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自作小説を書いて見るスレ2

1 :名無し物書き@推敲中?:2010/06/06(日) 14:52:36
とりあえずオリジナルならいいです
下ネタエロネタはできるだけ控えてください

前スレが512KBに到達したので、勝手ながら新しくスレを立てさせて頂きます。

前スレ
自作小説を書いて見るスレ
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1176609486/

2 :名無し物書き@推敲中?:2010/06/06(日) 15:10:50
前スレが既に512KBを超えていたために前スレに新スレへのリンクを貼ることが出来ませんでした。
前スレから迷った方すみません。
あと前スレのスレ主様、勝手に新しくスレを開設したことをお詫び申し上げます<m(__)m>

3 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/06(日) 15:11:54
(前スレ>>577から)

 埃まみれになるわ、埃でむせて咳き込むわと不快な思いをしながら立てかけてあるものを掻き分けて奥にあるもう一つの、埃で黄ばんだ木製の枠に嵌め込まれた
窓ガラスから差し込む夕日によって随分と明るく心持ち広く感じる部屋の中に入ると、部屋の真中の当たりに二人の人間、一人は大きな作業用のエプロンを
制服の上から掛けて、カールした長い髪を三角巾で縛った少し背の高い3年生と、同じ格好だが三角巾をしていないボブカットの2年生が、向かい合わせで
土いじりか何か作業をしているとことに出くわした。

4 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/06(日) 15:16:14
9-5
>>薫
 夕暮れ時の、今にも崩れそうなほどボロボロになった廃屋のような薄暗い小屋の中で、こちらに背を向けてしゃがみ込んで一心不乱に何かをしている二人の女性。
ただそれだけなのにどことなく、しかし傍から見る者を確実に恐怖させる黒くて不気味な雰囲気が部屋全体を支配している。
 その異様な光景に圧倒され、金縛りにあったかのようにその場で立ちすくんで、ただ呆然とその光景を眺めていると、ボブカットの方が首を左の方へ回して
こちらの方へ振り向いて、人間ってここまで冷たく接することが出来るのかと感心するくらいに、獲物に止めを刺す前の蛇のそれように冷酷な視線を投げて、
「誰?」
と、まるで人間味というか、温かみが無いんにも感じられない氷のように冷たい調子で聞いてきた。こういう時によくある警戒心や敵意といった感情が、
表情にも声色にも一切感じられない分、得体の知れない分本能的に「やばいっ!」とわかる化物に出くわしたような感覚に陥った。
 するとボブカットの声に反応したのか、三角巾をした方も顔を右のほうへ回してコチラの方に振り向き、
「あら、あなた一年生?入部希望の方かしら?」
と言いながら立ち上がり、僕の方へ歩み寄ってきた。
 コチラの方は一見するとおっとりとして優しそうな、どことなく世話好きそうな母性豊かそうな感じのするお姉さん系の美人であり、
ボブカットと違って一挙一投足にその性格が窺い知れるくらい、声色にも人間的な温かさがあり表情も優しく微笑んではいるのだが、
近づいてきたその顔をよーく見ると、目が笑っていなかった…。
 いや、ただ笑ってないだけじゃない。黒目しかないんじゃないかと思うくらい真っ黒な目をここまでかと言うくらい目を見開いてこちらを見つめている。


5 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/06(日) 15:18:53
 思わず全力でその場から一秒でも早く逃げ出したい衝動にかられたが、そうすると何かに屈した感じがして悔しいのでグッと堪えて、
「いいえ、学生会の者です。園芸部さんが出された補助金支給に関する要望書を連盟さんの方から受け取ったので、
確認と調査のために来ました。あなたが部長さんですか?」
と、精一杯平静を装い、その実三角巾の方に思い切りメンチを切りながらやっとの思いでこう言った。
 すると、三角巾は僕から少し顔を離して、
「あら、学生会の方でしたか。一年生だったからてっきり入部希望の方だと勘違いしてしまいましたわ。ええ、わたしが部長の小鳥遊です。」
と言った。
 さて、どこから説明したものかと話の糸口を見いだせずにいると向こうから話しかけてきた。
「ところで、補助金のお話どうなったのでしょうか?」
「それなんですが…現時点では元の通り支給するのは大変難しいと言わざるを得ません。あくまで連盟から供出された書類から判断しただけですが、
活動実績から評価すれば委員会の主張にも納得せざるを得ませんでしたから。」
 と言うと、小鳥遊部長は急に、それまで目こそ笑ってなかったもののニコニコと微笑んでいたのが、この世のものとも到底思えぬ怨恨に満ちた
般若のようなおぞましい形相になり、
「どうしてですか?出来ないんですか?そんな事ないでしょう?だって予算はあなた達学生会が握っているんだから、鶴の一声で道に出にでもなるでしょ?
ねえ!答えなさいよ!!」
と、凄むというよりも怒鳴る様な感じで、僕の肩を両手で掴んでガシガシと激しく揺らしながら大声で叫んできた。


