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■チベットの民に捧げる詩を書こう■

1 :塩倉:2008/03/25(火) 22:36:40 ID:5OHUr1Ip
監禁、拷問、虐殺…
彼らの苦しみがあなたの心の琴線に触れたなら
その思いを詩にしてみませんか?

2 :塩倉 ◆uAI8X5BL4Q :2008/03/25(火) 23:20:53 ID:5OHUr1Ip
あなたを思う


朝目覚たときにふと思う
眠ることも許されずに責め苛まれているあなたたちのこと

外にでて日の光を浴びると思い出す
窓すらない小部屋に閉じ込められているあなたたちのこと

食事を取るたびに考える
まともな食事を与えられることもなく、やせ衰えるあなたたちのこと

家族との団欒の時に心に浮かぶ
監禁されている家族を思い泣いているあなたたちのこと

夜布団に入るとまぶたに浮かぶ
今この瞬間にも殺されようとしているあなたたちのこと

あなたたちの小さな悲鳴は赤い旗のもとに消されそうになっているけれど
私たちは全身でその声を受け止める
石しかもてぬその身に重火器を向ける卑劣さを私たちは見ている
あなたたちに自由を与えよと声をあげる

遠く離れたこの国から
それでもあなたたちの幸せを祈っている

3 :んが ◆3Z7vqi3PBI :2008/03/25(火) 23:26:18 ID:3/XR5ppM
オンマニペメフム(全ての生命に幸あれ)
故に
雪の国(※)とそれを飲み込んだ者たちに幸あれ

双方に祈りを捧げよ
飲み込まれた雪の国が助けを求めているということは
それを飲み込んだ者達が黒い闇に侵され苦しんでいる証
双方に祈りを捧げよ
雪の白が闇の黒にかき消されぬように
闇の苦しみが癒され 青空となって光を通す日まで
雪が陽光を受けて 更に白く輝く日まで
輝く雪と澄んだ青空が 妙なる彩りをなす日まで

※チベットの別名

4 :名前はいらない:2008/03/27(木) 02:56:11 ID:/eRB8u6l
「SIGN」

見知らぬ人を責めるため 言葉覚えたんじゃない
残された日々知るために 数を覚えたんじゃない
正義の在処示すため 文字を覚えたんじゃない
怒りもて罪問うために 歌を覚えたんじゃない

両手に銃を持つために 歩き始めたんじゃない
誰かの威信示すため 競い始めたんじゃない
争う先を知るために 学び始めたんじゃない
恐れる心奮うため 叫び始めたんじゃない

英雄も 生贄も
欲しがりはしない 神様は
空仰ぎ 祈る声
誰のためなの 閉じた目は

Give me a sign
旗にすがり凍てついた 断崖に立つ少年よ
風に暴れる布端は 君の身体を暖めず
Tell me your truth
遠く見つめる澄んだ目は 戦う意味を知らぬまま
やせて乾いた掌は 温もりさえも忘れかけ


悲しみを慰めるため 祈り覚えたんじゃない
憎しみに怯えるために 愛を覚えたんじゃない
鉄の柵巡らせるため 大地を燃やすんじゃない
勲章を授かるために 死を覚悟するんじゃない

十億の嘘の中
君の姿は かき消され
十兆の砂の中
君の涙は かき消され

Give me a sign
遠く離れた部屋の中 他人事になれない僕は
砂に紛れたその瞳 ディスプレイ越し探してる
Tell me your truth
赤に黄色い五つ星 僕と君とじゃその意味も
悲しいくらい違うのか 同じ太陽巡るのに


政治すら 金ですら
縛れはしない 人間を
暴力も 弾劾も
裁けはしない 何者も

Give me a sign
遠く離れた部屋の中 他人事になれない僕は
砂に紛れたその瞳 ディスプレイ越し探してる
Tell me your truth
紛うことなき真実は 必死に生きるその命
砂に埋もれるその前に 差し伸べる手に気がついて

黄昏迫るその前に 光ってみせてもう一度 

5 :名前はいらない:2008/03/27(木) 03:12:58 ID:ObkICkmu
やばいぜ。
これは良い詩じゃねぇか。


6 :名前はいらない:2008/03/27(木) 09:32:37 ID:YWwqZrZF
日本人とチベット人は共通した遺伝子を持つ近親民族。
島国であり人の出入りが少なかった日本人、山岳であり同じく人の
出入りが少なかったチベット人は、世界でも稀な古代血統とされる
Y遺伝子D系統を多く持つ人種である。

http://native.way-nifty.com/./native_heart/images/y_chromosome.jpg
http://www.familytreedna.com/pdf/Karafet_et_al.1997.pdf
http://maokapostamt.img.jugem.jp/20071222_71579.gif
http://photoimg.enjoyjapan.naver.com/view/enjoybbs/viewphoto/phistory/89000/20070729118570733431677600.jpg
http://maokapostamt.img.jugem.jp/20071222_71589.jpg

このY遺伝子D系統はYAP型とも言われ、アジア人種よりも地中海沿岸に
分布するE系統の仲間であり、Y遺伝子の中でも非常に古い系統の一つある。
この遺伝子は古モンゴロイド由来とされ、日本の場合は縄文人である。
彼らは殆どが絶滅したが、海に守られている日本や山岳のチベットに
残ったと考えられ、これがD系統遺伝子として現在に反映されている。

また他のアジアの地域全体にはアジア系O系統が広く分布し、日本のすぐ
近くの韓国人や中国人がアジア特有のO系統であり、孤立したD系統を持つ
日本人・チベット人の異質さが際立って見える。

日本人とチベット人は失われたY遺伝子D系統を持つ希少な近親民族であり、
日本人はチベット人の危機の今立ち上がらなければなりません!!
(これをコピーして色々な場所に知らしめて下さい!)

7 :名前はいらない:2008/03/27(木) 11:00:17 ID:WLUcgPE2
そんなもんヒトラーの優生思想と同じ発想じゃねえか

8 :名前はいらない:2008/03/27(木) 13:55:36 ID:h2QSYzxM
終わらせて欲しい  でも叶わない。
朝焼けの時、後どれだけ死ねばいいのか?
笑顔が奪われた瞬間に、貴方が憎しみに囚われた。
素顔が隠された瞬間に、奴らが微笑みを浮かべた。
夜明けの時、後どれだけ待てばいいのか?

本当にいつになれば…。

9 :名前はいらない:2008/03/27(木) 15:07:57 ID:pcS0YAex
終わらせて欲しい  でも叶わない。
朝焼けの時、後どれだけ死ねばいいのか?
笑顔が奪われた瞬間に、貴方が憎しみに囚われた。
素顔が隠された瞬間に、奴らが微笑みを浮かべた。
夜明けの時、後どれだけ待てばいいのか?

本当にいつになれば…。


10 :名前はいらない:2008/03/30(日) 01:10:22 ID:TJ/uB7c9
★本日、国民大集会が開かれます!数は力、お近くの方はご参加を!(ライブ中継あり)


『日本を守ろう!在日特権・外国人参政権・人権擁護法案に反対する国民大集会』

【日時】平成20年3月30日(日)12:00開場 12:30開始
【場所】日比谷野外大音楽堂(http://hibiya-kokaido.com/map.html
収容人員(立見席含む)3114席プラス車いす席5席
入場無料※当日は会場に寄付箱を設置します。
雨天決行※雨天時には雨具(カッパなど)をご用意ください。
・当日はインターネットを通じてライブ中継を行います。
・緊急議題でチベット問題も取り上げます。

<出演>
桜井誠(在特会会長) 村田春樹(外国人参政権に反対する会) 渡辺眞(日野市議)
古賀俊昭(東京都議) 小坂英二(荒川区議) 平田文昭(市民団体代表)
西村幸祐(ジャーナリスト) 富岡幸一郎(評論家) 酒井信彦(元東京大学教授)
水間政憲(ジャーナリスト) 西尾幹二(評論家) 石平(評論家)

詳細は http://www.z★aitokukai.com    ※★は消してください。

11 :名前はいらない:2008/03/30(日) 17:49:58 ID:nJp13HDz
        ■北京五輪のスポンサー企業

IOCパートナー  北京五輪パートナー   北京五輪スポンサー

コカコーラ     中国銀行          UPS
マクドナルド    中国石化          海爾
パナソニック    中国移動通信       捜狐
サムスン電子   アディダス         青島ビール
アトスオリジン   中国国際航空       燕京ビール
GE         中国網通          伊利
コダック       中国石油          バドワイザー
レノボ        フォルクスワーゲン    BHPビリトン
マニュライフ    中国人保財険       恒源祥
オメガ        ジョンソン&ジョンソン  統一企業
VISA        国家電網

http://sankei.jp.msn.com/photos/world/china/080316/chn0803161112002-p1.htm


12 :名前はいらない:2008/03/31(月) 20:31:33 ID:2nPsWYZV
「めざめ」
君は知るだろう
きっと知るだろう
守る痛みのこととか

僕は見るだろう
やがて見るだろう
帰れない旅にでるよ

ねぇ返してよ僕の国
汚された愛を返してよ
ねぇ君のその笑顔の下
誰かの痛みで今がある
忘れないでよ

愚かなことだと
君は言うけれど
あのままじゃ壊れちゃうよ

星に騙され
嘘を真に受け
僕ら崩れてしまうのか

ねぇ目覚めてよ今にでも
崩れた心を直すため
ねぇ翻してあの旗を
例え誰かに怒られても翻してよ

ねぇ返してよ僕の国
汚された愛を返してよ
ねぇ君のその笑顔の下
誰かの痛みで今がある
ねぇ翻してあの旗を
例え誰かに怒られても翻してよ

-詩じゃなくて詞なんだけどね

13 :名前はいらない:2008/04/09(水) 23:15:03 ID:Ymw7JGrg
あげ

14 :名前はいらない:2008/04/10(木) 00:18:39 ID:Mdxh4dRj
他所で見かけたけど秀逸

インドの若者が
聖火ランナーの辞退を決意するとき
フランスのパリ市長は
市庁舎に全ての人権を擁護せよと旗を広げた
ロンドンの市民が
日本の青年と共にチベットの旗を振るとき
ロシアの政治家は
中国領事館の前で孤独に横断幕を広げた
この地球では
いつもどこかで中国によるチベット弾圧への抗議を叫んでいる



ぼくらは抗議をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交替でチベットを守る
眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くでフリーチベットと叫ぶ声が聞こえる
それはあなたの送った願いを
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ


15 :名前はいらない:2008/04/10(木) 14:58:58 ID:NfTiLuPz
空を見上げた時
 何が見えたの
星を探している
 君のまなざし

一人泣いてる
 君の横顔

でも僕は
 見つめている
  眩しい君を

空を駆けよう
 あの風の様に
光になろう
 そして照らそう
共に行こう
 あの星まで

空を見あげた時
 そこにあるのは
  希望


16 :名前はいらない:2008/04/10(木) 17:42:16 ID:jCR8FqmI
イラストでフリーチベット!

お絵かき掲示板に「お題付き」の掲示板があります。
http://www.oekakibbs.com/

4月10日(木)〜14日(月)のお題は「チベット」です。
チベットの平和と自由を願うイラストの投稿をお願いします!

イラストを加工した動画をyoutubeにアップすると世界にアピールできると思います。
イラストの「転載・加工フリー」を認めて頂けるなら、コメントに明記をお願いします。
動画職人さんは、このイラストを使ったMADの制作をお願いします。
(イラストは一枚絵として完成された物や素材っぽい物など多数あると良いと思います)

色んな板やスレにコピペお願いします!

17 :名前はいらない:2008/04/11(金) 22:03:14 ID:u9dVndVs
メル凸支援要請!!
http://www.waseda.jp/top/contact-j.html#school

早稲田大学が胡錦濤に講演させると言う暴挙に出ようとしています。
オイラの文章力ではコレが限界なんだが皆、名文の長文で援護たのむ。
面倒な人はオイラのヤツ、そのまま、又は手直しでもいいから宜しくです。
***************************************************************************

私は大隈重信を尊敬し、氏が建学された早稲田大学にも深い敬愛の念を持って
日本の誇りと思っています。しかし、最近の報道により聞き捨てならないニュースを
耳にしました。貴学が中華人民共和国の国家主席であるところの胡錦濤氏をキャンパス
に招き講演の予定ありとの事と知り、私は怒りと共に失望を禁じえませんでした。
既にご存知と思われますが貴学が招かれる胡錦濤氏は20万人とも言われる
チベット人虐殺を指揮した圧政の張本人です。
明らかに人道に対する罪で裁かれるべき人物であり、尚且つ裁くべき国際刑事裁判所
のシステムに我が国は正式に加盟しております。
こともあろうに若者の自由の精神を育てることを目ざした大隈重信のキャンパスを
世界最悪の独裁国家の長に闊歩させる事など許されるものでしょうか?
これは短期的な中国人留学生父兄への知名度アップと引き換えに、長きに渡り
世界に向けて貴学の、ひいては我が国の人権意識の低さをアピールしてしまう
事と思います。是非ともご再考の上お断り頂くようお願い申し上げます。

18 :名前はいらない:2008/04/16(水) 15:09:18 ID:vABqzcgi
●チベット問題に関する、現在の自民執行部や民主執行部の反応。

小沢一郎
チベット問題は、中国政府、共産党政権が継続して中国の政権であるためには、解決しなければならない問題だ。
私は以前から中国の持つ問題点を指摘してきた。(3月25日 記者会見で)

福田康夫
チベット問題は、一番責任があるのは中国。中国は冷静に対応し平和的に話し合いで解決して欲しい。
そのために中国政府は全力を挙げて欲しい。非常に憂慮しており、いろんな形で中国政府に申し上げているところです。(4月9日 党首討論で)
日本政府としては北京五輪と結び付けることは好ましくないとする立場。平和的解決を求める。(4月16日 中国政府への親書で)

鳩山由紀夫
チベット問題は、大きな人権問題だ。北京五輪に絡めないことを前提に、国際協力の中で中国を動かし、
ダライ・ラマ14世と胡錦濤国家主席の対話を実現させ、互いの理解を深めるべきだ。(4月12日 講演で)

伊吹文明
チベット問題は、北京五輪成功のためにも、情報を開示し透明性を向上させるべきだ。(4月15日 訪中先で)

19 :名前はいらない:2008/04/17(木) 12:06:28 ID:Jih5eO+a
悪いひとたち 中国のチベット侵略虐殺 CHINA INVADES TIBET

http://jp.youtube.com/watch?v=RORU0nH-8kQ


20 :名前はいらない:2008/04/21(月) 03:09:55 ID:3ogSIuUp
ファッキン!中国!
ファッキン!共産党!
ビバ!チベット!
ビバ!仏教!
おーいぇい!!!

21 :名前はいらない:2008/05/03(土) 12:37:21 ID:lWHNLs9x

『チベット大虐殺の真実』西村幸祐編集(オークラ出版)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4775512056/

フリー・チベット! チベットに自由を!
世界に巻き起こったチベット支援の渦。
今、チベットで何が起きているのか? 
ダライ・ラマ法王の緊急記者会見全文掲載の他、元ダライ・ラマ法王アジア太平洋地区代表のペマ・ギャルポ氏を迎えた座談会、
さらに、2008年3月10日のチベット蜂起後の動きを写真で追う、ピクトリアル・ストーリーを掲載。

さらに、第一線のジャーナリスト、評論家、識者から、チベット問題の全てをお伝えします。
なぜ、日本マスコミはチベット問題に沈黙していたのか?
チベットの未来はどうなるか?
日本とチベットの関係を含め、全てがこの一冊で分かる、完全保存版をお届けします。


22 :名前はいらない:2008/07/18(金) 22:22:57 ID:SV/Uy2cO ?2BP(0)
 

23 :名前はいらない:2008/12/04(木) 02:18:13 ID:0bSgGCvZ
情報が入ってこない

24 :名前なし:2009/12/04(金) 20:06:44 ID:zIlIB5Ap
舞台は旅館≪宿場亭≫の中庭。背後に低いガレージ。上手に旅館の裏側の入り口。
下手は運転手たちの部屋のある旅館の食糧貯蔵納屋。
納屋とガレージの間に、国道に面したかなり大きな門がある。
ガレージがかなり大きく作ってあるのは、この旅館が運送業も経営しているからである。

25 :名前なし:2009/12/04(金) 20:07:41 ID:zIlIB5Ap



(右腕に包帯をした兵士ジョルジュ、煙草を吸いながら、ピエール・ギュスターヴ爺さんのそばに座っている。
爺さんはタイヤの修理中である。旅館の運転手であるモーリスとロベールの兄弟は、じっと空を眺めている。
飛行機の爆音が聞こえる。六月十四日の晩である)

26 :名前なし:2009/12/04(金) 20:08:30 ID:zIlIB5Ap
ロベール  ありゃ味方のに違いないぜ。
モーリス  味方のわけがあるもんか。
ロベール  (ジョルジュに呼びかける)ジョルジュ、あれは味方のか、ドイツ軍のか?
ジョルジュ  (包帯した腕をそっと動かしながら)肩の付け根の辺まで感じがなくなってきやがった。
ギュスターヴ親父  動かすんじゃない。動かすとよくないぜ。

(シモーヌ・マーシャル登場。まだ少女、長すぎる前掛けとぶかぶかの靴を履く。洗濯物のいっぱい詰まった籠を引きずっている)

ロベール  重いか?

