士にして犠牲者。
モーラー  ああ、誤りなき純なるもの
       穢れざるもの、慈善の心溢れたるものは
       我ら卑しき者の心を戦かせ
       我らの胸の底にある
       もう一つの善い方の魂を呼び起こすのだ!

(一同は長い間、黙って、感動して立っている。スナイダーの合図で全ての旗がそっと彼女の上に置かれ、
彼女の身体は、旗に蔽われてしまう。辺りは薔薇色の光に包まれる)

174 :名前なし:2009/07/17(金) 20:05:47 ID:vHAe9s+K
缶詰製造業者たちと家畜業者たち  見よ、太古の昔より
                       人間の心の奥深く
                       常に高みへと向かわんとする
                       努力の心潜むなり
                       空に星辰を仰ぎ見れば
                       高きものへの憧れを思う、
                       哀しくもその身は
                       俗なる下界に縛られたれど。
モーラー  ああ、私の貧しき胸に
       メスの如く束まで突き刺さる
       人間の二重構造
       無我、無欲、私心なき偉大さに
       魅かれる我が心。
一同  人間よ、汝が胸のうちには
     二つの心住む
     一つを選ぶことなかれ
     二つともども保つべきなれば
     常に汝自身と争いつつ生きよ、
     常に分裂せし一つのものとしてあれ!
     高きを保ち、低きも保ち
     残酷さと誠実さを
     二つながらに保つべし!

175 :名前はいらない:2009/07/17(金) 20:25:18 ID:ewbkNxPi
ふんぬらば

176 :ポエム田ポエ子 ◆k7FbTvUf9k :2009/07/17(金) 22:59:30 ID:ZqJQz/rh
ヤーハー!!!


177 :名前はいらない:2009/07/21(火) 04:30:02 ID:wS1pa48i
ハ?ハア?ハァァア?

178 :名前はいらない:2009/07/21(火) 08:21:57 ID:VT4BDwIH
A級戦犯!A級戦犯!

179 :名前はいらない:2009/07/23(木) 17:04:11 ID:H1K/G5vE
ヤレヤレダゼ…

180 :名前はいらない:2009/07/27(月) 06:28:05 ID:taXMbf1p
ムキャー努力MAX!

181 :名前はいらない:2009/08/24(月) 04:16:55 ID:p36mejnV
アハーハー!アリエナイイイイ!

182 :名前はいらない:2009/08/24(月) 04:24:12 ID:KN87xlvN
おまえとかは物凄いとこに思考回路が繋がっていけばいいとオモウヨ

183 :名前はいらない:2009/09/14(月) 23:51:57 ID:SCrF4BzO
 内部の豪雨で口がはみ出しています

 桑の葉に雉が感電した気がします

書き割りで成人していく甲虫に
赤いけだるさを奪われた

184 :名前はいらない:2010/07/05(月) 00:38:12 ID:DrBG0f30
ティンコに思考回路繋がってます

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