6 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/06(日) 15:22:52
 あまりの迫力の凄まじさに小便をちびりそうになりながらも彼女の手を振り剥がして宥めながる。
「無理ですって、予算を執行するにはまずクラス委員会の承認を得なきゃいけないんです。そのクラス委員会がダメだと言っている以上こちらとしてはどうにも出来ないんです。
それに例えできたとしても補助金を増やして欲しいと要望を出している団体は園芸部さんだけじゃないんです。けれど予算には限界がある。その予算を他の団体を差し置いて
園芸部さんに割り振る以上、他の団体さんに対してその根拠を説明しないといけません。」
「……。」
「ただ、園芸部さんの場合ここ最近補助金を支給するだけの評価が得られるような活動というのを殆どなされていない…そういう意味で現状のままだと…」
「私達が何も活動をし、て、い、な、い、ですって?」
「いえ、あくまでコンクールとかそっちの方面に限定した話で誰も皆さんが部活動をしてないとは決して思ってはいませんよ。ただ、せめて学院祭にサークルで参加するとか
してもらわない限り現状では増額することは難しい、ということなんです。ただですね、わたし達としても15人も正式な部員がいるような部活が、金銭面で5人未満の
同好会程度の扱いをされなきゃいけないと云うのは本位ではないんです。だから、ええと、資料に書かれている以外でも実際に活動を視察してみて、可能であれば評価を、
園芸部さんの評価を上げたいと思うからこそ今日は足を運んだという次第でして…」
と、途中からしどろもどろになりながら説明すると、小鳥遊部長は般若から急に柔和な表情に戻った。
「そう…学院祭に参加すれば補助金を元の通り支給していただけるんですね?」
「いえ、あくまで何もしないよりは可能性が上がるだけましという意味での説得材料の一つでしかないです。結局委員会に補助金を出すことを承認して貰わないといけませんから。
ただ、わたし達も委員会を全力で説得するつもりです。園芸部さんが参加なさるならこちらとしても大きな追い風になる事に間違いないです。幸いまだ9月になったばかりですから
行事実行委員会に申請すれば、今からでも十分間に合うはずです。」
「…そう、では私達園芸部も学院祭に参加しますわ。いいわよね、みんな?」


7 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/06(日) 15:26:28
 みんな?ちょっと待て、今この小屋にはあんたと僕と、そこにいる得体の知れないボブカットの3人しかいないぞ。そのうち部外者の僕を除けば
園芸部員はこいつら二人しか今この場に居ない筈である。なのに、何故こいつは二人以上に呼びかけるように皆などと言ったんだ?と混乱していると、
「わたしは別に構わない。」
と、ボブカットが、感情が一切感じられない、しかし機械音声のような棒読みでもない冷たい声で部長の呼び掛けに応えた。そうかこいつ、「みんな」という名前なのか…。
 んなアホなことがあるわけない!という事はわかっているが、そういう事にして無理やり納得しでもしないと、とてもじゃないが怖すぎて気が狂いそうだった。
 落ち着けと自分に念じながら、
「そうですか、ではこちらもなるべく良い知らせを持って来れる様に手配します。ところでお二人以外の部員さんは今日はもう帰られたのですか?話では15人だと聞いていたのですが?」
 実は実質部員なのはこの二人だけで後の13人は幽霊部員だったり、水増しのためのサクラだったりするとこれからする努力が全て水の泡になるだけでなく、本当に同好会に格下げされかねない。
だから念のためにバカバカしいと思いつつ聞いてみると、
「あら、何言っているの?学生会さん。部員は全員、今この部屋にいるじゃないですかぁ。」
と、小鳥遊部長が、まるでのっぺらぼうが「こんな顔だったのかい?」とでもいうような不気味な感じで、「いるじゃないですかぁ。」と意外すぎる返事を返してきてくれた。


8 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/06(日) 15:50:36
 日本昔ばなしの怖いところに差し掛かった時に「デーンッ」流れてくるBGMを大音量で脳内再生しながら、小鳥遊部長が言った言葉の意味がわからず、キョロキョロと部屋の中を見渡す。
だが、どこをどう見渡しても今この部屋の中には我々3人しかいなかった。それにそもそもこの部屋自体が横に長い6畳程度の広さしかない上に物が散逸した物置状態に成っているから、
どう考えても多くて10人程度が入れるスペースしか無く、とてもじゃないが16人も入れる広さだとは思えなかった。
 しかもタダでさえパニクっているのに、さっきよりも黒い目を大きく見開き、ケラケラと耳まで裂けそうなほど大きく口を開けて笑う小鳥遊部長と、これまた言葉で表現しがたいほど強烈な形相で
じっと呪われた人形のように睨んでくるボブカットが、更に僕を混乱させた。
 どうすればいいかわからずに立ちすくんでいると突然、後ろからまるで耳元まで顔を近づけて息を吹きかけたかのように、「フーッ」という音と共に左の耳たぶに生暖かい空気の流れが
かすかに当たったかのような感覚が襲ってきた。ビクっとしてすぐに首を左へ回して自分の後ろを確認したが…誰もいなかった…。床や天井、隣の部屋の方まで伺ってみたが人の気配さえしなかった。
 気のせいかと思い、また部長とボブカットの方へ向き直ると、今度はすぐに左肩に右手を掛けられたかのような感覚がした。
 すぐに振り向くがやはり誰もいない….筈なのに何故かまだ肩に手を置かれている感覚をはっきりと感じた。そして同時に首元に生暖かい細い風がかすかに当たるのを感じた。
 恐る恐る前を振り返ると…
「ねぇ、わかったぁ?」
と、崩れたような笑顔で同時にこう言った二人を見た途端、一目散に僕はその場から逃げ出した。


9 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/06(日) 15:53:38
 よくホラー映画で観客の恐怖を煽るために、そういうシーンが来ると俳優が「キャーッ」とか「ぎゃあああああっ」と絶叫する事があるが、
本当に命に関わる恐怖体験をすると絶叫どころか恐怖で声すら出なくなるものらしい。何度も転けそうになりながら必死で小屋の中から
日も落ちて薄暗くなった外に飛び出し、へばり付くようにルーチェのドアに獅噛ついて、震える手で手間取りながらもドアを解定して中に飛び込み、
エンジンを掛ける。
 が、エンジンが中々掛からない!何度もキーを回して(お願いだら掛かってくれ!)と念じいると、到頭エンジンが掛かった。
 シートベルトをすることもライトを付けることも忘れて、すぐにギアをRにしてアクセルを思いっきり踏み込み、小屋の方を見ないようにしながら
ハンドルを切って、元来た一本道をバックで逆走し、カーブと交差するところに出るとハンドルを左に切ってサイドブレーキを掛けて、
何かを振り払うようにリバースドリフトをして停車し、ギアをDに入れてライトをつけ、急発進して温室と反対方向…裏口の方へ向かって全力で逃げ出した。