(シモーヌ、うなずいて籠をガソリンポンプの台の所まで引きずっていく。男どもは煙草を吸いながら見送る)

ジョルジュ  (ギュスターヴ爺さんに)この包帯でいいと思うか? 昨日からまた変に腕がこわばってきやがったんだ。
ギュスターヴ親父  言われた通りにしてろってことよ。

(シモーヌ、退場)

ロベール  (ジョルジュに)お前、口がないのかよ? 奴ときたら軍服を着てるくせに、飛行機が来ても空も見ない。お前みたいな兵隊がいたら戦争は負けるよ。
ジョルジュ  そりゃどういうことだ、ロベール? この腕の方もまるで感じがなくなりやがった。ギュスターヴのおっさんは包帯に限るって言うんだがな。
ロベール  お前に聞いてるんだぞ、今のはどっちの飛行機だって。
ジョルジュ  ドイツのさ。味方のはもう飛び立ちやしないよ。

(シモーヌは白ぶどう酒の瓶を持って帰って来る。その瓶からジョルジュに注いでやる)

シモーヌ  本当に戦争負けると思う、ジョルジュさん?
ジョルジュ  戦争に勝とうが負けようが、ともかく俺には腕が二本必要なんだよ。

27 :名前なし:2009/12/04(金) 20:09:54 ID:zIlIB5Ap
(旅館主アンリ・スポー氏、通りからやって来る。シモーヌ、急いで酒を隠す。
旅館主は門の所で立ち止まり、中庭にいるのが誰かを見定め、通りの方に合図する。大きなダスターコートを着た紳士が現れる。
旅館主は中庭を横切る時、意識的にみんなの目をさえぎるようにしながら彼を案内して旅館に消える)

ギュスターヴ親父  あのダスターコートを着た奴を見たか? 将校だったぞ。大佐だ。
             また前線から三十六計を決め込んだ奴のご入来だ。姿を見られたくないのさ。
             そのくせ食うのは三人前ぺろりときやがる。

(シモーヌ、籠の所に行き、ガソリンポンプの台に座って、籠の一番上にのせてあった本を読み出す)

ジョルジュ  (酒を飲みながら)俺はロベールの奴に腹が立つよ。あいつの考えでは俺みたいな兵隊がいては戦争は負けるっていうが、
        これでも俺は他の人間のためになったことだってあるんだぜ。確かなことだ。
        たとえば、俺の兵隊靴では、トゥールの靴屋の旦那が儲けている。俺の鉄兜じゃボルドーの旦那が儲けたわけだ。
        俺たちの軍服でしこたま貯め込んで地中海海岸に豪勢な別荘を建てた奴もいるし、ゲートル屋は競馬用の馬を七頭も買い込んだ。
        こういう具合で、この俺っていう人間のおかげで、フランスは、戦争になる前には大いに栄華を極めていた奴もあるってわけさ。
ギュスターヴ親父  しかしあのダスターコートの奴は景気が悪そうだなあ。

28 :名前なし:2009/12/04(金) 20:16:41 ID:zIlIB5Ap
ジョルジュ  そうとも、格納庫が二十もあって、その中には飛行機が千台もいるのよ。
        みんな金を払って買ったやつで、乗組員もいるし、検査済みの飛行機だぜ。
        それがフランスの一大事って時になると、てんで飛び出さないんだからな。要塞には百億もかかっている。
        鋼鉄をセメントで固めてよ、地下七階で、平野に千キロものびているんだ。
        それがいざ戦争となると連隊長殿は自動車に乗って後退さ。ぶどう酒と食料をしこたま積み込んだ二台の車を従えてだぜ。
        二百万の部下は死ぬ覚悟で命令を待っていたんだ。ところが国防大臣の色女と首相の情人の意見が一致しなかったんで命令は出なかった。
        俺たちの要塞は地面に根を生やしていたが、奴らの要塞は車の上にのっかっていて、俺たちの要塞の上を通り越して行っちまったわけだ。
        奴らのタンクときたら、油さえあれば向かう所敵なしだ。それに油は、俺たちのガソリンでいくらでも補給がきくってわけさ。
        明日の朝には、奴らはもうお前の前に来ているぜ、シモーヌ。そしてお前のガソリンをみんな吸い込んじまう。ぶどう酒をありがとうよ。
ロベール  タンクの話はよしな。(シモーヌに向かって顔を背けながら)あの娘がいるからな。あの子の兄貴が前線にいるんだ。
ジョルジュ  今は本に夢中だよ。
ギュスターヴ親父  トランプでもいっちょうやるか?
ロベール  頭が痛いや。俺たちはキャプテンの旦那の酒樽と一緒に、避難民の人波に揉まれながらまる一日車に揺られて来たんだ。民族大移動さ。
ギュスターヴ親父  旦那の酒は避難民より大事さ。このくらいのことが分からないのか?
ジョルジュ  あいつがファシストだってことは世界中がご存知さ。あいつは参謀本部にいる仲間から前線の風向きが悪いって噂を聞き込んだに違いない。
ロベール  モーリスはえらくむくれてるぜ。あのろくでもない酒樽を女子供の波に揉まれながら輸送するなんて、もう真っ平だって言ってるよ。俺はもう寝るぜ。(退場)

29 :名前なし:2009/12/04(金) 21:31:53 ID:zIlIB5Ap
ギュスターヴ親父  この避難民の波じゃ戦争もやりにくいな。タンクはどんな沼だって越えられるだろうが、人波の中じゃ立ち往生しちまうわな。
             この一般住民ってのがいるんで戦争がとてつもなく不利になるってことが分かってきた。
             戦争が始まった時、すぐに住民を移住させちまえばよかったんだが、ただ邪魔になるばかりさ。
             住民を片付けるか戦争を片付けるかどっちかさ。二つに一つよ。両方を片付けるわけにはいかないや。
ジョルジュ  (シモーヌの側に腰を下ろす。籠に手を入れる)お前、洗濯物がまだ濡れているのに取り入れちゃったんだね。
シモーヌ  (読み続ける)だって避難民がテーブル・クロスを盗むんだもの。
ジョルジュ  多分子供のオムツかわらじにでもするんだろうさ。
シモーヌ  (本を読み続ける)でも、おかみさんが数をちゃんと数えるんだもん。
ジョルジュ  (本を指して)相も変わらずオルレアンの乙女の話かい? (シモーヌ、うなずく)誰にその本をもらったの?
シモーヌ  旦那さんよ。でもなかなか読む暇がないの。やっと七十二ページよ。
       ジャンヌがイギリス軍をやっつけて、ランスで王様の戴冠式をする所。(読み続ける)
ジョルジュ  何でそんな時代遅れの本なんか読むんだ?
シモーヌ  だってこの先どうなるか知らなくちゃ---フランスが世界で一番綺麗な国だって本当、ジョルジュさん?
ジョルジュ  本に書いてあるのか? (シモーヌ、うなずく)俺は世界中なんて知らないからな。しかし、自分の住む国が一番美しい国さ。
シモーヌ  たとえばジロンドはどう?
ジョルジュ  あそこでもぶどう酒を作っていると思うよ。何しろフランス人は、大変ぶどう酒飲みだって言われてるからね。
シモーヌ  セーヌにはお船がたくさんあるの?
ジョルジュ  千くらいはあるさ。
シモーヌ  あんたの働いていたサン・ドニは昔は何だったの?
ジョルジュ  あそこは別に大したことはなかったさ。
シモーヌ  でも、他にいろんなことで世界一綺麗な所でしょう?

30 :名前なし:2009/12/04(金) 21:32:52 ID:zIlIB5Ap
ジョルジュ  あそこは白パンとぶどう酒と魚の素晴らしい所だ。オレンジ色のテントの下のコーヒー店ときたら、文句のつけようがないよ。
        それに魚や果物の市場。特に朝はいいもんだな。すぐりの果実酒を飲む居酒屋なんかどうでもいい。
        歳の市や鳴り物入りの進水式ってやつは残しておいてもいいな。木陰で球戯のできるポプラ並木は文句なしだ。
        おまえ、今日も食料袋を持って体育館の避難民の所へ行くのか?
シモーヌ  出かける前に工兵が来るといいんだけど。
ジョルジュ  何の工兵だ?
シモーヌ  台所ではみんなが工兵の来るのを待っているの、人波に揉まれて糧秣車が見つからなくなっちゃったんですって。百三十二師団の工兵よ。
ジョルジュ  お前の兄貴もその師団だろ?
シモーヌ  前進していくところよ。本にはこう書いてあるわ。天使はジャンヌ・ダルクに、フランスの敵を皆殺しにしろと命じた。神が欲したもうたのである。
ジョルジュ  また変な夢を見ているな。その血生臭い本を読むとすぐにそれだ。お前から新聞を取り上げたって何の役にも立たないぜ。
シモーヌ  敵のタンクってのは本当に人の山でも押し潰して進んでくるの、ジョルジュさん?
ジョルジュ  そうだよ。お前は本の読みすぎだぜ。

(彼は彼女から本を取り上げようとする。宿屋の亭主、旅館の戸口に出て来る)

31 :名前なし:2009/12/04(金) 21:34:43 ID:zIlIB5Ap
亭主  ジョルジュ、食堂に誰も入れないでくれ。(シモーヌに)また仕事の合間に本を読んでいるな。
     本をやったのはそのためじゃないって言ってるじゃないか。
シモーヌ  (熱心にテーブルクロスの数を数え始める)洗濯物の数を数えながらちょっと見ていただけなんです。すみません、旦那さん。
ギュスターヴ親父  あっしだったらこの娘に本なんかやらないんですがね、アンリの旦那。あの子は本のおかげで気もそぞろですよ。
亭主  馬鹿を言うな、こういう時代にこそ落ち着いてフランスの歴史を読むものだぞ。
     (肩越しに喋って家に入る)ジャン、食堂にオードブルを持って行け。(中庭の連中に)
     あの時代にどういう人物がいたかよく読んでみることだな。俺たちにだってオルレアンの乙女が必要なのかもしれないぞ。
ギュスターヴ親父  (信心家ぶって)どこから現れることになるかな?
亭主  どこから現れるだと? フランス中いたる所からさ。誰だってなれるんだ。お前だってさ、ジョルジュ。
     (シモーヌを指して)あいつだってなれるかもしれん。どんな子供だって、何が必要かくらいは言うことはできる、簡単なことさ。
     シモーヌだって国家に向かって言えるだろうよ。
ギュスターヴ親父  (シモーヌを吟味しながら)ジャンヌ・ダルクにしちゃ少し小さすぎるかな。
亭主  小さすぎる。若すぎる。大きすぎる。年を取りすぎる。へん、精神力のない奴はいつも言い訳をするんだ。
     (肩越しに、家へ入りながら)ジャン、お前、ポルトガルのイワシの缶詰を盗んだだろう?
ギュスターヴ親父  (シモーヌに)どうだ? お前、英雄になる気はあるか? もっとも今日日じゃ天使なんてお出ましにならないからな。
亭主  もう沢山だよ、おっさん。子供のいる前ではそういう皮肉な言い方はしないことだな。
     あの子には、そんなろくでもない口を出さないで、そっと本を読ませておやり。
     (家に入りながら)ただ何も仕事中に読まなくてもいいだろうと言っているのさ、シモーヌ。(退場)

32 :名前なし:2009/12/04(金) 21:35:52 ID:zIlIB5Ap
ギュスターヴ親父  (苦笑して)これが真っ当か、ジョルジュ? 今や洗濯娘をオルレアンの乙女に仕立て上げるってわけか。
             ただし仕事の余暇だけとくらあ。子供にはいい加減な愛国主義を吹き込んでおいて、
             自分たちだけはダスターコートで身を包み、闇のガソリンをどこかのレンガ工場に隠匿するわけさ、軍隊には渡さないで。
シモーヌ  旦那のやっていることは悪いことじゃないわ。
ギュスターヴ親父  もちろんさ、大変な慈善家だよ。お前に週二十フランも払ってくれて、お前の家族に人並みの暮らしをさせてくださってるわけだ。
シモーヌ  兄さんの職があかないように、私を雇ってくださるのよ。
ギュスターヴ親父  それでお前をガソリンスタンドの番人と給仕と皿洗いとに使っているわけだ。
シモーヌ  戦争だからよ。
ギュスターヴ親父  それで旦那にも別に大して損はないわけだろう、な?
亭主  (旅館のドアの入り口に現れる)ギュスターヴのおっさん、シャブリの小瓶を持ってきてくれ、二十三年の奴だぞ。お客様のだから鱒をつけてな。

(旅館に入る)

ギュスターヴ親父  ダスターコートの紳士、連隊長殿は、フランスが滅亡する前にシャブリを飲みたいとさ。

(貯蔵納屋に入る、次の景の間、彼はシャブリの瓶を持って中庭を横切る)

女の声  (旅館の二階から)シモーヌ、テーブルクロスはどこだい?

(シモーヌは籠を取り上げて旅館に入ろうとする。そこへ通りの方から軍曹と工兵二人がスープの釜をかついで現れる)

33 :名前なし:2009/12/04(金) 21:37:28 ID:zIlIB5Ap
軍曹  ここで食事を受領する。町役場で電話してあると言っていたがね。
シモーヌ  (一生懸命に、喜びでいっぱいになって)もちろん準備は出来ていますよ、すぐ台所へ入ってくださいね。
       (軍曹に、二人の工兵が入っていく間に)兄さんのアンドレ・マシャールも百三十二師団だったんです、なぜ兄さんから手紙が来ないか分からない?
軍曹  前線じゃもう大混乱さ。我々だってもう一昨日から前線の戦友とはまるで連絡がつかないんだよ。
シモーヌ  戦争は負けたの、兵隊さん?
軍曹  とんでもないよ。敵の戦車軍団がところどころで酷く前進しているだけさ。
     奴らのガソリンは間もなくなくなると思うね。そうなったらタンクも国道に立ち往生さ。
シモーヌ  ロワール河までは来ないだろうって聞いたわ。
軍曹  大丈夫。セーヌからロワールまではまだ大分あるしな。ただどうにも酷いのは避難民の人の波だ。全然前に進めないのさ。
     それでも我々は爆撃された橋の修理をしなければならないんだ。さもないと予備軍が通過できないんだよ。

(二人の工兵、釜を持って戻って来る。軍曹、中をのぞく)

軍曹  これで全部か、全く酷いもんだ。嬢ちゃん、この釜を見てもらいたいね。半分も入っていない。
     これがこの地方第三のレストランっていうんだから呆れるよ。
     わざわざ食料を取りに来させられても、他の二つの料理屋では何ももらえない。ここだってこれっぽっちだ。
シモーヌ  (びっくりして釜の中をのぞいて)きっと間違いだわ。まだそら豆もベーコンも沢山あったのよ。
       私、旦那の所へ行って来るわ。きっと釜いっぱいもらえるわ。ちょっと待っててね。(駆け込む)

34 :名前なし:2009/12/04(金) 21:59:09 ID:zIlIB5Ap
ジョルジュ  こんな戦争なんて糞食らえだ。戦争なんてものじゃない。軍隊が自分の国で敵扱いされるんだからな。
        総理大臣は「軍隊こそ国民なり」ってラジオで言ってるじゃないか。
ギュスターヴ親父  (また出て来る)「軍隊は国民なり」か。そして国民すなわち敵なりさ。
軍曹  (敵意を持って)どういう意味かね?
ジョルジュ  (半分しか入っていない釜を見て)なぜこんなことを我慢しているんです。町長でも呼んできなさいよ。
軍曹  町長はよく知っているよ。何もしない。
シモーヌ  (またのろのろと出て来る。軍曹の方を見ないで)旦那は、もう宿屋にはこれ以上ないって言うのよ。避難民がいっぱいいるからって。
ギュスターヴ親父  あいつらにはやらなくたっていいだろ。みんな軍に回せば。
シモーヌ  (絶望的に)旦那は町役場がいろんなことを言ってくるって怒っていたわ。
軍曹  (疲れて)どこもここも同じだ。
亭主  (戸口に現れ、シモーヌにたたんだ勘定書きを渡す)鱒を食べているお客様の所にこの書付をおいてきな。
     イチゴの値段は原価ですってな。お前の親たちが俺の旅館に売りつけたんだから。(彼女を押しやる)
     どうしたんです? ご満足がいきませんかな? この辺の住民たちの身になって考えていただきたいもんですかな。
     みんな徹底的にしぼられておりますよ。それなのに後から後から命令ですからな。
     私ぐらいフランスのことを考えている者はないつもりです。神様だってご存知だ。
     でも(どうにもならないという身振り)私は大きな犠牲を払ってこの旅館を開いておりましてな。
     まあ私の手伝いをしてくれる奴をごらんください。(ギュスターヴのおっさんとジョルジュを指して)老いぼれと障害者ですよ。
     それと未成年の娘、この子は飢えちゃ可哀想なんでお情けで雇っています。それでフランス軍の食糧をまかなえったって無理でさあ。
軍曹  といって、俺だって部下に空きっ腹を抱えさせて、あんたのために敵の放火の中に進軍させられはせんよ。
     それなら橋の修理も自分たちでやれ。俺は糧秣車が来るまでは、七年経ったって動かないぞ。(工兵たちと去る)

35 :名前なし:2009/12/04(金) 22:00:34 ID:zIlIB5Ap
亭主  じゃ、私に何が出来ます。みんなの気に入るようには出来ませんよ。(自分の使用人たちにお世辞を言うように)
     なあ、お前たちは旅館なんか持っていなくて本当に幸せだよ。まるで狼の襲撃を防いでるようなものだぜ。
     いい加減大骨折った挙句、やっと旅行案内でも二つ星に入る所までこぎつけたと思うとこれだ。
     (ギュスターヴ親父とジョルジュ、旦那の苦労話にはあまり関心を示さないので、腹を立てて)
     そんなかかしみたいにぼんやり突っ立っているな。(旅館に向かって叫ぶ)中庭が開きましたよ。
大佐  (ダスターコートの紳士、旅館から出て来て、亭主の所へ来る。亭主は中庭を横切り、通りの方へ案内する)
     酷くぼったくるじゃないか、昼飯二百六十フランとはね。
ジョルジュ  (その間に旅館に入り、シモーヌを連れ出す。シモーヌ、手で顔を覆っている)
        もう兵隊は行っちゃったよ。だから廊下に隠れてなくてもいいんだ。お前のせいじゃないんだものな、シモーヌ。
シモーヌ  (涙を拭って)ただ百三十二連隊だからなのよ。前線では救援部隊を待っているんでしょう。
       それなのに工兵はまず橋の修理をしなきゃならないんだもの、ジョルジュさん。
亭主  (通りから帰って来る)フォアグラ、鱒、羊の背中の肉、アスパラガス、シャブリにコーヒー、
     マルテル84のコニャックが一杯、このご時世に! なのに勘定書きを持って行けば嫌な面さ。
     いい加減しかめっ面だぜ。しかもいい面して給仕してやることはないや。戦場から逃げてくれとは頼んでないからな。
     あれで仕官かね、しかも大佐とくらあ。フランスも憐れなもんだ。
     (シモーヌを見る。良心が咎めて)お前は台所のことに口を出すんじゃない! (旅館に退場)
ジョルジュ  (ギュスターヴ爺さんに、シモーヌを指しながら)工兵には恥ずかしい思いをしているんだよ。
シモーヌ  この旅館のことをどう思ってるの、ジョルジュさんは?

