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蜘蛛の糸

1 :しんのすけ:2009/01/21(水) 09:19:20
ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りで御歩きになっていらっしゃいました。
池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色の蕊からは、何とも
いえない好い匂が、あたりへ溢れておりました。極楽の朝でございました。御釈迦様はその池の淵にた
たずみみになって、水の面を蔽っている蓮の葉の間から、ふと下の容子を御覧になりました。するとそ
の地獄の底に、勘駄多という男が、ほかの罪人と一緒に蠢いている姿が、見えました。御釈迦様は地獄
の容子を御覧になりながら、勘駄多という男を地獄から救い出してやろうとお考えになりました。

蓮の葉の上に、極楽の蜘蛛が一匹、美しい銀色の糸をかけて居りました。それを見た御釈迦様はその蜘蛛
の糸をそっと手に取ると白蓮の間から、遥か下にある地獄の底へ、まっすぐに細糸を下ろしました。
何気なく勘駄多という男が、頭を挙げて血の池の空を眺めますと、暗の中を、遠い遠い天上から、銀色の
蜘蛛の糸が、まるで人目にかかるのを恐れるように、一すじ細く光りながら、するすると自分の上へ垂れ
て参るのを見ました。これを見ると勘駄多という男は思わず手を拍って喜びました。この糸に縋りついて、
どこまでものぼって行けば、きっと地獄からぬけ出せるのに相違いない。

うまく行くと、極楽へも行けるかも知れない。そうすれば、もう針の山へ追い上げられる事もなくなれば、
血の池に沈められる事もない。すると勘駄多という男は、早速その蜘蛛の糸を両手でしっかりとつかみ、
一心に上へ上へと糸を上り始めました。しばらく糸を上りながらふと糸の中途にぶら下りながら、遥か目
下を見下しました。さっきまで自分がいた地獄もう遥か目下に見えません。ここまで来ればもうだいじょ
ぶだと思わず笑いました。ところがふと気がつきますと、蜘蛛の糸の下の方には、数限りない罪人たちが、
自分ののぼった後をつけ、まるで蟻の行列のように、やはり上へ上へ一心によじのぼって来るでございま
した。これを見た勘駄多という男は、恐しく驚きました。


2 :しんのすけ:2009/01/21(水) 09:20:04
自分一人でさえ断れそうな、この細い蜘蛛の糸が、どうしてあれだけの人数の重みに堪える事が出来よう
かと思いました。もし万一途中で糸が断れたら折角ここへまでのぼって来た自分の苦労も水の泡と消えて
しまう。元の地獄へまっ逆さまに落ちてしまわなければならない。そこで勘駄多という男は大きな声を出
して、「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸は己のものだぞ。お前たちは一体誰に尋いてのぼって来た。下り
ろ。下りろ。」と喚きました。その途端でございます。今まで何ともなかった蜘蛛の糸が、急に勘駄多と
いう男のぶら下っている所から、ぷつりと音を立てて断れてしまいました。

そこで勘駄多という男は、あっという間もなく独楽のようにくるくるまわりながら、見る見る暗の底へ、
まっさかさまに落ちてしまいました。後にはただ極楽の蜘蛛の糸が、きらきらと細く光りながら、月も
星もない空の中途に、短く垂れているばかりでございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちに立って、
この一部始終をじっと見ていらっしゃいましたが、やがて勘駄多という男が血の池の底へ石のように沈
んでしまいますと、悲しそうな御顔をなさりながら、また歩き始めたのでございます。

自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、勘駄多という男の無慈悲な心が、それ相応の罰をうけて元の地獄
へ落ちてしまったのが御釈迦様の目には、浅間しく思われたのでしょう。しかし極楽の蓮池の蓮は、少し
もそんな事には頓着致しません。その玉のような白い花は、御釈迦様のお御足のまわりに、ゆらゆら萼を
動かして、そのまん中にある金色の蕊からは、何とも云えない好い匂が、あたりへ溢れて居りました。
極楽ももう午に近くなっておりました。


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