9-6へ続きます。

10 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/09(水) 09:05:27
9-6
>>薫
 いったん裏門の一つから学院の敷地外に出て、グルッと回ってから正門からまた学院の中に入る為に公道を走る。
 公道に出て、他の車と並走するようになってからは流石に落ち着いたので、左手でハンドルを握りながら右手でシートベルトを引き出し、足でハンドルを支えながらシートベルトを締めた。
 住宅街の路地を抜けて、街頭の所為で明るくなっていて人や車の通りも多い市道と交わる交差点で、信号待ちで停車している車の列の後ろに付いて停車し、ギアをNにしてサイドブレーキを掛けて、
前のめりになって両手でハンドルをだき抱えながら、
「やっぱ担がれたのかなあ…。」
と自分に言い聞かせるように呟いた。
 何せ、僕自身は幽霊を見ていないから、ただ単にあの場所とあの二人の不気味な雰囲気に飲まれただけの様な気も、今更ながらしないでもないのである。実際あの肩の手の感触と生暖かい息も、
お前の気のせいじゃないかと言われたらはっきりと否定する自信もないし、もしかしたら催眠術のようなものを掛けられて、その気にさせられていただけと言う可能性も否定できないのである。
 たが、これだけは言える…あの二人はガチでヤバイ。キチガイだろうがオカルトだろうが催眠術者だろうが、少なくとも全力で関わってはいけない連中だった。奴らが補助金の従来通りの支給だけで
満足するのなら、手切れ金としては安いものである。どうにかお姉様方役員を説得して特支金を園芸部に支給する手続きに踏み込ませるしかない。
 それにさっきの事もきっと僕の気のせいだ、と思っていたのも束の間だった。正門から市道を離れて学院の敷地内に入りメインストリートの側に鎮座するマリア像の角を右折して、
図書館の正面T字路を左折して新校舎の脇を抜けて、教会の聖堂の脇を曲がって学生会館のある丘へ続く道を登っていくという段々と人気というものが短時間で消えていく様なルートを
走っているうちに段々と不安になってきた。

11 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/09(水) 09:07:30
 ただ人気が無くて暗いだけならまだいい。普段夕暮れ時は殆ど人を見かけないような所でヘッドライトの光の輪の中に、物陰に佇む二人連れの女子生徒が映って目の中に飛び込んできた時は
心臓が止まりそうになるほど驚いた。結局人違いだったがそれでも僕を恐怖させるには十分だった。
 学生会館の前に車を停めると、怖いのでエンジンだけ止めて、車幅灯とフォグランプを付けっぱなしにし、運転席と助手席の上に付いているルームライトのスイッチを押して付けっ放しにして、
鍵だけ掛けて学生会館の中に入った。
 玄関と2階の廊下から漏れる光だけだとはいえ、電気が付いていて少し安心する。まだ誰か知っている人間が残っている。それだけで今この場で一人きりという事よりは数十倍はマシな気がした。
 靴をその場に脱ぎっ放しにして早足で2階へ上り、執務室のドアを開けると、閉め切った遮光カーテンを背に椅子に座って本を読んでいるお姉様がいるだけだった。
 僕がドアを開ける音に気が付いたのか、本から目を離して頭をこちらに向けたお姉様と目があった。反射的に、
「ただ今戻りました。」
と言うと、お姉様は椅子から立ち上がり安堵半分、呆れ半分な感じのため息を大きくついて、
「電話ではすぐに戻ると言ったのに…あなたのすぐに、は随分と長い時間なのね?薫。」
と詰るように言った。
「すみません、途中で園芸部の方へ寄っていたものですから。」
「園芸部?わたしはクラス委員会から真直ぐ帰って来いとは言ったけれど、園芸部へ行くように支持した覚えはないわよ。」
「僕の独断です。実際の園芸部の活動を正確に把握することも、いずれどのみち必要になると思いましたので…」
「そう、わかったわ。でも今後は絶対に一人で勝手な行動を取らないこと。どうしても必要な場合はきちんと連絡しなさい。何時までも戻ってこないから心配したわ。」
「心配をかけてすみません。」
「まあ、いいわ。それで、あなたが目にした園芸部の現状に関する報告をして頂戴。」
「はい…」


12 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/09(水) 09:09:27
 と、園芸部の大体の状況と活動、学院祭に参加するつもりであるという事を簡潔に報告した。もちろん先ほど目にした奇怪な光景も含めてである。
 報告の最後に、怖くて一目散に逃げてきた所で話を締めると、お姉様は呆れたような顔で、枯れ尾花を幽霊だと勘違いした子供を宥めるかのように、
「幽霊なんている訳ないでしょう?気のせいだったんでしょう。」
と言ってまともに取り合ってはくれなかった。
「でも、もう遅いかも知れないけどあの人達かなりやばそうな感じがしましたよ。もうこれ以上関わらない方が絶対いいですよ。」
「だからといってそういう状況ならなおさら特別扱いするわけにはいかないわ…..あら?」
 と言って、お姉様は背後にある窓の方を振り向いた。遮光カーテンが開いたままになっている窓の向こう側には真っ暗な闇が広がり、
マジックミラーのように室内の光が反射して闇の向こうに室内の電球と共に僕とお姉様がこちらを向いている様子が映っている。
 ただ単にそれだけの何ともない光景の筈なのにひどい違和感がした。というより誰が窓のカーテンを開けたのだろう。確か僕が入ってきた時
カーテンは閉まっていたし、今部屋には僕とお姉様の二人しかいなくて、二人ともカーテンに触れてすらいないのに…。
 お姉様の方は別に気にも留めなかったのか、
「…もうこんな時間じゃない!早く寮に戻らないと…薫、手伝って頂戴!」
と言って、窓から背を向けて僕の方へ向き直った。
 その時、見てしまった。お姉様が窓に背中を向けたのにも関わらず、窓に映ったお姉様の鏡像はこちらに背を向ける事なくそのままこちらに顔を向けたまま、
ニヤリッと笑った。笑顔だなんて呼べる代物では無かった。
 あまりの事に言葉を失っていると、今度はカーテンが殆ど音をたてること無く「スルスル」と静かに、しかし素早く動いて、元の通りにピッタリと閉まって
暗闇も不気味な鏡像も見えなくなった。