36 :名前なし:2009/12/04(金) 22:01:57 ID:zIlIB5Ap
ジョルジュ  (シモーヌに)恥ずかしく思わなきゃならないのは別の人間さ。旅館はまるで天から雨が落ちるみたいに嘘を吐く。
        旦那ときたら犬の尻のように値段を吊り上げる。シモーヌ、お前は旅館の人間じゃない。
        ここの酒が誉められたって喜ぶことはないし、ここの屋根が抜けたって泣くことはないんだ。
        シーツの布を選んだのもお前じゃないし、奴らに食事をやるのを断ったのもお前じゃない。分かったね?
シモーヌ  (まだ納得しないで)そうね、ジョルジュさん。
ジョルジュ  アンドレはお前があいつのためにここで口を確保してくれてるんだってことをよく承知しているさ。
        それで十分じゃないか。さあもういいから、体育館のフランソワのちびの所にでも遊びに行きな。
        でもあいつのおふくろの急降下爆撃機の話なんか聞いて脅かされちゃいけないよ、
        そんな話をされたら夜もうなされて、夢を見るぜ、戦争だからな。
        (彼女を旅館の方に押しやる。ギュスターヴ爺さんに)少し夢を見すぎるんだよ。
ギュスターヴ親父  (タイヤの修理をしながら)体育館にもあまり行きたがらないぜ。あそこでは食料が高すぎるって苦情を言われるんだ。
ジョルジュ  (嘆息して)それでいて旦那のことをかばってやるからな。実のある娘だよ、シモーヌは。
亭主  (旅館から出て来て貯蔵納屋の方に、手を叩きながら声をかける)モーリス、ロベール!
ロベールの声  (納屋から、寝ぼけて)はい?
亭主  フェタンの旦那様からお電話だ。酒樽の残りをボルドーに持って行けと仰ってる。
ロベールの声  今日中に? そいつは無理だ、アンリの旦那、あっしたちは二日も走り回って帰って来たところですからね。
亭主  分かってる、分かってる。だが、じゃあお前たちは何様だっていうんだ? 
     旦那は、輸送が遅すぎると思っておられるんだぜ。そりゃもちろん通りは人でいっぱいだろうさ。
     もちろん私はお前たちをゆっくり寝かしてやりたいさ。だがな(どうしようもないというジェスチャー)
ロベールの声  通りは夜になると人でいっぱいだし、それに燈火管制で大きな明かりをつけて走るわけにはいかないからね。

37 :名前なし:2009/12/04(金) 22:02:59 ID:zIlIB5Ap
亭主  戦争だから仕方がないさ。顧客の機嫌を損ねちゃならん。おふくろもそう言ってるしな、さあ、出かけてくれ。
     (ギュスターヴの親父に)いい加減にタイヤの修理を済ませたらどうだ。

(町長ジャヴェー氏、通りから入って来る。腕に書類鞄を抱えている。大変興奮している)

ギュスターヴ親父  (亭主に彼の来たことを気付かせる)町長さんで。
町長  アンリ、君のトラックのことでもう一度話があるんだ。避難民のためにあのトラックをどうしても使わせてやりたいのだよ。
亭主  だって言ったじゃないか、俺はキャプテン・フェタンの旦那のぶどう酒を輸送する契約をしちゃったから駄目だって。
     キャプテンに今更断れないよ。うちのおふくろとキャプテンは幼友達だしな。
町長  「キャプテンのぶどう酒」だって! なあアンリ、俺は元来商売のことに口を出すのは嫌いな人間だが、
     君とあのファシストのキャプテン・フェタンとの関係は容赦しないつもりだよ。

(シモーヌ、旅館から出て来る。大きな袋の入った籠を腹に下げ、袋の入った二つの籠を下げている)

亭主  (脅かすように)フィリップ、言葉に気を付けろよ。キャプテンの旦那をファシストなんて言っていいのか。
町長  (苦々しく)「気を付けろよ」か。お前たちの言うことはそれだけか、
     お前にしろキャプテンの旦那にしろ、ドイツ軍がロワール河まで追って、フランスが餌食になる瀬戸際って時にな。
亭主  何だって? ドイツ軍はどこまで来ているって?
町長  ロワール河さ。そしてそれに対抗するために送られた我が第九軍は、二十番国道で避難民のために立ち往生したんだ。
     君のトラックだって、サン・マルタンの他のトラック同様、明朝体育館の避難民を輸送するために調達されるんだ。これは公式な命令さ。

(彼は鞄から小さな赤いポスターを取り出して、それをガレージの戸口に貼り付ける仕事にかかる)

38 :名前なし:2009/12/04(金) 22:05:16 ID:zIlIB5Ap
シモーヌ  (小声で、びっくりして、ジョルジュに)タンクがやって来るって、ジョルジュさん?
ジョルジュ  (彼女の肩に手を回して)そうだよ、シモーヌ。
シモーヌ  今ロワール河にいるんだと、トゥールの方にやって来るのね。
ジョルジュ  そうだよ、シモーヌ。
シモーヌ  ここまでやって来るかしら、ねえ?
亭主  キャプテンが何故あんなに急いでいなさるか今やっと分かったよ。(ショックを受けて)
     ドイツ人がロワールまで来てるって、こりゃたまげたな。
     (まだポスターを貼ろうとしている町長の方に行く)フィリップ、まあ待て、中に入ろうぜ、水入らずで話があるんだ。
町長  (怒って)嫌だよ、アンリ。水入らずなんてご免だよ。お前の使用人には、
     ここのトラックもガソリンもみんな調達されてるんだってことを知らせておくからな。
     今までいい加減見逃してきてやったんだから。
亭主  気でも違ったのか? このご時世にトラックを全部差し押さえるなんて! ガソリンだってここにある少しばかりで、あとは全然ない。
町長  お前の申告していない闇のガソリンはどうした?
亭主  何? 俺が法律の目をくぐってガソリンの買い溜めをしただなんて疑っているのか? 
     (気違いのように)ギュスターヴのおっさん、うちに闇のガソリンなんてあるか?

(ギュスターヴ爺さん、聞かないふりをして、タイヤをガレージに転がして行こうとする)

39 :名前なし:2009/12/04(金) 22:16:14 ID:zIlIB5Ap
亭主  (叫ぶ)モーリス! ロベール! すぐ下りて来い! ギュスターヴの爺! 
     (ギュスターヴ、立ち止まる)さあ言ってみろ! うちに闇のガソリンがあるかないか?
ギュスターヴ親父  何も知らねえでさ。(彼を見つめているシモーヌに)さあ、お前も仕事にかかりな、聞き耳を立ててちゃいけねえ。
亭主  モーリス、ロベール! どこに行きやがったんだ?
町長  ガソリンの余分がないっていうなら、キャプテンのぶどう酒はどうして運べるのかね?
亭主  かまをかけたね、町長さん? 答えはこうだ。キャプテンのぶどう酒はキャプテンのガソリンで運ぶのよ。
     ジョルジュ、お前、俺が闇のガソリンを持ってるなんて聞いたことがあるかね。
ジョルジュ  (彼の腕を見ながら)私は四日前から前線から戻ったばかりでしてね。
亭主  そうさな、お前には分からんかもしれん。しかしモーリスとロベールがいる。
     シャヴェーさんが、この旅館にはガソリンが隠してあると仰るが、
     シャヴェーさんのおいでのところでお前たちに聞こう。その通りか?

(兄弟は躊躇う)

町長  モーリスに、ロベール、君たちはわしって男をよく知っている。わしは警官でもないし商売のことに口出ししたくない。
     しかし今やフランスがガソリンを必要としているんだ。どうかお願いだから役場で、
     ここにガソリンがあると証言してくれないか。君たちは真っ当な若者だろう。
亭主  どうだ?
モーリス  (曇った顔で)ガソリンのことなんか知りません。
町長  そうか、それが返答か。(シモーヌに)お前の兄さんは戦地に行ってるのだろう。
     ところがそのお前もここにガソリンがあると言ってはくれないのか?

(シモーヌ、身動きもしない。それから泣き出す)

40 :名前なし:2009/12/04(金) 22:17:30 ID:zIlIB5Ap
亭主  未成年にまで証人にして俺のためにならないことを言わせたいのか? 
     町長さん、この子の旦那に対する尊敬の気持ちをなくさせようとする権利はあんたにはないはずですよ。
町長  (疲れて)また法外に高い品物を体育館で売りつけるつもりか? 工兵たちには釜に半分しか食い物をやらない、
     避難民がそこら中で最後の一銭まで搾り取られてしまうから、彼らは先へ進めなくなるのさ。
亭主  俺は慈善院を持っているわけじゃない、宿屋の亭主だからな。
町長  その通り、フランスを救ってくれるのは奇跡だけだ。骨の髄まで腐っている。
亭主  シモーヌ、出かけた、出かけた。

(シモーヌはのろのろと、心もとなそうに、何度も後ろを振り返りながら、門の方に行く。
途中で籠に隠しておいた本が地面に落ちる。それをおっかなびっくり拾い上げ、袋と籠を下げて中庭を出て行く)

41 :名前なし:2009/12/04(金) 22:24:09 ID:zIlIB5Ap
第一の夢


(七月十四日の夜。音楽、暗闇から天使が現れる。
ガレージの屋根の上に立ち、顔は金色で無表情、手には小さな太鼓を持つ。
彼は三度、澄んだ声で「ジャンヌ」と言う。それから舞台が明るくなる。
空っぽの中庭にシモーヌが立って鏡を持ったまま、天使を見上げる)

42 :名前なし:2009/12/04(金) 22:25:56 ID:zIlIB5Ap
天使  フランスの娘、ジャンヌよ。何かが起こらなければいけない。
     さもなくば偉大なるフランスは二週間のうちに没落することになるだろう。
     それゆえ主たる神は、救いの手を捜し求め、神の小さな娘であるお前を見出された。
     ここにある太鼓は、神の遣わされたもの、この太鼓で安逸に慣れた日々の生業より人々を呼び覚ませ、
     ただ、この太鼓は、汝が大地に置く時にのみ響き渡るものと知れ、
     フランスの大地がなりどよむごとく。
     いざ、フランスの子らが、祖国フランスを愛するため、
     老若男女をこの太鼓にて集めよ、
     フランスの船主には、船を貸さしめよ、
     フロンドの百姓にパンと酒を求め、
     サン・ドニの鍛冶どもに、鉄にて、戦車を作らせよ、
     リヨンの大工どもには、全ての橋を打ち壊させよ。皆の者に伝えよ、
     「母なるフランス、産みの親なるフランスを彼らは嘲笑し、面罵した。
     今、偉大なる労働の母、ぶどう酒を好む母フランスは彼らを必要としている」と、
     直ちに行きて伝えよ。
シモーヌ  (他の者もいるかどうかと見回す)私がするんですか? ジャンヌ・ダルクになるには小さすぎやしませんか?
天使  そんなことはない。
シモーヌ  じゃあ、いたします。
天使  難しい仕事であろう。ラッターはパンを背負った。
シモーヌ  (おずおずと)あなた、私の兄さんのアンドレじゃないの? (天使、沈黙)元気?

(天使消える。ガレージの暗闇からジョルジュがぶらぶら出て来て、シモーヌに兜と刀を渡す)

43 :名前なし:2009/12/04(金) 22:27:05 ID:zIlIB5Ap
ジョルジュ  兜と刀だよ。必要だろ。お前の役じゃないが、しかし旦那の所にいるのは障害者と未成年だけだ。
        お前の仕事のことは気にしないでいいよ、ほら、聞いてごらん、鉄のタンクが進む、
        ソーセージの機械みたいに。お前の兄さんがもう天使になったって不思議はない。
シモーヌ  (兜と刀を取って)これを砥ぐの、ジョルジュさん?
ジョルジュ  とんでもない。お前さんはオルレアンの乙女だからこれが必要なのさ。
シモーヌ  (兜をかぶってみる)本当。私はすぐに、オルレアンにいらっしゃる王様の所へ行かなくちゃ。
       三十キロあるわね。タンクは一時間に七十キロ走るけど、私の靴は穴だらけなの、イースターが来なきゃ新しい靴は買ってもらえないのよ。
       (歩きかけて)でも後から手を振っててね、ジョルジュさん。でないと恐いの、戦争なんて、古めかしくって血生臭い仕事だもの。

(ジョルジュ、包帯をした腕を振ろうとする。そして姿を消す。シモーヌはオルレアンへの道を歩き出す、小さな輪を描いて行進しながら)

シモーヌ  (大声で歌う)

サン・ナゼールに着いた時は
パンツがなかったわ、
すると大声で言われたの、
お前のパンツはどうしたって。
私は言った、サン・ナゼールの近くでは
空があんまり青かったからよ、
燕麦の穂が高く、
空が真っ青だったからよ。

(運転手モーリスとロベール、突然、彼女の後ろから歩き出す。中世風な武装をし、しかしレインコートを着ている)

44 :名前なし:2009/12/04(金) 22:48:40 ID:zIlIB5Ap
シモーヌ  何をしているの、なぜついて来るの?
ロベール  お前の衛兵になってついて行くのさ。でも、お願いだからその歌は止めてくれ、あまりぴったりこないよ。
       俺たちはお前と婚約したのさ。ジャンヌ、だからそのつもりでやらなくちゃな。
シモーヌ  私、モーリスとも婚約してるの?
モーリス  そうさ、秘密にだよ。

(ギュスターヴの親父、簡単な中世風の鎧を着て彼らの方に歩いて来る。彼は脇を向いて、彼らの側を通り過ぎようとする)

シモーヌ  ギュスターヴのお爺さん!
ギュスターヴの親父  わしは勘弁してくれ、この歳のわしに大砲を撃てと言っても無理だよ。それは酷すぎる。
               人のお情けで生きていた奴にフランスのために死ねと言ったって無理だ。
シモーヌ  (小声で)でも母なるフランスが危ないのよ。
ギュスターヴ親父  わしのおふくろはフランスじゃない、ポワロー夫人で洗濯女だ。おふくろは肺炎で命が危うくなった。
             その時わしに出来たことって言えば何だ。わしにはいろいろな薬を買う金もなかったじゃないか。
シモーヌ  (叫ぶ)神と天使の名において命令します。戻って、大砲を撃つ仕事を引き受けなさい。(気をそらせて)大砲は私が磨いてあげるから。
ギュスターヴ親父  よかろう。それならまた話が別だ。俺の槍をかついでくれ。(シモーヌの肩に槍をかつがせてぶらぶら歩き出す)
モーリス  もうどのくらいだい、シモーヌ? 何もかも資本家のせいじゃないか、万国の労働者よ、ばんこくのろうどうしゃだんけつむにゃむにゃ。
       (シモーヌも、寝言のような観客に分からないことを答える。彼女は非常に説得力をもって喋るので、モーリスは彼女の言うことを理解する)
       そうか、そりゃその通りだ。よし、前進しようぜ。
ロベール  シモーヌ、びっこを引いてるな、鉄の鎧はお前には重すぎるんだろう。

45 :名前なし:2009/12/04(金) 22:49:48 ID:zIlIB5Ap
シモーヌ  (突然酷く疲れたように)ごめんなさいね。ただ朝食をちゃんと食べなかったからなのよ。
       (立ち止まって汗を拭う)またよくなるわ。ロベール、私は王様に何と言うことになっているか思い出せて?
ロベール  (寝言で何かわけの分からないことを言う)これだけさ。
シモーヌ  ありがとう、もちろんそうだったわ。ほら、もうあそこにオルレアンの塔が見えるわ。

(大佐、武装してやって来る。武装の下にダスターコートを着ている。彼は中庭を忍び出るところである)

ギュスターヴ親父  ほらもう始まった。将軍どもは町を捨てて逃げにかかっている。
シモーヌ  なぜ通りにはこんなに人がいないの、お爺さん?
ギュスターヴ親父  多分晩飯時だからだろう。
シモーヌ  なぜ、敵が来ているのに、警報の鐘が鳴らないの、お爺さん?
ギュスターヴ親父  多分キャプテン・フェタンのお望みで、鐘はボルドーに送られてしまったのだろう。

(亭主、旅館の入り口に現れる。彼は赤い羽根飾りのついた兜をかぶり、胸の辺りにぴかぴかした鋼鉄の鎧を部分的につけている)

亭主  ジャンヌ、すぐ体育館に食料袋を運んでおいで。
シモーヌ  でも、アンリの旦那様、私たちの母である祖国フランスが危ういんです。
       ドイツ軍はロワール河のほとりまで来ています。それに、私は王様と話があるんですもの。
亭主  こいつは前代未聞だ。旅館じゃできる限りのことはしてやっている。ご主人様に対する尊敬を忘れちゃいかんぞ。

(ガレージから緋の衣を着た男が現れる)

シモーヌ  (珍しげに)ほらね、旦那様、王様のシャルル七世がおいでになったわ。

46 :名前なし:2009/12/04(金) 22:50:47 ID:zIlIB5Ap
(緋の衣の男は町長だということが分かる。彼は上着の上に国王のマントを着ている)

町長  ジャンヌ、こんにちは。
シモーヌ  (びっくりして)あなたが王様?
町長  そうだ、わしは公僕だ。トラックを調達する。二人だけで話をしよう、ジャンヌ。

(運転手たち、ギュスターヴ親父、亭主、闇に消える。シモーヌと町長は、ガソリンポンプの台に座る)

町長  ジャンヌ、もうお終いだ。将軍は行方をくらましてしまった。
     わしは元帥に、大砲をよこせという手紙を書いたが、国王の封印のある手紙は、開けられずに戻って来た。
     主馬長官は、腕を負傷したというが、その傷を見たものはいない。何もかも骨の髄まで腐っているのだ。
     (泣く)お前だってもちろんわしを非難しに来たんだろう、俺が弱虫だと言ってな。なるほど私は弱い男だ。
     だけどお前はどうなんだ、ジャンヌ? まずお前に聞こう、闇のガソリンは、どこにあるのかね?
シモーヌ  もちろん、レンガ工場に隠してあります。
町長  わしだって知っている、わしは大目に見てやってきただけさ。でもお前は、あの法外な値段をつけた食料袋で避難民たちの財布を絞り上げたね。
シモーヌ  だってそれをしたのは、天使になった兄さんが帰ってきても、職場がなくなっていないようにと思ったからです、王様。
町長  それじゃ、運転手たちが、避難民たちを乗せてやらないで、フェタンのぶどう酒を運んだのも職を失いたくなかったからだと言うのかい?
シモーヌ  それに旦那さんがうまくやって、あの人たちを兵役免除にしてあげていたからですわ。ご存知でしょ。

47 :名前なし:2009/12/04(金) 22:52:04 ID:zIlIB5Ap
町長  知っているとも、ああいうブルジョア貴族どもときたら! 奴らのおかげでわしの髪はすっかり白くなってしまった。
     貴族どもは国王に対立している。お前の本にも、そう書いてあるだろう、民衆はお前の味方なのにな。
     特にモーリスなんかはそうだ。なあジャンヌ、わしとお前で一つ約束をしないかな?
シモーヌ  もちろんよ、王様。(躊躇いながら)あなただって商売の邪魔になっても口出ししなきゃいけないわ、お釜がいっぱいになるように。
町長  できる限りやってみよう。しかしまあ慎重にやらんと、わしの国王の給料が削られてしまうんでね。
     わしはいろんなことを黙認する男だからこそ町長もやっていられたが、いちいち厳しく言っていたら誰もわしについて来ないことになる。
     愉快でないことはみんなわしがしなければならない。工兵にしてもそうだ。旅館から暴力で食料を奪っていけばいいのに、わしの所へ来て
     「橋は自分で修理しろ、俺たちは、糧秣車が来るまでは動かないから」などと言うんだ。
     こんな具合じゃブルゴーニュ公がイギリスに寝返ったのも別に不思議はないだろう?
亭主  (戸口に立って)シャルル王、あんたはどうやらご不満のようですが、まあ民衆の身になって考えてくださいよ。
     民衆だって、もう出血続きです。私だってフランスを愛することにかけては人後におちないつもりですが、
     でもね(仕方がないというジェスチャーをして退場)
町長  (諦める)こんな具合でどうしてイギリス人どもをやっつけられようか?
シモーヌ  太鼓を打たなくちゃ。
       (地面にしゃがんで、彼女の目に見えない太鼓を打つ。一打ちごとに、地面から聞こえてくるようなこだまが響く)
       みんな出て来い、船主たち! 出て来い、サン・ドニの鍛冶屋たち、リヨンの人たち、出て来い、敵が来たのよ!
町長  どうだ、ジャンヌ?