13 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/09(水) 09:12:27
 思わず叫びそうになったが、幸か不幸かお姉様は気づいていない様だったのでぐっと堪える。わざわざ怖がらせるわけにもいかない。
「そうですね、お姉様!早く帰り仕度をして戻りましょう。」
と言いながらお姉様を急かして戸締まりと消灯したことを確かめて、お姉様を外に止めた車の助手席に押し込むようにして乗せて、逃げるように寮に向けて走り出した。
 その日はもう一人で行動することはできなかった。普段は一人で食っている曲にお姉様と一緒に夕食を摂り、無理を言ってお姉様の部屋に押し入って、風呂以外は、
寝る時までずっとお姉様の側にいてビクビクしながら過ごす羽目になった。
 何せ、ルームミラーを見ると、誰も居ない筈なのに後部座席に座っている知らない女生徒の陰が見える。校内に立ってある水銀燈の明かりがフロントガラスに反射した途端、
ガラス一面に着いた沢山の手形に気づく。何をしていても気を抜くと視界の端にチラホラと手首や腕、足などの部位さんが見える。窓やドアを四六時中手のひらで「バンバン」と叩く様な音がする。しかもお姉様には聞こえて無いようで、
自分ひとりだけがひたすら縮こまってビクビクするという情けない結果になる。自分の部屋から必要最小限のものを持って寮の棟の廊下でエレベーターを待っていたときに、廊下の奥からフラつきながらゆっくりと歩いてくる、
顔の左側が抉れた女生徒のマグロに出くわしたときはその場で失神しそうになった。


14 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/09(水) 09:13:54
 肝が座っているかどうかはともかく、オカルトというのは好きだし、怖いもの見たさと言う意味では興味もあるが、流石に一度にお約束のような心霊現象にまとめて遭遇したら精神的に持たない。
 結局空が白み始めて明るくなるまで怪現象は収まらず、怯えながら殆ど一睡もできない夜を過ごした。

9-7へ続きます。

15 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/09(水) 15:18:52
9-7
>>薫
 「ホントに行くんですか?」
と、3代目後期のUA5型インスパイアのエンジンを掛けながら隣りに座っている凛様に問いかける。
「もちろん、決まってるでしょ!」
と、どう受け取っても楽しんでいるとしか思えない返事が返ってきた。まあ確かにこれから件の心霊スポットに冷かしに…もとい凸しに行くのだから反応としては間違ってはいないと思うが、
今夜寝れ無くなっても責任取れませんよ?先輩。
 怪奇現象のフルコースをこれでもかと味わったあの一夜が明けた今朝、寮の食堂で朝食を取りながら話を聞いてみると、幽霊の姿は見えなかったものの、ラップ音とか嫌に寒く感じる雰囲気などを、
お姉様も態度には出さなかったが、時々聞いたり感じたりしたらしい。
 そんな会話をしていると、そこへ凛様と聖華の二人組が通りかかり、こちらの会話を偶然?耳にした凛様が、
「ねぇ、ねぇ。その話、もっと詳しく聞かせてよ!あ、ここ座ってもいい?」
と、強引に相席する形で食いついて会話に割り込んできた。そこで昨日体験した出来事を説明すると、なら授業が終わった後に行ってみようという話になったのである。
 授業が終わって一度学生会館に集まってから、会長であるお姉様と、占いは好きな曲にこの手のオカルトは大嫌いだと言う聖華を残して、凛様と二人でこれからまた園芸部へ行くことになったのである。
 正直行きたくないが、まあ未だ日が高いから、少なくとも心霊現象に関しては、多分何事もないだろうとは思う。それに行くことを拒否した所で凛様が承諾するはずもない。半ばあきらめ半分な気持ちで、
車を一旦少しだけバックさせて、Dレンジに入れてからステアリングを目いっぱい右に素早く回して転回させ、丘を降りて行った。


16 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/09(水) 15:25:04
 坂を下った先の聖堂横のT字の交差点に付くと車を止めて左右の安全を確認する。目の前の2車線の舗装道路を向かって右側に行くと学院寮の裏側、左側に行くと聖堂と講堂の正面を通って本館校舎の裏側を抜け、
例の庭園を突っ切って裏門へ出る道へ至る。日没以降なら兎も角、昼間は付近に女子生徒がいる事以上に寮や学院の食堂や購買部、備品倉庫等に納入する業者の営業車や運送会社のトラックが普通に走っている上に、
この交差点が若干こちら側にカーブしており、しかも両側の方が下り坂になっている上に、右側が深い藪と林、左側に聖堂があるためにこの道からも交差する道からもお互いの車の存在が交差点へ出る直前までわからない構造を
しているから、タイミングさえ悪ければ大型トラックに横っ腹から吹っ飛ばされる危険があるわけだ。
 そういう危ない作りをしている割には、本線には幅こそ細いが車道と段差で完全分離された立派な歩道が整備されており、本線には黄色の直線の、学生会館へ至るこの支線にも白い破線のセンターラインと白い停止線が引いてあり、
御丁寧に立派な横断歩道が3本も引いてあるのに、何故か信号機が付いていない。代わりにこちら側に「一時停止標識」と「優先道路あり」のお団子がアスファルトに刺さっており、そのすぐ側にも橙色のカーブミラーが2枚
一本の支柱に取り付けられている。
 交差点に出てハンドルを左に切って左折して本線、便宜上僕が勝手にそう呼んでいるだけで本当は「学院内屋外通路3号線」という名前が付いているんだそうな、を走る。見かけが一瞬距離の短い地方国道の様な作りをしているので
スピードを出したくなるが、車道の真ん中に、歩いたり、止まって友達同士でお喋りをすることに夢中になったり、部活動に興じたりする生徒がたまにいるので、そういう時は徐行しながらギリギリの所をすり抜けて行く。
しかも一車線の幅が狭いので、大型車が対向してくると幽霊なんぞ比で無い位怖いと感じるほどぎりぎりの所ですれ違う事になる。


17 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/09(水) 16:11:45
 だがこの辺りはまだいい、本館校舎裏を過ぎてしばらくしたから、直進と右折路があるT字路を右に曲がって庭園の中に入ると、今まであったセンターラインさえ消えて、
1.2車線しかないすれ違いなどほぼ不可能な道を、待避所をうまく使いながら10tトラックが神業的な運転技術ですれ違っているのである。
 庭園の薔薇園は本館校舎から比較的近い上に薔薇以外にも季節の花を色々と植えて綺麗に整備してある上に、自前で準備しておけば一角でちょっとした茶会を催す事も可能なので、
実は意外と生徒に人気があるスポットだったりするらしい。傍から見れば、庭園の一角で優雅にアフタヌーンティーを楽しむお嬢様方の傍らで、二台の車がパッシングやハザードで
互いに合図を送りながら待避所を使ってギリギリの所ですれ違うという駆け引きが行われ、更にその二台の側を別のお嬢様が…というようなかなりカオスな光景が繰り広げられる事になる。
それというのも庭園内の、温室の中も含めた、この道も3号線の中に組込まれている為である。一体どこのどいつなんだ、この道を搬入路とすることを決定した馬鹿は?それとも元々普通の道路だったのを
ワザワザこういうふうに改造したのが庭園なのか?どちらにしろ、こんなカオスな状況でよく車対車、車対生徒の交通事故が頻発しないものだと不思議に思う。ある意味園芸部以上にオカルトかも知れない。

18 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/09(水) 16:13:41
 温室から出てまた2車線に戻ってカーブする所に出ると、前後に車が来ていない事を確かめてから、一度思いっきり右にハンドルを切ってから停車し、据え切りで今度は左に思いっきり切りながらバックして
車庫入れの要領で園芸場へ続く小径を進んで行った。別にそのまま左折して真直ぐ入ってもいいのだが、この小道は園芸上の園芸部部室棟で行き止まりになっている上に、部室棟と畑の間の広場は切り返しで
Uターン出来るほどの幅はさすがに無かったし、第一もし何かが起こってその場から全力で逃げ出す羽目になったとき、リバースより1速でキックバックをカマして急発進出来る方がスピードを出して離れることができるし、
バックで搬入路に出るより前から出る方がずっと安全に決まっている。昨晩はたまたま人通りが無い時間帯だったから少々無謀で荒っぽい運転でも大丈夫だったが、今は車の通りがそこそこ多い上に隣には凛様がいる状況である。
幽霊から逃げられたとしてもここで事故ってしまってはどう仕様も無い。精一杯の安全策である。
 幸いというか、車一台がやっと通れるほどの幅しかないが基本一直線だし対向車もいないから思ったほどには難しくない。
 20km/h位のスピードで一気に藪の中のグラベルの道を走り抜けて園芸場の小屋の前に車を横付けて、ギアをPレンジにしてサイドブレーキをいっぱいに踏んで、運転席のパワーウインドウを全開にしてウインドウロックを掛ける。
そしてエンジンを掛けっぱなしで車から降りた。
 車のドアを閉めながら辺りを見回してみる。
「ねえ、薫ちゃん。ここって本当に活動しているの?」
「そ、そのはずですが….これは…」
と、想像以上の荒廃ぶりに凛様と二人で息を飲む。昨日は夕方で薄暗かったからよくわからなかったが、素人目でもこれは酷いと言わざるを得ない凄まじい惨状だった。
 まず、畑の土が黒くて柔らかい腐葉土ではなく真っ白に枯れ果て、大きな石が大量に混ざった砂のような硬くて痩せた土だった。当然そこに育っていた作物や草花も真っ黒や赤茶けた色に変色して枯れ果てて
ボロボロになっている。随分長く手入れされてないようなのに所々に少ししか雑草が群生していない。恐らく雑草すら生育できないほど土地が痩せてしまったという事だろう。少し肌色が混じった石灰のような、
今まで見たことが無いくらい白い土?を見ながらそう推測した。


19 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/09(水) 16:16:09
 畑だけでもぶっ飛んだレベルだったが、小屋の方を改めて驚愕することになった。昨日見た時こそトタンがサビつき、所々破けて外れた廃屋寸前の様な状態でも、辛うじて建物としての形態を維持していたが、
今目の前にあるそれは確実に廃屋である。
 真正面から見たらそこまで変では無いのに、右側面から建物を観察すると、歪というか強烈な違和感に苛まれた。そこで、そのまま小屋の周りに生えていた藪を掻き分けて小屋の裏の方へまわった時、
違和感の原因がはっきりした。なんと、正面からはよくわからなかったが、家の後半分が、腐ったのか風化したのかは兎も角、ものの見事に崩れてペシャンコになっていた。丁度昨日僕が園芸部の部長と
ボブカットに出会ったあの部屋の辺りである。崩壊部分の木の骨の切断面の腐り加減やトタンの腐食具合から昨日今日の内に崩れたものだとは到底思えないくらい見事に崩壊した部分は風化して腐りきっていた。
 訳が分からず混乱しつつも、取り敢えず入れるところまで入ってみようと云う事になり、腐りかけたベニヤ板の引き戸を開けて中を覗いてみた。
 小屋の中は昼間なのにも関わらず真っ暗だった。だが、拙い視界でも、小屋の内部がいろんな物が詰め込まれ散乱した物置の様になっている上に一部が倒壊したことでそこら中に散逸した事によって
ゴミ屋敷のようになっていることがよくわかる。
 天井が低くなっているので屈むようにして物を掻き分けながら内部に入り、奥の部屋に通じる入り口あたりまで行ったが、そこから先は完全に潰れてしまっていたが、小さな子供なら何とか潜り込めそうな位の
隙間が空いていたので、携帯を出して、カメラのフラッシュを懐中電灯の代わりにして穴の中を照らす。