48 :名前なし:2009/12/04(金) 22:53:28 ID:zIlIB5Ap
シモーヌ  奴らがやって来た。みんなしっかり団結してよ。奴らは狼の声のような鼓手を先頭にしてやって来る。
       あの太鼓はユダヤ人の皮で張ったものよ。肩には禿鷹がとまっている。リヨンの銀行家のフォーシュのような顔ね。
       そのすぐ後から、火付けの元帥がやってくる。歩いてくるわ。七つの軍服を着た喜劇役者だわ。
       どれを着ても人間には見えない奴、この二人の悪魔の上には、新聞紙で出来た天蓋がかかっているから、あの連中がよく分かるわ。
       二人の後から、見渡す限り、タンクや大砲や列車が来る。祭壇や拷問道具をのせた自動車も来る。
       みんな車だから早いのね、まず戦車、それから獲物を積む車。人間はなぎ倒されるけれど、収穫はみんな盗まれてしまう。
       だから、奴らのやって来た町は滅びてしまう。奴らの帰った後は裸の荒野ばかり。
       でも、奴らの滅びる時が来たわ。シャルル国王もおいでだし、神の娘である私がいるんだもの。

(それまでに登場したり、登場しつつあった全てのフランス人が集合する。みんな中世の武器を持ち、部分的に武装している)

シモーヌ  (喜びに輝いて)ほらね、シャルル王様、みんな集まったわ。
町長  全部じゃないぞ、ジャンヌ、たとえば私の母のイザボーは来ていない。元帥も腹を立てて行ってしまったぞ。
シモーヌ  もう恐がることはないわ。私はあなたの戴冠式をしたいの、フランス国民が挙国一致するように。
       あなたの王冠はもう持ってきてあるのよ、ほら。

(彼女は籠から王冠を取り出す)

49 :名前なし:2009/12/04(金) 23:00:19 ID:zIlIB5Ap
町長  でも、元帥が行ってしまったとなると、トランプの相手がいないぞ。
シモーヌ  むにゃむにゃむにゃ。

(シモーヌ、町長に王冠をのせる。背景に工兵が現れる。彼らは柄杓で釜を叩く。大きな鐘の音が起こる)

町長  何の鐘だ?
シモーヌ  ランス教会堂の鐘だわ。
町長  あれは食料を受け取りに来た工兵じゃないか?
シモーヌ  食料はもらえなかったわ。だからお釜は空っぽ。空っぽのお釜があなたの戴冠式の鐘なのよ、シャルル王様。
町長  むにゃむにゃむにゃ。
一同  王様万歳! 戴冠した少女ジャンヌ万歳!
町長  (シモーヌに)ありがとう。ジャンヌ、お前はフランスを救ってくれた。

(舞台は暗くなる。混乱した音楽にラジオのアナウンサーの声が混じってくる)

50 :名前なし:2009/12/06(日) 09:28:07 ID:1BnqO3Qq
手打ち


(早朝、運転手モーリスとロベール、ギュスターヴ親父と兵士ジョルジュ、朝食のテーブルを囲んでいる。旅館からラジオが聞こえる)

51 :名前なし:2009/12/06(日) 09:29:50 ID:1BnqO3Qq
ラジオ  国防省の通達を繰り返します。
      「本日午前三時三十分発表、ドイツ戦車梯団が予期せぬうちにロワール河を渡河して、侵入してしまったので、
      今日新しい避難民の波が、中部フランス地区の軍事上重要な道路に溢れ込んだ。
      住民諸氏が、増援部隊の進路の妨害にならぬよう、現在ある場所に停止されることを特に要望する」
モーリス  そろそろ出かける潮時だぜ。
ジョルジュ  給仕長や他の連中は、一晩中瀬戸物に箱を詰め込んでから、朝五時にずらかったよ。
        旦那は警察を呼んでくるぞと脅したけれど、何の役にも立たなかったぜ。
ロベール  (ジョルジュに)なぜ俺たちをすぐ起こしてくれなかったんだ?

(ジョルジュ、黙る)

モーリス  旦那に止められたんだろ、え? (笑う)
ロベール  ジョルジュ、お前、ずらからないのか?
ジョルジュ  いいや、俺は軍服を脱いでここに残らあ。食料はあるし、この腕はどうにもなりそうもないと踏んだよ。

(旅館から亭主が忙しそうに出て来る。慎重な身支度。彼の後から、トランクを引きずりながらシモーヌ)

亭主  (手を叩いて)モーリス、ロベール、ギュスターヴ、さあ仕事にかかった、かかった。瀬戸物を積むんだぞ。
     納屋に貯蔵してあるものはみんなトラックに積むんだ。塩漬けのハムを包め、いや、まず銘柄もののぶどう酒といこう。
     コーヒーは後にしな、戦争なんだぞ、ボルドーへ行くんだから。

(従業員たち、朝食を続ける。モーリス、笑う)

亭主  おい、聞こえないのか? 荷造りをして、積み込みをしなきゃいかんぞ。
モーリス  (だるそうに)トラックは差し押さえられました。
亭主  差し押さえられた? 馬鹿言うな、(大げさな身振りで)それは昨日のことだ。
     ドイツの戦車がサン・マルタンに向かって進んでるんだ。こうなれば一切も変わってくる。
     昨日は通ったことだって、今日はもう通用しないんだ。
ギュスターヴ親父  (小声で)その通り。
亭主  いいかげんにカップを置いたらどうだ。こっちが話している時くらい。

(シモーヌ、トランクを置く。この最後の場面の間に旅館に忍び込む)

52 :名前なし:2009/12/06(日) 09:31:13 ID:1BnqO3Qq
モーリス  ロベール、コーヒーをもう一杯どうだ。
ロベール  もちろんよ、こんなのに二度とありつけるかどうかも分からないものな。
亭主  (怒りを飲み込んで)まあよく考えてみな。旦那の大事な品物の積み込みを手伝ってくれ。酒代の方はいくらでもはずむぞ。
     (誰も顔を上げないので)ギュスターヴ爺さん、すぐ行って瀬戸物にかかれ、いいね?
ギュスターヴ親父  (曖昧に立ち上がる)まだ朝食を済ませてないんでして。そんな顔して見ないでくだせい。
             そんな顔したって何の役にも立ちませんや。(悪意を込めて)瀬戸物なんか糞食らえだ、今日はね。
亭主  気でも狂ったのか、いい年をしやがって! (一人一人の顔を見て、それからオートバイの方に行き、苦々しく)
     ああ、そうか、お前たちはドイツっぽの来るのを待ってやがるんだろう。旦那を敵に売る気か? 
     これがお前たちにパンを恵んでやったお方に対する愛情と尊敬の現われってわけだな。(運転手たちに)
     お前たちが俺の運送業にかけがえのない人間だって証明書に三度も署名してやったのを忘れたのか? 
     あれが泣きゃお前たちは今頃前線にいたところだぞ。それをこうやって恩返ししてくれるわけか。
     従業員とは家族の一員だと考えていると、それがその報いなんだな。(肩越しに)シモーヌ、コニャックを一杯くれ、気分が悪くなってきた。
     (答えがないので)シモーヌ、どこへ行った? あいつまで逃げて行ってしまう!

(シモーヌ、旅館から出て来る。ジャケットを着て、出かける用意をしている。彼女は亭主の脇をすり抜けようとする)

亭主  シモーヌ!

(シモーヌ、歩き続ける)

亭主  気でも狂ったのか、俺に答えないなんて?

(シモーヌ、走り出し、退場。亭主は肩をすくめ、額を指差して頭がおかしいことを示す)

53 :名前なし:2009/12/06(日) 09:32:18 ID:1BnqO3Qq
ジョルジュ  シモーヌはどうしたんだ?
亭主  (運転手の方に向き直る)じゃ、俺の仕事を拒否する気だな、ええ?
モーリス  とんでもない、朝食さえ食えば出かけますよ。
亭主  じゃ、瀬戸物はどうする?
モーリス  もって行きまさあ。旦那がお積みになりたいならね。
亭主  俺が?
モーリス  そうでさあ、だってあれは旦那のでしょう?
ロベール  ただし俺たちがボルドーへ行くかどうかは保証できませんぜ、なあモーリス。
モーリス  今日日じゃ何も保証できませんや!
亭主  こいつは驚いた。お前たち、敵のいる目の前で労働を拒否したらどんなことになるか知っているか? 壁に並べて銃殺だぞ!

(シモーヌの両親、通りからやって来る)

亭主  何の御用かね?
マーシャル夫人  旦那様、うちのシモーヌのことで参りました。何でも、ドイツ軍が間もなくやって来るので、
            旦那様はここをお発ちになるってうかがいましたが、シモーヌはまだ小さいし、
            それにうちの亭主は二十フランのことを心配しておりますので。
亭主  シモーヌは逃げちまったよ、多分悪魔にでもさらわれたんだろう。
ジョルジュ  シモーヌはお宅にはいないんですか、マーシャルのおかみさん?
マーシャル  いませんよ、ジョルジュさん。
ジョルジュ  こいつは妙だな。

(町長、町の警官を二人連れて登場。彼らの後にシモーヌが小さくなっている)

54 :名前なし:2009/12/06(日) 09:36:13 ID:1BnqO3Qq
亭主  ちょうどいい所に来たな、フィリップ。(大げさな身振りで)フィリップ、ちょうど叛乱を起こされたところだ。まあ入ってくれよ。
町長  アンリ、マーシャル嬢が報告してくれたが、お前はトラックを横流ししているそうじゃないか、
     俺は法律に違反する行為はどんな手段をとってもやらせんぞ、刑事問題にしてもな。(町の警官に合図する)
亭主  シモーヌ、お前だな、こんな恥知らずなことをやらかしたのは? 皆さん、私はこの餓鬼を、
     この娘の家庭に対する好意から旅館に引き取ってやったんですよ!
マーシャル夫人  (シモーヌを揺すぶる)お前はまた何をしでかしてきたんだい。

(シモーヌ、沈黙)

モーリス  僕がこの娘を行かせたんだ。
亭主  そうか、それでお前はモーリスのいうことを聞いたんだね。
マーシャル夫人  シモーヌ、お前、そんなことがよくもやれたね。
シモーヌ  町長さんの役に立ちたかっただけなの、ママ、私たちのトラックが必要なんだもの。
亭主  私たちだと?
シモーヌ  (しどろもどろになり始めて)アンドレ兄さんを助けに行こうと思っても、道が塞がっているんだもの。
       (それ以上言えない)ねえ、町長さん、説明してくださいな。
町長  アンリ、いい加減にお前のエゴイズムにきりをつけたらどうだ。この娘が俺を迎えに来たのも当然だ。
     今のような事態では我々の持ち物はみんなフランスの持ち物と考えるべきだ。わしの息子たちだって戦場にいる。この娘の兄もそうだ。
     これだってつまり、我々の息子さえももう我々の個人のものじゃないってことだろう。
亭主  (我を忘れて)それじゃもう秩序も何もないのかね。所有権ってものはもう存在しないのかい、ええ? 
     じゃ、俺の旅館をなぜそっくりマーシャル一家にやってしまわないんだ。
     多分運転手諸君も俺の金庫を空っぽにしたいとお思いだろうぜ。これじゃ無政府状態だ! 
     シャヴェーさん、忘れないでいただきたいが、うちのおふくろは県知事夫人の学校友達だよ、それにまだ電話だってあるしね。
町長  アンリ(弱気になる)私は義務を遂行しているだけだよ。

55 :名前なし:2009/12/06(日) 09:43:35 ID:3VgECySm
亭主  フィリップ、論理的に考えてみようぜ、君はフランスの持ち物って言ったな。
     俺の貯蔵品や、貴重な瀬戸物のセットや、俺の銀器も、フランスの所有物だろう、それがドイツっぽの手に渡ってもいいのかね? 
     コーヒーカップ一つだってドイツ野郎の手に渡したくないさ、ハム一本、イワシの缶詰一個だって渡せるか。
     ドイツ人の来る所は荒野になっちゃうんだぞ、忘れたのか? 町長としてやって来たならこう言うべきだろう。
     「アンリ、お前の持ち物がドイツ人の手に渡らないようにするのがお前の義務だ」ってな。
     そう言ってくれれば俺も、「ちょうどトラックが必要な所なんだよ、フィリップ」と答えにゃなるまい。

(通りから群集の騒ぎが押し寄せてくる。ホテルの前のベルが鳴る。一つの扉を叩く音)

亭主  何が始まったんだ? ジョルジュ、何だか見て来い。(ジョルジュ、旅館の中に入る)
     それに、義務を忘れ、俺の物をほったらかしにしている俺の従業員どもは、こう言うべきだろ、
     (運転手たちに)「諸君、フランス人として私は諸君に警告する。瀬戸物のセットの荷造りをしたまえ」ってな。
ジョルジュ  (戻って来る)体育館から群衆がやって来ます。アンリの旦那、トラックが行ってしまうって聞いたんでさ。
         みんな興奮して町長さんと話がしたいって言ってます。
亭主  (青くなって)お前の勝ちだよ、フィリップ。みんなシモーヌの仕業だ! 急いで扉を閉めろ、ジョルジュ。
     (ジョルジュ、門の扉を閉めに行く)早く早く---走れってば---食料袋を売ったことで、
     俺を目の仇にするようにそそのかしたせいだぞ。集団暴力だ。
     (警官に)何をぐずぐずしているんだ、急げ、警官増強を電話で頼め。フィリップ、お前の責任だぞ、
     何か処置をしてくれ、フィリップ、助けてくれ、お願いだ、フィリップ。
町長  (警官に)門を守っていろ。(亭主に)馬鹿を言え、何も起こりやしないよ。お前だって聞いただろう、
     俺と話したがっているだけさ。(また門の扉が開かれるので)代表を入れなさい。三人以上はいかん。

(警官、扉を隙間くらい開き、群集と交渉する。二人の男と乳飲み子を抱えた女が入ってくる)

56 :名前なし:2009/12/06(日) 09:45:00 ID:3VgECySm
町長  何事だ?
避難民の一人  (興奮して)町長さん、我々はトラックを要求します!
亭主  通りは開けなきゃいけないという指令を聞かなかったのか?
町長  (避難民たちに)奥さん、皆さん、そう仰天されることはない。乗り物の用意は大丈夫してあります。
     ただ旅館としては、大事な品物を敵の魔の手から逃れさせたいと考えているだけですよ。
女  (興奮して)ほらごらんなさい。人間を運ばないで、荷物を持ち出そうとしているんだ。

(飛行機の爆音が聞こえてくる)

外の声  急降下爆撃機だ!
亭主  急降下して来るぞ!

(騒ぎは大きくなる。飛行機が現れる。皆地面に伏せる)

亭主  (飛行機がまた遠ざかったので)命が危ない。逃げなくちゃ。
外の声  トラックを出せ! 俺たちをここで見殺しにするのか!
亭主  まだ荷物は積んでないんだよ、フィリップ!
シモーヌ  (怒って)もう買い溜め品のことは考えちゃいけないわ。
亭主  (呆気に取られて)何を持ち出してきたんだ、シモーヌ?
シモーヌ  食料は皆さんにあげるといいわ。
避難民  何、食料品だって? 今持ち逃げしようとしているのは食料品なのか!
モーリス  そういうわけだ。
女  私たちは今朝も、スープ一杯だって口に入らなかったのよ。
モーリス  旦那は買い溜めの品をドイツ人の手から隠しているわけじゃない。フランス人に奪われないためなんだよ。
女  (後ろの門の方へ行く)さあ、扉を開けなさい。(警官が彼女を止めるので、彼女は堀越しに叫ぶ)
    トラックに積んであるものは旅館の買い溜め食料ですって。
亭主  フィリップ! アンナに喚かせて、黙って見ているのか。
外の声  奴らは食料の横流しをしている---扉をぶち開けろ---男はいないのか? 
      食料は積み出して、私たちをドイツのタンクの餌食にさせるのね。

(避難民、門の扉をぶち破る。町長、彼らの方に向かう)

57 :名前なし:2009/12/06(日) 09:46:00 ID:3VgECySm
町長  諸君、暴力はやめてください! 全てうまく処置をとりますから。

(町長が門の所で交渉している間、中庭では激しい口論が行われる。二つのグループに分かれる。
一方には亭主、避難民の一人の女、シモーヌの両親、他方にはシモーヌ、運転手たち、第二の避難民、ギュスターヴ親父が立つ。
ジョルジュはこれに加わらず飯を食い続ける。誰も気がつかないうちに、マダム・スポー、旅館から出て来る。非常に年老いて、黒い服を着ている)

58 :名前なし:2009/12/06(日) 09:50:04 ID:3VgECySm
女  まだ車に乗れない人が八十人もいるんですよ。       |シモーヌ  道は知っているでしょ。回り道して二十番国道は軍隊のために開けておくようにしてね。
亭主  あなただって、家財道具一切を抱えて来てるでしょう。  |ロベール  この人間の大洪水の中を、買い溜め品など積んで走れる自信は到底ないね。
     マダム、私だって自分のものは持っていきますよ。    |シモーヌ  でも、病人や子供は一緒に連れて行ってやるんでしょ?
     それにトラックは私のです。                  |ロベール  避難民を乗せていりゃあ、ことはまた違ってくらあ。
町長  スポーさん、あなたの品物は                 |ギュスターヴ親父  外で待ってな、シモーヌ。その方がいいよ。
     どのくらい場所を取るかね。                  |シモーヌ  でも祖国フランスは、とても危ないのよ、ギュスターヴのお爺さん。
亭主  少なくとも梱包したのが六十個、               |ギュスターヴ親父  またあのろくでもない本を読んだんだな。「我が麗しの祖国フランス危うし」を?
     もう一つのトラックに避難民を三十人は乗せられるよ。  |ロベール  スポーの大奥様が下りて来たぜ。お前に合図してるよ。
女  じゃ、五十人は後へ残っていろって仰るの?          |
町長  少なくとも子供と病人が乗れるように             |(シモーヌ、スポー夫人の方に行く)
     君の分はトラック半分でいいだろう。
女  家族をばらばらにしてしまうつもり? 酷い人ね、あんたは。
亭主  八人から十人はまだ箱の上に座れるよ。
     (マーシャル夫人に)みんな、あの娘のおかげだよ。
女  あの娘の方が、あんたたちより人間らしい心の持ち主よ。
マーシャル夫人  うちのシモーヌのことを許してやって下さいまし、
            アンリの旦那様。あの娘の兄から
            吹き込まれたんでございます。本当にまあ何てことを。

59 :名前なし:2009/12/06(日) 09:51:35 ID:3VgECySm
女  (門の群集に)なぜトラックや食料をぶん取っちゃわないの?
スポー夫人  ほら、シモーヌ、鍵だよ、みんなに貯蔵品を分けておあげ。
         欲しいだけね。ギュスターヴとジョルジュは手伝っておやり。
町長  (大声で)ブラヴォー、スポー夫人、ブラヴォー。
亭主  おっかさん、何でまたそんなことを? どうして下へ下りて来たんだい、
     こんな中に来たら、命が危ないよ。地下室には、銘柄物のぶどう酒と食料で七万フランもの値打ちのものが納まってるんだよ。
スポー夫人  (町長に)みんなサン・マルタンの町のご用に立てましょう。(亭主に冷たく)お前、略奪された方がいいのかい?
シモーヌ  (乳飲み子を抱えた女の所へ行って)さあ、食料がもらえるわよ。
スポー夫人  シモーヌ、うちの倅は、お前さんに言われた通り、旅館の貯蔵庫を全部、この町のお役に立てたわけだよ。
         だから後はうちの瀬戸物や銀の食器のことだけが問題になるわけだけど、
         これならあまり場所を取りはしないよ。さあ、これなら積んでくれるだろうね。
女  トラックの席はどのくらい開くの?
スポー夫人  奥さん、あなた方を出来る限り輸送いたしますよ。それに運べなかった方は、
         是非うちの旅館でお世話させていただきたいと思っております。
避難民の一人  (門の方に叫ぶ)ガストン! ここで引き取ってくれれば、クレヴューのおじさんと、マニエさんの一家は残ってくれるかね?
背後から声  それならいいだろう、ジャン。
女  待って、世話してくれるなら私も残るわ。
スポー夫人  大歓迎ですわ。
町長  (門の所で)諸君、手伝ってください。旅館の貯蔵食料をお分けしますから。

(二、三の避難民、おずおずと食糧倉庫に行きかける)

60 :名前なし:2009/12/06(日) 10:55:54 ID:3VgECySm
スポー夫人  私たちにもコニャックを持ってきておくれ、シモーヌ、マルテルの84をね。
シモーヌ  はい、奥様。(避難民たちに合図をし、彼らやギュスターヴ親父、ジョルジュと食糧倉庫に入る)
亭主  もうお終いだ、おっかさん。
避難民の一人  (ジョルジュと食料の箱を引っ張り出す。大いに満足して、売り子の真似をする)
           果物、ハム、チョコレート、旅行用食料、今日はサービスで無料です。
亭主  (腹を立てながら避難民とジョルジュが中庭をかついで行く箱を見送る)こいつは貴重品なんだぞ! フォアグラなのにな。
スポー夫人  (彼を抑えて)黙っておいで! (避難民に丁寧に)皆さんのお口にあいますように。

(他の避難民、ギュスターヴ親父に助けられながら、貯蔵品(酒)の入った籠を担いで中庭を通る)

亭主  (苦しそうに訴える)一九一五年のポマール酒だぜ。それにキャヴィアもか、こいつはあんまり---
町長  アンリ、犠牲の必要な時代だよ。(声を抑えて)大事なのは暖かい心意気を見せてやることだ。
モーリス  (亭主の嘆くのを真似して)「俺の大事なポマール酒が!」(大笑いしてシモーヌの肩を叩きながら)
       この機会を利用して、お前の瀬戸物のセットを積み込んでおきな、シモーヌ。
亭主  (大いに気分を害して)一体何がおかしいんだ。(運ばれていく籠を指しながら)これじゃ略奪だ。
ロベール  (気がよさそうに、一つの籠を担いで)あまり気を悪くしないでくださいな、アンリの旦那、
       旦那の瀬戸物は間違いなく積み込んでおきますからね。
スポー夫人  決まったよ。(箱やぶどう酒瓶から幾らかとって、シモーヌの両親に与える)取っておきな、
         あんたたちももらっときなさい。シモーヌ、あんたの親御さんにもグラスを渡しておあげ。

(シモーヌ、その通りにする。それから肘なしの椅子を一つ取ってきて、それを堀に寄せ掛け、
籠の一つから、食料を取り出し堀越しに外の避難民に投げてやる)

61 :名前なし:2009/12/06(日) 10:57:47 ID:3VgECySm
スポー夫人  モーリス、ロベール、ギュスターヴの親父さん、あんたたちもグラスをお取りなさい。
         (警官の方を指しながら)どうやら武装なさった方もおいでのようね。(乳飲み子を抱えた女に)奥さん、ご一緒に一口いかがです? 
         (一同に)皆さん、我々の美しい祖国フランスの未来のために乾杯いたしましょう。
亭主  (一人だけみんなから外れて立って)俺も入れてくれ。俺を抜かしてフランスの幸福のため飲もうってのか? (彼女のグラスに注いでやり、グループに加わる)
町長  (スポー夫人に)奥さん、サン・マルタンの町の名にかけて、この旅館の寛大な贈り物に感謝いたします。(グラスを上げて)フランスのため、未来のために。
ジョルジュ  シモーヌはどこへ行った?

(シモーヌ、まだ堀の外の避難民に堀越しに食料品を投げてやっている)

町長  シモーヌ!

(シモーヌ、興奮し、おずおずと近付いてくる)

スポー夫人  ほら、お前もグラスを取りな、シモーヌ、ここにいるみんなはお前にも感謝しなければいけないのよ。

(一同、飲む)

亭主  (運転手たちに)仲直りしようぜ。お前たち、俺が避難民をトラックに乗せるってことをまるで考えないと思っていたのか? 
     モーリス、ロベール、俺は頑固者だけど、しかしちゃんとした理由があれば、そいつに従う気はいつでもあるんだぜ。
     わしの間違いは認めよう。別にそれでわしの株が下がるわけじゃなし。だからお前たちも間違った所は改めてくれ。
     まあこういう個人的なつまらん意見の相違は水に流そうぜ。
     我々は今や仲間割れしないで共同の敵に当たらなきゃいかん。さあ、手を打とうぜ!

(亭主は、愚かな笑いを浮かべて手を差し出したロベールと握手し、それからジョルジュに左手を与える。
それから亭主は乳飲み子を抱えた女を抱擁する。ギュスターヴ親父はぶつぶつ言い、相変わらず不機嫌ながら手を差し出す。
それから亭主は運転手モーリスの方に向く。モーリスはしかし彼に手を出す気配を見せない)

62 :名前なし:2009/12/06(日) 10:59:01 ID:3VgECySm
亭主  おやおや、俺たちはフランス人同士じゃないのかい?
シモーヌ  (非難を込めて)モーリス!
モーリス  (躊躇しながら亭主に手を差し出す。皮肉を込めて)フランス人同士を団結させてくれた、我らの新しいジャンヌ・ダルクのために乾杯!

(マーシャル氏、シモーヌの横っ面を張る)

マーシャル夫人  (説明的に)旦那様に勝手なことをした罰だよ。
亭主  (マーシャル夫人に)よせよせ、そんなことは。(シモーヌをなだめるように抱いてやる)
     シモーヌはわしのお気に入りだ。奥さん、この娘には弱いんだよ、わしは。(運転手に)
     さあみんな、積み込みを始めた、始めた! きっとシモーヌも手伝ってくれるに違いない。
町長  (警官たちに)君たちもスポーさんに手を貸してやってくれる会?
亭主  (乳飲み子を抱えた夫人にお辞儀をして)奥さん!

(一同、散り散りになる。外の群衆も去りだす。舞台には亭主と町長とスポー夫人とシモーヌと運転手二人とジョルジュが残る)

亭主  みんな、俺もいい経験をしたと思うよ。キャヴィアやポマールなんか糞食らえだ。大事なのは一致団結だからな。
モーリス  レンガ工場のものはどうしますね?
町長  (慎重に)そうだな、アンリ、レンガ工場のものにも手をつけなけりゃな。
亭主  (嫌なことに触れられて)何だ? あれまでか! ガソリンのないトラックはレンガ工場に回すがいいや。あそこでガソリンの補給をしたらいいだろう、これで満足か?
ロベール  アベビーユではドイツのタンクが道端のガソリンスタンドで給油しているそうだ。だから奴らのタンクはすぐにもやって来るぞ。
ジョルジュ  我が百三十二師団は、後ろに気がつかないうちに敵のタンクに後へ回られてしまったぞ。二個連隊がぺしゃんこにやられてしまったからね。
シモーヌ  ああ、七連隊じゃなかったでしょうね。
ジョルジュ  ああ、七連隊じゃないよ。
町長  買い溜めのガソリンは全部破棄した方がいいぞ、アンリ。

63 :名前なし:2009/12/06(日) 11:00:35 ID:3VgECySm
亭主  少し気が早すぎやしないかね? すぐに何でも始末するってのは。これから敵を撃退しちまうかもしれないぜ。
     どうだ、シモーヌ、シャヴェーさんにフランスはまだまだ負けませんと言えないのかね。(スポー夫人に)
     おっかさん、さよなら、ここに残っていちゃ心配だな。(彼女にキスする)でもシモーヌがよく世話してくれるだろう。
     シモーヌ、さよなら、俺は本当の所お前に感謝しているんだ。お前は立派なフランス女だからな。
     (彼女にキスする)お前がここにいてくれる限り、きっとドイツっぽに何も奪われはしないだろう。
     旅館にあるものは根こそぎ供出しても構わん、異議なしだね? お前はわしの考えている通りにやってくれると思う。
     フィリップ、さよなら。(彼を抱き、荷物を取り上げる。シモーヌ、彼を手伝おうとする、彼は身振りで拒む)
     もういい、お前は大奥様と、残りの貯蔵品をどうするか相談しなさい。(通りに去る)
シモーヌ  (二人の運転手の後を追いかける)モーリス、ロベール。(二人の運転手の頬にキスする。それからモーリスとロベールは退場する)
アナウンサーの声  (ラジオ)皆様に申し上げます。緊急事態、ドイツ軍戦車梯団はトゥールに進出いたしました。(この通告は終わりまで何度も繰り返される)
町長  (真っ青になって、我を忘れて)もう今夜中にはここへやって来るぞ。
スポー夫人  女の腐ったみたいな真似はおよし、フィリップ。
シモーヌ  奥様、私はギュスターヴのお爺さんとジョルジュと一緒にレンガ工場へ行って来ます。ガソリンを始末しなくちゃ。
スポー夫人  旦那様の決めていったことを知ってるだろう。あんまり慌てて早まったことをしてはいけないって仰ったじゃないか。
         いいかい、私たちのものも少しはとっておいてもらわなくちゃ。
シモーヌ  奥様、モーリスは、ドイツ軍は凄く足が早いんだって言っていました。

64 :名前なし:2009/12/06(日) 11:02:22 ID:3VgECySm
スポー夫人  もう沢山だよ、シモーヌ。(行きかけて)ここは本当に風が酷い。
         (町長に)フィリップ、今日あんたがうちの旅館にしてくれたことの御礼を言うよ。
         (ドアの下で)ついでだけどシモーヌ、もうみんないなくなったんだから、多分旅館は休業するわよ。貯蔵庫の鍵は私にお返し。
         (シモーヌ、非常に驚き、鍵を返す)お前も自分の家に帰るのが、一番いいと思う。これまでよくやってくれたね。
シモーヌ  (理解できずに)この町の命令で貯蔵食料を取りにきても、手伝わせてもらえないんですか?

(スポー夫人、何も言わずに旅館に入る)

シモーヌ  (しばらく沈黙した後、つかえながら)私、くびになったのかしら、町長さん。
町長  (慰めるように)かもしれん。でも気に病むことはない。
     お前も聞いた通り、奥様がよくやってくれたと仰ったっていうのは大したことだよ、シモーヌ。
シモーヌ  (単調に)そうね、町長さん。

(町長、狼狽して去る。シモーヌ、彼を見送る)

65 :名前なし:2009/12/06(日) 11:14:54 ID:3VgECySm
第二の夢


(六月十五日夜。混乱した、祝祭的な音楽。暗闇から待っている人々の姿が現れる。
国王のマントを着た町長、亭主と大佐、二人とも鎧と司令官の杖。大佐は武装の上にダスターコートを羽織っている)

66 :名前なし:2009/12/07(月) 10:55:58 ID:Vq/DQ36x
大佐  我らがジャンヌはまず二十番国道に軍隊進軍の道を開け、今やオルレアンとランスを攻略した。
     彼女の功績は大いに称えられねばならぬ、これは当然だ。
町長  それは国王であるわしのすることじゃ。我が背後に集えるフランスの貴顕紳士たちは大地に平伏して感謝すべきだ。

(ここからこの場面の終わるまで、フランスの貴顕紳士たちが背後に自然に集まって来るような型で召集される)

町長  ところでお前はくびになったそうじゃないか? (内緒で)あの気位の高い私の母君、イザボー女王の希望でくびになったそうだね。
亭主  それについてはわしは何も知らん。わしの知らんことだ。
     こいつは全く驚いたことだよ、シモーヌはわしのお気に入りだ。もちろんくびになんかならんよ。

(町長、寝言のように何かわけの分からないことを言う。多分責任回避の言葉)

大佐  ほら、来たぞ。

(シモーヌ、兜と剣を持って、彼女の護衛兵を先頭に入って来る。護衛兵はモーリスとロベールと兵士ジョルジュである。三人とも武装している。
暗闇の中からシモーヌの両親と旅館の従業員、民衆が現れる。護衛兵は、長い槍で民衆を後ろに下がらせる)

ロベール  ジョルジュ様に道を開けろ。
マーシャル夫人  (首を伸ばしながら)ほら来たよ、あんまり兜はあの子には似合わないね。
町長  (歩み出る)ジャンヌ、お前になんとお礼を申したらいいだろう。すぐ願いがあったら、言いなさい。

67 :名前なし:2009/12/07(月) 10:57:06 ID:Vq/DQ36x
シモーヌ  (会釈する)シャルル王様、第一の願いは、これからも私の町の人たちが、旅館の買い溜め食料で食べていけるようにしていただきたいことです。
       ご存知のように、私は貧乏な人や困っている人を助けるために遣わされたのです。税金は免除してあげてくださいね。
町長  もちろんだ。他にないか?
シモーヌ  第二にパリを奪還しなければいけません。二度目の進軍はすぐしなければいけませんわ、シャルル王様。
亭主  (びっくりして)二度目の進軍?
大佐  スポーの大奥さんは何と仰るかね、あの気位の高いイザボー女王は?
シモーヌ  私は、一緒に敵を完全にやっつけられるような方を探しているんです、それも今年中にですよ、シャルル王様!
町長  (微笑みながら)ジャンヌや、我々は大変お前を満足に思っているのだ。私の口から言うのだから大したことだよ。
     お前はもうしばらく休んでおいで、少しは私たちにも仕事をやらせておくれ。
     わしはもう旅館を休業にしてしまうから、お前は自分の家へお帰り。しかしその前にもちろんお前は貴族の称号を授けられる。
     お前の剣をおよこし。わしの剣を忘れてきてしまったのでな。お前に刀礼を施してお前を貴婦人にしたいのだ。
シモーヌ  (彼に剣を渡してひざまずく)鍵はここにございます。

(混乱した音楽が、オルガンとコーラスで演ぜられ、遠方の教会の式典の様子を現す。町長は厳かに刀でシモーヌの肩を軽く触れる)

衛兵と民衆  オルレアンの乙女万歳! フランス第一の貴婦人万歳!
シモーヌ  (町長が行こうとするので)ちょっとだけ、王様、私の剣を返すのを忘れちゃ駄目よ。
       (せがんで)イギリス人たちはまだ完全にやられたわけじゃないんです。
       ブルゴーニュがまた新しい軍隊を集めています。今度の方が前より手強そうです。難しいのはこれからですわ。
町長  申し出ありがとう。それに他のことでも本当に世話になったね。(シモーヌの剣を旦那に渡す)
     アンリ、この剣をボルドーに安全に運んでおくれ。我々もこれから、あのスポー夫人と二人だけの話があるんでね、
     ほら、誇り高き女王イザボーのことさ。元気でね、ジャンヌ、本当に楽しかったよ。

(亭主、大佐と退場)

68 :名前なし:2009/12/07(月) 10:58:35 ID:Vq/DQ36x
シモーヌ  (大変不安に)でもみんな、敵が来るのよ! 
       (音楽の調子は落ちて呟きのようになり、光は薄暗くなり、民衆は暗闇に消える。シモーヌ、身動きもせず立ち尽くす。それから)
       アンドレ兄さん、助けて、天使様、降りてきてちょうだい! イギリス人たちは軍隊を集めています。
       ブルゴーニュは敵に寝返りを打ってしまいました。フランス軍は散り散りになっています。
天使  (ガレージの屋根の上に現れる。非難を込めて)お前の剣はどうしたんだ、ジャンヌ?
シモーヌ  (混乱し、弁解しながら)私を貴婦人にする式であの剣を使って、それから返してくれなかったんです。
       (小声で、恥ずかしそうに)私、くびになったんですもの。
天使  分かった。(沈黙の後)フランスの娘よ、追い払われてはいけない、ここに頑張るのだ。フランスがそれを欲している。
     まだお前の両親のもとに帰ってはいけない。両親たちはお前がくびになったことを死ぬほど嘆くだろう。
     お前だって、兄貴がいつか帰って来るまで、彼の職場を確保しておくと約束しただろう。ここに残るのだ、ジャンヌ! 
     どうしてお前は自分の職場を離れられられるのだ、今に敵が侵入してこようという時に。
シモーヌ  敵が勝ってしまっても、私たちは戦わなきゃならないんですか?
天使  今晩は風があるか?
シモーヌ  ええ。
天使  中庭に木が一本あるだろう?
シモーヌ  ええ、ポプラよ。
天使  風が吹くと、葉がざわざわいっているか?
シモーヌ  ええ、はっきり聞こえるわ。
天使  それなら敵が勝ってしまってもまだ戦わなければいけない。
シモーヌ  でも、剣がないのにどうやって戦えばいいの?

69 :名前なし:2009/12/07(月) 10:59:32 ID:Vq/DQ36x
天使  

聞け!
お前の町に征服者がやって来たなら、
奴らをまるで征服なんてしていないような気持ちにしてやれ。
誰も奴らに鍵を渡すものになるな、
なぜってやって来るのはお客ではない、
害虫だからだ。
奴らに食事の用意も食卓の用意もしてやるな。
奴らの休むベッドや椅子は壊してしまえ。
焼き払ってしまえないものは隠しておけ、
壷という壷にミルクを入れ、パンはみんな埋めてしまえ。
奴らに助けて! と悲鳴をあげさせろ。
奴らの名は怪物とつけろ。
奴らに泥を食わせ、火の中に住まわせろ。
奴らがどんな法廷の恩赦を受けることもないようにしろ。
お前たちの町を奴らが二度と思い出せないようにしてしまえ。
奴が見るものは無だ。奴の行く所は虚無だ。
旅館がここにあったことなど夢のようだ。さあ、行って破壊せよ!