20 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/09(水) 16:18:52
 建材やゴミが散らばっているだけで何もなさそうだったので、期待はずれ半分、安堵半分の軽いため息を付き、凛様を促してその場を去ろうとした。が、突然左足が何かに引っかかり、
というよりつかまれたような感覚がして転けそうになる。
 両手をバタつかせて上体を反り返しながら「おっとっと」とバランスをとりながら3歩程歩いてトタンの壁に左手をつくことで、どうにか地面に寝転がる事態は防げた。
「大丈夫?」
「何とか…うわっ、最悪。手が汚れちゃったよ。たくっ、なんだったんだよ?」
 と右手に持った携帯のフラッシュで転けそうになった辺りを照らして見ると…
「……っ!!!!」
 驚いたってものじゃない、微かだとはいえ、白い光のなかに浮かびでたそれは、這い蹲るようにうつ伏せになりながら右手を何かを捕まえようとするように伸ばしているボブカットだった。
 だが、ピクリとも動く気配がない。まさか死んでいるのかと思い急いで駆け寄ってみたが、何かがおかしい。着ている制服や髪はボロボロボサボサでひどく汚れており、全体的に汚い上に
服の袖から覗いている手首のそれはニンゲンの手というよりも人形のそれのように関節の所に可動式の隙間が開いている。ていうよりどう見ても精巧に造られた1/1スケールのリアルドールだった。
 汚いがよく出来てるなあ、と感心しつつ左手で人形の服の裾を掴んで仰向けにひっくり返してみる。見かけだけでなく顔もボブカットのそれだった。
 そうか、こいつ人形だったのか…。道理で感情というものが感じられなかったわけだ。どういう原理で動かしていたのかはわからないが、恐らく小鳥遊部長が何らかの方法で動かしていたのだろう。
と、思ったがすぐにそうでないことに気がついた。確かにこの人形の関節を動かすことができるが、人形自体は硬いプラスチック製であり、表情どころか口の開閉すらできない、いわば1/1スケールのフィギュアだった。


21 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/09(水) 16:20:13
 だが、僕が昨日見たときこいつは感情こそ感じなかったが、表情を作っていたし自分で口を動かして喋っていたのである。
 こいつは何者なんだ?と思って改めて見ると、ひっくり返す前には気がつかなかったが、人形の腹があった位置に一枚の写真が落ちているのが目に入った。
 拾って携帯のフラッシュを当ててよく見ると、その写真は色あせこそしていたが、この小屋の前で撮ったカラーの集合写真だった。恐らく顧問が撮ったのだろうか、小屋の前に14人の女生徒が2列で並んでいる。
と、ここまでは単なる写真でしか無かったが、そのうちの一人、一列目の7人のど真ん中にいて、周りの生徒に囲まれた女生徒の顔を見て驚いた。間違いなくそれは小鳥遊部長だった。日付は2024.08/09.10:24:36と書いてあった。
 何かの拍子でスイッチが入ったのか、携帯の動画撮影の録画モードが起動していたので、その写真と、人形を撮って、写真と人形を元の通りに戻してからその場を後にした。本来なら人形と写真を持ち帰るべきなのだろうが、
それをすると何か悪いことが起きそうな予感がしたので敢えてそれはしなかった。ただ、人形を元の通りうつ伏せにひっくり返した時に人形の首がゴトっと音を立てながら取れてしまい、人形とバッチリ目があって仕舞ったが気にしない事にした。

9-9へ続きます

22 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/09(水) 16:21:21
すみません9-9じゃなくて9-8です。

23 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/10(木) 17:58:33
9-8
>>薫
 想像した以上の惨状の割には期待したほど大した発見も事件もなかったためか凛様は無言で車に乗り込んだ。僕も近くにあった蛇口しかない垂れ流しのタイプの水道を見つけたので、
そこで手を洗い、ハンカチで手を拭きながら車に近づいてドアを開けて乗り込んだ。
 ウインドウロックを解除して窓を閉め、車を発進させた。
 藪の中を抜けて小道からカーブの所まで出て右折しようとすると、左側から日産の8t車の幌付き車が、温室の中からADバンとカローラ・フィールダーバン、ハイエース、エルフのコンテナが
走ってくるのが見えた。一時停止してやり過ごしながら、バックで入ってよかったなと思っていると、突然先ずADバンと日産ディーゼルが僕の車の前を通る直前にパッシングをした。
 初めは譲って入れてくれるのか?と思ったがその割には何発も煽るようにパッシングを繰り返しているし、後ろに続くカローラやハイエースまで同じようにパッシングしているし、
8t車もクラクションを「パァアアアアアアアアアアアアン」と盛大に鳴らしてるし、エルフの運転手に至っては「上、上を見ろ」とでも言うように慌てた顔で僕の車の屋根の上の方を指さしている。
 自分の車には屋根の上には何も無かった事は乗り込む前に確認しているから、何だろうと思いつつもエルフが行った後でアクセルを踏んでハンドルを切って8t車の後ろに付いて温室の中に入ると、
突然前を走っていたトラックがハザードを出し、窓から腕を出して自分の方へ止まれと合図した後、進路を塞ぐようにしてその場でブレーキランプを光らせながら減速してエンジンを停止させ、
運転手が降りてきた。
 自分もハザードを出してブレーキを踏んで車を止め、ギアをNに入れてサイドブレーキを掛けた後シートベルトを外す。
「え、何?何なの?え、ええっ?!」
と事態が飲み込めずにパニクっている先輩を宥めながら
「さあ、分かりませんが僕の車に何か異常があったみたいです。ちょっと行って聞いてきます。」
と言ってドアを開けて車の外に出た。