(舞台暗くなる。混乱した音楽に何度も「行って破壊せよ」という天使の叫びと重戦車の轟々とした、キャタピラの音がはっきり聞こえてくる)

70 :名前なし:2009/12/07(月) 17:11:17 ID:Vq/DQ36x
火事


a


(年老いたスポー夫人は、黒服に全身を包んでいる。その後には女中テレーズとギュスターヴ親父が晴れ着を着ている。
彼らはドイツ軍大尉を旅館の入り口で待っているところである。今は平服に着替えたジョルジュ、ガレージに寄りかかっている。
ガレージにはシモーヌが、スポー夫人から身を隠しながら、彼の言葉に耳を傾けている。外から通過していくタンクのキャタピラの音が聞こえる)

71 :名前なし:2009/12/07(月) 17:12:42 ID:Vq/DQ36x
シモーヌ  奥さん真っ青で心配そうね。
ジョルジュ  きっと人質にとられてすぐ銃殺されるんじゃないかって心配しているのさ。
        奥さんは一晩中うなされちゃって、テレーズなんか何度もうわごとを聞いたってさ。
        「人殺しどもがやって来て、みんなを殺してしまう!」なんて喚いたそうだ。
        それでもここに踏み止まったのはけちだからさ。そして今やドイツの大尉殿のご入来をお待ちってわけだ。
        お前、奥様からなぜ隠れているのか俺には分からないな。何かあったのか?
シモーヌ  (嘘を吐く)何でもないのよ。ただ私を見たらきっとここから追い払うだろうと思うから。
       ドイツ人が私にも何か乱暴するかもしれないってご心配になってね。
ジョルジュ  (疑わしそうに)奥さんに会いたくない理由はそれだけかい?
シモーヌ  (話をそらして)モーリスとロベールはドイツ人に連れて行かれちゃったと思う?
ジョルジュ  かもしれんね---なぜお前、本館のお前の部屋から引っ越しちゃったんだ?
シモーヌ  (嘘を吐く)でも、運転手の部屋にまだ開きがあるんでしょう---ねえ、アンドレ兄さんは本当に帰って来ると思う?
ジョルジュ  そいつはおかしいぜ、奥さん、お前をくびにするかどうかしたんじゃないのか、シモーヌ?
シモーヌ  (嘘を吐く)違うわ。
ジョルジュ  ほら、ドイツ人たちがやって来たぞ。

(通りからドイツの大尉が、フェタン旦那に付き添われてやって来る。旅館の門の所で、
二人の紳士とスポー夫人の間に丁重な挨拶が交わされる。喋っている声はよく聞こえない)

ジョルジュ  隠れファシストのキャプテン旦那が、スポーの大奥さんに敵を紹介なさっていらっしゃるぜ。
        大いに慇懃な所を見せてるな。お互いに品定めをやっているが、まだ不愉快な臭いは嗅ぎ分けてはいないようだな。
        敵もさるもの、なかなかの紳士だぜ。教養もありそうだ。奥さん、大変安心なさったようだぜ。(囁く)来たぞ。

(シモーヌ、引っ込む。スポー夫人、中庭を通って二人を旅館に案内する。女中テレーズがついて行く)

72 :名前なし:2009/12/07(月) 17:14:04 ID:Vq/DQ36x
ギュスターヴ親父  (夫人に何か囁かれてから、ジョルジュとシモーヌの所へ来る)
             奥さんは、あの体育館にいる暴民どもを旅館に来させちゃいけないと仰る。
             あの連中を見たら、ドイツ人が腹を立てるかもしれないからってさ。
             どうやらこの調子なら旦那様だって逃げなくてもよかったようだな。
ジョルジュ  ラジオで一番初めに布告したのは、「秩序と規律さえ守っていれば何も恐れることはない」ってことだったな。
ギュスターヴ親父  今入って行った奴なんぞ、何か頼むときは「すみませんが」って言うぜ。「すみませんが、部下に私の部屋を見せてやってください」だとさ。
シモーヌ  でも、敵は敵だわ。

(ギュスターヴ親父、納屋に入る)

ジョルジュ  お前の従姉妹はまた新しい夢を見たかい?
シモーヌ  ええ、昨日の晩も。
ジョルジュ  またオルレアンの乙女の夢かい?
シモーヌ  (うなずく)貴族様になったんですって。
ジョルジュ  そいつは大したことだったろうな。
シモーヌ  本に書いてある通り、ジャンヌの町の税金は免除になったんですって。
ジョルジュ  (かなり辛辣に)ところが実際は、旅館の貯蔵食料さえ、約束通り町に分けてはもらえないんだ。
シモーヌ  (狼狽して)そのことは従姉妹は何も言ってなかったわ。
ジョルジュ  ははあん。
シモーヌ  ジョルジュさん、もしある人が、その従姉妹の見た夢の中で、天使になって出てきたとしたら---その人はもうきっと死んでいるってことかしら?
ジョルジュ  そうは思わないな。それはきっと、夢を見てるものが、
        その人が死んじゃったんじゃないかって心配してるからさ。お前の従姉妹はまだその他にどんなことをやったんだね?

73 :名前なし:2009/12/07(月) 17:15:38 ID:Vq/DQ36x
シモーヌ  まだまだたくさんあるでしょう。
ジョルジュ  夢の中じゃ、何か嫌なことが起こったか?
シモーヌ  なぜ?
ジョルジュ  あまり詳しく話さないからさ。
シモーヌ  (のろのろと)別に嫌なことは起こらなかったわ。
ジョルジュ  なぜ俺が聞いたかっていうと、こういう夢を心配しそうなのはお前の従姉妹とは別の人じゃないかと思ったからさ。
シモーヌ、それが今は真昼間で、夢じゃないって事も忘れそうな人だよ。
シモーヌ  (厳しく)そんなことを言うなら、もう絶対に従姉妹の夢の話はしないわ、ジョルジュさん。

(乳飲み子を抱えた女と他の避難民が体育館から旅館にやって来る)

シモーヌ  みんな食料をもらいに来たのよ。親切にしてあげてね、ジョルジュさん。(隠れて一部始終を見守る)
ジョルジュ  (歩み寄る)奥さん。
女  タンクがやって来ました。
男  役場の前に三台とまっています。
女  大きいのです。七メートルはあるわ。
男  (ドイツの歩哨を指して)気をつけな!
スポー夫人  (旅館のドアの所に出て来て)ジョルジュ! ギュスターヴの爺さん! 食堂の大尉さんにオードブルをお持ちしなさい! 何のご用?
女  食料のことなんです。奥さん。体育館にはまだ二十一人残っているんです。
スポー夫人  ジョルジュ、旅館にはたかりが来ないように気をつけろとあれほど言っておいたでしょう。
男  たかりとはどういう意味です?
スポー夫人  なぜ皆さんに仰らないのですか、皆さんのお世話はもう私たちの役目じゃなく、
         ドイツの司令官がするんですよ。この間とは事情が違うんですから。
女  私はあなたの瀬戸物が無事で運ばれるように、みんなここに残った方がいいと勧めたんです。
   その私をそんなことを言って体育館へ追い返すおつもりですか?
スポー夫人  奥さん、名誉毀損で訴えられないようにお気をつけなさい。
女  ドイツ人の威光のかげに隠れるのはおよしなさい、奥さん。
スポー夫人  (肩越しに背後に向かって叫ぶ)オノレ!

74 :名前なし:2009/12/07(月) 17:16:58 ID:Vq/DQ36x
女  私だって今頃はこの子と一緒にボルドーの妹の家に行っていられた所なんですよ。あなたは私たちの世話をするとお約束なさったじゃありませんか。
スポー夫人  脅迫されてやむなくそうしたんですよ。
旦那  (彼女の後から出て来る)しかもそのやり口ときたらまさに略奪だ! でもな、皆さん、ここもまた秩序が回復しましてね。
     (ドイツの歩哨を指して)あの銃剣でこの旅館から追い払われたいとお望みかね。あんまりのぼせちゃ、あんたの心臓に悪いぞ、マリー!
女  恥知らず!
男  (彼女を引き止めて連れ去る)奥さん、ここはまあ我慢することだ!
スポー夫人  何ともいえない臭いがしだしたじゃないの。北の方の下水が溢れてどぶねずみどもがこの平和な町に雪崩れ込んで来たっていうわけ。
         うちにまで安っぽい居酒屋の常連が顔を出すようになってしまった。これで収まるなんて思ったら大間違いよ。ギュスターヴ爺さん、朝食四人分。
旦那  (ジョルジュに)君、君! 町長が来るだろうからね、きたら大尉に会う前に、わしが話があると言っておきたまえ。(スポー夫人を予感に連れて入る)

(二人が入ると、シモーヌは難民たちの後を追う)

ジョルジュ  ギュスターヴのおっさん! 大尉殿にオードブルだとよ。

(シモーヌ、息を切らせて戻って来る)

ギュスターヴ親父の声  (納屋から)分かったよ。なんでも大尉殿、大尉殿だ。
ジョルジュ  連中に何て言ったんだ?
シモーヌ  体育館にいる人に、何かもらえるって伝えてくれって。
ジョルジュ  そいつはいいぞ、鍵はまだお前が持っているんだから。
シモーヌ  約束しちゃったのよ。
ジョルジュ  しかし大いに気をつけなよ、窃盗罪になるからな。
シモーヌ  旦那様は言ったわ。「お前がいてくれる限り、ドイツ人の手には何も渡らないだろう。そいつだけは確かだ」って。
ジョルジュ  ところが旦那のおふくろ様の言うことはまた違うんだ。
シモーヌ  きっとそうされられてるのよ。

(町長、中庭の門に現れる)

75 :名前なし:2009/12/07(月) 18:15:30 ID:Vq/DQ36x
シモーヌ  (彼の所へ飛んで行き、囁く)町長さん、何が起こったんですか?
町長  それはどういう意味だね、シモーヌ。お前に嬉しい報せを伝えてあげよう。
     お前のお父さんを役所の小使に雇うように言っておいた。これがお前へのご褒美だよ、シモーヌ、
     だから、お前がくびになったって、別に大したことにならないさ。
シモーヌ  (囁く)町長さん、役場の広場の前にタンクが三台もいるって本当? (もっと小声で)ガソリンがまだここにあるのよ。
町長  (ぼんやりと)そうさ、困ったことだ。(突然に)旅館には他に何があるんだい、シモーヌ?
シモーヌ  でも、ガソリンをどうにかしてしまわないといけないでしょう。スポー夫人はきっとガソリンのことを聞かれるわ。
町長  何もスポー夫人のことで我々が気にやむことはないと思うよ、シモーヌ。
シモーヌ  私がきっとどうにか出来るわ。私、レンガ工場のことならよく知っているの。
町長  (臆病そうに)まさかお前、分別のないことをやろうとしちゃいないだろうね。私がサン・マルタン町の責任者だってことは分かってくれるだろ。
シモーヌ  ええ、町長さん。
町長  なぜお前にこんなことを喋ったのか私にも分からない。お前はまだ子供なんだからね。
     でもね、誰でも今は自分の最善を尽くさなきゃいけないんだよ、そうだろ?
シモーヌ  そうよ、町長さん。もし、レンガ工場を焼いちゃったら……
町長  とんでもない。そんなことは考えてもいけないよ。さあ、私は中へ入らなくちゃ、どえらく面倒なことがこれから控えているんだ。(入ろうとする)

(旦那、出て来る)

76 :名前なし:2009/12/07(月) 18:16:57 ID:Vq/DQ36x
旦那  シャヴェーさん、ちょうどおあつらえむきの時に朝食にいらっしゃったね。
町長  もう朝食は済ませましたよ。
旦那  それは残念だね。あなたはどうやらいろんな事情がよく飲み込めていないらしい。
     昨日もここで面白くない事件があってね。しかも役所はそれを黙認したそうだね。
     フランスが崩壊するというような時にあたって、ある種の不逞分子が、それを利己的な目的に利用したのに、
     役所がそれを抑えつけもしなかったというのは、非難されてしかるべきだぞ。
     ドイツの客人たちは少なくとも我々が丁重な態度を取ることを望んでおられる。
     たとえばドイツの司令官は、レンガ工場にある貯蔵品のことを承知していらっしゃる。
     あなたもそこを心得て行動していただきたいですな、シャヴェー。
     さあ、多分こう申し上げたら食欲が出てきたでしょう。さあ、どうぞお先に、町長さん。
町長  あなたこそお先に、旦那(キャプテン)。

(二人は旅館の中に入る。彼らの後について納屋からやって来たギュスターヴ親父が入る)

ギュスターヴ親父  (高級な食事を運び入れながら)好天に恵まれ、道中ご無事を祈りますともさ! 
             金持ちどもは金持ち同士で仲間になるものだ、なあ、ジョルジュ。
             あいつらはフランスも売れば、高級料理も売りますってところだな。

(シモーヌは全ての出来事を理解した。彼女は崩れ落ちる)

ジョルジュ  シモーヌ! どうしたんだ、シモーヌ!

(シモーヌ、彼に答えない。シモーヌの白昼夢の間、
弱くメカニックな「金持ちどもは金持ちどうして仲間になるものだ」という台詞の繰り返しが聞こえる)

77 :名前なし:2009/12/07(月) 18:19:22 ID:Vq/DQ36x
白昼夢


(六月二十日。混乱した音楽。旅館の背後が透かしを通して見える。
巨大なゴブラン織りの前にシャルル王になった町長と、ブルゴーニュ公になった旦那と、
膝の上に剣を置いたドイツ軍大尉とスポー夫人が大理石のテーブルを囲みながらトランプをやっている)

78 :名前なし:2009/12/07(月) 18:20:35 ID:Vq/DQ36x
夫人-イザボー  もう暴民を見ないですみたいものですわ、卿。
大尉-卿  私たちの後ろに隠れていらっしゃい、イザボー女王。
       あんな連中はみんな追い払ってしまいますとも。そうすればまた秩序回復です。切りますよ。
町長-国王  ちょっと! 太鼓の音みたいなのが聞こえるような気がするのは気のせいかな!

(ジャンヌの太鼓が遠くで聞こえる)

旦那-ブルゴーニュ  何も聞こえんよ。クラブの1。

(太鼓やむ)

町長-国王  (疑わしそうに)聞こえないかね? ブルゴーニュ公、わしはジャンヌが大変困っていて、
         助けを必要としてるんじゃないかと心配なんだ、どうかね?
旦那-ブルゴーニュ  ハートの10。わしは平和を欲するね、わしのぶどう酒が売れるようにね。
大尉-卿  あなたの高級料理はいくらですか、マダム?
夫人-イザボー  今度は誰が切るの? 一万シリングです。卿。
町長-国王  いや、今度は本当だ。あの子は確かに危ない目にあっている。しかも命が危ない。
         わしはすぐあの子の所へ助けに駆けつけて、あの子の敵を潰さねばならない。(トランプを持ったまま立ち上がる)
旦那-ブルゴーニュ  気をつけたまえ。今行けばもうお終いだぞ。君には何も分かっていない。
              いつもこう邪魔が入ったんじゃ、おちおちトランプもしてられないぞ、クラブのジャック。
町長-国王  (また座る)じゃ、いい。
夫人-イザボー  (彼の横っ面を張る)これがわがままの罰だよ。
大尉-卿  失礼します、イザボー女王。(テーブルの上の貨幣を数える)一枚、二枚、三枚……

(大尉が喋り続けている間に、ジョルジュはシモーヌを白昼夢から揺り起こす)

79 :名前なし:2009/12/07(月) 18:22:15 ID:Vq/DQ36x
ジョルジュ  シモーヌ! お前は眼を開けたまま眠っているんだなあ。
シモーヌ  ジョルジュさん、一緒に来てくれる?
ジョルジュ  (彼の包帯した腕をじっと見つめる、嬉しそうに)シモーヌ、また腕を動かせるようになったよ。
シモーヌ  素敵ね、でもジョルジュさん、私たちはレンガ工場に行かなくちゃいけないわ。
       ぐずぐずしていられないのよ。ギュスターヴお爺さん、あなたも一緒に来なくちゃいけないわ、急いで。
ギュスターヴ親父  (旅館から戻って来て)俺がかい? ドイツ人は布告を張ったじゃないか。
             「戦争に必要な物資を破壊したものは銃殺に処す」って。奴らは冗談を心得ちゃいないからね。
シモーヌ  町長さんはそうしたがっているわ。
ギュスターヴ親父  町長は意気地なしさ。
シモーヌ  でも、あなたは来て下さるでしょう、ジョルジュさん? だってアンドレのためですもの。
       どうやったらあれだけのガソリンを始末できるか見当もつかないくらいだわ。レンガ工場全部に火をつけちゃおうかしら?
ジョルジュ  分からないのかい。俺の腕はまた動くようになったって言ってるんだよ。
シモーヌ  (彼を見つめる)じゃ、一緒には来ないのね?
ギュスターヴ親父  ほら、また一人やって来た。

(ドイツ兵が一人荷物を引きずりながら、中庭に現れる。シモーヌ、彼を見てびっくりして急いで走り去る)

80 :名前なし:2009/12/07(月) 19:53:50 ID:Vq/DQ36x
ドイツの兵士  (荷物を放り出し、汗をかきかき鉄兜に風を入れ、親しげにジェスチャーで理解させようとし始める)タイイ? ナカ?
ジョルジュ  (ジェスチャーで)あそこ。旅館の中。シガレット?
ドイツの兵士  (煙草を取ってにやりと笑う)センソウ。バカラシイ。(鉄砲を撃つ真似。駄目という手の身振り)
ジョルジュ  (笑って)ダンダン。(口でブーイングする。二人笑う)
ドイツの兵士  糞大尉。
ジョルジュ  え? 何だって?
ドイツの兵士  (片眼鏡の大尉の真似をする)糞野郎!
ジョルジュ  (理解し、自分の方も楽しそうに旦那やスポー夫人の真似をする)みんな、糞野郎!

(彼らは再び笑う。それからドイツ兵は荷物を取り上げ、中に入る)

ジョルジュ  (ギュスターヴ親父に)おやおや、分かり合うなんて簡単なもんだな。
ギュスターヴ親父  もっと用心した方がいいぞ。
ジョルジュ  もちろんさ、せっかく腕がよくなったんだから。

(旅館からドイツの大尉、旦那、スポー夫人、出て来る)

旦那  大尉さん、あなたとこんな親密な了解に達したことを大変嬉しく思っております。
大尉  マダム、あなたが自発的に貯蔵ガソリンを我々に提供してくださったことをお礼申し上げます。
     特に軍はガソリンが必要なわけではないのですが、あなたの協力に対する碁石の現われと見て、いただくことにしましょう。
スポー夫人  レンガ工場はすぐそこです。
大尉  タンクをそちらへ回しましょう。

(天が赤くなる。一同立ち止まり、凝視する。遠くで爆発)

大尉  何だ!
旦那  (しゃがれ声で)レンガ工場だ!

81 :名前なし:2009/12/07(月) 19:55:14 ID:Vq/DQ36x
b


(夜、中庭の戸を叩く音、ジョルジュ、彼の部屋から出て来て、亭主と二人の運転手に戸を開けてやる)

82 :名前なし:2009/12/07(月) 19:56:22 ID:Vq/DQ36x
亭主  どうした、ジョルジュ? おふくろは元気かい? 旅館の方はまだ生き延びているようだな。
     まるでノアの洪水の後みたいな気がするよ。こんちは、シモーヌ!

(シモーヌ。ありあわせのものを引っ掛けて運転手部屋から出て来る。ロベール、彼女を抱擁する。ギュスターヴ親父も現れる)

ロベール  お前、俺の部屋で待っていてくれたのかい! (彼女を引っ張りまわして踊る。口ずさむ)

人殺しのジャンがご帰還になると
ローズはまだ待っていた。
ママはシャルトルーズを一杯
パパはビールをきこしめした。

亭主  何があったんだ?
ジョルジュ  ドイツの大尉がお客に来ています。スポー夫人は、レンガ工場のことで訊問されてくたくたでさあ、ドイツの大尉が……
亭主  何の訊問だ?
シモーヌ  旦那様、旦那様のお考え通りにやったんですよ、昨日の晩も、体育館に食べ物を運んでおいてあげました。
亭主  俺はレンガ工場がどうしたのかって聞いているんだ。
ジョルジュ  (躊躇いながら)焼けちまいましたぜ、アンリの旦那。
亭主  焼けた? ドイツ野郎が? (ジョルジュ、首を振る)不注意でか? (一人一人の顔を見る。誰も答えない)役所がやったのか?
ジョルジュ  違いまさあ。
亭主  じゃ、体育館のごろつきどもか。
ジョルジュ  違いますよ、アンリの旦那。

83 :名前なし:2009/12/07(月) 19:58:28 ID:Vq/DQ36x
亭主  じゃ、ここの奴が放火したんだな。(まるで足首を切り取られたように腹を立て)誰だ? 
     (誰も答えない)そうか、お前たちはみんなでかばいあっているな。
     (冷ややかな怒りに燃えて)なるほど、巧妙な計画的犯罪をやったんだな。
     こいつがお前たちのお礼の印ってわけか。この土壇場になってお前たちの恩返しをしてもらったわけだな。
     「あんたの瀬戸物なんか糞食らえ」なんて言ったっけな。どうだ、ギュスターヴ爺? 
     よし、こうなりゃ正々堂々と争うまでだ。白黒つけてやるぞ。
ジョルジュ  ドイツ人のせいなんで、アンリの旦那。
亭主  (辛辣に)なるほど、わしのレンガ工場に火をつけた責任をドイツ人たちになすりつけるわけだね。
     じゃ、お前たちは闇雲に何でも打ち壊したくなって、腹立ちまぎれに、
     お前たちを養ってくれる牝牛を打ち殺したったわけか。(唐突に)シモーヌ!
シモーヌ  はい、旦那様。
亭主  すぐに犯人は誰か言いなさい!
シモーヌ  私です、旦那様!
亭主  何? お前がそんなことを? (彼女の腕をひっ捕まえて)誰に吹き込まれたんだ! 黒幕は誰だ?
シモーヌ  誰もいません、旦那様!
亭主  嘘吐け、いいか、俺はお前に---
ジョルジュ  旦那、どうか勘弁してやってください、この娘の言う通りで。
亭主  お前に命令したのは誰だ?
シモーヌ  私、兄さんのためにしたんです、旦那様!
亭主  ははあ、アンドレか! あいつがお前をそそのかして主人に反抗させたんだな、どうだ? 
     「我ら虐げられたものは」とか何とか言って? あいつが赤だってことは前から知っていた。
     なぜせめてガソリンを流すくらいにしなかったんだ?
シモーヌ  そんなやり方は知らなかったからです。旦那様。
ジョルジュ  まだほんの子供ですからね、旦那様。
亭主  お前たちはみんな放火犯だ! みんなここから出て行け! ギュスターヴ爺、屑め! ジョルジュ、お前たちはドイツ人よりたちが悪いぞ!
ジョルジュ  でしょうとも、旦那。(シモーヌの側に立つ)
亭主  誰も訊問のことを言わんのか。どうなんだ、具合は。
ジョルジュ  ドイツ人が訊問してまさあ。

84 :名前なし:2009/12/07(月) 20:00:15 ID:Vq/DQ36x
亭主  火事はドイツ人が来てから起こったのか?
ジョルジュ  その通りでさ。
亭主  (思わず腰を下ろす。絶望的に)こいつは酷すぎる。旅館はおしまいだ。(頭を抱える)
ギュスターヴ親父  アンリの旦那! 昨日の午後、サン・マルタン中が、旅館のことを誉めてましたぜ。「ドイツ野郎の前でよくやった」ってね。
亭主  俺は軍法会議にかかっちまう。俺によくもこんな真似をしてくれたな。(絶望手金)俺は銃殺だ。
シモーヌ  (歩み出る)旦那様、銃殺になんかなりません。私と一緒にドイツの大尉の所へ行きましょう。みんな私のせいにしますから、旦那様。
モーリス  これで解決でさ。
亭主  なぜ解決だ? こいつはまだ子供だ。誰もこいつに手をつけられん。
モーリス  ドイツ人にこの子がやったと言えばいいんでさ。その間に我々がこの子を逃がしちゃいまさあ。シモーヌ、早く着物を着ておいで。
亭主  そうしたら俺たちは共犯者だぞ。
シモーヌ  モーリス、私は逃げないわ。アンドレが残れって言うでしょう。私には分かるの。
亭主  問題は、こいつがそれをやったのがドイツ人が来る前だったか後だったかってことだ。
     来る以前だったとしたらそれは交戦中の行為だから、この娘に手を下せないわけだ。
ギュスターヴ親父  (お追従のように)ドイツ人はすぐ、これから敵対行為をするものは銃殺に処す、という布告を張りましたぜ、旦那様。
亭主  (シモーヌに)お前、その布告を見たのか?
シモーヌ  はい、旦那様!
亭主  どんなだった?
シモーヌ  赤い紙でした。
亭主  その通りか? (ギュスターヴ親父、うなずく)さあ、これからがドイツ人に聞かれる所だぞ、シモーヌ。
     お前はそれを放火した後で見たのか? とすればサボタージュにはならない、シモーヌ、それならお前に手をかけることも出来ないぞ。
シモーヌ  火をつける前に読みました、旦那様。
亭主  わしの言うことが分かっていないようだな。お前があれをやった後で呼んだとすれば、
     ドイツ人はお前を町長の手に引き渡すことになる。なぜってこれはフランス人だけの事件だからな、
     そうすればお前は釈放さ、シモーヌ、分かるか?
シモーヌ  はい、旦那様、しかし私はやる前に読んだんです。

85 :名前なし:2009/12/07(月) 20:18:06 ID:mzrvFEMD
亭主  こいつは少し頭がおかしいぞ、ギュスターヴ爺。君は事件の時にここにいただろう。この子がここを出て行ったのはいつだ。
ギュスターヴ親父  アンリの旦那、もちろんドイツ人がこいつを張る前ですよ。
亭主  ほらみろ。
シモーヌ  ギュスターヴお爺さん、違うわ。あなただって、私が出て行く時に、このビラで禁じてあるって言ったじゃないの。
ギュスターヴ親父  そんなことは言わんぞ。
亭主  もちろん言っちゃおらん。
モーリス  旦那、この子がそういうトリックを嫌がってることが分からないんですかい? この子は自分のしたことを恥ずかしく思っちゃいませんぜ。
シモーヌ  旦那様は私を助けようと思っていらっしゃるのよ、モーリス。
亭主  そうさ。シモーヌ、俺を信じてくれるか? それならよくお聞き。
     今の相手は我々の敵なんだよ、ここが大いに違う所だ。いいかい、あいつらはいろんな質問を出すだろう。
     お前はその時サン・マルタンとフランスのためにしたんだとだけ答えればいい。これなら簡単だろ、どうだ?
シモーヌ  はい、旦那様、でも私は嘘を吐くのは嫌なんです。
亭主  分かったよ、お前は嘘は吐きたくない。相手が敵でもな。ならいい。わしはこの通りお前にお願いするよ。
     一つだけ聞いてくれ、何も言わず、一切を俺たちに委ねてくれ。(ほとんど泣きそうになって)
     わしは最後までお前を守るよ、なあ。みんなお前の後ろ盾になる、俺たちはフランス人なんだものな。
シモーヌ  はい、旦那様。

(亭主、シモーヌの手を取り、彼女と旅館に入る)

モーリス  あいつは本をきちんと読んでいなかったんだな。

86 :名前なし:2009/12/07(月) 22:28:19 ID:mzrvFEMD
法廷


a


第四の夢


(六月二十一日夜。混乱した音楽、中庭には武装したドイツの大尉と、オルレアンの乙女の服装をしたシモーヌが、
黒い鱗状の甲冑をまとい、赤いハーケンクロイツをつけた兵士たちに取り巻かれて立っている。
ドイツ大尉の当番兵らしい一人はハーケンクロイツの旗印を持って立つ)

87 :名前なし:2009/12/07(月) 22:29:29 ID:mzrvFEMD
大尉  オルレアンの乙女、汝は今我々の手に落ちた。汝の身柄は最高裁判所に委ねられる。
     裁判は今、何故に汝が火刑台にのぼり、死刑に処せられるかを決定するであろう。

(一同、シモーヌと旗手のみを残し退場)

シモーヌ  何の裁判ですか?
旗手  普通のではない、秘密宗教裁判だよ。
シモーヌ  私は何も認めないわ。
旗手  それは結構だ、しかし審議はもう間もなく終わるらしいぜ。
シモーヌ  訊問される前にもう判決が決まっているの?
旗手  もちろんそうさ。

(旅館から、陪審に立ち会ったらしい連中が出て来て、中庭を通って通りに出て行く)

ギュスターヴ親父  (中庭を横切りながらテレーズに)死刑だってよ! あんな年で!
テレーズ  一昨日まで、誰もこんなこと考えもしなかったよ!
シモーヌ  (彼女の袖を掴んで)ヒトラーも来てるの?

(テレーズ、彼女に気付かず、ギュスターヴ親父と退場。シモーヌの両親が中庭を通って行く。父は小使の制服、母か黒喪服)

マーシャル夫人  (すすり泣いて)あの子は小さい時から強情だったよ。あの子の兄貴の方にそっくり。
            うちのマーシャルも酷くショックを受けたわ! 役場の小使なのに、これは恥だわ! (二人、去る)

(モーリスとロベールが中庭を通る)

ロベール  あの子、別に取り乱してもいなかったな。
モーリス  ひだのついた青い服を着てさ。
シモーヌ  (ロベールの袖を引く)裁判を見たの?
ロベール  (さりげなく)もちろんさ。
シモーヌ  私も見せてもらえるかしら?
ロベール  もちろんさ。間もなく裁判官が出て来て、お前に死刑の判決を下すだろうさ。
大きな声  静粛! 場所を開けろ! オルレアンの乙女に死刑の判決が下される。

88 :名前なし:2009/12/07(月) 22:30:43 ID:mzrvFEMD
(旅館の入り口に、豪華な枢機卿の衣装をつけた裁判官が現れる。彼は祈祷書で顔を隠して中庭を通るので顔は見えない。
青銅の鼎の前で立ち止まり、振り向き、彼の祈祷書をぱたんと閉じ、袖から短い権標棒を取り出し、厳かにそれを折って破片を釜に投げ込む)

大きな声  ボーヴェの司教猊下。オルレアン市開放の罪により、死刑。

(彼が去る前に彼は顔を肩越しに後ろへ向ける。大佐である)

シモーヌ  連隊長さん!

(第二の裁判官、旅館の入り口から出て来て同じ儀式を繰り返す)

大きな声  オルレアン市の解放と、オルレアンの町のどぶねずみどもに盗んだ食料を与えた罪により、死刑。

(第二の裁判官も顔を見せる。旦那である)

シモーヌ  大旦那様!

(第三の裁判官、旅館の入り口から出て来て儀式を繰り返す)

大きな声  パリ市に対する攻撃と闇のガソリンの罪により、死刑。

(第三の裁判官は亭主である)

シモーヌ  ああ、アンリの旦那様、あなたも私を裁判なさったのですか!

(亭主、どうにもならないという身振り、それから第四の裁判官が旅館の入り口から出て来て儀式を繰り返す)

大きな声  フランス人を団結させた罪により、死刑。

(第四の裁判官は祈祷書をぶるぶる震わせながらしっかり持っているが、本が手から落ちる。町長である)

シモーヌ  まあ、町長さんまで、シャヴェーさんも!

大きな声  汝の裁判官たちは判決を告げたのだ、ジャンヌ。

シモーヌ  でも、みんなフランス人でしょう。(旗手に)何かの間違いです!
旗手  いいえ、マドモアゼル、この法廷はフランスのですよ。

(第四の裁判官、中庭の間で立ち止まる)

89 :名前なし:2009/12/07(月) 22:32:26 ID:mzrvFEMD
町長  お前だって本で読んで知ってるだろう。オルレアンの乙女はフランスの法廷で裁きを受けたんだよ。
     彼女はフランスの女だったからそれ相応に裁判されたのだ。
シモーヌ  (混乱して)その通りだわ。私が死刑にされることも本で読んだわ。でもなぜなのかを知りたい。私にはそこがよく分からなかったんです。
町長  (裁判官に)審議を要求するかね?
旦那  審議して一体何になるんだ? 判決はもう決まってるんだぞ。
町長  でも、そうすれば、少なくとも被告の言い分が十分に聞かれ、討論され、斟酌されることになりますからね。
大佐  そして刑が軽すぎるってことになるさ。(肩をすくめて)まあいいさ、あなたがお望みなら。
亭主  しかしもちろんまだ何も準備が出来てないぞ。

(彼らは頭を寄せ集め、囁きながら相談する。ギュスターヴ親父、机を引っ張り出してきて、皿や蝋燭を乗せる。裁判官たち、テーブルにつく)

ギュスターヴ親父  体育館の避難民たちの連中が外にいます。みんな裁判に立ち合せてくれと言っております。
亭主  とんでもない。これからおふくろが来るんだ。あんな連中がいたら臭いと言うだろう。
旦那  (後から)裁判はここで非公開に行われる、これは国家的な事件だからな。
亭主  書類はどこにある? きっとまた例によってでたらめなんだろうね。
町長  検事はどこだ?

(裁判官はお互いに顔を見合す)

90 :名前なし:2009/12/07(月) 22:33:44 ID:mzrvFEMD
亭主  ギュスターヴの爺、貯蔵納屋から告発をする人間を一人出せ!
ギュスターヴ親父  (旅館の門の所へ出て、通りに向かって叫ぶ)ルーアンの高等裁判所は、オルレアンの乙女に対する告訴申し立てを許可する。
             誰もいないのかね? (この要請を繰り返す。それから裁判官たちに)検事としてはイザボー皇太后陛下。
             女王は裏切りの仇敵ブルゴーニュ大公と徒党を組んでおられます。
スポー夫人  (武装して旅館から出て来て、裁判官に挨拶する。裁判官たちも腰低く礼を返す。旅館業者にありがちの紋切り型の愛想よさを見せて)
         こんばんは、旦那様(キャプテン)、あら、どうぞそのままで。お構いにならないで。
         (肩越しに旅館の方へ)旦那様にこんがり焼いたアルザスロレーヌを持っておいで。
         元帥、土百姓どもをどうしましょうか? 大佐様、今度はサービスにもご満足がいったでしょう。
         (シモーヌを指して)このオルレアンの乙女が取り決めの邪魔をしなかったら、全てうまくいっていたでしょうに。
         一体ここで決定を下すのは教会なの、それとも旅館の使用人なの? (気違いのように喚き出す)
         私はこの人物を、異端と反抗とわがままのため、すぐに死刑にすることを要求します。
         首を切り落とさなければなりません。血に染めて見せしめにしてやるのです。(疲れて)お薬。
旦那  国母陛下に椅子を。

(ギュスターヴ親父、彼女に椅子を運んで来る)

91 :名前なし:2009/12/07(月) 23:34:16 ID:mzrvFEMD
亭主  鎧が苦しくないかい、ママ? 大体なぜ武装なんかしているんだい。
スポー夫人  私だって戦争をしているんだよ。
亭主  何の戦争だい?
スポー夫人  私の戦争だよ。体育館にいる連中を煽動した、あの生意気な女と戦争しているんだよ。
旦那  (鋭く)しーっ。(シモーヌに)いかなる権利でお前はフランス人を戦争に駆り立てたのかね、ジャンヌ?
シモーヌ  天使が私に命じたのでございます。ボーヴェの司祭様。

(裁判官たち、顔を見合す)

亭主  へえ、天使がね、どんな天使だ?
シモーヌ  教会の、祭壇の左側の天使です。
旦那  見たこともないぞ。
町長  (親切に)どんな様子だったね、その天使は? 言ってごらん。
シモーヌ  とても若くていい声でした。裁判官様、天使は言いました---
大佐  (言葉をさえぎって)何と言ったかはどうでもいいことだ。彼はどんな口調で喋ったね? 教育のありそうな人みたいだったか? それとも違うか?
シモーヌ  分かりません。普通の喋り方です。
旦那  ははあ。
亭主  その服装はどうだったね?
シモーヌ  綺麗なものを着ていました。生地はトゥールで買えば一メートル二十フランから三十フランはしそうでした。
旦那  お前の言うことはこうかね、シモーヌのジャンヌ? 天使は大きくて立派な天使ではなくて、
     その衣装もメートル辺り二、三百フランくらいだというのかね?
シモーヌ  分かりません。
大佐  衣はどういう風だったかね? 酷く擦り切れていたかい?
シモーヌ  ほんの少しほつれていました、袖の所が。
大佐  ははあ、袖がほつれていたのか、まるでそれを着て働いていたみたいだな? きっと破れていたんだろう?
シモーヌ  いいえ、破けてはいません。
旦那  でも、とにかくほつれていたと言うんだな。すると労働をしているうちにそうなったのかな。
     ちょうどそこの色が落ちていて見えなかったとすると、破れていたのかもしれんな。

(シモーヌ、沈黙する)

92 :名前なし:2009/12/07(月) 23:36:12 ID:mzrvFEMD
大佐  天使は、身分の高い人の喋りそうなことでも言ったかね? よく考えてごらん。
シモーヌ  普通のことでした。
町長  天使はお前の知っている誰に似ていたかね?
シモーヌ  (小声で)兄さんのアンドレに。
大佐  あの一兵卒のアンドレ・マーシャルにか? 皆さん、だんだんばれてきましたぞ、全く変な天使と言わなければならない。
スポー夫人  全く居酒屋の天使だわ、裏町のガブリエルね。いずれにせよ、
         そんな天使の「声」なんて問題になりませんわ。きっと居酒屋か貧民窟から現れた天使でしょう。
シモーヌ  司教様も枢機卿様も、天使の悪口を言ってはいけませんわ。
亭主  お前、その本の百二十四ページを見ればよく分かるだろうが、我々は宗教裁判所で、したがって世界で最高の権威なのだぞ。
大佐  フランス最後の枢機卿であるわしはいい加減な天使より神のご意志を心得ているんだ。
旦那  ジャンヌ、神はどこにいると思う? 上か下か? そしてお前の天使はどっちからやって来た?
     下からだろ。じゃ、その天使は誰に遣わされたんだ? 神様か? それとも悪魔か?
シモーヌ  (大声で)違います。違います。悪魔の声じゃありません。
旦那  お前の天使を呼んでみるがいい、そいつがお前を守ってくれようさ、オルレアンの乙女。守衛、義務を果たしなさい!
ギュスターヴ親父  (声を下げる)ルーアンの最高宗教裁判所は、
             いく夜かジャンヌのもとに現れたという無名の天使に、証人として出廷されることを要求する!

(シモーヌ、ガレージの屋根の方を見る。そこは空虚である。ギュスターヴ親父、今の言葉を繰り返す)

シモーヌ  (酷く不安そうに、微笑んでいる裁判官たちを見る。それから彼女はしゃがみ込み、
        混乱しながら地面を叩き始める。しかし何も聞こえない。ガレージの上は空虚のままである)
        もう鳴らない! どうしたの! 鳴らないわ! フランスの土が鳴ってくれない。ここじゃ鳴らないわ!
スポー夫人  (彼女の方に行って)お前、フランスとは何か知ってるの!