24 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/10(木) 18:01:57
 トラックから降りてきた50歳位と思われるおじさんは僕に対して怒ったかのように何か言いかけていたが、僕の車の屋根の上の方を見るやいなや「あれれ?」とでも言うように、
驚いて拍子抜けた様な顔で黙ってしまっていた。それにつられて僕もインスパイアのルーフの上を見たが、特におかしい所は無かった。
「あの、ウチの車がどうかしましたか?」
と、訊いてみるとおじさんは戸惑っている様な感じで、
「いやさね、今さっき通りがかったときその車の屋根にね、女の子がしがみついていたような気がしたんだけどね…あれぇ、気のせいだったのかな?いくら校内だといっても
屋根の上にベルトもなしで獅噛つくわ、友達が乗っているのに車を走らせるわ、最近の娘は危ない事を平気でするなあ、こりゃ注意しなきゃイカンなあと思ったんだけどね。
どうやらおじさんの勘違いだったみたいだわ。ごめんね。」
と言って、おじさんはすまなそうに手を振りながらトラックに乗りこみ、エンジンを掛けて行ってしまった。だけどね、おじさん。多分それ勘違いじゃないわ。
恐らくトラックだけでなくすれ違う全ての車からパッシングとか何らかの警告を発するアクションを見せたのは、車の上にしがみつく女というのをほぼ全員が目撃したからだろう。
 車に乗り込むと凛様が話しかけてきた。
「ねえねえ、さっきのどうだったの?大丈夫だったの?」
「ええ、何事かと思いましたけど…勘違いだったみたいです。何もありませんでした。」
「そうなんだ。良かったぁ。それにしても何だったんだろうね?」
「さあ…ところで凛様。」
「何?薫ちゃん。」
「この辺りでお寺や神社…できれば霊験あらたかだったりお祓いに定評があるような住職さんや宮司さんがいたり、その方面で有名な霊能力者さんがいる所ってどこか無いですか?」


25 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/10(木) 18:03:54
 凛様から近くにある神社の場所を聞きながら、エンジンを掛けて少し前進してステアリングを右に切ってテーブルとベンチの間に車の鼻先を突っ込んでから、
据え切りで左にハンドルを切ってバックし、また右に目いっぱい切って前進しながらその場でUターンをして、温室を出て搬入口の方へ車を走らせた。
 神社の社務所で受付をしていた巫女さんに事情を説明して宮司さんに引き合わせてもらった後、社殿の一室で二人とも簡単なお祓いを受けてから、宮司さんを
神社の敷地内に停めた車に案内して見て貰う。
 車を見るや否や、老齢の宮司さんはニコニコと笑い、
「ありゃあ、こりゃ少し厄介なモノを連れて来てしまいなすったのう?お二人さん。じゃが、心配なさる事はあるまいて。わしにとっちゃ、こんな物落とすことぐらい
朝飯前ですからのう。」
と言って両手で大幣を持ち、祝詞を唱えながら祈祷を始め、時折何かに語りかけるようにブツブツと何かを話し、また祝詞を唱えて祈祷を始めるという事を繰り返した。


26 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/10(木) 18:07:01
 祈祷が終わると宮司さんは僕らの方に向き直り、
「これで悪いものは祓えましたじゃ。もう大丈夫じゃろう。」
と言った。
「ありがとうございました。これ、祈祷料と、ほんの志ですがどうぞ。」
と正規の祈祷料とは別に銀行から下ろしてきた裸の万札2枚を手渡そうとすると、宮司さんは祈祷料だけを受け取り、
「いやいや、大したものでは無かったし、これもわしの仕事ですからな。それに実を言うと完全に祓えたわけじゃないですからの。
祈祷料だけで十分ですじゃ。」
「は?祓えなかったと言いますと?」
「ああ、浄霊をしてあの世へ送って楽にしてやろうとしたが拒まれましてのう。取り敢えずこの車とお主らから祓い落とす事ができたんじゃが、
逃げられてしまいましてのう。まあ地縛霊だったみたいじゃから縛られている所へ行ったと思うのじゃが…お主らひょっとして心霊スポットとか
そういう忌むべき場所に冷やかし半分で行かなかったかの?」
「そういう場所だったかは分かりませんが、思い当たる所はあります。」
「そうか…」
 宮司さんはそういうと着物の袂からお守りを二つ取り出して僕ら二人にそれぞれ渡して、
「もう大丈夫だと思うが、念のために持っておきなされ。あと二度とその場所へ近づいてはなりませんぞ!よいですな。」
と言った。
「わかりました。」
と僕も答えた。というか行けと言われても全力で拒否するつもりである。二度と行くか!
「ところで…お主ら。お主らにとり憑いていた霊について聞きたくはないかの?なかなか面白い話を聞き出せたんじゃが…」
「結構です。興味もないし、二度と関わるつもりも無いので。」
宮司に一礼して僕らは車に乗り込で学院へ戻った。

27 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/10(木) 18:10:08
 その後、結局園芸部は文化祭には出展しなかったし、補助金も増額されることは無かった。というより、園芸部そのものが消滅した。
 戻ってから園芸場の惨状を簡潔に報告すると、完全に実体がない部として処理され、補助金そのものが打ち切られる事が決定した。
 そして、これは会長から命じられたと言う名目の元僕が勝手にやった事だが、連盟から供出された園芸部員の名前と学年と学生番号が書かれたリストを、理事長の許可を受けた上で学院の庶務課へ持って行き、学院が持つ学生名簿と照らし合わせてもらうと面白いことがわかった。
全員現時点では在学している生徒では無かった。学年と学生番号を照らし合わせると、14名が5年前に在学していた学生、1名が全く詳細がわからない謎の学生であることが発覚し、しかも全員5年前に在学中に行った夏期合宿で事故に合って死んでいる事もわかった。
 結局…部員のほぼ全員がこの世に存在しない、部室棟は倒壊している、その他諸々の事情により、学院によってお祓い、倒壊した部室棟の解体と撤去と園芸上の整地が行われ、名実ともに園芸部は消滅した。
 学院からの話しによれば、14名の学生は植物採集のフィールドワーク先で来た海で遊んでいる時に、突然の高波に巻き込まれて全員が溺死した事になっているらしい。らしい、と言うのは話の整合性やリアリティがひどく曖昧な上に、当時を知っているはずの
顧問をしていた教師や関係者がもはや学院に残っていないため、真実かどうか確認できないからである。

28 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/10(木) 21:35:56
 本来ならその手の話が大好きなお嬢様達に恰好のゴシップネタを提供する様な事柄なのだろうが、園芸部の件は噂に上ることも無く闇の中へ葬られる事になった。と、言うのも今回何らかの形で怪現象に関わることになった、
または知ってしまった人間、お姉様、凛様、聖華、そして僕に学院から混乱を避ける為にも他言無用にするようにと言う旨の文書と一緒に結構な金額が入った金一封が送られたからである。特に僕は、渡されるとき二度と顔を突っ込むな
と釘をさされた挙句金額も明らかに一番多かった。最も、補助金を打ち切ったものの園芸部自体が無くなったのでどこからも苦情など来ない上に、お守りの御利益のお蔭か、あれから怪現象に悩まされることも無かったので、園芸部に
何が起こったのかなど、どうでもいい話題の一つに成り果てていたから、心地よく条件を飲んで喜んで臨時収入を戴いた。
 新聞部とか映像部の連中なら反発して、事件の真相や人形の謎、どうやって今まで活動を続けてられたのか、今までの補助金の行方とか、何故学院がムキになって隠そうとするのかをどうにか暴こうとして、スクープを取るために
学院と戦おうということになるのかも知れないが…生憎こちとら、その学院から権威と言うものを間借りして活動をしているところである。わざわざ割とどうでもいいと思っている親分に逆らって逆鱗に触れる必要は全くない。
 ただ心の底ではこの話に落と言うか、決着を付けたかったとは思う。何か宙ぶらりんというか、中途半端な感じがしないでもないからだ。
 でも、ま、現実なんぞそんな物だ。学生に出来ることなどタカが知れている。今はこの降って湧いた牡丹餅をどう使うかという事でも考えよう。と思いつつ何気なく窓の外へ目をやる。
 今日も空が高い。

第九章完

第十章へ続きます

29 :名無し物書き@推敲中?:2010/06/14(月) 03:39:27
ここのやつらは他のスレみたいに小説を書いたページのURLをあげるって発想がないのか?

長ったらしい文章を何レスもつけてみにくいとは思わないのか?






,



30 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/28(月) 13:26:57
テス

31 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/28(月) 14:11:36
第十章
10-1
>>薫
 突然だが新しく、かなりくたびれた感じがするシルバーメタリックの中古の後期型C34ローレルRB25DETを買った。軍資金はこの間学院から頂いた例の金である。
 牽制のためだったとはいえ、突然500万円を貰っても一介の学生に使い道が思い浮かぶわけじゃなく、初めはそのまま貯金しようとも思ったが、僕名義の口座は郵貯も銀行の口座も両親や祖父母に管理されていて、
学費、寮費、通信代、小遣いを含めた月々の生活費が振込まれ、必要な分だけ引き出して使っている。そんな普段引き出しっ放しの口座に突然渡した覚えも無い500万を入金したら、絶対親から「この金は何なんだ?」
と問い詰められるに決まっている。かといって、タンスの底に仕舞い放しというのも勿体無い。
 だが、使うとしてもろくな使い道が思い浮かばない。今のところ欲しいものなら必要ならいつでも買い与えられる環境にいるし、服や電化製品にしろ、今使っている物やスペックに特に不満は感じてないし新しく買う気にはならない。
娯楽品だって時々文庫本の小説や漫画やCDを買うぐらいだから、小遣いの範疇で十分賄える。
 趣味に使うといっても、僕自身は屋内で出来ることとトレーディングカードやモデルガン、腕時計などの小物の収集紛いな事を除けば、金が掛かる趣味は車くらいしか無い。だからという訳じゃないが、前から欲しいと思って、
そこそこの状態で安い中古車を探していたから手に入れた。

32 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/28(月) 14:12:53
 5人のオーナーの手を渡った少しへたった感じのする車なのだが、前のオーナーにVIP乗り、警察マニア、走り屋がいた所為か、見かけはフルエアロのVIPカー、エンジンはや足回りはガチガチに弄ってあるドリフト仕様の改造車のクセに、
何故かフロントグリルの中に点滅式の赤色灯2個、ルーフにも反転式のパトランプ1つ、リヤシートの後ろにリトラクタブル式四角いパトランプ2個と電光掲示板が1つ、更にはトランクの蓋の裏側に4連の細長いパトランプが1つ付いていて、
ダッシュボードにそれらの作動スイッチ盤とサイレンとマイクのスイッチと拡声器が付いている覆面パトカー仕様になっている。これにいつも通り、2.5Lを3Lまで排気量を上げてツインターボ化し、マフラーを左右二本出しにして
ハイマウントストップランプが着いた小型のリヤウィングをトランクに載せた。今回は車自体がフルエアロでエアサス、4輪ディスクに大判ホイールを付け、後付の油圧・油温・水温の3連メーターと乗員変更しないタイプの6点式の
ロールバーがついた上にステアリングまでカッコいいT字型のスポークのステアリングホイールに替えられたATのターボ車だったので改造箇所が少なくて済んだから安く上がって助かった。

33 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/28(月) 14:14:06
 一つ心配だったのは、ルーフに開いた反転式パトランプの為に切り抜いた蓋の隙間から雨水が漏れないか心配だったが、雨の日にパトランプを回さない限り水漏れはしないし、
雨の日に回しても、下のタンクに水がたまるだけで、たまにタンクに付いている極細のホースからコップの中にでも水を抜いてやれば大丈夫らしい。
 ただ難点を言えばパトランプのスイッチを入れると予想以上にバッテリーを食ってしまう点と普通の車よりずっと重く感じてしまうという点だが、ネタとしては面白そうだし、
高速域で限界まで飛ばす事など殆どないので些細な事だと思う。

10-2へ続きます


34 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/06/28(月) 21:49:02
中途半端ですが...今まで投稿してきたものを含めてこれからの物を「小説家になろう」へ投稿することにしました。
題名は「綾小路 薫の日常(仮)」です。
リンクを一応貼っときます。

http://ncode.syosetu.com/n2594m/

これを持ってこの話はここでは一応終了です。
またなんか思いついたらアップします。

35 :ふみあ ◆vk4jlKOWS. :2010/07/12(月) 15:00:36
アップした作品

http://mypage.syosetu.com/mypage/novellist/userid/90102/

36 :名無し物書き@推敲中?:2010/07/12(月) 15:04:23
a

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