93 :名前なし:2009/12/07(月) 23:38:56 ID:mzrvFEMD
b


(六月二十二日。門のアーチ上にフランスの国旗が半旗で掲げられ、喪の花飾りに包まれている。
ジョルジュ、ロベール、ギュスターヴ親父は、黒枠で囲まれた新聞を読んでいるモーリスに耳を傾けている)

94 :名前なし:2009/12/07(月) 23:40:50 ID:mzrvFEMD
モーリス  元帥は言った。「戦闘停止はフランスの名誉を傷つけるものではない」
ギュスターヴ親父  そいつは俺にも救いだわい。
モーリス  その通り、元帥はそれからこう言ってるぜ。
       「フランス国民は、余を父を仰ぎ、余を中心として団結していかなければならぬ、新しい規律と秩序が必要とされるのである」だとさ。
ギュスターヴ親父  というわけか。アンドレももう戦争していないな。みんな武器を捨てたんだ。今度は厳しい規律に縛られるってわけさ。
ジョルジュ  シモーヌが行ってしまってよかったな。

(旅館の入り口から無帽で剣帯もつけずドイツの下士官が出てくる。朝食後の煙草をくゆらせている。
彼はそこにいる連中をさりげなく監視しながら中庭の門までぶらぶら行く。
そこで彼はちょっと見張りをし、引き返して、前より早足で旅館に戻る)

ギュスターヴ親父  初っ端から子供相手じゃ、奴も気色が悪かろうよ。
ジョルジュ  シモーヌが逃げたことには実はびっくりしているんだ。あの子はどんなことがあっても残るって言っていたぜ。
        何かにびっくりしたに違いない。洗濯部屋の窓から這い出して行っちゃったんだから。

(旅館から亭主が揉み手をしながら出て来る)

95 :名前なし:2009/12/07(月) 23:45:04 ID:mzrvFEMD
亭主  モーリス、ロベール! 瀬戸物と銀器を入れた箱を車からおろすんだ! (一渡り見渡した後で声を和らげて)
     俺の使用人の誰かが昨夜、ある奴が逃げるのを手伝ってことは聞かないでおいてやろう。起こったことは起こったことだ。
     まあ俺はこれは解決としてそう悪くはないとだけ言っておこう。本当に危険なことがあったわけでもないし、ドイツ人だって人食い人種じゃない。
     それにお前たちの旦那は、あの子をそう悪者とは思っていないしね。今朝の食事の時、俺は大尉さんに言ってやったよ。
     「みんな滑稽なことですよ! 布告を見る前だった、後だったなんて詮議しても始まりませんや。
     たかが子供でしょう。どうしようって言うんですかい、ちょっと頭が弱いだけでさあ。
     むしろ精神病的なケースですね。あのタンクを、止めちまって破壊しろなんて! 
     そりゃね、放火に使った火付け用の紐とか何とかはそれは問題ですよ。政治的な陰謀ですって? とんでもない、子供の悪戯でさあ」
ジョルジュ  (他の連中の顔を見ながら)アンリの旦那、子供の悪戯ってのはどういうことですかね?
亭主  わしはママにも言ってやったさ。たかが子供だって……
ジョルジュ  あの子はこの旅館で義務を果たした唯一の人間です。あの子のほか誰も手を下しませんでした。
        それにサン・マルタンの町はこのことを決して忘れないでしょう、アンリの旦那。
亭主  (気分を害して)お前たちも義務を果たして積荷をおろしな、わしはこの件が片付いたことを幸せに思っているんだぞ。
     それに大尉殿もそう長くはシモーヌのことを追及はなさらんだろうと確信しているよ。
     さあ、仕事にかかれ! 今我々の憐れな祖国が求めているのはそれなんだぞ。(退場)
ジョルジュ  何にせよ、あの子が逃げちゃったんでほっとしたところだよ。
モーリス  国を愛する気持ちなんてこれっぽっちもなかったとよ。あったら気持ちの悪いことだろう。
       「ドイツ人だって人食い人種じゃない」だとさ。ちょうど奴らにいい顔をして、
       フランス軍には渡さなかったガソリンをドイツ人にやろうとしていたところだったじゃないか。
       そこで悪者が干渉したが、こいつこそが愛国者さ。

96 :名前なし:2009/12/08(火) 00:51:08 ID:CLigE1Mc
(中庭の門を通って町長が来る。真っ青で挨拶も返さないで旅館に入る)

町長  (振り返って)スポー夫人の部屋の前の廊下には歩哨がいるかね?
ギュスターヴ親父  いいえ、シャヴェーさん。

(町長、退場)

ギュスターヴ親父  町長はきっと、ドイツ人が体育館を開けろと言ってきたんで来たんだぜ。しかもそれを要求したのはスポー夫人とくらあ。
ロベール  新しい規律と秩序だとさ。
ギュスターヴ親父  シモーヌのことは普通の放火の扱いになるだろう。保険会社に損害賠償をさせなきゃならんからな。
             ああいう手合いはこういう所は心得ているさ。

(銃剣つきの鉄砲を持ったドイツ兵二人の間に挟まれて、シモーヌは中庭の門から入る)

ジョルジュ  シモーヌ、どうしたんだ?
シモーヌ  (立ち止まる、蒼褪めている)あれから体育館へ寄ったの。
ロベール  恐がらなくて大丈夫。ドイツ人はお前に何もしやしないよ。
シモーヌ  昨日の晩の裁判じゃ、私はフランスの警察に引き渡されるって言ってたわ、ロベール。
ジョルジュ  なぜ逃げたんだい?

(シモーヌ、答えない。兵士たち、彼女を旅館に押し込む)

モーリス  するとドイツ人から見るとまだ片付いてないってわけか。アンリの旦那の思い違いか。

(中庭の門を通ってマーシャル夫妻が来る。マーシャル氏は役所の制服)

97 :名前なし:2009/12/08(火) 00:53:40 ID:CLigE1Mc
マーシャル夫人  もうあの子は連れてこられましたか? 本当に酷いことです。うちのマーシャルなんか口もきけなくなりました。
            家賃の支払日の来たせいだけじゃないんですよ、マーシャルは恥をかいたってことを気にやんでいるんです。
            私は、あの子がいつもいつも下らない本ばかり読んでいれば、
            それで頭がおかしくなるなっていつかはこんなことになりはしないかと思っていましたよ。
            そしたら今朝の七時に戸を叩く音がする、見るとドイツ兵が庭に来ているんです。「皆さん」って私は言ってやりました。
            「もしうちの娘が見つからないとすれば、よほどのことがあったんですわ。
            放火しようとしなかろうと、あの子がそれ以外に旅館を飛び出す理由がありませんもの。
            兄の身代わりになっていたんですからね。それだけでも……」

(旅館から亭主が出て来る)

亭主  マーシャルさん、酷い迷惑だぜ! 私は十万フラン損をした。もちろんこの場合精神的損害は勘定に入れないでだよ。

(旅館からスポー夫人登場、彼女はシモーヌの腕をぎゅっと捕まえて怯えている子を中庭を引きずって貯蔵納屋まで連れて行く。
その後から町長と旦那。四人、納屋に入る。中庭の連中、びっくりして見守る)

町長  (納屋の戸口で)マーシャル、体育館へ行って、連中を静かにあそこを出るように伝えなさい。
     ドイツ人があそこの場所を使うことになったと説明しなさい。(納屋に入る)
マーシャル氏  はい、町長様。

(マーシャル夫妻、いかめしく退場)

98 :名前なし:2009/12/08(火) 00:55:09 ID:CLigE1Mc
ロベール  あの連中、あの子を納屋に連れて行ってどうする気だろう。どうなるんですか、アンリの旦那?
亭主  そんなことは聞かんでよい。俺たちの責任はどえらく大きいんだ。もしやり方を間違えば旅館全部がふいになるんだから。
スポー夫人  (シモーヌと納屋から出て来る。その後に町長、旦那)町長さん。
         あなたもご自分でごらんになったから納得されたと思いますが、あの子は地下室の貯蔵品を自分勝手に処分していたんですよ。
         その中には五万フラン分の銘柄ワインもありました。なくなった箱がまだどのくらいあったのか、それは推量するよりほかはありません。
         私の目をくらますために、あの子はあなたのいる所で私に鍵を返したのです。(シモーヌに向かって)
         シモーヌ、お前が食料を一杯入れた籠を持って体育館に行ったのは何としても我慢が出来ないよ。
         お前はあれでいくらもらったんだい。そのお金はどこにあるの?
シモーヌ  私はお金はとりませんでした、奥様。
スポー夫人  嘘をお吐き。それからまだもう一つあった。アンリがここを発った日の朝、アンリは暴民どもに脅迫された。
         暴民が脅迫したのは、トラックが輸送に使われているって噂が撒かれたからだ。その噂を流したのはお前かね?
シモーヌ  私、町長さんに言っただけです、奥様。
スポー夫人  お前がそれを言った時、町長さんの部屋には誰がいたの? 避難民?
シモーヌ  はい、確かそうです。
スポー夫人  なるほど、そうだね。そしてそれから暴民どもがここに現れた時、お前はお前の責任のある旅館の貯蔵品のことを何か言わなかったかい。
         (シモーヌは理解できない)たとえば、みんな好きなだけ取りなさいとか何とか、そんなことを言わなかったかい?
シモーヌ  もう覚えていません、奥様。
スポー夫人  そうかい。
町長  奥さん、あんたは一体何を言わせようとしているのです?

99 :名前なし:2009/12/09(水) 08:46:00 ID:bp0cTkTV
スポー夫人  それで一番先に食料を受け取ったのは誰だったかい、シモーヌ? お前の両親だろう? そうだよ、しこたま詰め込んだんだろう。
ロベール  そいつは酷いですぜ。(スポー夫人に)マーシャル夫妻に箱を開けるように言ったのはあなたご自身ですよ。
ジョルジュ  (同時に)あなたご自身が食料を町長さんにご用立てしたんじゃありませんか。
スポー夫人  (全然耳を貸さず、シモーヌに)お前はでしゃばりで、勝手で実のない真似をした。
         それで私はお前を解雇しました。お前はそれから私の命令通りここを出て行ったかい?
シモーヌ  いいえ、奥様。
スポー夫人  その代わりにお前はこの辺をうろつき回って、くびになった腹いせに、レンガ工場に火をつけたんだろう。そうだね。
シモーヌ  (興奮して)でも、あれはドイツ人に対してやったことなんです。
ロベール  それはサン・マルタン中が知っていることさ。
スポー夫人  へえ、ドイツ人に対してね? じゃ、ドイツ人がガソリンのことを知ってるだろうなんてお前に言ったのは誰?
シモーヌ  私は旦那様が町長さんに言っているのを聞いたんです。
スポー夫人  ははあ、それじゃお前、私たちが、ガソリンを供出しようという話をしていたのを聞いたんだね。
シモーヌ  旦那様がそう仰いました。
スポー夫人  それじゃお前は、私たちがガソリンを引き渡すことが出来ないようにしてやろうという
         だけの理由でガソリンに火をつけたんだね、私が確かめたかったのはそれなんだよ。
シモーヌ  (絶望的に)私は敵に対してしたんです。タンクが三台も役場の前に止まっていたんですもの。
スポー夫人  そしてそれは敵だったの? 敵ではなかったんじゃないのかい?

(中庭の門に、一人の町の警察官に付き添われた修道尼が二人現れる)

100 :名前なし:2009/12/09(水) 08:47:12 ID:bp0cTkTV
町長  ジュール、何の用かね?
警官  この方たちは、聖ユルジュラ修道院の道心堅固なシスターであります。
旦那  わしはあんたの名前で聖ユルジュラに電話をしておいたよ、シャヴェー。(シスターに)皆さん、こいつがマーシャルです。
町長  どうなさろうって言うので?
旦那  シャヴェーさん、まさかあんた、マーシャルをこの先うろつき回らせておくつもりじゃないでしょうな? 
     (鋭く)少なくとも我々の客人たち(ドイツ人)はサン・マルタンの町から、不穏分子を一掃することを期待されている。
     どうやらあなたはペタン元帥閣下のお言葉がよく分かっていないらしいな。フランスは苦難の道を歩まなければならない。
     我々の中にある不逞の輩の芽は摘み取るべきだ。こいつは伝染するからな。
     サン・マルタンの町でもこの火事一つでもう沢山じゃないか、シャヴェー。
モーリス  ははあ、俺たちはドイツ人のために、恥ずかしい仕事をやるべしって言うんですかい。喜んでね、そうですか?
スポー夫人  (冷たく)もちろん私は、マーシャルの引渡しのために、トゥールの検事の確認をとるつもりですよ。
         シモーヌは旅館の所有物であるレンガ工場に放火しました。しかも卑劣な個人的な動機からね。
ジョルジュ  シモーヌが個人的な動機で?
町長  (びっくりして)この子の将来を目茶目茶にしてしまうつもりですか?
ロベール  (脅迫するように)いったい腹いせをしているのはどっちなんだ?
亭主  ロベール、やめとけ、この子は未成年だ。この子はシスターにしつけをしてもらう、それだけさ。
モーリス  (びっくりして)あの聖ユルジュラの児童虐待施設にやるんですかい?
シモーヌ  (叫ぶ)嫌!
町長  シモーヌを聖ユルジュラの精神薄弱児収容所にやるのか! あの地獄に! 
     あそこはいわば精神的な拷問をされる場所だ。これじゃ、この子に死刑を宣告したも同然だ。あんたはご承知ですか?
モーリス  (冷血のようなシスターたちを指して)まあ、この女どもを見てごらんなさい。

(修道尼たちの顔は仮面のようで変わらない)

101 :名前なし:2009/12/09(水) 08:49:08 ID:bp0cTkTV
ジョルジュ  これならドイツ人の手に渡して教育してもらった方がましだ。
シモーヌ  (助けを求めるように)あそこに入れられるとおしまいにみんな気が変になって、
        口から涎をだらだら流すんでしょう、町長さん。みんな縛られているんですって!
町長  (強く)スポーの奥さん、トゥールの裁判所で私が証言をしますよ。この子のしたことの本当の動機を言いますとも。
     シモーヌ、安心おし、お前が国を愛する気持ちからやったことだっていうのは誰でもみんな知っているよ。
スポー夫人  (爆発する)へえ、ちんぴらの放火犯が祖国の聖者だというのかね、それがあなたの計画? 
         フランスは救われたってのはフランスが燃えることね。ほら、これがドイツのタンク、これが日雇い人夫の娘シモーヌ・マーシャル。
旦那  シャヴェーさん、あんたの今までの行動からしてみると、新しいフランスの裁判官は
     あなたの発言に大分いろんな意味を持たせてくれるだろうよ。あんたのような類の人間にとってはトゥールへの道はかなり険しいぜ。
モーリス  (苦々しく)本性を現したぜ。奴らはここに真のフランス人がいると訴えられるのを恐がって、サン・マルタンの町を潔白にしておきたいのさ。
スポー夫人  フランス人だって? (シモーヌをつかまえて揺すぶる)お前が愛国心を教えてやろうっていうのかい? 
         いいかい、この旅館は二百年も前からスポー家のものだ。(一同に)愛国者が誰か知りたいならね、
         (旦那を指して)この方こそそうだ。私たちはね、戦争が必要な時にはお前たちに教えてやれるんだよ。
         それに平和が必要な時には、それも私たちが教えるんだ。お前たちがフランスのためになることをしたいんだって? 
         大いに結構よ、私たちがフランスなんだ、分かったか?
旦那  マリー、そう興奮しちゃいけない---いい加減でシモーヌを連行させたらどうだ、町長さん?
町長  私が? だってあんた方はどうやら私の権利をお取り上げになったようですよ。
シモーヌ  (不安になって)行っちゃ、いや、町長さん!
町長  (絶望的に)元気を出すんだよ、シモーヌ。

102 :名前なし:2009/12/09(水) 08:50:22 ID:bp0cTkTV
スポー夫人  (静けさを破って旦那に)もうこのスキャンダルをいい加減におしまいにしてちょうだい、オノレ!
旦那  (警官に)わしが責任を取る。

(警官、シモーヌを捕まえる)

シモーヌ  (小声で、非常に不安に)聖ユルジュラに行くのはいや!
ロベール  恥だぞ! (警官に掴みかかろうとする)
モーリス  (彼を止める)馬鹿なことをするな、ロベール、もうあの子を助けてやれない。
       奴らはポリ公もドイツ野郎も味方につけちまった。可哀想に、シモーヌには敵だらけだ。
スポー夫人  シモーヌ、荷物をおまとめ!

(シモーヌ、見回す。彼女の友人たちは地面を見つめる。彼女は取り乱して納屋に入る)

スポー夫人  (半ば従業員たちに、静かに、説明的に)この子は反抗的で、権威を認めようとしないのよ。
         この子を厳しくしつけて真っ当な人間にするのが、辛いけど私たちの義務ですよ。

(シモーヌ、小さなトランクを持って、前掛けを腕にかけて戻って来る。前掛けをスポー夫人に渡す)

スポー夫人  それじゃトランクを開けてごらん。持っていくものを調べるから。
亭主  ママ、そんなことはしなくていいだろう?

(修道尼の一人、すでにトランクを開けている。彼女はシモーヌの本を取り出す)

シモーヌ  本は勘弁して!

(シスター、本を夫人に渡す)

スポー夫人  これは旅館の本だよ。
亭主  あの子にやったんだよ。
スポー夫人  何も役に立たなかったじゃないか。(シモーヌに)シモーヌ、みんなにお別れをするんだよ。
シモーヌ  さよなら、ジョルジュさん。
ジョルジュ  シモーヌ、頑張れるか?
シモーヌ  大丈夫よ、ジョルジュさん。
モーリス  体に気をつけるんだよ。
シモーヌ  ええ、モーリス。
ジョルジュ  お前の従姉妹のことを決して忘れちゃいけないぜ。

(シモーヌ、彼に微笑む。彼女はガレージの方を見る。光が暗くなる。音楽が始まり天使の出現を告げる。
シモーヌ、ガレージの屋根の方を見、そこに天使を認める)

103 :名前なし:2009/12/09(水) 08:54:09 ID:bp0cTkTV
天使

フランスの娘よ、恐れるな、
おまえに刃向かうものは皆やがて滅びる。
お前に暴力をふるった手は
やがては萎えるだろう。
お前を売った因果応報の報いを受ける。
お前がある所、そこがフランスだ、
そしていくばくもなく、
フランスの栄光は再びよみがえるだろう。

(天使、消える。再びライトが明るくなる。修道尼、シモーヌの腕をつかむ。シモーヌ、モーリスとロベールにキスをする。みんな黙って見つめる)

シモーヌ  (中庭の所で絶望的に抵抗する)いやいや! 行かないわ! 助けて! 感化院はいや! アンドレ! アンドレ!

(彼女は引っ張り出される)

スポー夫人  お薬をよこしな、アンリ。
亭主  (陰鬱に)モーリス、ロベール、ジョルジュ、ギュスターヴ爺さん。仕事だ、仕事だ! もう平和だって事を忘れちゃ困るぞ。

(亭主と旦那、スポー夫人を旅館に連れこむ。モーリスとロベール、中庭の門を通って退場。
ギュスターヴ親父、修理するタイヤを中庭に転がしてくる。ジョルジュ、麻痺した腕を調べる。
空が赤くなりだす。ギュスターヴ親父、それを彼に示す。旅館から亭主が飛び出して来る)

亭主  モーリス、ロベール! すぐ行って見てこい、燃えているのは何だ! (退場)
ギュスターヴ親父  きっと体育館だ。避難民たちだな! あいつらもどうやら教育されたらしいな。
ジョルジュ  自動車はまだ聖ユルジュラには着いちゃいない。シモーヌの奴、きっと車から火を見ただろう。

104 :名前なし:2009/12/09(水) 09:55:21 ID:bp0cTkTV
>90

アルザスロレーヌ

ドイツとフランスの間で絶えず帰属が変わった土地。ステーキの名にしている。

105 :名前はいらない:2010/02/26(金) 03:04:45 ID:19IfCSq3
 
民主党・石井一先生はチベットを「国」と述べました
http://academy6.2ch.net/test/read.cgi/china/1267120029/l50

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